終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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16話 再会

 

 それから、議事堂に現れた軍の増援をしばき回すことしばらく。

 

 ……転がる軍人が増えただけで、さっきと変わり映えしないな。

 

「後詰めはまだマシなやつがいるのかと思いきや、そんなことはないという。これだったらまとめて攻めた方がマシだっただろ……」

 

「ふ。たとえ一斉に攻められようと、私とエドガーがいれば何の問題もなかったがな」

 

 物騒な目つきで俺を見て、ニヤリと口の端を曲げるハスターさん。いやに高評価だ。

 

 その一方で、スノウさんはまたちょっとご機嫌ななめだけど。

 

「……ハスター卿は、ずいぶんエドガーくんを高く買っているようですけど。近衛隊にはあげませんからね」

 

「ん? いやまあ、もしうちに来てくれれば厚遇を約束するつもりではあったが……。エドガーはアイシール家に仕えてでもいるのか?」

 

 俺に話を振るなよハスターさん。機嫌悪いスノウさんとの会話に巻き込むなって。

 

 ほら、スノウさんも「わかってるよね?」って目で見てくる。圧があるわ、圧が。

 

 しょうがないな……。

 

「仕えてるってわけじゃないですけど。でも、いま俺はスノウさんちのお世話になってるんで、勧誘ならそっちを通して……」

 

「ふむ。では、エドガーをうちに貸す気はないと? アイシール嬢」

 

「――ダメです。今回の件が片付いたら、エドガーくんには正式にアイシール家の人間になってもらおうと思っていますので」

 

「ふうむ……アイシール家の者を近衛隊に入れるわけにもいかんか。いや、しかしエドガーなら私が上に掛け合って――」

 

「ですから、それは私が許さないと――」

 

 なんか言い合ってるけど。いや、俺いつの間にアイシール家に入ることになってんの? 聞いてない。

 

 そして、俺に一切話を聞かずその処遇を決めようとしてるお二人さん。

 

 いやまあ、近衛隊に入るつもりはないから基本スノウさんの言う通りでいいんだけど。ただ今回だけは……。

 

「あのー。ちょっといいですか?」

 

「エドガーくん?」

 

「どうしたエドガー。入るか? 近衛隊」

 

 圧が。

 

 いや、でも当たらずも遠からずで。

 

「俺は基本スノウさんに従うので、スノウさんがダメって言ったらそういうことなんですけど。でも、今回だけは話が別です」

 

 そう……どういうことか、メリーはいま精霊のとこにいるみたいだから。それだったら。

 

「できるだけ早く、精霊のやつを討たなきゃならない理由ができたので。行くでしょハスターさん。――精霊討伐」

 

 軍部が都市へ牙を剥いたなら、ハスターさんはその根を叩こうとするはず。俺の目的はそれだ。

 

 この一週間色々試したけど、まだ一人であいつに勝てるか分からんし。メリーのことがないなら、別に勝てる保証なんてなくても良かったけど。

 

「エドガーくん。……それは、あくまで精霊を倒すまでの間だけ近衛隊と行動するって。それだけのことだよね?」

 

「もちろん。アイシール家うんぬんはちょっとよくわからんけど……スノウさんがダメって言うなら、近衛隊に入隊することはしない」

 

「…………。それなら……」

 

 スノウさんちょーイヤそう。眉をしかめて渋々って感じだな。

 

 でも、スノウさんだって理解してるもんな。俺がこの先まともに生活するには、精霊のやつをどうにかするしかないって。

 

 じゃあ、スノウさんっていう一番の難関をクリアしたなら、もうこの話はまとまったも同然だ。

 

「――アイシール嬢も認めているのだから、私からは文句などない。お前がいれば間違いなく精霊戦は楽になる」

 

「期待に沿えるかは分からないですけど。俺は俺で、あの精霊に負けられない理由ができたので。――じゃあ、さっそくこれからの予定を決めましょう」

 

「ああ、いいだろう。ことは急を要するからな。あまり休める時間はないと覚悟しろ」

 

 望むとこだ。俺だって時間はかけてられない。

 

 なんせ、メリーのやつの命が掛かってるんだから――。

 

 

 

 そうして、早速その次の日のこと。

 

 俺はスノウさんやハスターさん、そして近衛隊のみんなと一緒に隊列を組んでいた。

 

 歩くのは――死の気配が濃密な、見渡す限りの荒野。

 

 ……この数週間のうちに、三回も壁の外に出るなんてなあ。でも、今回は前の二回と違って。

 

「明らか誘ってんな、これ。とんでもない魔力だ……」

 

「ああ。おかげで、居場所を探る手間が省けて良かったが。しかし、ここまでとは思わなかったぞ」

 

 さすがのハスターさんも想定外かあ。そりゃそうだよな、これ実際会った俺の想定よりさらにヤバいもん。

 

 ほら、スノウさんも下向いてなんかつぶやいてるし。

 

「――さすがに、……ぅ無しは厳しい? 最悪、…… が代わりに……」

 

「スノウさん? 大丈夫かスノウさん?」

 

「っえ、あ、なに!? どうかしたっ?」

 

「いや、ちょっと様子おかしかったから大丈夫かって。あれだったら、無理せず後ろの方で援護してくれたらいいし」

 

「――ええ? 私がそんなことを? エドガーくんを、前線に残して?」

 

 この圧よ。

 

「いやごめんて。別にスノウさんがそうするつもりとは思ってないけど。ほら、調子悪いとかあったらあれだなって!」

 

「……そういうことなら、心配はいらないよ。私は何があってもエドガーくんのそばにいるから。死んでも」

 

「死にそうなったらいったん下がってな」

 

 本気じゃないよな? 真顔で言ってるけど、さすがに冗談よな。

 

 なんて、たらりと冷や汗が流れたその時だった。

 

「――総員、気を引き締めるように! じき精霊との接触予想エリアに突入する! もしわずかでも出現の兆候を見てとったら、すぐ私まで報告を上げろ!」

 

 お、とうとう。前回会った辺りが近いってことか。漂う魔力もどんどん濃くなってるし。

 

 そして、精霊に近づいてるってことは、きっとメリーのもとへも迫ってるはず。

 

「ハスターさん」

 

「ん? どうしたエドガー」

 

「昨日から言ってることですけど……もし精霊のそばに俺と同年代の女の子がいても、絶対殺さないでくださいよ。それ、俺の幼馴染なんで」

 

「ああ。よほどのことがなければ、お前の言う通りにしよう。相手から襲ってくるようなことがなければだが」

 

 それはさすがに大丈夫だろ。あの常識人のメリーが、まさか近衛隊に向かって攻撃するなんて、そんなことあるわけないから。

 

 なんて、能天気に考えていた俺は。

 

 ――ずいぶんと、甘かったらしい。

 

「こ、これは……前方に強力な魔力反応! 各員、警戒を! ……これは、巨大な氷柱!?」

 

 おお、危ねえ。

 

「俺がやります!」

 

 魔力固めて広げて……。

 

「盾張ったんで、みんなこの後ろに!」

 

 飛んでくる魔力は確かにデカいけど、こんくらいなら正面から防げる。

 

 ……ほらな。ただ、砕けた氷で視界が遮られちゃったけど、後ろから近づいてくる誰かがいるのは魔力で分かる。

 

 だから、気づいちゃったんだよな。

 

 精霊より小さいけど、ほとんど同種の魔力を放っていて。その中にほんのちょっと混じってるのが、俺にとって馴染み深い魔力だってこと。

 

 つまり、こいつは――

 

「初手攻撃とか、庇いきれんだろ……。――メリー……!」

 

「――エド……! 来てくれたんだ!」

 

 氷の破片が地面に落ちて、見慣れたちっこい人影が見える。

 

 メリー、こいつ……あんな攻撃してきたくせに平気な顔しやがって。

 

 ……いや、違うな。いつもと雰囲気がぜんぜん違う。

 

「エドガー、あれがお前の幼馴染か? ずいぶんと強烈な魔力だが」

 

「はい。でも、元の魔力はあんなじゃなかった。精霊から何かされたんでしょうね」

 

 発する魔力で強者特有のプレッシャーを感じさせてくる。

 

 けど、その割にこの表情は……。

 

「ずいぶん余裕なさそうだな、メリー……!」

 

「エド……」

 

「――ハスターさん。ほんとに申し訳ないんですけど、ちょっと話しさせてもらっていいですか?」

 

「……いいだろう。その代わり、出来るだけ情報を引き出せよ」

 

「はい」

 

 よっし、ハスターさんの了承は得られた。さっきの攻撃で、問答無用に戦闘開始もあったからな。

 

 じゃあ、手短にメリーを取り返して……と?

 

「スノウさん? どうかし――」

 

「――あの女をどうするつもり? エドガーくん」

 

「どうするって……」

 

「昨日の話だと。もし話し合いの余地があるなら事情を聞いて説得するって……そう決めたよね。でも、さっきの彼女はそうじゃなかった」

 

 そりゃ挨拶がわりに氷柱飛ばしてきたからな。

 

「いまのは有耶無耶にしていいレベルの攻撃じゃなかった」

 

 うん、その通り。ぐうの音も出ない。

 

 スノウさんメリーにやたら厳しいけど、この件に関しては反論の余地ないんだよな。

 

 ないんだけど。

 

 けど。今回だけは――

 

「スノウさんの言うことはもっともなんだけど。でも――」

 

「――今回だけはって、そう言うんだよね」

 

 うっ。まあ分かるよな。

 

 そりゃスノウさんからしたら良い気分しないのは分かる。でもこれだけは許してくれ。メリーのことだけはさ……。

 

 さあなんて説得したもんかな、なんて。そう悩み始めた瞬間だった。

 

「――いいよ」

 

「え。いいの!?」

 

 あっさり? 予想外だ。

 

「私だって、同じ学園の仲間を簡単に殺したりしたいわけないから。穏便に済むならそれに越したことはないよ」

 

「おお。スノウさんとメリー仲悪かったからてっきり……」

 

「個人的な好き嫌いで命を奪おうとするほど頑迷じゃないつもりだよ、私は」

 

 じっとりと半目で睨まれる。よく考えたらそうだな、ごめんなさい。

 

 じゃ、スノウさんの許しも得られたことだし早速――

 

「ただ、その代わり」

 

「え?」

 

「――彼女を説得する役目は、私に任せてほしい」

 

「あ、ちょっ」

 

 そう口にしたスノウさんは。

 

 俺の返事も待たず、隊列の前へと進み出ていく。

 

 そうして、次弾の溜めを進めるメリーに向かって言った。

 

 

 

「自覚のない幸せ者ほど腹立たしいものはないよ。――貴女は、私が殴ってでも連れ帰る」

 

 

 

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