スターウォーズ:シスの遺産   作:yumui

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ド=ジェムソ

惑星カミーノでの分離主義勢力の強襲。

クローンの遺伝子を強奪に来た戦力にはドゥークー伯爵の殺し屋アサージ・ヴェントレスやドロイド軍の指揮官グリーヴァス将軍も含まれていた。

 

「……ちょっと小さいね、ジェダイ。これが本気?」

 

声と同時に、ヴェントレスの二本の赤いセーバーが、リナの目の前でクロスを描いた。

 

「あなたが、この惨状を?」

 

「そうねえ。クローンたちはずいぶんと騒がしかったけど、最後には良い断末魔を聞かせてくれた」

 

リナは即座にソレスの構えを取った。脇を締め、セーバーを小さく持ち、あらゆる方向の攻撃を受け流す防御姿勢。

 

だが——

 

「つまらない子だね!」

 

ヴェントレスは速度を上げ、怒涛の連撃を浴びせてくる。

彼女の動きはしなやかで予測不能。二本のセーバーが蛇のようにしなり、リナの防御の隙間を突こうとしてくる。

リナはそれを受け流す。ソレスはそのための型。

しかし——そのたびに、足が下がり、立ち位置を奪われていく。

 

「どうした? 受けてばかりじゃ、すぐに壁に背をつけることになるよ?」

 

ヴェントレスの刃が左肩をかすめ、ローブを焼いた。リナは息を呑む。

ソレスの守りは強固だが、それは持久力と冷静さを要する。だが今、敵はあまりにも攻撃的で予測不能。

 

(受け流すだけじゃ、いずれ押し切られる)

 

リナは一瞬だけ前に出ようとしたが——

 

「甘い!」

ヴェントレスの蹴りが脇腹を突き、リナの体は壁へと吹き飛んだ。

 

「ほら……反撃してみな。あんたが“ジェダイ”ってんなら」

 

リナは起き上がりながら、セーバーを握る手が震えているのに気づく。

 

「……!」

 

目を閉じ、フォースの流れに身を委ねる。

再び激突する光刃。

 

ヴェントレスの連撃が迫る。

リナはそれをソレスで受け流す——だが今は、そのまま反撃へとつなげていた。

 

一撃、また一撃。防御から一転、最小限の隙を突いて刃を滑り込ませる。

 

「……!」

 

ヴェントレスが眉を上げる。

 

「へえ。少しは面白くなってきたじゃないの」

 

リナの刃がヴェントレスのセーバーの軌道をずらし、一瞬だけ彼女の首元へと迫る。

 

だが反撃に転じたヴェントレスのマカシの型に防御はたやすく突破されリナは腕や足に傷を負う。

 

赤いセーバーが腰を掠りクローン兵のDNAが詰まったカプセルが床に落ち、その隙をつきヴェントレスがフォースでカプセルを引き寄せる。

 

「しまっ…」

 

だが、カプセルはフォースで引き寄せた誰かの手に収まった。

 

戦争の英雄_アナキン・スカイウォーカーの手に。

 

「降伏を期待しているんだろうね」

 

追い詰められクローン達にブラスターを向けられるヴェントレスの言葉にアナキン・スカイウォーカーは答えた。

 

「いいや、怒りに溢れたクローン達に処刑を任せるんだよ」

 

「また…今度ね!」

 

ヴェントレスはフォースプッシュでクローン達を吹き飛ばすと通りすがった船に飛び込み逃げ去っていった。

 

(勝てない)

 

戦闘後、濡れた雨の床に膝をつき、リナは握ったセーバーを見つめた。

 

「この技は私に合ってない…もう通用しない」

 

#

 

帰還後、ジェダイ・テンプルの訓練場で、リナはライトセーバー訓練の達人である剣聖、あるいはその獰猛な剣技からトロールとも呼ばれる老人、シン・ドローリグの元を訪れた。

 

「マスター・ドローリグ、お願いがあります。私にジュヨー(フォームVII)を教えてください」

 

老マスターは彼女を見つめ、沈黙した後、静かに首を振った。

 

「ジュヨーは暗黒面を完璧に制御しなければならない。フォースの深い理解と心の均衡が求められる。今の君では、その熱に呑まれる」

 

「でも、私は強くならなきゃ」

 

「戦争の中で力を求め暗黒面に魅入られるジェダイも増えている。まず“力”を制する術を学びなさい。力に翻弄されず、意志で剣を振るう道がある」

 

そう言い残し、マスターは去っていった。リナは拳を握ったまま動けなかった。

 

#

 

その日の午後。格納庫で整備中のクローン戦闘機を眺めていたリナに、一人の男が近づいてきた。

 

「ジュヨーを学びたいってドローリグ師に言ったと聞いた」

 

黒い義手にローブをひるがえし、彼は現れた。——アナキン・スカイウォーカー。

 

「……見てたんですか」

 

「まあな。だが、お前にはまだジュヨーは早すぎる。僕も断られたよ。……けど、僕の型なら、お前にも合うかもしれない」

 

「あなたの型?」

 

アナキンはセーバーを抜き、何もない空間にひと太刀を刻んだ。

その動きはまるで波のように力強く、刃の雨のように精確だった。

 

「ド=ジェムソ(フォームVの亜流)。守るだけじゃ足りない。反撃する意志、それがこの型だ」

 

#

 

翌日から、リナの特訓が始まった。

アナキンの指導は荒っぽく、容赦がなかった。

 

「守るな。力を止めるな。受けて、返せ。フォースは“押し返す”ためにあるんだ」

 

「でも、それって……怒りなのでは」

 

「違う、これは意志の力だ。怒りに任せて振るうな。守るために、斬るんだ」

 

ソレスが防御と最小限の回避から反撃に転じる技術なのに対、シエンは攻性のブラスター反射と剣戟による体幹崩しを得意とする。だが、その亜流ドジェム=ソは相手のセーバーを受け流し、即座の反撃を行うことで決闘の主導権を握ることに秀でる。

関節の可動を駆使して腕からライトセーバーにかけて鞭をしならせるような軌道を描かせ、より強力かつ予測し辛い連続攻撃を行う。

 

相手に背を向けた状態からライトセーバーを背後に回してそのまま回転する剣舞を叩き込む動きはアナキンのド=ジェムソの必殺技だった。

 

メイスのヴァーパッドに酷似したその動きをリナはアナキンの猛撃を捌きながら剣の流れを学んでいった。

 

 

最初は義手の腕力に押し切られ、吹き飛ばされ、何度も床に転がったリナだったが……

ある日、彼女はついに、アナキンの攻撃を受け止め、ライトセーバーを背後に回してそのまま回転する剣舞を真似することに成功した。

 

#

 

整備室。アナキンが義手の点検を行っている。

 

リナが静かに近づいた。

 

「ありがとうございます、スカイウォーカー将軍。私、やっと貴方の剣が分かりました」

 

アナキンは無言でうなずいた。

 

だが背中には、どこか痛みのような影が浮かんでいた。

 

(この人は……もしかしたら、誰よりも戦いに苦しんでいるのかもしれない)

 

リナはその背中に、まだ知らぬ未来の闇を感じながらも、立ち去っていく。

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