アンバラ戦の終結から数日後。
リナ・ソレイユはコルサントのジェダイ聖堂に戻っていたが、任務報告を終えて以降、ほとんど誰とも口を利いていなかった。
訓練場にも、瞑想室にも姿を見せない。
夕暮れの庭園、枯れ葉の舞う静かな片隅で、彼女はセーバーを握りしめ、ただ座っていた。
かつての師、ポング・クレルを自らの手で斃した日から、リナのフォースは沈黙していた。
(私は……ジェダイとして、正しかったのかな)
誰かを殺して正義を語る資格が、自分にあるのだろうか。
それが暗黒面に堕ちた師を斬ったのだとしても——
そのとき、背後からやわらかなフォースの波が流れ込んできた。
「ひとりで苦しむには、重すぎることもある」
振り返ると、異色の肌に呼吸マスク、深い眼差しを持つジェダイ・マスター、プロ・クーンが立っていた。
—
「クレル将軍は……私の師でした。
最初にライトセーバーの構えを教えてくれた人です。
それなのに、私は……彼を……」
リナの言葉が、途中で途切れた。
プロ・クーンは腰を下ろし、隣に座ると、小さく頷いた。
「それは、誇ることではない。だが……恥じることでもない」
リナは、力なく首を横に振る。
「でも私は、殺してしまったんです。
彼が闇に堕ちたとしても……きっと、救う道もあったはずで——」
「君が救おうとしたことは、私は知っている」
プロ・クーンの声は静かで、だが確かだった。
「だが、救いは願いではなく、選び取る意志だ。
ポング・クレルは、それを拒んだ。
君が下した決断は、命を守るためだった。
それを責める者がいれば、それはフォースを理解していない」
—
風が木々を揺らし、光と影が交差する。
「ジェダイとは、平和のために戦う者。
だが時に、自分の中の平和を壊さねばならない」
「……それでも、辛いです」
「辛いままで、いい。
その痛みがあるから、君は闇に堕ちない。
怒りではなく、悲しみの中で戦った者は、闇に触れても、戻ってこられる」
リナは驚いたように目を見開いた。
「私が戻れるって、どうしてわかるんですか?」
プロ・クーンは、ふと笑った。
「君の瞳に、まだ他者の痛みを映す光が残っている。
それが消えぬ限り、君はジェダイだ」
その言葉に、リナの瞳から静かに涙がこぼれた。
「マスター……これから、私はどうすれば……?」
「歩き続けなさい。答えは、フォースの中にある。
そして、自分を許すことだ、リナ。
それが、フォースに導かれし者の第一歩だ」
リナはそっと目を閉じ、深く息を吸った。
フォースが、かすかに——ほんのわずかに、微笑むように揺れていた。
「……はい。ありがとうございます、マスター」