ソドンとは強襲揚陸艦である。
単独で大気圏突入・離脱が可能であり、文字通り敵地に強襲するための艦だ。しかも降下予測地点は近隣だったため、革命軍にも緊張が走った。
だがソドンは律儀に「戦闘の意思はない」と通信を送ってきたらしい。
ソドンはヒマラヤの谷底に沈んだナニカを引き上げた後、事前の取り決め通りあっさりと去って行った。
諜報員が引き上げたナニカの撮影に成功したのだが、かなり解像度が低かった。
だから断言はできないが……これエルメスじゃね?
一応、開発案もあり、設計もしていたのだが、様々な理由があって開発中止となった。そのデータも消去したはずなんだが、どこから漏れたのか。
まあ決まってるわな。うちにはキシリアのスパイが潜り込んでいたのだ。たぶん、フラナガン博士もその一人だろう。そのデータがキシリアの研究機関に流れ、建造された。
しかしパイロットは誰だ? ララァはずっと地球にいたみたいだから違う。ブラウ・ブロのように複数人で運用した可能性もあるが……いや、そうだ。クスコ・アルだ。
クスコ・アルを見つけ、パイロットとした。そして地球近傍でのテスト中、あるいは戦闘によって地球に落とされた。大気圏突入に機体はギリギリ耐えられても、中身はそうはいかない。パイロットは蒸し焼きになる。
だがなぜ今になって引き上げたんだ? 当時は最新鋭機だったとしても、今では5年落ちの機体だ。サイコミュ搭載機だから使えないことはないが、大気圏を抜けてきて谷底まで落下したのだ。機体が残っていたことが奇跡だろう。
いや、ホントに奇跡だ。大気圏を抜けてヒマラヤの谷底まで転がり落ちたのに原型を維持してるって、相当頑丈だぞ。
まあそんなこと気にしても仕方ないか。
とりあえずその場は解散となった。
それからしばらくして、今度は
◇
書類の束を投げ出すようにテーブルへ放ると、ブレックス准将はため息とともに怒りを吐き出した。
「なにが地球環境の改善だ! なにが光増幅照射装置だ! イオマグヌッソだと? あんな野蛮な兵器、誰が考えたというのだ!」
いや、ギレンしかいないでしょ。あんなトンデモ兵器思いつくのはギレン以外にいないでしょ。ソーラ・システムに対する意趣返しか?
裏でこんなものを造っていたとは、やはり恐ろしい男だな、ギレン・ザビは。
「こんな方法は間違っている! 人類は自発的に宇宙へ上がってこそニュータイプになりえるのだ! こんなやり方は、銃で脅して移民させた旧連邦政府と同じではないか!」
太陽光バージョンのカイラスギリーのようなものなのかな。半世紀以上早い登場だけども。なんにせよ恐怖政治で地球を支配するのはダメだろ。
下手すればジオンvs世界になるぞ。まとまってない連邦政府がまとまったらもう勝てないでしょ。ただでさえギレンとキシリアで内ゲバやってるのに。
「准将、落ち着いてください」
ローゼが紅茶の入ったティーカップを手渡す。准将は一口嚥下すると、カップを置いてソファに身を沈めた。
「式典には、連邦政府の方々は参加しないと報じられていましたが……」
「ああ。危機感の薄い連中でも、あれが脅しの道具だと気づいたらしい。ジャブローから逃げ出す者もいたよ」
マリオンの呟きに、准将は失笑するように答えた。
「あれは、地球のどこでも狙えるのだ。どこに逃げるというのだろうね」
問題は、本当にあれが脅しの道具かということだ。ギレンなら、本当に撃ちそうな気もする。1発だけなら、誤射と言い張るかもしれない。
その1発は、絶大な効果をもたらすだろう。
「これは、地球の危機だよ」
唇の前で手を組むと、准将は神妙に告げた。
「強硬派の連中と手を組むのはどうですか?」
「……ジャミトフか」
ああ、やっぱりあっちの首魁はジャミトフなのね。
「手を取り合うことはできんが、共闘はできるかもしれん。あくまで、たまたま作戦時期が同じだった、という
面倒くさいな。まあ色々あるのだろう。
「とりあえず、スタリオンをこちらに回す。ペガサス級の一隻だ。アレの裏側から宇宙に上がり、強襲するということになるだろう」
「決行の時期はどうしましょう?」
「……やはり、式典の日になるだろうな」
少し考えた後、准将は告げた。
◇
それから式典の日まで、革命軍は準備に奔走した。
なにせ戦力差は圧倒的だ。確認されただけでも、向こうにはビグ・ザムが4機配備されている。ソドンの姿もあった。ルドベキアの姿も確認できた。
ルドベキアも、戦後かなり改修されているようだ。目立ったところでは、肩部キャノンが外されていた。サイコミュ兵装はビットのみとしたのだろう。キャノンはビームライフルで代用できるからな。
パイロットは、たぶんシャリア・ブルだろう。フラナガンスクールで育成された、新しいニュータイプ兵士の可能性もあるが。
とりあえず、できるだけのことはやった。支援機は突貫で仕上げたから色々と武装は足りてないし、本来の性能に届かなかったが、とりあえず及第点は出してもいい出来なのでなんとかなるだろう。あとは決行の日を待つだけとなったが、式典の前日、事態が動いた。
宇宙で爆発の光が確認されたのだ。
焦った連邦軍が攻撃を仕掛けたのだろうか。それとも強硬派か?
静観か参戦か、しばらくすれば、准将から指示が下るだろう。
その時、不思議なことが起こった。
――la la
これはあの時、シャアがゼクノヴァを起こした時に聞こえた"声"。
だがあの時とは、少し違う。どこか、叫んでいるような感じがする。
「なんだあれはっ!?」
「おいおい、嘘だろ……」
「蜃気楼ってやつじゃねぇのか?」
一緒に空を眺めていたスタッフたちがざわめき出す。
視線を宇宙に戻すと、そこにはありえない物が映っていた。
「ア・バオア・クーだとっ!?」
地球からア・バオア・クーが視認できるわけがない。ホログラムか? いや、そんなことをする意味はない。一体、宇宙でなにが起こっているんだ?
「――ッ!?」
"声"が絶叫に変わった。
そして、宇宙が光った。その光が収まると、そこにア・バオア・クーの姿はなかった。
いよいよクライマックスです。