終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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14話 腕試し

 

 で、大人たち二人に連れられて向かった先は。

 

「おお、議事堂の中に訓練場なんてあるんだ」

 

「ああ、そうだ。エドガー……だったな」

 

 ひえ。ハスターさんに視線向けられたけど、鋭すぎて怖い。スノウさんが庇うように立ってくれるの、美少女のくせにイケメンすぎる……。

 

「この場所は私たち近衛隊のためのものだ。今ここにいる者たちも、みな私の同僚ということになる」

 

「へ~……。そうなんですね」

 

 近衛隊っていうと軍とは独立した武力組織で、評議会の守護が任務ってやつだよな。そこで一番強いのが王選騎士ハスターだってのは聞いたことある。

 

 んで、偉い人二人がいるからすごい見られてる。

 

「――お前たち! こちらに気を取られていないで真剣に腕を磨け!」

 

「ッは!」

 

 おお。ハスターさんの一喝で、すぐに視線を感じなくなった。

 

「悪いな、部下たちが。だが、彼らは訓練も仕事の内だから、我々がここを独占するわけにはいかない。少し気になるかもしれないが……ここでエドガーの力を試させてもらう」

 

「同意したからここまでついてきたんですけど、ほんとにやるんですね……」

 

「ああ。テイラー様のもとへ来た時点で、お前たちが評議会という後ろ盾を欲していることは分かっている。だが、都市に高位の精霊という脅威が迫っている今、無条件で力を貸すわけにはいかん。であれば、まずはお前が差し出せるものを示すべきだ」

 

 シビアだ。まあ、今は人類が追い詰められた時代。余裕なんてどこにもないよな。

 

 俺はそう納得したんだけど、スノウさんは言いたいことがあるみたいだ。

 

「一点、よろしいですか。ハスター卿」

 

「どうした、アイシール嬢」

 

「エドガーくんはまだ学生です。たしかにその力は私が保証しますが、本来は庇護されるべき立場。あまりに無法な要求をされるようなら、アイシール家として正式に抗議させてもらうことをお忘れなく」

 

「ふん、覚えておこう。ただその話は、エドガーが私たちの求める実力を持っていることが前提だが」

 

「気になるなら、どうぞ。確かめていただければよろしいかと」

 

 なぜか俺の代わりに啖呵を切ったスノウさん。謎に自信満々だ。

 

 王選騎士って言ったら、比喩でなくこの都市で一番強い人たちだからな。単騎で竜を倒す実力があるって言われてるから、火竜やった時の俺と同等以上ってことだ。

 

 ここで魔法使うわけにもいかないし、かなり苦しい戦いになりそう。

 

「では、そろそろ始めるか。私は訓練用の剣を使うが、エドガーは自前のもので構わない」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 腰から長剣を引き抜いて、ハスターさんと距離を取る。

 

「――ハスターよ。お前のことだから心配ないとは思うが、不用な怪我には注意するようにな」

 

「はッ。承りました、テイラー閣下」

 

 おっと、舐められてるなあ。大口叩く学生には妥当な扱いだろうけど、ここまで言われるとちょっと見返してやりたくもなる。

 

 胸を借りるつもりでやろう。

 

 それじゃあ。――剣を構えて、魔力を全身に巡らせる。

 

「! ほう……その魔力、なかなか」

 

「褒めてもらって光栄ですけど。ハスターさんの方が、俺より魔力多いっすよね」

 

「学生に負けているようでは王選騎士など務まらん。では……いつでも来い」

 

 じゃあ、学ばせてもらうつもりで。行くぞ――!

 

 強化した足で地面をぐっと押し、高速でハスターさんに接近する。

 

「ほう、正面突破とは。確かに速さはかなりのものだが……その程度で私の首は取れんぞ」

 

「おおっ。軽々……」

 

 昨日軍を相手にしたときは、先生にしか止められなかったんだけど。簡単に受け止められたし、岩殴ったみたいな重さだ。

 

 じゃあ、もっと速く……。

 

「これはッ。学生レベルの魔力操作ではないな……!」

 

 剣を振るとき必要な力は、身体の部位ごとに均等じゃないからな。力入れるとこだけに魔力を集中してやれば、総量は変わらなくても効率よく強化できる。

 

 魔力増えてからはやってなかったけど、もともと俺は少ない魔力でこうやって戦ってたんだ。

 

「でも、全部さばかれてるし! ていうかハスターさんも俺と同じことしてるじゃん!」

 

「学生にできることが王選騎士にできないはずはあるまいッ。どうした、この程度では竜を倒すなどできるはずはないぞ。これで終わりか?」

 

 そりゃ、竜倒したときは魔法使ってたからな!

 

 ていうか、もしかして竜倒せる火力を見せないと納得してくれない? ある程度の力で認めてくれると思ってたのに……。

 

 げんなりしてると、外野からも声が聞える。

 

「――ふむ。私の目からはエドガー君が劣勢なように見えるが、焦っている様子はない。不思議なものだ」

 

「エドガーくんの力はあんなものではありませんから。ただ……この場所で、どこまでやっていいのか迷っているのだと思います」

 

「なるほどな。我々や近衛隊の面々を気遣ってくれることはありがたいが。――聞いていたか、ハスター?」

 

 テイラーさんが問いかける。なんだ?

 

「ハスターよ。エドガー少年は周りに配慮して全力を出せていないらしい。都市最高の戦士としてどう思う?」

 

「もし、それが本当なのだとしたら。――王選騎士を舐めるなと。そう、言わせていただきましょう」

 

「ふふ。だそうだよ、エドガー君」

 

 挑発するようにテイラーさんに言われて。俺はハスターさんに打ち込んでいた剣を止めて距離を取る。

 

「たしかに、もうちょっと強いのもありますけど。……やっちゃっていいんですね?」

 

「それは傲慢ともとれる言葉だな。私はもちろん、周囲の者にもかすり傷ひとつ負わせないと誓おう」

 

 あくまで俺は挑戦者側だと。でも、そりゃ間違いないな。

 

 ここ最近ほとんど敵無しみたいになってたから、ちょっと思い上がってたけど。

 

 事実として、俺はまだハスターさんに傷を与えられてないのに、向こうには余力もありそうだし。都市を背負って立つ戦士相手に、全力を出さないのは失礼ってもんだった。

 

「――じゃあ、今の俺にできる最高の一撃で。竜だって倒せることを証明してみせますよ」

 

「ああ。ぶつけてこい、全力を」

 

 巌のように安定した構えで、鋭く俺を睨むハスターさん。

 

 じゃあもう、遠慮なんてしないからな!

 

 俺は身体の中にある力の源泉――存在核に意識を向けた。あふれ出す魔力に指向性を与えてやる。

 

 ぎゅっと固めて、鋭く研いで。剣先の延長線上すべてを切り裂くように。

 

 ――さらに。ここからは初めてやることだ。

 

 通常、魔力を何らかの属性に変換する役割は魔法陣が担う。だから属性魔力を使おうとしたら魔法がいるわけだが。

 

 今回はそれを魔力の発生源である存在核でやる。イメージは、【炎】を使ったとき魔法陣が自動でやってくれることを手動でやる感じ。むずいけど……よし、上手くいった!

 

 あとは剣を腰元に引いて、この燃えるような熱を込める。

 

「――それは……まさかその歳で、魔力の具現化まで? それに、属性魔力……!」

 

 具現化? そんな名前は知らないけど……俺が付けた名ならあるぞ。精霊の魔力が作った巨大な氷山だって断ち切った一撃だ。

 

 さあ。受けてみろ、都市最高戦力。

 

 これが、今の俺の最高だ!

 

「――山断(やまだ)ち【火三日月(ひのみかづき)】……!」

 

 逆袈裟に振るった剣から、巨大な燃える剣閃が飛んだ。

 

「これは――!」

 

 火竜をやった時は魔法を使ってたけど、この技なら魔法なしであいつを倒せる自信がある。

 

 それほどの熱と鋭さを持った斬撃が、訓練場の床を焼き切りながら険しい顔のハスターさんへ向かって。

 

 そして、着弾。大きな衝突音と一緒に、激しく火の粉が散る。

 

 ……いま、ハスターさん。山断ちがぶつかる直前、魔力を放出してた。あれは――。

 

「エドガー君の力……これほどとは。確かに、巨大な竜にすら見劣りしない」

 

 テイラーさんがそう呟いた直後だ。ここにいる近衛隊の戦士たちが、口々に驚きとハスターさんを心配する声を上げる。

 

 中にはハスターさんが大怪我を負ったんじゃないかなんて言ってる者もいたけど。

 

 分かってないな、自分とこの最強のこと。……今のじゃハスターさんは――

 

「――見事な一撃だった」

 

 ……ほらな、やっぱり。だって、見えたからな。

 

 放出した魔力が、硬質な鎧をかたどってハスターさんを覆うところ。それに、迎え撃つ剣を振るう腕は、後ろに向かって噴き出す魔力で加速してた。

 

 そんな見たことない使い方を、俺より多い魔力で一分の乱れもなくやってのけた。

 

 魔法まで使ったらどうなるか、ちょっと気になるとこではあるけど……。それでも、同じ土俵で戦った上でこうなんだから、俺の完敗だ。

 

 ……ただ。

 

「いまの技術。俺が使えるようになったら、もっと……」

 

「ああ。強く、なれるだろう。――私に聞いてくれればいつでも教えてやる」

 

 え。教えてくれるのか!

 

「不思議そうな顔だな。だが、何もおかしなことはあるまい。これから私たちは――ともに都市の危機へ立ち向かう、仲間になるのだから」

 

 おお、認められた! 仲間とか言ってるわりに、相変わらずおっかない目つきだけど。

 

「それに、この技術を身に着けられる者などそうはいない。すでに独力で魔力の具現化まで身に着けた生徒など、教えがいがあるというものだ」

 

 そう口にしたハスターさんは、敵を見るような鋭い眼光で、不敵に口の端を曲げる。

 

 ……この人、もしかして顔が怖いだけなん? 言ってることただの親切な人だ。

 

 でも、それなら良かった。これからしばらく世話になるだろうし、安心したぜ。

 

 なんて。軍に追われる身ながら、無事にこの先の目処が立ったと一息ついていると。

 

 あ、スノウさん。

 

「おつかれさま、エドガーくん! これで当面の心配はなくなったね」

 

「うん、頑張ったかいがあったな。王選騎士と戦えなんて、最初はどうなることかと思ったけど」

 

「そうだね。でも、後はあの精霊を倒すだけだ」

 

 それがむずいんだろうけどな。でも、俺たちだけでやるよりずっと戦いやすくなったはずだ。ハスターさんに色々教えてもらえそうだし。

 

 おっと、テイラーさんまで。

 

「さっきは疑って悪かったね、エドガー君。でも、今の戦いを見て私にも十分理解できたよ。君はきっと、対精霊戦において欠かせない人材になるだろう」

 

 おお。評議員の一人にここまで言われるとちょっと照れくさい。

 

 けど、ここまで言ってもらえるなら見捨てられる心配はいらなそうだ。俺一人ならともかく、スノウさんまで巻き込んでるからさ。

 

 よっしゃ。じゃあ、しばらくはこの人らに面倒見てもらいつつ修行して、良い感じのとこで精霊を――。

 

 なんて。そんな能天気なことを考えていた時だった。

 

 ――ドォン、と。

 

 この議事堂に大きな音が響くと同時に、ビリビリと振動が伝ってくる。

 

 この、凍えるような冷たい魔力……! でも、この程度の大きさってことは……。

 

 なんとなく何が起こったのか察したその直後。

 

「――軍の連中が、ここを攻めてきています! それも……なぜか全員が、属性魔力を操って!」

 

 

 

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