ようこそ異能力狩人が集う教室へ   作:田舎狩人

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*厄ネタを抱えているようで特に抱えていない黒鮫真人
*厄ネタを過去から現在に至るまで抱え続けている永鴇麗奈
*自分のいる環境が厄ネタな識崎空
*厄ネタなんて抱えたことがない竜ヶ峰姫梨
*なにもしらない綾小路清隆

でお送りしてたりしてなかったりします。


第4話

入学式して2日目ということもあり、最初の授業はもはや授業とはいわずオリエンテーションのようなものばかりである。

 

教師の自己紹介や施設の案内等、穏やかな時間が流れる。ただそんな中でも黒鮫は少しばかり納得の失望をかんじているのであった。

 

 

(教師の話をすべて聞いているわけではなく他者との雑談に花を咲かせるか……初っ端からこうか…これがDクラスなんだな。)

 

 

こんな考えをしているが黒鮫は動くつもりはない。忠告ではないにしろ昨日の内に自分の考えを言っている以上、自分の話を全面的に信じて何とかしたいと思うやつに任せるつもりでいるのだ。ただそのような奴は現れないだろうなと黒鮫は感じているであった。

 

 

 

***

 

 

 

そんなこんなで時間は過ぎ去り、お昼休みとなった。どこかで食事をしようかと考えていると、平田がこちらに近づいてきているように感じた。しかし

 

 

「平田君一緒にご飯食べようよ。」

 

「あっずるい。平田君私も一緒に…」

 

「み、みんな落ち着いてね。」

 

 

ポニーテールの女子を筆頭に女子に囲まれてしまった平田であった。おそらく自分の言っていたことを詳細に聞こうとしていたんじゃないだろうかと推測した黒鮫であったが…

 

 

(食堂に行くとしようか。)

 

 

邪魔しちゃ悪いなという言い訳を考えて一人食堂に向かうのであった。

 

 

「あっ。」

 

何やら平田の方から声がしたような気がするが無視をすることにした。

 

あっ、オレと一緒にご飯……

 

 

綾小路の方からも何か聞こえた気がするが無視することにした。

 

 

 

***

 

 

「広いな。」

 

 

食堂にやってきた黒鮫は見たまんまの感想を口にする。一人で黙々と食べるもの、誰かと談笑しながら食べるもの、様々だが全体を見て黒鮫は一つの事実に気づいた。

 

 

「選ぶメニューが被ることはあるだろうがこうも偏るか…米と味噌汁と…あれは山菜か?」

 

 

遠目でしかないが上級生と思しき生徒たちがこぞって米と味噌汁と山菜と思われるおかずしかないメニューを選んでは食べているのだ。気になった黒鮫は食券機に向かう。

 

 

「これか…なるほど確かに偏るか。」

 

 

食券機に答えがあった。多種多様なメニューだがその中に異彩を放つメニューが一つだけあった。

 

『山菜定食 0ppt』

 

他のメニューは当たり前だが、必ずポイントが必要なものばかりだがこの山菜定食だけは無料で食べられるというものである。

たとえ何かしらの要因でポイントを得られなくなったもの、ポイントを奪われたものにとっての救済措置なのだろうなと考え黒鮫も山菜定食を選ぶのであった。

 

「はいお待ち。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

食堂のおばちゃんにお礼を言って座る席を探す。ひとり気楽に座れそうな端っこの席は全部埋まってしまっていたので黒鮫は仕方ないかと思いながら、中央あたりの席に座るのであった。

 

「いただきます。」と言って山菜定食を食し始める。特に何の感想も抱かないまま、黙々と食べ続けている黒鮫だったが…

 

 

「ごめんね相席いいかな?」

 

「他に席がなさそうだから別にいいぞ…平田。」

 

 

黒鮫の隣に座ったのは平田であった。そして三人ほど同じクラスの女子もいる。黒鮫はやはり来たかと思いながらも黙々と食事を続けるのであった。隣の平田がどう話しかけようかと考えていると会話のきっかけを生んだのは、三人のうちの一人の女子だった。

 

 

「ねえ黒鮫君?それは何を選んだの?」

 

「山菜定食、0pptで食べられる代物だ。」

 

「フーン…味はどんな感じなの。」

 

「……pptにあったクオリティと言っておこうか。」

 

「そうなんだ。あっ私ね佐藤麻耶っていうのよろしくね。」

 

「あぁ…知っている。というか同じクラスならもう名前は覚えたからな。」

 

 

その黒鮫の発言に驚く者や怪訝な表情になるものがいた。そしてその怪訝な顔してポニーテールのギャルがツッコんできた。

 

 

「なんで知っているの?もしかして調べたとか?キモ。」

 

「昨日、教卓に立った時に表が貼ってあってな。それには何て名前の奴がどこに座っているかというのがわかったのでな。それで覚えた。」

 

「へえじゃあ私が誰かってわかるの?」

 

「あぁ…君が軽井沢恵で君が篠原さつきだろ?」

 

「正解、当たっているよ。」

 

「本当に覚えているとかキモ。」

 

「酷い言い様だな。」

 

「軽井沢さんそんなこと言ったらいけないよ。ごめんね黒鮫君。」

 

「はーい。」

 

「俺は別に気にしてはいないがな。」

 

名前を当てられた篠原は素直に驚き、軽井沢は気持ち悪がるのであった。そこから少しの沈黙が流れる。平田がなんて切り出していいか悩んでいるように見えたので黒鮫は自分から話しかけることにするのであった。

 

 

「それで平田、用向きはなんだ?」

 

「えっ?」

 

「ここに来る前から何か聞きたいようなオーラを出しておいて何もないなんて言わないだろうな?」

 

 

少しばかり圧を感じさせるような問いかけをする。少しばかりたじろいだ平田だったが咳ばらいをして話し始めた。

 

 

「昨日、君が話していたことについてなんだけど…」

 

「俺の中では結論はもう出しているつもりだったが…」

 

「あの言葉だけで理解できたのはおそらく高円寺君くらいじゃないかな?僕も他の人も頭の中には疑問符だらけだよ。」

 

「そうか…一番に何が聞きたい?」

 

「そうだね……来月貰えるポイントは10万じゃないのかい?」

 

「逆に君は10万もらえると思っているのか?」

 

「それは……」

 

「貰えるんじゃないの?毎月ポイントは配布されると言ってたんだし。」

 

 

平田が答えに詰まっていると軽井沢が答えた。黒鮫はあまりにも楽観的だなと思いながらも軽井沢、否ここに集まった4人に問う。

 

 

「じゃあ君たちに聞くが…今の自分は10万の価値があると思うのか?」

 

「そ、それはあるんじゃないの…」

 

「今月の10万はここに入るための試験の結果と頑張りだと茶柱先生は言っていたな。ならば来月も10万貰うに値する結果や頑張りを先生に提示できるか?」

 

「そ、それは……」

 

「テストもなければ特別な行事もない、そんな日々の生活俺たちはどうやって10万の価値を示せるというのだ?」

 

「そ、それは…」

 

「え、えーっと……」

 

「うーん…」

 

 

 

黒鮫の問いかけに言葉が出てこない女子たち、平田は自分の考えをまとめているのか黙っている。

 

 

「例えばだが、税金を抜きにした単純な計算だが、時給1000円の仕事で10万をひと月で稼ごうとした時、週休二日の場合、最低でも一日5時間は労働しなければ稼げない額だ。それをただ勉強して放課後になれば友達と遊んだり好きに買い物を楽しむような学生が10万の価値を見出せるとは思えないな。」

 

「例えば…」

 

 

もし、平田が何も喋ることがなく終わるならこれで去ろうとしていた黒鮫だったが平田が口を開いたことに彼を見据えたのだった。

 

 

「例えば…テストでクラス全員が高得点をとれたならどうだろうか?」

 

「高得点ではダメだろうな。全員が全教科、100点満点ならその価値を見出せた言えるかもしれない。ただそれはテストが発生するその月のみでありテストがない月は同じ形で価値を見出せないな。」

 

「じゃあ、何かしらの勉強の頑張りを提出するというのはどうだろうか?」

 

「宿題のような課題がなくともそれを日々やっているならわからなくもないが懸念事項はその場合の評価は教師によって変動するか否かだろうな…結果のみしか評価しない教師相手なら通用はしないだろうな。」

 

「ならば運動面ならどうだろうか?」

 

「学問以上に結果至上になるだろうさ。大会で優勝するためにみんな気合を入れてやっているんだろうからな。」

 

「そう…だね…難しいね。10万の価値を見出すのは。」

 

「そうだな…ごちそうさまでした。」

 

平田の考えが底を尽きたのか提案がなくなる。黒鮫は終わったかと思い立ち上がろうとするとせめてなにかしらの答えが欲しいのか問いかけた。

 

 

「最後に…この一ヶ月でなら10万の価値をどう示す?」

 

「……このひと月はあまりにも出来ることが少ない、だからせめて10万ポイントという先行投資をしてもよかったと思ってもらえるにしないといけないだろうな。」

 

「先行投資……ならそう思ってもらえるには君ならどうする。」

 

「当たり前に出来ることを当たり前にこなすことくらいじゃないか。」

 

「当たり前のことを当たり前に?」

 

 

平田含め、女子たちも疑問符が浮かび上がっている。黒鮫は平田にヒントを出すことにした。

 

 

「平田、君が俺の発言を覚えているのなら今月は何で評価されるかわかるはずだ。教室にカメラがありそのカメラが俺たちの何を見ているか深く考えるべきだ。」

 

 

そうして去ろうとした黒鮫だったが、突然の放送で足を止めた。その放送は、放課後に部活動紹介をするというものであった。

 

 

「黒鮫君、良かったら一緒にいかないかな?」

 

「すまないな平田。先約がある。」

 

 

平田の誘いを断り、黒鮫は食器をおばちゃんに返して教室に戻るのであった。

 

 

 

***

 

「黒鮫、ちょっといいか?」

 

「なんだ綾小路?」

 

 

時は放課後となり、Dクラスの教室でもクラスメイト同士で部活の説明会に向かう人がちらほらと向かう中、黒鮫は綾小路に声をかけられた。

 

 

「部活の説明会、一緒にいかないか?」

 

「すまんな綾小路、先約がある。」

 

「そ、そうか……」

 

 

平田と同じ言葉で断ったが、綾小路は捨てられた子犬のようなオーラを出している。黒鮫はそんな雰囲気の綾小路を…無視してカバンの整理をした。

 

 

「哀れね綾小路君。」

 

「堀北…」

 

 

そんな綾小路を笑いに来たのか綾小路の隣の席の黒髪女子、堀北鈴音がやってきた。

 

 

「良かったな綾小路、一緒に行く相手が来てくれたじゃないか。」

 

「えっそう…なのか堀北?」

 

「誰があなたなんかといかなければならないのよ…あなたも変なこと言わないで頂戴。」

 

「……」

 

 

黒鮫の言葉に素直に喜ぼうとした綾小路であったが、当の本人である堀北にそれを否定されてしまった。それどころか堀北の言葉の棘が黒鮫にも飛んで来た。だが黒鮫は特に気にしていなかった。黒鮫は堀北の顔を見て黙ったままだった。

 

 

「なにかしら?人の顔をそうまじまじとみるものではないと思うけれど。」

 

「似てないな。」

 

「?誰に?」

 

「……生徒会長に。」

 

「えっ………」

 

 

 

黒鮫の発言に言葉も動きも止まってしまった堀北、そんな堀北を放置して黒鮫は教室を出ようとしていた。

 

 

「じゃあな綾小路、また明日。」

 

「また明日って…向かう場所が一緒なんだからあとで会うんじゃないか?」

 

「どうだろうな…まあさらば。」

 

「お、おう。」

 

 

そう言って黒鮫は教室を後にするのであった。黒鮫は歩きがてらいろいろと考えるのであった。

 

 

(あの反応的に堀北鈴音と生徒会長の堀北学は本当に兄妹だと思って間違いなさそうだな。しかし部活動か……まあ狩人である俺にとってはあまり関係ないものだが…識崎に誘われた以上行かないわけにもいかないからな。)

 

 

黒鮫が言っている先約とは識崎のことであった。彼からこのようなメッセージが届いていた。

 

 

「僕も他の同業者に会えたよ。今日の放課後に何かしらのイベントがあるみたいだからどうだろう4人で集合するというのは?」

 

 

部活の説明会の放送がされたのは今日のお昼休み、このメッセージが届いたのはお昼休みを迎える前のものだ。どうやってそのことを知ったかは知らないが黒鮫はその誘いに乗ったのだ。そして説明会の場所に向かっている最中また識崎から連絡が来た。

 

 

「僕たちが一番後ろでいられるように体育館に来るのまでに多大に道草を食うことにしようか」

 

(なぜ一番後ろがいいのか……まあ狩人の話を他の奴らに聞かれるわけにもいかないか……)

 

 

疑問は多少湧いたけど黒鮫は了承するのであった。

 

 

 

***

 

 

 

「にぎわっているな。」

 

いろいろと回り道をして体育館にたどり着いた黒鮫はそんな感想を呟いた。そして横を見ると少し離れたところで識崎が竜ヶ峰と永鴇に挟まれているように雑談をしていた。

 

 

「両手に花だな。」

 

「やあ来たね……確かに漏れているね。」

 

「はっ?」

 

 

識崎の言った一言にただ困惑する黒鮫。永鴇が申し訳なさそうに事の経緯を

話し始めた。

 

 

「ごめんね黒鮫君。昨日の出会いをちょっと話しちゃって。」

 

「昨日のこと……」

 

 

黒鮫と永時の出会い、それは永鴇が上級生にナンパをされていたもの。ただそれを撃退したのは永鴇であって黒鮫ではない。識崎が言っているのはそのあとのやり取りで言っていたことだろう。

永鴇曰く「黒鮫の殺意や重圧は同じ狩人ならバレバレだと」

 

「出会った時にピンと来たのはそのコートのように着ているつもりで周囲にまき散らしていた殺意というオーラのおかげだったんだね。」

 

「待て、識崎。俺は別に殺意を着こんでいるわけでもないぞ。」

 

「でも確かにあーしちゃんもおもらしのおかげで君が狩人ってわかったんだからね。」

 

「おい竜ヶ峰、次その言葉を言えばシバくからな。」

 

「おっ?喧嘩してくれるの?」

 

「面倒くさくなったな。相手にするのやめとこ。」

 

「えー喧嘩しようよ。」

 

 

「これより部活動説明会を始めます。」

 

 

「始まるみたいだな。」

 

昼休みに聞こえた放送と同じ声が体育館に響く、その言葉をきっかけに狩人達も部活の説明会に集中する…かに見えた。

 

 

 

***

 

 

「次は野球部の紹介です。」

 

「……惰弱、惰弱、脆弱、惰弱。」

 

「竜ヶ峰、俺らの基準で評価をするな…」

 

「まあ、僕たちは戦うために鍛えているからね。鍛えるのベクトルは違うから弱く見えるのは仕方ないよ。」

 

「というか黙っといた方がよくない?」

 

 

竜ヶ峰は人が登場するたびに強さ判定をしている。黒鮫は一応のツッコミをいれ、識崎は竜ヶ峰に少しばかり同調して、永鴇が常識的にたしなめる。

だが黒鮫は気にせずに続けた。

 

 

「べつにいいんじゃないか?このために出入口に近いところに陣取ったのだろうからな。」

 

「そうだよ、でも姫梨ちゃん。そろそろ静かにしようか。」

 

「うん……あっそうだあーしちゃんの話聞いてよ。」

 

「静かにするとはいったい何だったのか…」

 

「あーしちゃんのクラスに『リュウエン』ってやつがいるんだけどマジでムカつくの。」

 

「『リュウエン』ねぇ……一応聞くが何かしたのかそいつは?」

 

「いや何かをされたわけじゃないけどそういうのじゃないんだよ。」

 

 

黒鮫は、疑問符を浮かべながらも考える、『リュウエン』に対してのイライラとは何なのか…そしてそのなまえを反芻して黒鮫は理解した。そして同じタイミングで識崎も理解したようだ。

 

 

「竜ヶ峰、それはもはやどうしようもない問題だろ。」

 

「そこにキレるのは筋違いというか、理不尽というか……ともかくその怒りを鎮めるべきですよ。」

 

「えっ、えっ?なんで二人はそんなわかった風な雰囲気を出しているの。」

 

 

唯一ついてこれてない永鴇に黒鮫と識崎はヒントを出すのだった。

 

 

「永鴇、『リュウエン』という名前をまず変換してみろ。」

 

「リュウという漢字は同じ意味合いのものが二つあるよね。姫梨ちゃんの竜とは違うもう一つが…」

 

「うん……えっ?そういう事なの?」

 

 

竜ヶ峰がキレている『リュウエン』という生徒、キレている理由はその生徒の漢字が『龍園』だからなのである。

 

 

「だってあーしちゃんより弱い奴が画数の多い『龍』を名乗るのに我慢ならないんだよ。」

 

「理不尽の極みってこういうものなんだろうな。」

 

「流石にフォローは出来ないね…」

 

「えー…と、とにかく姫梨ちゃん。問題は起こさないでね。」

 

「うん……わかった。」

 

(((絶対やらかすなこれは。)))

 

 

竜ヶ峰の返事にそう思う三人なのであった。

そんな雑談をしているとどうやら説明会の終盤に差し掛かっていたようだ。

「最後に生徒会長の挨拶です。」という音声が響き、生徒会長がステージに立つ。だが一向に言葉を語ることはなくただ黙している。そのせいか「セリフ忘れたんですか?」とか「カンペないんですか?」とい野次が飛んでいた。

 

 

 

「あれは何をしているの?」

 

「静寂による威圧じゃないか。一年側が全員黙るまで沈黙を続けて場の空気を支配でもするんだろうさ。」

 

 

竜ヶ峰の疑問に黒鮫が答える。すると竜ヶ峰がニヤニヤとした顔で黒鮫に言葉を投げかけた。

 

 

「威圧と言えばここによい見本があるじゃん。」

 

「待て竜ヶ峰、俺のことを言っているのか?」

 

「いいね黒鮫君、ここは見本を見せるべきだ。」

 

「おい識崎、お前が悪ノリしたら誰が止めるというんだ。」

 

「永鴇ちゃんに頼んだらどうだい?」

 

「永鴇…」

 

 

黒鮫は少し期待したような目で永鴇を見た。永鴇は少し考えた末に笑顔で言い放った。

 

 

「私も見てみたいな♪」

 

「お前ら…………いいだろう。」

 

 

味方がいないと判断した黒鮫は息を吐き目を閉じた。

 

 

「…………黙れ。」

 

 

眼を開け一言低い声でつぶやく。その言葉をトリガーとして黒鮫は殺意という重圧でこの空間を支配した。先程までふざけて野次を飛ばしていた生徒は急に黙り、ここに集まった一年生は全員うつむいた。

 

この時ここに集まっていた1年生は「喋ると死ぬ、後ろを振り向いても死ぬ。」という思考になり

顔を上げることを拒んでいた。

彼らの本能は理解したのだろう。逆らってはいけない、自分では敵わない存在が後ろにいるのだと。

 

急な静寂になったことにより生徒会長は驚いていた。そしてその重圧の発生源であるところに目を向けるとそこにいたのは昨日自身に警告をしてきた。黒鮫という男がいたことに気づいた。

黒鮫と目が合うと黒鮫は「早く喋れ」と言わんばかりの視線を向けていた。

 

後で話を聞けるだろうか、そんなことを考えながら生徒会長はあいさつを始めるのであった。

 

 

***

 

「こ、これにて説明会を終了をさせていただきます。入部に関しては………」

 

 

重圧のせいか声が震えているアナウンスを横目に狩人達は足早に去っていた。

 

 

「いやー素晴らしかったねぇ。」

 

「何が素晴らしかったんだ識崎?」

 

「そりゃあ君の威圧じゃないか。あれのおかげで早く説明会が終わったんじゃないかな?」

 

「せいぜい1分程度の違いだろうが。」

 

「いやーよっ天下一のおもらし。」

 

「……」

 

「ぐわっ!!」

 

「その頭蓋に罅の一つでも入ればちったぁ学習できるだろうな。」

 

「割れる割れる割れるああああああああああ!」

 

「黒鮫君落ち着いて。」

 

 

 

識崎のいじりはまだよかったが竜ヶ峰のいじりによって我慢の限界を迎えた黒鮫は竜ヶ峰の頭を鷲掴みにするのであった。

 

「じゃあな識崎、永鴇。」

 

「どこに行くんだい?」

 

「少しばかり、粗大ゴミを捨てに行ってくる。」

 

「ちょっと!?そのごみってあーしちゃんのこと?!こんなみるからにかわいい女子高生を粗大ゴミとか」

 

「最近のごみはよく喋るんだな。」

 

「ぎゃあああああああ割れる割れる力が強いってぇぇぇぇぇぇ。」

 

 

足早に去った黒鮫と頭を鷲掴みにされて引きづられる竜ヶ峰、取り残された識崎と永鴇は互いに顔を見るしかなかった。

 

「……帰りましょうか。」

 

「そうだね……」

 

 

2人は竜ヶ峰の無事を祈りながらそのまま帰路に就いた。

 

 

 

***

 

side 綾小路

 

 

部活動説明会が終わりを告げたのにまだ大半の生徒は動くことが出来なくなっていた。生徒会長のあいさつの前に感じ取ったあの重圧。ただ者じゃないということはわかる、そもそも人間なのかという疑問も出てくる。

 

ふとオレは自分の手を見た。オレの手は痙攣していた…いや震えていた。正体不明の後ろの存在にオレは恐怖を覚えていたということだ。手の震えを抑えることにしながら考える後ろの奴はオレよりも強い。もしもそいつの正体がわかればオレは……

 

いやよそう。ここに来てまでそんなことは考えたくない。とりあえず体育館を出ようとして隣に堀北が座っていたことを思い出す。

 

 

「おい、堀北。」

 

 

堀北はうつむきずっと震えていた。オレより恐怖を感じ取っていたのだ。

 

 

「………」

 

「堀北、堀北……聞こえているか堀北。」

 

「!?……綾小路君……」

 

「大丈夫か何回呼び掛けても反応しなかったんだからな。」

 

「そう………」

 

 

いつもの毒気というか冷徹さは何処へやらという感じだな。とりあえずオレはこれからどうするか聞くことにした。

 

 

「オレはこのまま帰るが堀北はどうする?」

 

「そうね……私も帰ることにするわ。」

 

「そうか……じゃあまた明日。」

 

「待って綾小路君!」

 

 

一緒に帰ることはないだろうと思い帰ろうとしたら堀北に呼び止められた。

 

 

「どうした?」

 

「……手を貸してくれないかしら………腰が抜けて一人で立てそうにないわ。」

 

「あぁ…わかった。」

 

 

オレは出来る限り優しい力の配分で堀北を立ち上がらせた。だが堀北は未だに力が入らないようでオレにもたれかかってきた。

 

 

「ご、ごめんなさい綾小路君。」

 

「オレは問題ない……」

 

 

多少鍛えられているような気がするとはいえ全体的に柔らかい。それにいい香りがする。女子とはこういうものなのだろうか……これが役得というものなのだろうか……

オレは少しばかり後ろにいた存在に感謝するのであった。

台詞の前に名前は……

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