終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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15話 宣戦布告

 

 今の報告、氷の魔力って言ってた。やっぱりな。

 

 ここにいても感じる、この冷たい魔力。

 

「これ…! エドガーくん!」

 

「間違いない、あの精霊の魔力だ。昨日の先生ほどじゃないけど、同じようなのがいっぱいいるっぽいなあ」

 

 正気失ってたけど、普通に強かったからな、あの人。それがいっぱいかあ。

 

 おや。さっそくハスターさんが動きを。

 

「テイラー閣下や他の評議員方もいるここを襲うとは。軍もいよいよ血迷ったらしい」

 

「精霊からよく分からない薬もらってるみたいなんで、増長してるのかもですね」

 

「ほう? エドガーが倒した元軍人が服用していたという薬か」

 

「魔力の増強と氷属性化が効果でしたよ」

 

「なるほど……。よし。――この場にいる近衛隊員は出撃の用意をしろ! お前もこい、エドガー!」

 

 おお、俺もか。相手の情報一番知ってるの俺だし、ハスターさんたちは仲間になったわけだしな。仕方ない。

 

 あ、スノウさんまたキレてるよ。自分は名前呼ばれなかったからって。

 

「エスター卿、私も行きます! これでもアイシール家の次期当主、足手まといにはなりません!」

 

「……先ほど戦ったエドガーならまだしも、アイシール嬢の実力を私は知らない。今回は残っていろ」

 

「いえ、行きます……! わたしの実力ならエドガーくんが知ってますから!」

 

 うお、俺に振るのか。ハスターさんの視線はまだいいけど、スノウさんの目めっちゃ怖い。

 

「今日は先生ほど強い魔力感じないので。スノウさんの力なら問題ないとは思いますよ……」

 

 ほら見ろというスノウさんの表情。嘘は吐いてないけど、こう言っとかないと後が怖いんだよ。

 

「ふむ……エドガーがそう言うのであれば異論はないが」

 

 結局ハスターさん相手にゴリ押して、スノウさんも俺とおんなじ隊で迎撃に出ることになった。

 

 安心してとばかりに、俺を見てニッコリ笑ってるけど……まあいいか、細かいことは。実際スノウさんの実力なら危ない目にあうことはないだろうし。

 

 ヤバそうなら俺なりハスターさんが助ければいいよな、と。俺はかなりかるーい気持ちで迎撃に出たのであった。

 

 

 

 ――そうして。

 

 ハスターさん指揮のもと、訓練場を出て軍に攻め込まれている現場に向かって。

 

 戦うこと、しばらく……。

 

「――ふう。こんくらいの敵ならなんてことなかったな。スノウさんもやっぱ余裕そうだな」

 

「うん、この程度ならね。エドガーくんに教えてもらった魔力操作のコツも、ちょっとは役立てられたし」

 

「あー、斬撃飛ばすやつスノウさんもできてたな。しかも氷属性付き」

 

 さすが優等生だよな。教えてすぐ同じことできるんだから。

 

「エドガーくんがやるの2回も見たからね。――でも、エドガーくんこそハスター卿がやってたこと真似してたでしょ! びっくりしたよ私」

 

「ふっふっふ。気づいたかスノウさん。やってみたら案外上手くいったんだよな」

 

 ハスターさん、今度教えてくれるって言ってたけどそんな時間もなかったし。

 

 さっき試したのは、足裏から指向性与えた魔力を噴出するやつだけど、立体的な機動が出来てめっちゃ便利だった。さすが王選騎士の技術なだけある。

 

 そんなお役立ちスキルのパクり元であるハスターさんも、軍のやつらを鎧袖一触で薙ぎ倒してた。今は部下と一緒にテキパキ捕縛してるみたいだ。

 

 俺たちも手伝うかあ。

 

 なんて。

 

 完全に戦いは終わったと気を抜いた、その時だった。

 

 この場で聞こえるはずのない声が、直接頭に叩き込まれる――。

 

 

 

『――見つけましたよ、我が仇敵』

 

 

 

「ッ! この声……!?」

 

 頭に響いた女の声、聞き覚えがあるぞ。これは……。

 

「エドガーくん! これって」

 

「あの精霊だ! でも、感じる魔力はちょっとだけだな……」

 

『簡単には都市の中へ入れませんからね。この忌々しい城壁の術式がある限り』

 

「じゃあ、遠隔で声だけ届けてるって?」

 

 だったら、そこまで警戒するほどじゃないだろうけど。

 

 この場にいる俺のこと認識できてたりと、俺たちが使う通信魔術より高度なことやってそうだ。

 

 でもまあ、精霊なんだからそんくらいは出来るだろうし、それよりも気になるのは……。

 

「おい、エドガー。この声が……例の精霊なのか?」

 

「あ、ハスターさん。ええ、そうです。俺を狙ってる高位精霊っす」

 

「なるほど。ならば、こいつがアイシール卿をやった……。しかし、これではっきりしたな」

 

「はっきりしたって、なにがです?」

 

「――軍は、それが全体にせよ一部にせよ、精霊の制御下に置かれてしまっている」

 

 ああ……そうだよな。それはもう確定だよなあ。

 

 都市を守る存在が、都市の敵に迎合しちゃうって致命的だ。やろうと思ったら精霊を都市の中に引き入れることだってできるだろうし。

 

『愚かなニンゲンたちで助かりました。何やら我の力を狙っているようですが、身の程知らずにもほどがある。我が力のほんの一滴を受け入れただけで、簡単に自我を失うか弱い存在のくせに』

 

 軍は何考えてんだろうな。最大戦力である騎士アイシールを失った時点で、精霊を手玉に取れる可能性なんてないだろうに。

 

 まあ、その最大戦力がなくなったから焦ってるんだろうけど。

 

 そんなことより。

 

「わざわざ俺を探してくれてたとこ悪いけどさ。……結局、お前は何がしたいんだ? あの時なにもせず俺を都市に帰して、だってのに今回はわざわざ都市外から探しにきたり」

 

 行動がよく分からん。しばらく俺を人間同士の争いで苦しめたかったんじゃないのか?

 

『我も、簡単にはお前に手出しできない理由があったのです。精神的に疲弊させたり、そちらから手を出すよう仕向けたり……くだらない駆け引きをさせられていたのですが』

 

 ですが?

 

『――もう、それも不要になりました』

 

 不要? どういうことだ、それ……。

 

 なんか不穏なもんを感じる。

 

「俺を狙うのやめてくれたって? もしそうなら嬉しいんだけどなー」

 

『ふふ、それだけはあり得ませんよ。貴方を許すことはありませんし、生きている限り何処までも追いかけます』

 

「だよなあ。でも、それなら不要になったってどういうことだよ」

 

『簡単なことです』

 

 そして、精霊は。

 

 俺の、一番触れて欲しくないとこに触れやがった。

 

『貴方の大切な者を――我が眷属にしました』

 

 は?

 

「……もう、俺の大切な人ってだいたい死んでるんだけど。それって、生きてる人間のこと言ってるのか? どうやって……」

 

『私は都市に入れませんが。今のように、眷属を媒介に声を届け、貴方と縁ある者を誘いました』

 

 今、そこらで倒れてる軍人が精霊の知覚を代替してるっぽいことは分かるけど。

 

 今みたいな状況っていうと、俺が知ってるのは……昨日、精霊の力を取り込んだ先生を倒した時。

 

 仮にその時だとしたら、あそこにいた俺の大切な人ってまさか――

 

「――……ッ! メリーになんかしたのか……!? お前!」

 

『ふふ。ずっと他人事のように冷めた目をしていた貴方が、ようやくいい目になりましたね……!』

 

 やりやがったな、こいつ……!

 

「ッ質問に答えろ、クソ精霊!」

 

『いいですよ、答えてあげましょう。貴方の大切なニンゲンであるメリーとやらは、私の呼びかけに自ら望んで応じました』

 

「はあ!? なんでメリーが!」

 

 あの良い意味で普通なメリーが、そこらに転がってる欲に塗れた大人みたいに? 信じられるかそんなこと!

 

『我の言葉を信じないのは勝手ですが。気になるなら自分で確かめたらいいでしょう。どうせ痕跡を見つけることはできないでしょうから、我のもとを訪れることになるでしょうけど』

 

 それだけ言って。

 

 うっすら漂ってた精霊の力が消えていく……? 言い逃げかよ!

 

「このッ」

 

 クソ! よりによって、メリーに手を出しやがった……!

 

「え、エドガーくん! 落ち着いて――」

 

「落ち着けるかって! あいつ、俺が目を離した隙にメリーを!」

 

「れ、冷静になった方がいいって! あの女も自分から精霊のとこに行ったみたいだし、そんな酷い目には……」

 

「そんなこと分からないだろ! あの精霊に騙されて連れてかれたのかもしれないし! クソッ、よくもメリーを……!」

 

 あー頭に血が昇る! してやられた。

 

 そんな思いで頭が埋まってたから、スノウさんの雰囲気が豹変したことにすぐには気付けなかった。

 

「そう……。あの女のこと、そんなに大事なんだ」

 

 そりゃ大事だろ! 俺の親が死んでからずっと傍にいてくれたのあいつだけだし!

 

 って……。

 

 ――なんかスノウさんの目がかつてなく澱んでるんですけど!

 

 やばいやばい、もう雰囲気が魔の者だよ。ちょっと落ち着けないと。

 

「……あのースノウさん。違うんだって、メリーはほとんど家族みたいなものっていうか。ちっちゃい頃から一緒だったし」

 

「強くなったエドガーくんを避けるような女なのに――?」

 

「いやまあ。でもしょうがないって。メリーふつうの子だから」

 

「私の方が、エドガーくんのことを考えてるのに――?」

 

 ひい、怖い。怖すぎて頭冷えたわ。

 

 でも、スノウさんが気にしてるのはそこか。じゃあ――

 

「もちろん、スノウさんも俺の大事な人だから! 正直どっちが上とか、そんなん決められないけど」

 

 スノウさん美少女で良い子だし、俺の生活の面倒見てくれるし。

 

 あとは……今まで俺の周りにいなかった、何かを成し遂げる人特有のオーラ? みたいなの、正直かなり憧れてる。

 

 ちょっと怖いけど。

 

 ……さて、これで納得してくれるもんか? 無理だったらどうしよ。

 

 なんて思ってると、不服そうな顔のスノウさんが言った。

 

「……優柔不断は女の子に嫌われるよ。でも……私のことも大事だって言葉。今はそれで、誤魔化されてあげる……」

 

「あ、ほんとに!? 誤魔化しじゃないけどな! ありがとう!」

 

 なぜ俺がお礼を言っているのかわからんけど。とりあえずスノウさんの目は普通に戻った、良かった……。

 

 でも、スノウさんの真っ白なほっぺがちょっと赤くなってるな。隠そうとしてるけど満更でもなさそう。

 

 ひとまずは何とかなったと、ほっと胸を撫で下ろしていると。

 

「――エドガー。痴話喧嘩はそこまでだ」

 

「……。そんな生優しいもんじゃないんですが」

 

「女のわがままを受け止めるのも男の度量だ、我慢しろ。それよりも――例の精霊の手はかなり深くまで伸びているらしい。外に意識をむけてみろ」

 

「ええ? 外って……うわっ、この魔力。なんか増援来てるじゃん」

 

 軍の連中だな。性懲りもなく精霊の魔力に頼ってやってくるとは。

 

 ていうかあのクソ精霊、都市の外で待つみたいに言ってたくせに……!

 

 しょうがないな、じゃあ――

 

「――クソ精霊に味方する人類の敵は、全員タコ殴りにしてやる……! もう手加減しないからな!」

 

「……荒れてるな、エドガー」

 

 そりゃ荒れもするわ! メリー攫って、スノウさん刺激して。

 

 とりあえず憂さ晴らしさせろ!

 

 

 

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