終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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10話 軍との対立

 

 お。あの時の先生が出てきた。

 

 どうせまた勝手なこと言うんだろうけど……聞いてやろうじゃん。

 

「――エドガー。お前の存在は、危険すぎる」

 

 大義でも語ろうって?

 

「精霊は竜を殺したお前に執着している。お前に普段通りの生活をさせた上で、また指示があれば精霊のところに送り届けるよう言われているが……本来、お前にこうして自由を与えるべきじゃないんだ」

 

「エドガーくんは罪人でもないんだから、自由に生活できるのは当たり前だよ!」

 

「罪なら犯しているとも。竜を殺し、強大な精霊に目をつけられる事態を引き起こしたんだから」

 

「――じゃあ! 素直に竜に殺されておけば良かったって!?」

 

 俺の代わりにスノウさんが会話してくれてる。もはや保護者だよなあ。

 

 あっ、先生と目が合った……。

 

「――都市のためを思うなら、そうあるべきだった」

 

 大のために小を切り捨てる。そういう考えもあるだろうけど、当事者になったらたまったもんじゃない。

 

「さあ、アイシールにそこのもう一人。大人しくエドガーをこちらに引き渡すんだ」

 

 スノウさんと、名前すら覚えられてなかったメリーは、それぞれ違う表情で俺を見る。

 

 スノウさんはもうやること決まってるって目で、一方のメリーは混乱中って感じ。

 

 まあ、二択だよな。大人しく捕まるか、包囲を抜け出して逃亡生活を送るかの。

 

「さあ、どうした。早く――」

 

「――うるさいな。誰が、エドガーくんをお前らに渡すものか……!」

 

「なに? ……アイシール、これはお前の御父上を確実に助けるために必要なことなんだぞ。それを娘であるお前が……」

 

「どの口でそんなこと言ってるんだ! 初めは私を精霊に売ろうとしてたくせに……! どうせお前たちは、軍の力を保つためにお父さんを取り戻したいだけだ!」

 

「アイシール、きさま……!」

 

 うーむ……。スノウさん、完全に俺側につく気だな。気持ちは嬉しいんだけど、軍を敵に回すのはさすがにやりすぎ感あるぞ。

 

 べつに殺されるわけじゃないなら、最悪捕まってもいいんだけど……。

 

 そんなことを考えていたら。ちょうどいいタイミングで、抑えられてる教師陣から声が。

 

「――エドガー、この場はなんとか逃げ切るんだ! 都市上層部はまだ君を精霊に売ると決めたわけじゃない! これは明らかな軍部の暴走だ……!」

 

 ほう。それは良いことを聞いた。つまり、まとめるとこういうことか。

 

 もともと精霊からあった指示は、俺が都市の中で針の筵になるよう普段通りの生活をさせ、精霊が満足したら引き渡せというもの。

 

 で、軍は王選騎士であるスノウさんのお父さん――つまり軍の重要な戦力を取り戻したいから、多少精霊の指示に背いてでも俺を自由にはしたくないんだ。あいつらからしたら、いつ俺が逃げるかわからんもんな。

 

 一方で都市の上層部側は……たぶん、竜を倒した俺という戦力を簡単に切り捨てていいものか、まだ判断がついてない。でも、軍部ばかりに力がある状況は気に入らないから、とりあえず今回の動きは牽制したい、と。

 

 要は……都市内の権力闘争だな、これ。だったら……。

 

「スノウさん。今回ばっかりは、俺のことはほっといてくれて大丈夫」

 

「え……? エドガーくん?」

 

「さすがにスノウさんを軍の敵にはできないって。幸い、まだ都市の上層部は俺の味方してくれそうだし。スノウさんは俺から距離を取るべきだ。もちろん、メリーもそれは一緒な」

 

「エド……わたし……」

 

 メリーんち、スノウさんと違って一般家庭だし。おじさんおばさんに迷惑かけらんないもん、ためらうのが普通だわ。

 

 スノウさんはなぜかその辺の感覚ぶっ飛んでるんだけど……。ほら、いまだって全然納得してない。

 

「――私は。エドガーくんを助けるよ」

 

「スノウさん、でもさすがにさあ」

 

「言ったよ、私。――エドガーくんを守るって」

 

 うっ。男前すぎる……。

 

 でもさあ……。

 

「それに、私は騎士アイシールの娘だから。軍がお父さんを取り戻したいのなら、私やアイシール家を強引にどうこうなんてできないはず。じゃないと、精霊からお父さんを取り返したところで、軍の言うことを聞いてくれなくなるんだから」

 

 たしかに。じゃあなにか、スノウさんは軍に対して最強の盾じゃん。

 

 俺たちを囲う先生や軍人も、スノウさんの発言に渋い顔してるぞ。

 

「――アイシール。たしかに、御父上のことを思えばお前を傷つけることはできないが……だが、エドガーとともに軍で保護することに躊躇いなどないのだぞ」

 

「どうぞ、できるものならやってみたらいい……! もう実力じゃエドガーくんには敵わないかもしれないけど、それでも私だって伊達に学園でトップを張ってきてない!」

 

「……その言葉、後悔するなよアイシール」

 

 おっと。先生と軍人が構えを取った。いよいよ動くか。

 

 あー……まだ、スノウさんの力を借りるかどうか決めかねてたんだけど。

 

 でも、俺のこと思ってくれる美少女にここまで言われたら。断る方が、無粋ってものか。

 

 ……よし! じゃあ――

 

「――一緒に来てくれるか? スノウさん」

 

「……! もちろん、エドガーくん!」

 

 返事を聞いた瞬間、俺は魔力を励起する。

 

 こないだの精霊戦でこっそり魔力増強の魔法を使って以来、まーた素の魔力増えたんだよな。もはや戦いが本職の軍人さえ、たいていのやつは俺に敵うまい。

 

 それに、それはスノウさんもおんなじだ。学園一の優等生であるスノウさんは、今の時点ですでにそこらの軍人よりよっぽど強いからな。

 

「じゃ、メリーは危ないからあんま動くなよ。俺たち、行くから」

 

「あ……う……。え、エド――」

 

「エドガーくんの力には、私がなるから。あなたはそこで、そうやって震えていればいい――」

 

 どうしたらいいかわからんって顔のメリーを、スノウさんは冷たい視線で切り捨てる。

 

 きついけど、この状況ではそれが正解かもな。こんなことになっちゃったんだから、もうメリーは巻き込めないから。

 

 ……じゃあ、やるか。

 

「スノウさん。門の方にはまだいっぱい兵がいるから、逃げるなら反対にしよう。邪魔するやつボコって包囲を抜けて、壁を乗り越えればいい」

 

「うん。了解」

 

「じゃあ――」

 

 目で互いに合図して。門の反対方向に向かって走り出した。

 

「くっ! 止めろ!」

 

 先生がそう呼びかける。

 

 あんたどういう立ち位置なんだ? 元軍人って聞いてるけど、この場で他の兵に命令できるくらい偉かったんかな。

 

「でも、こんくらいの数なら余裕。押し通る――ってな」

 

「な……こいつ、速ッ――」

 

「はいパンチー」

 

「ぐはっ」

 

 剣で斬るのは忍びないから殴り倒す。

 

 ……また魔力増えてるから、ちょっと強くやりすぎたかも? まあ死んでないなら大丈夫か。

 

「こ、こいつ強いぞ……! ぐああ!」

 

「や、やめッ」

 

 何人か殴り倒しながら、ちらっとスノウさんを確認。おお、スノウさんは普通に剣抜いてる。鍔迫り合い中に氷の魔力で動きを妨害して峰打ちと。お見事。

 

「よし。この調子なら全然問題なく逃げられそう。スノウさんもほどほどにして、隙できたら逃げようぜ!」

 

「ちょっと、待ってねッ! エドガーくんに手を出す、この、不届き者を……!」

 

 峰打ちとはいえ顔面を殴打……。恨みを感じる。

 

 スノウさんも数人倒したのち、すごい清々しい笑顔で言った。

 

「さ、行こっか」

 

「……はい」

 

「どうして敬語なの?」

 

 怖いからです。スノウさんには逆らわないようにしよう。

 

 と、今はそれよりも。崩れた包囲を立て直される前に、ここから逃げ出さなきゃな。

 

 そう思った直後だった。

 

「行かせるか……!」

 

「おお、先生」

 

 他の軍人が穴を埋めるより早く、俺たちのもとへやってきた先生。やっぱさっき倒したやつらより強そう。

 

「……エドガー、お前が厄介なことは分かっていたが、こうも容易く精兵たちを……! だが、こちらもちゃんと対策を用意しているのだ!」

 

 なにやら小瓶を懐から取り出したけど……なんだあれ? 薬みたいなものが入ってるみたいだけど。

 

「これは、彼の精霊より受け取った秘薬だ! 飲めばたちどころに強力な力を得ると聞いている。これがあれば、お前など……!」

 

 俺、知ってる。それどう考えてもヤバイやつだ。なんかよく自我を失って化け物とかになるやつじゃん。

 

 え、飲むの、ほんとに? 精霊からもらった得体の知れない薬を?

 

 あ、飲んだ……。

 

 

 

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