ソロモンの失陥、そしてドズルの戦死は、ジオン軍に大きな動揺を与えた。
それを払拭すべく立案されたのが、ルナツー攻略作戦だった。
その決戦に備えて、多くのジオン艦艇が補給、整備のためにグラナダを訪れていた。
その中には改修されたホワイトベース、ソドンの姿もあった。オデッサ作戦を終えたソドンが宇宙に上がってきたのだ。
ソドンはジオニック支社の工廠へ送られたが、ガンダムとルドベキアは
「ガンダムのことだが、どうも遅くてな」
「それは反応が、でしょうか?」
「それもあるが、単純にスピードの問題だ。一度ジラソーレの加速を味わってしまうとな……」
いや、あんなほぼMAなMSの加速を求められても困る。MSと名乗ってはいるが、実質MAだからな、アレ。まあやれるだけのことはやるが。
「了解しました。ではこの機会に、徹底的に整備、改修しておきましょう」
「頼む」
アクトザクが完成して、マグネット・コーティングの技術は確立された。
俺のうろ覚えの知識を形にしてくれたのだから、本社にはレム少佐を筆頭に優秀な技術者が揃っている。
この機会にガンダムにも施しておこう。ついでだからルドベキアにも施しておくか。
改修にはスタッフ総出でかかり、なんとか3日で仕上げた。
「頭部バルカンの増設。シールドは大型化して対ビームコーティングを施しました。脚部にはブースターユニットを取り付け、機動力と加速力をアップしました。爪先部分からはビームエッジが出力されるため、蹴りと連動した斬撃も可能です。背部のジェネレーターは
技術者たちが張り切りすぎて、積めるものは全部積むというトッピング全部乗せラーメンみたいになってしまった。まだ続きがあるぞ。
「脇下に2基のグレネード・ランチャーが内蔵されています。掌にはビーム砲が仕込まれていて、掌部を飛ばして有線式ビットとして使用することも可能です」
これは簡単に言うとデスティニーガンダムのパルマフィオキーナだ。戦場では一瞬の遅れが死を招くこともある。ビームサーベルを抜くよりも早く攻撃に移れる。
理論上だが、相手のビームサーベルを受けることもできる。
「エネルギーが尽きた時のために、腰部に
「……ふむ」
選択肢が多いということは、必ずしも良いこととは限らない。咄嗟の時にどれを使っていいか迷ってしまうからだ。選択肢が多くても、それを判断する脳はひとつしかないのだから当然だな。
しかしこれは、凡人の話だ。エースパイロットならば、普通に使いこなせる。
あとアルファ・サイコミュという
「ルドベキアも多少変わっているようですが?」
指で髭を撫でながら、シャリア・ブルが訊いてくる。彼はシャアの部下になったようだ。
「肩部キャノンを有線式のサイコミュ端末に変更しました。射出せずに固定砲台として使用することもできるので、使用感はそれほど変わりないと思います」
「……なるほど。了解しました」
シャリア・ブルがシャアの方を見て、シャアは小さくうなずいた。ふたりの間にあるのは、友情か絆か、あるいはニュータイプ同士の感応か。
ルナツー攻略戦には、研究所からも戦力を出すことになった。
だがソドンは、直前になって待機命令が下ったらしい。指揮官がマ・クベだから、なにかあったのかもしれない。シャアとマ・クベって、なんか仲悪そうだし。
噂ではオデッサ作戦の時にひと悶着あったらしいが、あくまで噂だ。
果たしてジオンは勝てるのだろうか? 正直、戦争が長期化した時点でジオンの勝利は難しいと思っていた。
なにせ国力差が30:1だ。時間が経てば経つほどジリ貧になっていく。
短期決戦こそが、唯一勝利の道だと思っていたが……。
国力差もそうだが、まとまりがないってのが致命的だと思う。連邦も連邦で派閥くらいはあると思うが、ザビ家よりはマシだと思うぞ。
ギレンとキシリアの対立は公然の秘密みたいになっている。
戦後に権力闘争が引き起こされるのは必至と誰もが考えているからな。それでも秩序が保たれているのは、ギレンの手腕か、あるいはデギンの存在か。
まあ、政治的なことは俺にはわからん。
「さて、どうなるか」
ルナツーへと向かうマ・クベ艦隊を見送りながら、俺は独りごちた。