虚空を仰ぐ
私は何故ここに居るのか
その答は与えられない
微睡む意識は、虚に溶け落ちた
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かつて一世を風靡したDMMO-RPG「YGGDRASIL」。その最後の時を、私は見届けようとしていた。
友と過ごしたギルド拠点『未完世界葉ノウンヘイム』、そこに残っていたのは私と、友の残したNPC達だけ。私は、一人きりだった。
「分かっていた」
「分かって、いたんだ」
誰もが、こんな仮初めの世界でずっと足踏みしてはいない。きっと、こんな風に進めないのは、私だけなんだと。
「本当は、分かっていたのに…」
「ああ、やっぱり」
「寂しいな…」
眼前に傅くNPC達も、所詮は置物。この苦痛は消せはしない。
(もう、いいんだ)
(このまま終わりを迎えれば、進むしかなくなる)
「大丈夫。きっと────」
23:59:59
「私も、みんなみたいに……」
0:00:00
そんな諦めは──────
0:00:01
この世界は許さなかった。
(…………?)
(何故、シャットダウンしない?)
「どういう事だ…?」
その声に答えるかのように声がする。
「どうかしましたか?ダアト様」
聞こえるはずのない声。目を向ければ、動かないはずのNPCが動いて、喋っているではないか。
「!?…いや、なんでもない、気にするな」
咄嗟に誤魔化す。目の前にいるモノが信用できない。弱味を晒すわけには…
「左様でございますか、差し出がましい真似をしました。どうかお許しを」
「気にするな。私を思っての事だろう」
(敵意や悪意はない…か。警戒は解かないが敵対する理由もない。ここは…)
「私は自室に戻る。持ち場に戻れ」
(ひとまず撤退する事にしよう)
「はっ!」
淀みのない返答とともに、ソレは姿を消した。
(さて…機能するかな…?)
指輪を起動する。どうやら機能に支障は無いらしく、無事に自室に転移できた。
「状況を整理しよう。GMコールは……駄目だ。繋がらない。なら…起動《メッセージ/伝言》……これも駄目か。…?NPCとは繋げられそうだが…意味はないな」
以降も検証をし、分かったことは4つ。ゲーム内での知り合いやGMに連絡を取る手段が無いこと。コンソールを用いずにゲーム内での操作ができること。一通りのアイテム、スキル、魔法の効果は問題なく発動すること。そしてギルド拠点が未知のエリアに転移していることだ。
「さて…本格的にまずいな」
頬をつねり、夢でない事を確認したところで、私は受け入れがたい事実を認めざるを得なくなった。
「これは……異世界に転移した、という事か」
私の許されざる執心、その罰を。