思案する。まずすべきことは何か、情報収集?防衛準備?
…………駄目だ、思考がまとまらない。
この違和感はなんだ?私は何を見落としている?
……答えは出ない。考えるより行動すべきと結論づけ、より広域の探査を行うことにした。
NPCには持ち場での待機を命じた。幸いというべきか、ギルド拠点周辺の環境はさほどゲーム時代と変わらない。NPC達に情報を共有するのは方針が決まってからでいいだろう。
《リモート・ビューイング/遠隔視》を起動して探索する。
「周辺は緩やかな丘陵と…広大な森、そして付近に小規模な村か。ひとまず人間には会えそうだな。」
拡大する。…様子がおかしい、襲撃?何故?
「助けるか?いや…」
躊躇する。この世界の人間の強さがわからない。危険を犯してまで小さな村を助ける必要は────
そのとき、私の目に入ってきたのは、子供を守り、騎士に立ち向かう父親の姿だった。
「………!起動《テレポーテーション/転移》」
気づいたときには、私は村に転移していた。……何を考えている?くそ、自分の思考と行動が理解できない。
姉妹に襲いかかろうとしていた騎士達はダアトの姿を見て驚愕していた。
「な、何者だお前は!」
ダアトは苛立ったように返す。
「黙れ、私は今混乱している」
騎士のひとりがダアトに斬りかかってきた。
「ならそのまま死ねぇっ!」
「スキル《機巧嘴翼》」
次の瞬間、騎士の体は胴で真二つに裂け、鮮血が撒き散らされた。
「思いの外弱いな。」
「ヒッ…ヒィッ!!」
一人があっさりと殺され、怯えた騎士達が背を向け逃げ出す。
「スキル《輝光矢》」
その背を光の矢が貫き、騎士達はその場に崩れ落ちた。
混乱は更に深まる
(何故殺した?人を殺したのに何故何も感じない?)
「体に感覚が引っ張られている……?」
姉妹に目を向ける。
「ヒッ……」
自分達も殺されると思ったのか、怯えたように後ずさる。
そこでダアトはようやく気づく。自分は人間の姿をしておらず、姉妹からすれば敵が騎士から騎士を殺した異形に変わっただけにしか思えないと。
「落ち着け、お前たちを殺す気はない。……怪我をしているな。起動《ライト・ヒーリング/軽傷治癒》」
治療をしたことで警戒を解いたのか、姉が話す。
「私はエンリ・エモットと言います。どうか、この村を助けてください!」
必死の頼みに、ダアトは返す。
「構わない。それより身を隠しておけ。」
エンリは頭を下げ、妹を連れて隠れる。
「さて…数が多い。手間だな…」
面倒そうに首を揺らし、思案する。そして────
「スキル《創像投影》」
種族《機巧天使》と職業《想造者/イマジネイター》の二つを極めたものにのみ許されるスキルを起動した。
瞬間、ダアトの全身を青緑色の光が覆う。燃えるように、凍りつくように光が渦巻き、存在を組み換え────
「《────ベート》」
一瞬、世界が眩んだ。