黒鮫が放った言葉に少しばかりざわつきが生まれるDクラス、茶柱先生が少し声を上げる
「お前たち落ち着け…どう考えても構わんが入学式には遅れるなよ。」
そう言って茶柱先生は教室から去ってしまった。自由に過ごせる時間になったので一部の生徒をのぞいて大半が黒鮫の方を向く、そんな雰囲気の中黒鮫は何処吹く風と立ち上がり教室を出ようとしていた。
「黒鮫君少し待ってほしい!!」
教室の扉の前まで行って立ち止まる。黒鮫を止めたのは爽やかな男子生徒だった。
「なんだ?」
「先程の発言はいったい……」
「君は誰だ?」
「ごめんね、僕は平田洋介だよ。」
「そうか…改めて名乗ろう黒鮫真人だ。」
自己紹介を忘れていたことに謝罪して互いに名乗りあう。平田という少年名乗ってもらったことに感謝して話を戻す。
「さっきの茶柱先生への投げかけた言葉はいったい。」
「何が気になるんだ?」
「それはいろいろと…」
「そうか…」
少しばかり考えた後に黒鮫は教卓に向かって歩き出した。歩いている途中、黒鮫は同じクラスで過ごす者たちを見た。怯えながら見るもの、値踏みするように見るもの、そして黒鮫は教卓にたった。
「一人一問だ。まずは平田,お前からだ。そして聞きたいことは端的にな。」
その言葉にいろいろと聞きたかったことがあっただろうなとわかるくらい考え始め、そして口を開いた。
「言いたいことはいろいろとあるけど君はまるで先生を糾弾しているようにも感じた…先生は嘘でもついていたのかい?」
「嘘はついてない。ただ言っていないことが多すぎるだけだ。」
「例えば言ってないことって何よ。」
平田に続くようにポニーテールの女の子が手を挙げながら聞いてくる。そしてポニーテールの子を皮切りに男子女子関わらず雪崩のように質問が来る。
「来月ポイントがいくら配布されるとかな。」
「そんなの10万ポイントじゃないの?」
「毎月配布されるとしか言っていなかったぞ。つまりいくらもらえるか定まっていないのだろうな。」
「ら、来月だって10万もらえるかもしれないだろ?」
「ならば、減らされるかもしれない、最悪もらえないかもしれない…可能性の話をするのならば前向きな事象も後ろ向きな事象も考えるべきだろ?」
「もらえないなんてあり得るでござるか?」
「あり得ないことはないだろう…「あなたに0ppt配布されました」こう言い換え端末に0の配布履歴があれば配布されたという事実は残る。」
「じゃあ何が原因で減らされるというんだよ?」
「それこそいろいろだろうな。この教室にもカメラがある。ならばこのクラスにいる奴ら全員の行動を常に観察できるだろうからな。」
「考え過ぎなんじゃないの?」
「そう思うのなら認識を改めたほうがいいここはまともなところじゃないぞ。」
「出まかせ言っているんじゃねえか?」
「そう思うなら教師や上級生に聞いてみたらいい。」
「いったいなんなんだよ?かっこつけているつもりか?俺はオレ達とは違うというのか?」
「?かっこつけているつもりはない。そもそも他人と自分は違って当たり前だろう。」
「なんかいけ好かねえんだよお前。左手だけそんな手袋しやがって。」
質問が少しずつ野次に変わってきている中一人の生徒が黒鮫の装備している革手袋を言及してきた。黒鮫の目線は他の生徒から自身の左手に映る。
「これか……その昔大けがをしてな…傷跡は今も残っている。もし好奇心に駆られみたいのなら見せてやる……そのかわり、あまりの醜悪なものに気分を害し、今朝食べてきたであろう物をこの場で戻すことになっても責任はとれないがな……それでもみたいか?」
「………」
黒鮫の圧にみんな何も言えなくなる。中には怖がるもの、首を横に振るもの、唾を飲み込むもの、様々だ。黒鮫はこの状況をどうしようかと考えていたら、机に脚を乗せていた金髪の男子生徒が脚を降ろし立ち上がった。
「ふむ、先程から聞いていたが実に耐えがたい時間だねぇ私は一人先に抜けさせてもらうとするよ。」
「そうか、まあ去る前に名乗ることくらいはしておいた方がいいんじゃないか?」
「それもそうだねぇ……私は高円寺六助、将来日本を担うもの名前を覚えておくといいさレディ達…そしてミスターハンター。」
女子だけに対してだけかと思われた高円寺の自己紹介、最後のハンターと言った時彼は黒鮫を見ていた。
「やはり御曹司というものはある程度事情は知っているものだな。」
「無論だとも何かあれば私のボディガードに雇いたいくらいだよ。」
「そうか、同級生の馴染みで安くしてやるよ。」
「必要はないねぇ、報酬は正当に受け取りたまえ。」
「ふっそうか…まあ、そんな時が来ないことを祈っているよ。」
「ふっではアデュー。」
2人だけの訳知りな会話が終わり高円寺が教室から去った…まだ静寂は続いている。
「さて、これ以上はないようだな…もし俺の言葉が気になるのなら自らの脚で行動すればいい。もし妄言だと嘲笑するのならばそれはそれで構わない。来月には良くも悪くも行動の結果が貰えるポイントに反映されるのだからな。」
その言葉を最後に黒鮫は教室から去ろうとする誰も喋ることが出来ないと思われたが
「待って欲しい!!」
やはりと言うべきかここでまた声を上げたのは平田であった。
「なんだ?」
「君はいったい何者なんだい?」
「何者であってもこの学校の学生で君の同級生であることには変わりないだろ。それで満足しないか?」
「そ、そうかも知れないけど…」
「それにあまり踏み込み過ぎるのもよろしくないぞ。」
「っそ、それは…そうだね…ごめんね。」
「別に気にしてはいない…」
「最後に…彼、高円寺君とはどこかで会ったのかい?」
「いや?今日が初対面だが?」
「そ、そうなんだね。」
「じゃあな、俺がいると自己紹介とかやりづらいだろう?入学式で合流させてもらうよ。」
「あっうん。」
そのやり取りを最後に黒鮫は教室から出るのであった。
───────────────────────
(さて、何処で時間を潰すべきか……)
教室からでた黒鮫は教室から離れ歩きながら思考する。入学式が控えている以上、あまり探索は出来ない。特に目的もないままふらふらしていたら廊下の窓から外を見ている男子生徒を見つけた。
彼に何かあったのか死んだ魚の目をしている。もはや景色を見ているのかただそこに立っているのかわからない状態である。
黒鮫が話しかけようとし一歩近づいたその生徒の周りに彼を慰めるかのように人型の影が複数立っているように見えた。しかし黒鮫が瞬きをしたらその影は見えなくなってしまった。その刹那に何かが通じたのかわからないが、二人は互いが狩人という同業者であることに気づいたのだった。
「死ぬのか?」
「死にませんよ。」
窓からこちらに視線を写した少年。紫色の瞳が黒鮫を見ていた。
「初めまして同業者さん。Aクラスの識崎空です。」
「Dクラスの黒鮫真人だ。」
「黒鮫…そうですか、あなたが……」
「俺のことを知っているのか?」
「えぇ、あの『樹』の一番弟子だとか。」
「何年前の話をしているんだ。俺が一番弟子だった時期はもはや過去だぞ。」
「確か、早急に育て上げる必要がある存在を一番弟子にしているとかでしたか?」
「そういう事情も知っているんだな…『鼠の情報屋』から聞いたのか?」
「まあそんな所です…どうです話がてら会場に向かうというのは。」
「あぁいいぜ。」
訳アリな会話を中断させて互いに歩き出した。口を開いたの黒鮫だった。
「なあ、Aクラスってどんな感じなんだ。」
「そうですねぇ……贔屓と非行と凡人…そういう感じですね。」
「なんだそれ、どこかのアイドルが歌った曲みたいだな。」
だがその言葉だけで黒鮫もAクラスもある意味酷いところなんだろうと推測できた。
「そういうDクラスはどうなんですか?」
「う~ん……一言で言うと動物園かな。」
「なにそれすごく楽しそう。」
識崎からの質問に少しの思考を挟み解答した黒鮫。皮肉か本心か楽しそうと言った識崎の心を知るすべは黒鮫にないのであった。
「CとBには女子か。」
「そうなりますね。男女2名ずつが毎年ここに入ってくるわけですし。」
「今日の内に会いたいものだな。」
「早めに連絡先を入手して連携はとった方がいいですからね。」
「そうだな…ん?」
黒鮫はポケットに入れていた端末が震えたのを感じ、手に取るとそこには茶柱先生からで入学式が終わり次第、職員室に来るようにとの連絡が入っていた。
「どうしました?」
「用事が出来た。」
「そうですか…バレましたか?」
「いや、いろいろとこの学校のことをぶちまけたからなそれに関しての口止めだろうさ。」
「なるほど…いったい何を言ったのです?」
「それはな………」
黒鮫は語った。教室に入ってから教室を出るまでの間に起こった出来事を識崎はただ静かに聞いていた。
「なるほど…どれほどの額が貰えるのでしょうね。」
「それこそ交渉しだいじゃないか?」
「では聞き方をかえましょう…いくら得るつもりです?」
「そうだな…時価にしてもらえるようにしてみるさ。」
「……なるほど、それが出来るなら僕も答え合わせに行った方がよさそうですね。」
「あぁそうだな…連絡先をくれ、ぼかして報告をさせてもらう。」
「わかりました。」
こうして二人の狩人は互いの連絡先を交換し、入学式の会場にたどり着いたのであった。
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「失礼します。」
「来たか。」
入学式が終わってすぐ黒鮫は職員室に向かいたどり着いた。茶柱先生が前もって何か言っていたのか職員室にいる教師の何名かはこちらを観察するかのように見ていた。
「それでご用向きは?」
「あぁ、まずはついて来てくれ。」
用件を話されることはなく茶柱先生は歩き出した。黒鮫はここで帰ろうかと考えたが、後々めんどくさくなるだろうと思いついていくことになった。
しばらく歩いたのちに見えてきたのは応接室という文字が書かれている扉であった。黒鮫は中に何名かいることを直感で感じ取った。
「3,いや4名いますね……俺たちの学年の教師がそろい踏みということですか。」
「少しばかり君が恐ろしく感じるな……そうだ、一学年の他クラスの教師が中にいてそしてもう一人…わかるか?」
「……学年主任とか考えましたが、この場合いるとしたら俺たちの事情聞きたがりな理事長とかじゃないですか?」
「君は本当に……」
茶柱先生の反応的に正解を言い当てたのだろう。茶柱先生は冷や汗をかいていた。そして深呼吸をして応接室の扉にノックをした。
「茶柱です。連れてきました。」
「どうぞ入って来て下さい。」
「失礼します。」
中に入ると黒鮫の予想通り他クラスの教師3名と入学式でも見かけた理事長が座っていた。
「茶柱先生はこちらに、どうぞ黒鮫君もこちらに座ってください。」
「はい、失礼します。」
「……」
「黒鮫君?」
理事長に座るように促されたが黒鮫は座ることなく入口付近で静かに立ち尽くしている。
「ご用向きは何ですか?」
「黒鮫君、まずはそちらに着席しましょうか。」
「坂上先生大丈夫ですよ。」
立ったままの質問、座っている人を見下すような構図になってしまっているので坂上先生と呼ばれた人は冷静に注意をしたが理事長がそれを止めた。
そして咳ばらいをして理事長は話し始めた。
「入学式ぶりですが改めて挨拶をさせてもらうとするよ。僕はここの理事長の
「黒鮫真人。どれほど知っているかは知らないがまともじゃねえところからやってきた。」
自己紹介をされた以上は同じく自己紹介をするという最低限の礼節をもって対応する。次に口を開いたのは黒鮫のほうだった。
「それでご用向きは何ですか?教室で茶柱先生相手に言ってのけたことについてですか?それとも俺が所属しているところの情報についてですか?」
「僕は前者についての答え合わせとそれについて交渉のつもりだよ。」
「ならばこの場にはあなたと茶柱先生だけでよかったはずだ。まさか何かこちらを探れるとでも思っているわけではあるまいな?」
「僕はそんなつもりはないよ。」
「だが残りの腹の中なんてわかるわけでもない。何かを聞きたがっている雰囲気をまとっているやつしかいないぞ。」
「そう…見えるかい?」
「そうとしか見えないが?」
話が進みそうもない状況の中、先ほどの坂上先生と呼ばれた男性が手を挙げた。
「黒鮫君、私はCクラス担任の
「……誰がその狩人とかは聞いてないのか?」
「聞いておりません。狩人にも事情があるということで私もそこまで踏み込みません。」
「……そうですか。なぜ今その話をしたのです?」
「理事長や担任がいうよりも私みたいな別クラスの担任という立場で言えば信憑性が高いと思いましてね。」
「……では何故あなたはここにいるのです。」
「……たとえ他の生徒と違い何かしらの使命、目的があったとしても私たちにとってはクラスは違えど導くべき生徒の内の一人である。それを伝えたくて。」
「………」
長い沈黙の後、黒鮫は椅子に座った。
「いいでしょうあなたの言葉を信じることにします。」
「ありがとうございます。では理事長、あとはお願いします。」
「それでは黒鮫君、君はどこまで気づいているか…なんて聞くのは愚問かな?」
「そうですね……Aクラスのみの特典を争うようにできているのがこの学校でしょう?」
「……いつ気付いたのですか?」
「まず気づく奴は外でやっている宣伝で気づくんじゃないですかね。」
「そうですか……こちらをお読みください。」
そう言って理事長が取り出したのは口止めの契約書である。貰えるポイントは50万と書かれている。黒鮫にとってはここからが本番である。
「……質問なんだが、権利という概念も買えるのだろう?」
「そうだね。ポイントでなんでも購入できますからね。」
「ならば口止め料は一度だけ権利を無料で購入できるようにしてもらいたいな。」
黒鮫の発言に驚愕する教師陣。
「く、黒鮫、それは……」
「別にクラスの移籍の権利とかが欲しいわけじゃない…というかそんなものいらないからな。」
「そうですか……では黒鮫君はどんな権利が欲しいのですか?」
「そうだな…一番に思い浮かぶはこれから先、行われるであろうこの学校ならではの試験についての情報だな。それを開催前に知れるならそれがいい。」
「それを知ってどうするの?君のいうクラスの移籍のほうがいいんじゃないの」
「開催場所にもよるがそれによって生徒として狩人としての立ち回りを考えることが出来るからな。それに狩人がクラスに一人いるという不文律があるから移籍なんかしないな。」
「狩人としての立ち回りとはなんだ?具体的にどのようなことをする気だ?」
「こちらの事情をある程度知っているならばわかるはずだ。あえてここで口に出す必要はない。」
各クラスの教師の反応は様々だ。自身の担任である茶柱先生はただただ驚いているばかりであり、Cクラスの坂上先生は冷静に疑問を解消するために問いかけ、もう一人の女性の教師はこちらを探ろうという意図で問いかけ、最後の一人は狩人とは何かを深くしろうとといかけたが黒鮫は流した。
そして沈黙していた理事長が口を開いた。
「わかりました。一回だけ特別試験をの情報を先行して取得できる権利を口止め料としてさせていただきましょう。明日には契約書を作っておきます。」
「わかりました。」
お開きな雰囲気になったので黒鮫は立ち上がり足早に応接室から去ろうとする。
「最後に黒鮫君、君に一つ聞いてみたいのですが。」
「なんでしょう?」
「あなたが守りたいものは何ですか?」
理事長の質問に扉の前で立ち止まり考え始める。教師陣は黒鮫の言葉を待ち続ける。そして黒鮫は振り返りこう答えた。
「牙なき者の安寧。」
ただ一言、そう告げると黒鮫は応接室から出て行ったのである。残された教師たちは少しばかり脱力した状態になる。
「いやはや、やはり凄まじいものですね。あれほどの重圧、15の少年が放てるとは思えないものです。茶柱先生、くれぐれも向き合い方と踏み込む領域を見誤らないように。」
「はい。」
坂上先生は、茶柱先生に一言だけの注意をする。そして茶柱先生はそれがどういう意味か追及することなくただその言葉を気をつけるべきルールとして自身に刻みこみ返事をした。
「坂上先生は彼をどう見ているのですか?」
「そうですねぇ……あくまで私の見解ですが、彼は自身の行動を阻まれることを嫌うと思います。意のままに動かしたいがために退学といった脅迫をしようものならおそらく彼はこの学校に手痛い反撃を与えて来るでしょうね。」
Aクラスの担任である。真嶋先生は坂上先生に彼に対しての評価を聞いた。4人の教師の中で一番長く教師をやっているのは坂上先生であるから年長者として他の3人よりも狩人のあり方に詳しいだろうととしての問いかけであった。
そして坂上先生の発言した学校に対しての反撃という言葉に他の先生は唾を飲み込んだ。
「あの子Aクラスの特典がいらないなんて言ってましたけど本当に興味ないんでしょうか?」
「他の子はわかりませんが少なくとも黒鮫君は不要と判断したのでしょうね…星之宮先生、少なくとも自分の判断で交渉しようとしないでくださいね。」
「はーいわかっていますよ。」
Bクラスの担任である星之宮先生は彼の発言に少しばかり疑いを持っていたが坂上先生に忠告をされる、ただそれでも何処吹く風な雰囲気をまとっていたので坂上先生は少々不安を抱えていた。
「皆さん、狩人のことは基本的に気にしない方向でお願いします。もしも彼らのことを知りたいのなら彼ら自身が口を開くまで待っていてください。」
「「「「はい」」」」
理事長の発言により教師陣も解散となった。各々の想いをもって教師たちは応接室から出るのであった。
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「識崎です。」
「黒鮫だ。」
「ええわかっていますよ。連絡先は今君しかないんですから…それでどうしました?」
「S7、A△、B×、C〇、D?だ。」
「……そうですか。」
「じゃあな。」
「はい。」
応接室から出てきた黒鮫はすぐさま識崎に報告した。盗聴対策の為に狩人の暗号的やり取りに聞こえるようにとどめた。
「さて……少しばかりふらつくか。」
寮に行く前に同じ学年の狩人に出会いたい黒鮫は、学校の外を探索することにした。入学初日ということもあり、同級生は浮かれている雰囲気が見て取れる。
そんななか歩いていると目の前に女子一人が男子三人に囲まれている状況に遭遇した。
「なぁなぁ、新入生だろ?俺たちが案内してやるよ。」
「う~ん遠慮しようかな。」
「遠慮すんなって、俺たちがいろいろといいところを教えてやるから。」
「私は自分のペースで知っていきたいんだけどね…」
「いいところは早めに知っておくに限るって。」
(これは所謂ナンパというやつか……こんなところでも発生するのだな…さて……おそらく女子は他クラスの同学年……助けるべきか?)
黒鮫が少しばかり思案していると状況が変わったようで
「なあ一緒に行こうって。」
上級生の一人が女子の手を掴んだ瞬間に空気が冷える感覚に陥った。
「ねえ…強引な人は嫌われるよ?」
「「「ひっ!!?」」」
ナンパしていた上級生たちはまるで刃を首筋にあてられたような恐怖を感じ取り後ずさりする。
「もうこんなことしちゃだめだよ…もししたら……どうなるだろうね?」
「「「も、申し訳ございませんでしたあああああああああ」」」
上級生は脱兎のごとく逃げ出した。黒鮫は俺がいなくてもよかったなと思い一応女子に声をかけることにした。
「助けはいらなかったようだな。」
「う~ん君が助けても良かったんだよ♪」
「なぜ?」
「だって君は同業者でしょ?」
女子の発言に黒鮫は少しばかり表情が硬くなる。なぜバレたのだろうと思案する。確かに先程の女子の殺意は狩人のそれであるが黒鮫はその殺意を隠し、いざという時に上級生に向けて放つつもりでいたが結局使わずじまいだったからバレる道理はないと思っていたのだ。
「あはは、君同業者ならとても分かりやすいよ。『骸樹一門』。」
そう言いながら女子はこちらに振り向いた。茶髪のロングストレート、きれいな青色の瞳15歳にしては大きく実った胸、引き締まった腰回り、そんな彼女の見た目を見てこれは声をかけたくなるのかもなと思う黒鮫であった。
「その言い方……まさか『銀髪剣士』のところのやつか。」
「う~ん『銀』もそうだけど『白』にもお世話になったんだよ。」
「わかりやすく剣士の出だな……それで俺はそんなにわかりやすいか?」
「うんとっても♪オーラって言うのかなめちゃくちゃ漏れ出ているよ。」
「そうか……そうか。」
黒鮫としては上手く隠せているつもりでいた。しかし目の前の女子から否定の言葉がきて少々落ち込む。
「それに…君はとんでもない力を持っているんだね…『心臓』からヤバい気配を感じるよ。」
「……そうか,そういう君も厄介なものを持っているな…『眼』の奥から邪悪なものを感じる。」
「へぇ……勘が鋭いんだね……」
「お互いにな……」
互いに隠していることを少しばかり暴かれたので一触即発な雰囲気になる。ただ黒鮫は一呼吸して手を前にだした。
「やめよう、こんなことをしたかったわけじゃない。」
「そうだね……ごめんね。」
「俺は気にしていない、こちらも申し訳なかったな。」
「ううん、気にしなくていいよ。」
互いに謝罪することで一触即発の空気を打ち消した。そして改めて自己紹介をする。
「改めてDクラスの黒鮫真人だ。」
「Bクラスの永鴇麗奈だよ。よろしくね♪」
あとはCクラスだけかと黒鮫は考え、少しばかり雑談をする。
「黒鮫君は他の狩人に出会ったの?」
「Aクラスの奴には会ったな。あとはCクラスだけだ。」
「そうなんだ。どんな人だった。」
「Aクラスは識崎空ってやつで……死んだ魚の目をしてた。」
「えっそれ大丈夫なの?」
「まあ大丈夫だろ。」
少しばかり穿った紹介をすることにした黒鮫。永鴇は出会ったこともない同業者を心配するのであった。
「そういやCクラスの奴には会ったのか?」
「ううん、私は君が最初だからね。他は誰にも会ってないよ。」
「そうか……」
「探しているの?」
「まあな。今日の内に連絡できる状態にはしておきたいからな。」
「そっかぁ……一緒に手伝おうか?」
「いや君にも用事はあるだろうから別に構わなくていいぞ。」
「そっかぁ…じゃあ私は行くね。」
「あぁ、そうだ。識崎空の連絡先も送っておくよ。」
「ありがとうね。」
そう言って永鴇麗奈と別れた。識崎にBクラスの狩人と接触したこと連絡先を教えたことを伝えてこの場を後にするのであった。
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黒鮫は残りの同業者、Cクラスの狩人を探すことは困難を極めるだろうと思っていた。AといいBといいあれは黒鮫からしたら偶然の産物で遭遇できたものであると認識しているからだ。だから最悪今日は出会うことはないつもりで探索していた…
「……」
「zzz」
「………」
「zzzzzz」
「よく寝ているな。」
黒鮫はなんとなくの直感で気付いた。この広場のベンチで寝ている女子生徒がCクラスの狩人であると。
(さてどうしたものか……)
寝てる人を起こすのは気が引けるがこのタイミングを逃したら別日になりそうな気がする…この状況での正解は何か必死に思案する。
「zzz」
グゥ
「ん?」
「zzz」グゥゥゥゥ
「……」
「zzz」グゥゥゥゥゥ
「腹の虫がなっているのか……」
寝息を立てながらお腹の音を鳴らす器用?な女子生徒を横目に黒鮫は思いついた。
・
・・
・・・
「いやこれでいいのか本当に…」
その場を一度離れた黒鮫は、近くのコンビニに行きホットスナックを両手に持っていた。一つは自分用、もう一つは寝ている女子生徒用である。
「とりあえず、自分のを食うとするか。」
黒鮫は買ったフライドチキンを食う、サクサクな食感にジューシーな肉汁があふれる。
「揚げたてだろうか…まあこんなものか。」
淡泊な感想を残して女子生徒のいる広場に戻ってきた。すぐに差し出すわけにもいかないので黒鮫は近くのベンチに座り匂いで起きるの待ちながら自分の分を食おうとしていた。
「zz…飯!!」
「っ!?」
先程まで熟睡していた女子生徒が飯という単語を言い放ち起きたかと黒鮫振り向いた刹那、女子生徒は物凄い勢いでとびかかり、違うベンチに着地した。そして黒鮫の手に持っていたチキンを二つとも奪われてしまったのである。
(気を抜いていたのか反応が出来なかった……というか俺のも取られたな…)
「うっ!?これは…旨い。」
「それは良かったんじゃないか。」
黒鮫に背を向けた形で食事をしていた女子生徒はその声で振り返った。
「問おう、貴方が私の給仕か?」
「大いに違うが?」
寝ぼけているのか本気で言っているのか、女子生徒はそんなことを言いだした。黒鮫は表情を変えることなく冷静にツッコんだ。そして女子生徒は伸びをして黒鮫に近づいた。
「ご飯ありがとうね。」
「あぁ、俺の分も食いやがったがな。」
「えーっと…美味しかったよ?」
「感想を聞いてんじゃねえよ。」
「……」
「……」
会話のキャッチボールが出来てるようで出来てない。そんななか女子生徒も何かを感じ取ったのかしっかりと起きて自己紹介をする。
「初めまして、あーしちゃんはCの狩人、竜ヶ峰姫梨だよ。」
「そうか、Dクラスの狩人黒鮫真人だ。」
「よろしくね、あーしちゃんのこと「姫梨ちゃん」って呼んでいいよ。」
「あぁ、よろしく頼むな竜ヶ峰。」
「……」
「……」
この時二人は少しの沈黙の後にこう思った。
(こいつ、この人マイペースだな…)
どっちもがどっちもなやりとりである。ここで黒鮫は一つの疑問をぶつけた。
「そういえばなんでここで寝ていたんだ?」
「それは…何故生きとし生ける者は眠るのかということ?」
「あぁ、そこまで哲学的になるのか……」
「それは天保山くらい大きく高い答えがあるんだよ。」
「全然高くねえな…それで答えは?」
「眠かったからだよ。」
「その高さに到達してない理由だったな。」
胸を張っている女子生徒…竜ヶ峰を冷静に見る黒鮫。ひとまず目的を果たすことにした。
「とりあえず連絡先をくれ。他の狩人との連携しておいた方がいい時もあるだろうしな。」
「そうだね。」
すんなりと連携を交換できた。黒鮫はまた飯でも要求されるくらい思っていたがそんなこともなくて少しばかり拍子抜けであった。
「よーし、連絡先を交換できたし、黒鮫君。」
「なんだ?」
「喧嘩しよう?」
「断る。」
面倒事になる確信した黒鮫はその場から去ることにした。そんな彼を竜ヶ峰は見送ることはなく彼の制服を掴み帰るのを阻止した。
「待ってよ~喧嘩しようよ。楽しいよ?ハイになれるよ?」
「誘い方が違法な薬物のそれなんだよ。」
「ねえお願いだよぉあーしちゃんを願いをかなえてよぉ。」
「ことわる!!!」
埒が明かないと思った黒鮫は制服が伸びようがちぎれようが関係ないと判断して竜ヶ峰を引きずる形で寮まで行くことにした。
「ねえ~~おねがい~~~」
「こ と わ る。」
傍から見たら、駄々をこねる彼女を無視する彼氏のような構図に見えるかもしれないがそんなことお構いなしで黒鮫は帰路に就くのであった。
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「何というか……どいつもキャラが濃いな…俺もそのうちの一人か。」
寮にたどり着いた黒鮫はコーヒー片手に窓から見える景色を眺めていた。識崎空、永鴇麗奈、竜ヶ峰姫梨、そんな彼らと時に狩人として共闘し、時に敵としてこの学校の試験に挑むことになる。
「まあ、存外楽しめそうではあるか。」
そんなことを考えていると端末が震える。画面を見ると『鴉』と書かれていた。
「黒鮫だ。」
「我々は今から夜回りをします…あなたは?」
「そうだな…俺も行こう。」
「あの……今日は入学式だったはずです。今日くらい休んでも。」
「気にするな。俺には戦っている方が性に合っているんだよ。」
「そうですか……わかりました。ではお待ちしております。」
「あぁ……」
通話が終わり黒鮫黒いコートを羽織る。
「さて、狩りの時間だ。」
黒鮫は窓から飛び降りて闇夜へと消えて行った。
*やあ観測者のみんな、語り部だよ。
今回僕が出てきたのは黒鮫が言っていた「S7、A△、B×、C〇、D?」解説をさせてもらうとするよ。
まず『S7』についてこれは理事長との交渉がどれほどうまくいったかを表している。Sは理事長の苗字、坂柳のイニシャルだね。7というのは7割成功だという事。時価という形にはできたが特別試験の情報だけだから使い所を迷いそうだね…
次に『A△、B×、C〇、D?』についてだ。これは各クラスの教師の評価になるね。
解説するとこうなるね。
・A…良くも悪くも中立で他の生徒の為に狩人を知ろうとしているがそれが時に邪魔になる可能性あり。まだ知りたがりの気持ちを認識できた。
・B…ダメ、こちらの事情を深い知ろうとする傾向あり、時と状況が違えばおそらく一般の生徒を味方につけたり、何かしら権限を持ってこちらに土足で踏み込む恐れがある。
・C…安全、長い教師生活の中でたくさんの狩人と出会ったのか深くを聞かずに狩人を戦場へと見送ってくれるタイプ、この人と信頼関係を築けたのち、知りたいと願ったら教えてもいいかもしれないと思えた。
・D…不明、何かしらの目的があるのは認識できた、そのために使える生徒を探しているのもわかった、けどどこか迷いを感じられた。要観察が必要と判断。
こんなところだね…これはあくまであの場で黒鮫君が感じ取ったものだからね。
さて次回はようやく戦闘かな。では僕はこの辺で。
台詞の前に名前は……
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いる(台本形式に変更)
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いらない(このまま)