終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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11話 取り残された者の悲哀

 

 いやーふつう飲む? 絶対怪しいじゃん、精霊からもらった薬とか……。

 

「――うおおぉおぉぉおおお……!」

 

 確かにあの精霊の魔力が噴き上がってるけど、大丈夫なんかこれは。

 

 あ、収まってきたぞ。

 

「……ふうぅぅぅぅぅ。なるほど、これが精霊の力……」

 

 なんか手を握ったり開いたり、手のひらに魔力を浮かべてみたりしてる。

 

 かと思ったら、先生はにやっと笑みを浮かべた。

 

「これは……これほどとは……。今さら謝っても遅いぞ、エドガー」

 

「おおおお、なんという魔力! これなら竜殺しと言えども……!」

 

 先生はその筋肉質な身体から魔力を放出して、自信満々に俺へ見せつける。辺りに霜が降ってきたし、あの精霊の魔力を移植されたって感じか。

 

 周りの軍人も妙に先生を持ち上げてるし、あの人、軍にいた頃はけっこう地位が高かったっぽい。その割に、彼我の戦力差は認識できてないみたいだけど。

 

「エドガーくん……正直、私の力じゃアレは難しそうなんだけど……。エドガーくんなら、いけそう?」

 

「いいよ、そんな申し訳なさそうにしなくって」

 

 力はもう俺の方が上になったけど、それ以外の部分ぜんぶ負けてるからな。見た目、性格、頭脳、社会的地位……。あ、自分で考えてて悲しくなってきた。

 

「で、先生をどうにかできるかって話なら。まあ、うん……」

 

 なんか高笑いしながら、ごちゃごちゃ俺たちにご高説垂れてるみたいだけどさ。正直あの精霊本体に比べたら――

 

「――出涸らしもいいとこだな」

 

「出涸らし……言うね、エドガーくん。じゃあ、他は私がどうにかするから、先生のことは任せていい?」

 

「もちろん。お安い御用だ」

 

 先生に対抗するように、俺は身体から魔力を湧き上がらせる。

 

 お、ようやく気持ちよくしゃべるの止めたか? こっち見て険しい顔してるな。

 

「じゃあ、先生。ちょっと痛くするかもだけど大目に見てくれよなー。殺しはしないから」

 

「ほざけ……! 学生の、それも元落ちこぼれのお前なんぞに、新たな力を得た俺が負けるものか!」

 

「その力ほんとに大丈夫なやつなんかね」

 

 呟きながら、剣を抜いて先生に向かう。

 

 景色が高速で後ろに流れていくけど、動体視力もばっちり強化してるからな。全部見えてる。

 

 ほう……軍人はみんな俺の速さに目が追いついてないけど、先生はしっかり動きを捉えてる。大言壮語するだけはあるってことか。

 

「じゃあ、まずは様子見でッ」

 

「ぐッ! これしき!」

 

 剣を合わせると、しっかりとした力が返ってくる。先生ムキムキだもんな。強化の上げ幅は相当でかそう。

 

 でも、それでも力は俺の方が上かな? ちょっとずつ力入れてけば、ほら。

 

「ぐ、ぐ、ぐ……! こ、この力でも足りないのか!? なら……これでどうだ!」

 

「おお、これスノウさんと同じやつ……」

 

 合わせた剣から、強烈な冷気が伝ってくる。剣の表面にうっすら氷が張って、俺の手まで凍りかける。

 

「やっぱ便利だよなあ。魔法使わなくてもそういうことできるの」

 

 スノウさんいるとこだと気軽に魔法使えないし。俺も使えないもんかな……。

 

「ふうっ、ふうっ。この、馬鹿力め……! だが――この上位精霊の属性魔力を前に、お前ではなす術ないだろう! そら!」

 

「おお、上手いもんだ。そんなこともできるのか」

 

 先生は周囲に氷の魔力を振りまき、人の頭ほどもある氷柱を作ってる。

 

「その余裕、崩してやろう!」

 

 そう言うと同時、俺に向かって飛んでくる何本かの氷柱。一緒に先生自身も突っ込んできてる。なかなか上手い戦い方だな、俺も魔法戦するとき参考にしよ。

 

「でも、氷柱くらい別にどうってことないな」

 

「ふん。確かにお前なら容易く斬り払えるだろうが――それは、明確な隙だぞ!」

 

「おおっ、上手い」

 

 敵ながら良いタイミングでの攻撃だ。俺が剣を振り切った隙に、仮に剣での防御が間に合っても力が入らない場所を刺してくる。

 

 でも、それじゃ遅いんだよな。

 

「なにッ!? 完全に、捉えていたはず……!」

 

「俺はまだ速さの天井見せてないからな」

 

「なッ……まだ速くなるというのか!?」

 

 その通り。言ったじゃん、さっきのは様子見だって。

 

 魔力強化の度合いは二つの要素で決まる。一つは使用者の魔力の絶対量。そしてもう一つは効率的な魔力運用だ。

 

 もともと魔力が少ない俺にとって後者は得意分野だったし、最近さらに自在な操作もできるようになった。そして、魔力量もいまや度重なる魔法使用でどんどん膨れ上がってる。

 

 じゃあ、その二つが掛け合わさったらどうなるのか。その答えが先日の山断ちであり、そして今日この場で見せる一撃。

 

 周囲にはたくさん人がいるから、もちろんあのときより抑えるけど……。

 

「エドガーくん……! 周りは私が抑えるから! エドガーくんは先生に集中して!」

 

「おーありがとう、スノウさん!」

 

 周りの被害を考えると案外気を遣うんだ。でも、周囲から邪魔が入らないだけでずいぶん集中できる。

 

 魔力を鋭く身体に回して、剣にもまとわせて。鋭く、研ぐ――。

 

「この……! 精霊の魔力を得た俺が敵わないだと!? そんなことがあってたまるか!」

 

「あ。先生、それ以上はやめた方が……!」

 

「くっ! この程度では、あの山を斬った一撃には対応できない……! もっと、もっとだ! もっと力を――!」

 

 そういうことするとダメなやつだって。人間のことなんて害虫程度に思ってる精霊が寄越した薬だぞ? ぜったいろくなことにならんて。

 

 ああ……ほら言わんこっちゃない。

 

「が、ぐが、ガ、ぁ、、力ァ……!」

 

「だ、大丈夫ですか!? とんでもない魔力が渦巻いて……くッ、アイシールのご息女を崩せない!」

 

 目がイッちゃってる先生に軍人たちが駆け寄ろうとするけど、スノウさんがそれをさせない。めっちゃ良い仕事してくれる美少女だ。

 

 で、助けもやってこない先生はというと……。

 

「ぐおおおおぉぉおお……」

 

 白目剥いて、口からよだれ垂らしてる……。確かにさっきよりは明らか魔力増えたけど。

 

 そらさあ、人類に敵対する強力な人外から力をもらうとか、そんなん明らかに暴走するやつじゃん。子供向けの物語とかでめっちゃよくある。

 

 ほら、なんか身体もちょっと異形化してきてない?

 

 あ、いかん。これはよ倒してやらないと、誰も制御効かなくなるやつだ。

 

 じゃ、巻きでいこうか。

 

「魔力を圧縮させて循環、と。よしよし、あの時よりは控えめに、速度優先で」

 

 スノウさんもそろそろこの人数相手はまずそうだし。

 

 さっさと終わらせよう。

 

 俺の身体と剣が、高密度の魔力をまとって薄く輝く。かっこいい演出だよな、これ。そして威力も折り紙付きときたもんだ。

 

「じゃあやるぞ。殺さないように、そーっとそーっと……」

 

 腕を後ろに引いて。イメージは薄く広い斬撃で、真ん中の威力高いとこは先生にだけ狙い定める。

 

 全身の筋肉を魔力とともに連動させ――音を越える速度で、剣を振るった。

 

「山断ちは言い過ぎだから。せいぜい――丘薙(おかな)ぎってとこかな」

 

 ――そうして。

 

 俺の一振りで、学園内での闘争はあっさり幕を閉じる。

 

 気を失った先生と、大部分の軍人を置いて。俺はスノウさんと一緒に学園を脱出した。

 

 どこか呆然とした様子のメリーを、その場に一人残して。

 

 

 

 わたしはこの場を去る二人――幼馴染のエドと、スノウさんを見送る。

 

 もはや手が届く場所からいなくなったと、心の中に大きく開いた穴を自覚しながら。

 

 思わず、ペタリと地面に座り込む。

 

「――だって、仕方ないじゃん……」

 

 わたし、学園の中ではけっこう成績もいいけど、スノウさんみたいに名家の出身じゃないし。かといって、エドみたいになんでも薙ぎ払えるほどの強さはない。

 

 軍に追われるエドの助けになんて、なれっこない……。

 

 うちにはまだ小さい妹もいるし、お母さんとお父さんも荒事なんて縁遠い二人だし。迷惑なんてかけられないよ。

 

 ……たしかにエドは、ずっと小さい頃から一緒だったけど。

 

 いつも無茶苦茶する、目を離せない弟みたいな存在で。……でも、実は優しいところもあって、わたしが落ち込んでるときはいつもよりバカなことして励ましてくれたりして。

 

 エドのおじさんとおばさんが亡くなったときは、空っぽになったみたいなエドを放っておけなくて。ずっと、一緒に泣きながらそばにいた。

 

 いつからか、ちょっと乾いた笑いを見せるようになって、バカだったエドが大人になっちゃったみたいで寂しくって。

 

 でも。それでも、わたしに優しいのはずっと変わらなかった。

 

「エド……」

 

 いつの間にか、わたしの手が届かなくなっちゃった。さっきだって、簡単に兵隊や先生を倒して。

 

 そして、わたしの前からいなくなった。二人で、わたしには目もくれず、広い世界に飛び立っていった。

 

 もう私たち、会えないの? エド。

 

 昔はずっと一緒だったじゃん。いっぱい喧嘩してきたけど、その度いつもエドが折れてくれた。

 

 もう、あの頃みたいには戻れないの?

 

 ――そんなの……いやだよ。

 

 エドのいない生活なんて、考えられない。

 

 バカばっかりするエドに呆れて、でも、いっしょにたくさん笑って。

 

 辛いことがあっても励まし合って。楽しいことがあったら分かち合って。

 

 そうやって、いままでやってきたじゃん……!

 

 でも。そんな、わたしの幸福を手放したのは。

 

 ――わたし、自身だ……。

 

 なんで、どうして。わたしは普通でエドは特別になったから――そんな勝手な考えで一線ひいちゃったんだろ。

 

 たしかにエドは強くなったけど、それ以外はこれまでとなんにも変わってなかったのに。

 

 なんで、わたしは。

 

 あんな馬鹿なこと、しちゃったの……!

 

 なんで……。

 

 お願い。お願いだから。

 

 あと一回でいいから。

 

 

 

「もう一度……次はぜったい、間違えたりしないから。やり直させてよぉ……」

 

 

 

 …………。

 

『――ふうむ。その想い、なにかに使えるかもしせませんね』

 

 ……っ? 声が、聞こえる?

 

「ど、どこっ? だれ!?」

 

『我が半身を討ったあの者。いろいろと、保険が要りそうですし』

 

 やっぱり聞こえる。まるで、頭に直接流れ込んでくるような女の人の声。これ、もしかしてあの時の精霊の!?

 

 なら声の出所は。やっぱり、エドに倒された先生の身体がうっすら光ってる……。

 

 都市一つを潰してしまえるような存在を、すぐ近くに感じる。

 

 恐ろしい。その一言で心が埋め尽くされそうになったけど。でも。

 

 わたしはそれで、エドのこと失敗しちゃったんだ。理解の及ばない力にだけ目を向けて。

 

 何回同じことしようとしてるの、わたし。

 

 この精霊、いまはわたしに害意がある感じはしないし、それに。

 

 精霊の台詞にかすかな期待を抱き、わたしは固唾を飲んで続く言葉を待つ。

 

 そして。

 

『よければ。貴女も来ますか? ――こちら側に』

 

 ……もちろん、人類の敵になるつもりなんてない。でも、わたしがまたエドの隣に立つ力をくれるなら。

 

 悪魔の誘いでも。わたしは。

 

「――――おねがい。……もう一度エドのとこに。わたしを、連れて行って……!」

 

 気づけば、そう言ってしまっていた。

 

 そうして、声だけの精霊は面白がるようにクスリと笑う。

 

『ふふ、いいでしょう。悪いようにはしませんよ。では、こちらに――』

 

 まってて、エド。

 

 もう一度わたしもエドの隣に。追いつくから……。

 

 

 

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