宇宙世紀0079年1月3日。ジオン公国が地球連邦に対して宣戦を布告した。
キシリア軍は月のグラナダを制圧。
ドズル軍は連邦宇宙軍艦隊を撃破後、サイド2を攻撃。
そしてサイド2の首都があるコロニー、アイランド・イフィッシュに核パルスエンジンを取り付け、ジャブローへ向けて落下させた。
それが直撃すれば戦争は終わっていただろう。だがコロニーは落下中に3つに割れ、ジャブローに落ちることはなかった。
次の戦いはサイド5、ルウムへと移る。
「MS全機、整備完了いたしました」
「ごくろう」
その声にはたしかな威厳を感じさせた。ドズル・ザビ中将は宇宙攻撃軍の司令官である。豪胆で情に厚く、部下からの信頼も厚い。
身長は2mを超え、こうして相対しているとかなりの威圧感がある。
ギレンはレム少佐と俺を軍に招いた後は、MS開発計画をドズルに任せた。それ以降、俺たちはずっとドズル配下のままだ。
いつもなら二言三言、気遣うような言葉があるのだが、後に続く言葉がないので、作戦間近のためあまり余裕がないのかもしれない。
俺は敬礼して退室しようとしたが、呼び止められて振り返った。
「貴様はコロニー落とし……いや、
「
「毒殺などと言うな。なんだか卑劣な手段のように聞こえる」
ようにというか、実際卑劣だとは思うが。というか、なんで俺にそんなことを聞くのだろう。たしかにドズルとの付き合いも長い。MS開発の初期から関わっているからな。ザビ家の人間の中では最も顔を合わせている。ドズルの性格もあって、気安い関係と言えるのかもしれない。
とはいえ階級差もあるし、そもそもザビ家の人間に軽口をきけるはずもないが。
「
「ああ。やつらは、徹底抗戦の構えだった」
スペースノイドになって、初めてスペースノイドの気持ちがわかった。
無理矢理地球から追い出され、3世代にわたる借金を背負わされ、給料の大半は借金と税金で持っていかれる。自治権もなく、参政権もないから、現状を変えることはできない。まるで奴隷だ。いや、まるでじゃない。スペースノイドはアースノイドの奴隷なのだ。
だが奴隷も虐げられ続ければ、主を刺す。一年戦争の本質はそこだ。
「ならば、仕方ありません。最後の1
「う、うむ。そうだな」
ドズルの性格からして、降伏すれば全員を助けたと思う。だがしなかった。彼らは奴隷であることを受け入れたのだ。
サイド3は、経済的には豊かな方だった。自給自足が可能で、連邦政府に頼らずとも生活ができるようになっていた。だからこそ独立したのだが、連邦についたサイドは連邦の援助がなければ立ち行かなかったという理由もある。なにより、ジオンが勝つと信じられなかったのだ。
ジオンに加担して、ジオンが負ければ、当然これまで以上に苦しい生活になる。それを恐れた。
「国力差は如何ともしがたいのです。30対1です。いかにMSという有利があれど、時をかければ覆されます。ジオンが勝つ方法は超短期決戦、それしかないと私は考えます」
「うむ。貴様の言う通りだ。ギレン兄もその考えだった!」
ドズルの鼻息が荒くなる。賛同されたことが嬉しいのだろう。ハッテ攻略戦を指揮したドズルは、作戦のすべてを包み隠さず部下に説明した。
毒ガス注入も、コロニー落としも、兵たちはすべて理解した上で作業に従事した。
何百万人ものユダヤ人を殺したアイヒマンは、裁判で堂々と「命令に従っただけ」と言ったし、兵士なんてそんなモンだと思う。軍なんて強烈な縦社会だからな。それに、この作戦に一番苦しんでいるのがドズルだということも察していたのかもしれない。それでも自分の意志を曲げられなかったランバ・ラルは、軍令に背いて予備役へと回された。
やっぱジオンって軍人というよりは武人気質なんだよな。国防軍(国軍の前身)ができたのが、0058年だから、軍としての歴史が20年ほどしかないのだ。
連邦軍ほど洗練されてないのは当たり前だよな。まああっちはあっちで長く続きすぎて腐敗しているようだが。
ともあれ、ジャブローへのコロニー落としは失敗し、戦局は次の段階、ルウムへと移っていく。
◇
ルウムの戦いは、ジオンの勝利に終わった。俺の知っている通り、黒い三連星がレビルを捕縛し、ギレンは捕虜となったレビルの姿を地球圏全域に放送した。
が、レビルは連邦の特殊部隊によって奪還され、ジオンの内情を暴露する演説を行い、「ジオンに兵なし」と戦争の続行を促した。
ハッテ攻略戦、ルウム戦役、レビルの捕縛、そして脱走。
激動の1ヵ月が過ぎ、2月に入った。ジオン公国軍は地球方面軍の設立を公表し、地球侵攻作戦が発表された。
その間、俺はひたすらルウム戦役の戦闘データを洗い出していた。そしてようやく資料としてまとめることができた。
そのデータと共に、俺はドズルにニュータイプ研究所の設立を申請した。
サクサクいきます。