終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~ 作:大仙古墳
あ、降りてくるぞ。火吹かれなくてよかった。
「じゃ、俺やるからスノウさんは下がってて」
「何でそうなるの!? エドガーくんが竜の相手をできるわけない! 私がやったって変わらないだろうけど……それでもせめて二人で……!」
「いやいや、それがそうでもないんよな。俺、実はスノウさんの知らないとこでめちゃ強くなりました」
「何バカなことを! 早く二人で……いや、もういっそ私が足止めするから、エドガーくんはできるだけ遠くまで逃げて!」
信じてくれないだけならまだしも、なんか自分を犠牲にしようとし始めたぞ。スノウさんは名家の娘なんだから、普通逆だろうに。
それにスノウさんって、いつも俺含めてみんなとすごい壁作ってたし。
え、ほんとになんで? 俺のこと好きなん?
「まあ、いいから見ててよ。俺ほんとに強くなったから。今から証明するって。――あ、ほら来た来た」
「あぶない――!!」
いつまでも待ってはくれないのは、人を憎む火竜さんだ。得意の息吹こそ使わないものの、そぼ鋭い爪を俺たちに向かって振り抜いてくる。
おおお、すっごい迫力。
――だが。
「効かないんだよなあ」
「え……嘘!?」
俺が突き出した腕は、火竜の巨大な爪を受け止める。
あ、ちょっと痛いかも。いやいや、でも効いてないようなもんだから!
「――おらァ!!」
「グガアアァァァアッ!」
うるせっ。
力任せに腕を振るうと、後ろに弾かれた火竜くんが屈辱に怒り狂う。
ほんとは吹っ飛ばそうと思ってやったんだけど、さすがにこの巨体は魔力強化だけじゃ無理かあ。
でも、それだって今までの俺じゃ考えられない力だし、そもそも人類全体を見ても稀なほどでしょ。
ほら、現にスノウさんドン引きしてるし。
「……りゅ、竜に力で負けてない? これ、ほんとにエドガーくん……?」
これ扱いだよ。偽物とか疑われないうちに、ちゃちゃっと片付けますか。
俺はさっきまで身体の強化にまわしていた魔力を、今度は魔法の発動用に練り上げる。
こねこねして……俺が唯一覚えている直接攻撃できる魔法を準備する。
「……グルルゥ」
お、なんか警戒されてる? 魔力を高め始めたのが分かるのか。さすが竜。
でも、そんなの関係ないからな。今から使うのはべつに高度な魔法じゃないけど、別の魔法でかさ増ししてる俺の魔力を注いだら、どんな魔法でも必殺級ってね。
……よし、魔法陣できたっと。
「……え!? ダメだ、エドガーくん! 魔法を使っちゃ……! それに、キミの魔力じゃたとえ魔法を使ったって――」
「ふふふ、その問題は解決済みなのさ。見てくれこの魔力を」
ゴォッ! と。竜みたいに特殊な知覚を持ってなくても、こうやって無駄に噴き出させて見せれば……。
「――こん、な……! まさか、エドガーくん、もうすでに魔法をッ!?」
あちゃ、バレたか。
俺の表情でスノウさんも悟ったみたいで、さっきよりさらに凄い勢いで止めてくる。
「ダメダメダメ……! そんな、二つ目の魔法なんて使ったらぜったいに死んじゃう! キミだけはぜったいイヤ!!」
スノウさん泣きそうな顔になってる。いつもみんなに素っ気ない態度取るのに、こういうところ優しいんだよな。
でもまあ、これ以上くっちゃべってる時間はないな。お相手さん、もう我慢ならんみたいだ。
「グルウォオオオオオオォォ!」
それじゃ、俺も――。
「第一魔法――」
「ダメええええええええ!!」
「――【炎】」
直後。
俺の掲げた手の先――巨大な魔法陣から業火が溢れる。そら、魔力を次から次に注いでやれば、際限なく高まる温度とその規模。
魔法陣のこっち側には影響ないけど、向こう側は周囲の地面や草臥れた草木が焼け焦げていく。
どころか、地面なんか融解しちゃってるな。
火竜を火で倒そうとしたらけっこう時間かかるかもと思ってたけど、これならぜんぜんすぐ行けそうだ。
それじゃ、この巨大な炎塊を成形して……細長く、先は尖らせて、と。
完成!
「――
かっこよく呟くと同時、俺が作った火の槍が回転し、射出された。
おお、目で追えない速度……。
もちろん火竜に着弾するのは瞬きの間で。
竜の悲鳴が聞こえる間もなく、巨大な爆発音が鳴り響いた。
……あ、やべ。調子乗って魔力使い過ぎた。
絶対こんなにいらなかったよな。でも、せっかくだし格好つけたかったんだよ……。
意識が遠のく……。
うーん、あの火竜は間違いなく倒したと思うんだけど。あとは他の魔物に襲われる前に、スノウさんが俺を運んでくれることを信じよう。
ああ……これ気絶直前の幻覚か? なんかスノウさん、号泣しながらこっちに向かってくる。
現実でもこんな光景見れたらな……――
私の目の前で、とんでもない魔法を使って崩れ落ちるエドガーくん。
人の身に余る大魔法の代償がどれだけ重いのか、考えたくもない。
「エドガーくん!!」
すぐに走り寄って容態を確かめる。
心臓は動いているし、息もしてる。大きな怪我なんかは無いように見える。
でも、それは外から見た様子だけの話だ。
――人間が魔法を使えば、何らかの重い代償を払わなければいけない。これは世界の理で、過ぎたる力に痛みが伴うのは不変の法則だ。
過去、調子に乗った人類に与えられた罰だと言うけど……今はそんなことよりも!
「エドガーくん、エドガーくん……! しっかりして!」
うう。なんで、エドガーくんが。
彼はもともと、魔法学園でもほとんど最底辺と言っていいくらいに魔力がなかった。
なのに、あれだけ莫大な魔力を得るほどの魔法を使って、その上で最後の炎だ。
二回も連続で魔法を使った代償がどうなるか、私は寡聞にして知らない。
もう、一秒も無駄にはできない。
私は急いでエドガーくんを背負って、すぐに移動を開始する。早くみんなのもとに――都市に戻らないと、このままじゃエドガーくんが。
私は必死に足を動かして、少しでもエドガーくんが生き残る可能性に賭ける。
だって……どうして、よりにもよってエドガーくんが……!
もっともっと、死んでいいようなやつはいっぱいいたのに……!
都市防衛の重鎮――王選騎士の父を持つ私に媚びてくる有象無象。それか、身分が違うと関わりを避ける者たち。
私自身も属性魔力なんて珍しいものを持っているせいで、なおさら普通の人付き合いなんてできなかった。
みんなが私に期待する。父のように立派な戦士になれ、都市を守ってくれと。持ち上げてやるから、特別な待遇をくれと。
そんなうざったい周囲はうんざりだ!
私に何も期待しないし、変に媚びたりもしない、自然体で友だちとして接してくれたのは、エドガーくんだけだったのに……!
ダメだ、ダメだ、ダメだ。死んじゃダメ、エドガーくん! 私のせいでなんて、そんなの……!
絶対死なせない、死なせない! 私の四肢がもげたって、絶対に都市に連れ帰る……!
もう、目を離したりしない。ずっと側にいる。彼が無茶しなくてもいいように、私がお世話するから!
だから、お願い。
私を置いていかないで、エドガーくん――