コルサント、ジェダイ聖堂の屋上庭園。
夜風に揺れる木々の葉が、星灯りの下でささやくように鳴っていた。
そこに佇むのは、銀髪のジェダイ——フラナ・ヴェイル。
その肩には、決意と別れの重みがあった。
リナ・ソレイユは、走るように彼女のもとへやってきた。
「……本当に行くつもりなの、フラナ!?」
フラナは振り向かない。
だが、静かにうなずいた。
「うん。今日、評議会に正式に脱退の意志を伝えた」
「どうして……!?
任務のたびに、“フォースは導いてくれる”って、そう言ってたのに……!」
「導いてくれる場所が、必ずしも“聖堂”とは限らないって、やっとわかったの」
—
リナは言葉を失い、それでも懸命に絞り出した。
「ジェダイを捨てて、あなたに何ができるの……!?」
フラナはゆっくり振り向く。その瞳は、月光を映していた。
「私は、見たんだ。あの遺跡で。
……フォースの流れが語る“別の道”を。
あれはただの遺物じゃない。
銀河の外、星の果て……そこに何かがあるの。私を待ってる何かが」
「でもそれは……評議会には……」
「聞こえなかった。感じられなかった。
私のフォースは……あの人たちと“同じ方向”には流れてない」
リナは涙を滲ませた。
「それでも……一緒にいられるって、私は思ってた……!」
「リナ……あなたは、私の家族みたいな存在。
でも、同じ場所に立ち続けることが、必ずしも絆の証じゃないよ」
フラナが歩み出す。
リナが、手を伸ばす。
「行かないで……! フラナ……! あなたまでいなくなったら、私は……!」
フラナは立ち止まり、振り返る。
「あなたは、誰よりも強い。
そして優しい。だから、あなたが“ここにいる”限り、ジェダイに希望はある」
「そんなの、嘘だ……!」
「リナ。
あなたは人を守るために剣を取る人。
私はこの銀河を超えて、真実を探す人。
その違いが、私たちを引き離すの」
フラナはそっと、リナの胸に手を当てた。
「でも心は、つながってる。
これからも——ずっと」
フラナは、ジェダイ聖堂の門を抜けた。
リナはその背中を、ただ黙って見つめていた。
やがて、夜が明け、東の空に淡い光が差し込む。
(……私は、信じる。あなたの道が、間違っていないって)
リナは深く息を吸い、空を見上げた。
「……さよなら、フラナ」
#
吹雪の中、ホスの氷原に向かって、艦隊は航路を進んでいた。
リナの隣にいるのは彼女の姉、レナ。
赤い髪を雪の下に隠し、黒いローブをまとったその姿は、かつてのジェダイのそれとは違っていた。
「久しぶりね、リナ」
「どうしてこの任務に、あなたが?」
「ドゥークー伯爵が死んだの、最後の任務には一緒にいたかったの」
リナは答えなかった。ただその横顔を、まっすぐ見つめた。