惑星ペイル。
乾いた大気と濁った夕焼けが似合う、辺境の工業惑星。
共和国が崩壊してから3年。帝国の紋章が掲げられて久しいが、ここでは誰もが生きることに手一杯だった。
リナ・ソレイユは、ドロイド整備会社《カームス工房》で平社員として働いていた。
「BD、3列目の足回り、また油漏れてる」
「%÷€÷:>\〒〒○→2#<:」
BD-4が跳ねるように動きながら、オイル噴出口を閉め直す。
リナはその様子を煙草の煙越しに見ながら、ひどく無精に笑った。
隣では、年上の整備士マシューが口をしかめている。
「また吸ってんのか、リナ。朝から何本目だよ?」
「知らない。気づいたら火点けてた」
「……で、昨日は酒だろ? お前、今月の給料ほぼそれに消えてるぞ」
リナは答えず、BD-4が仕上げた修理報告に目を通す。
「完璧。あんたらよりドロイドのほうが優秀だね」
「優秀なドロイドが、駄目な同僚を支えてんだ。笑えねぇよ」
マシューの軽口にも、リナは笑わなかった。
—
その夜、リナはいつものように仕事帰りの裏通りで安酒をあおっていた。
煙草に火を点け、頭を空にする。
(あれから、3年……)
ホスでセーバーを埋め、すべてを捨てたはずだった。
だがフォースは、完全には離れてくれなかった。
ときおり感じる“声”、人の“死”の匂い。
見ようとしなくても、流れ込んでくるものはあった。
「リナ・ソレイユ」
——不意に、背後から声が落ちた。
振り向くと、そこには灰色のローブをまとった女性が立っていた。
長い黒髪に、冷たい琥珀色の瞳。
「……誰?」
「私はシオネ。ジェダイよ」
リナは肩をすくめた。
「悪いけど、もうそういうのには関わらない」
「わかっている。君はすべてを捨てて生きてきた。ホス、レナ、クローン戦争、帝国……」
リナの表情がわずかに歪む。
「この銀河には、シスの遺産と呼ばれるものがある。
それは、銀河を揺るがす力なの。帝国の打倒すら可能な…」
「この計画に、私は貴方の強力なフォースが必要なのよ、リナ」
沈黙。
「私は誰も助けられなかった。戦って、斬って、それでも守れなかった。
それでもまだ、私にジェダイとして生きろと?」
「言わない。君が望むなら、それでいいわ。明日、もう一度だけここに来るわ。そのときまでに答えを決めて」
シオネは去っていった。
その背中に、リナは声をかけなかった。
ふと、地面を見ると、そこには布に包まれたライトセーバーが置かれていた。
リナはそれをしばらく見つめ、しゃがみ込み、指先でそっと触れる。
起動しない。だがその重さが、かつて手放したものと同じだった。
BD-4が後ろから首を傾げる。
「÷2・36÷%¥……?」
リナはライトセーバーを布ごと拾い、そっと胸元に抱えた。