終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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3話 帰還

 

 ……なんか、心地いいな。

 

 真っ暗だけど、身体を包むふかふかが――と。そこまでぼんやり思ったところで、俺の意識は急速に浮上していく。

 

 ああ、俺眠ってたんだな。俺の部屋にはこんな質の良いベッドないから、違和感で目も覚めるってもんだ。

 

 そんな悲しいことを考えていると、やがてうっすら開いた目から眩しい光が飛び込んできて……。

 

「エドガーくん……!」

 

「――うぇっ!?」

 

「目が覚めたんだね! 良かった……!」

 

 ぐえ。目覚めに一発、美少女の頭突き。痛いけど、許す……。

 

 なんてことを言っている場合じゃないわ。

 

 ……そうだ。俺は壁外演習で竜に襲われて、魔法でスノウさん助けようとしたらガス欠で意識を失って。

 

「よかった……ほんとによかった……! 私、エドガーくんがこのまま死んだらどうしようって……!」

 

 顔を上げたスノウさんの目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちている。なんだろう、ただの魔力切れなのに、なんか気まずい。役得っちゃ役得だけど、申し訳なさが勝つわ……。

 

 その後もしばらく抱きつかれたままスノウさんの嗚咽を聞く。

 

 で、やっとスノウさん落ち着いてきたのを見て、俺は口を開いた。

 

「まあ、そんな気にしないでよ。俺元気だから。……それで、あの後ってどうなった? ここは?」

 

「……ぅん。気にしないのは、無理だけど……。でも、エドガーくんの命が助かっただけで奇跡なんだ、切り替えなきゃね」

 

 ぱんっと頬を叩いて、泣き腫らした目で俺を見るスノウさんが言った。

 

「ここは、学園の中でも一部の生徒だけ利用できる特別治療室だよ」

 

「特別治療室?」

 

「うん。魔法の代償で倒れたエドガーくんを背負って、なんとか都市までは帰って来たんだけど。今回一番の功労者であるエドガーくんを、Cクラスだからって一般治療室に入れようとするものだから……ちょっと、怒ったらね」

 

 そう、背筋がひんやりするような視線に変わったのは、いつでも可愛いスノウさんだ。今日も今日とて美人さんで、真っ白で絹のような髪が肩口で揺れている。

 

 ただ、なんか表情が怖いんだよな……。薄く笑みは浮かべてるけど、目が笑ってないっていうか。まあ、その黒い感情が俺に向いてないことは分かるけど。

 

 なんてことを思っていると、スノウさんの表情がまたすっと変わる。明らかに俺のことを心配してる顔。

 

 スノウさんが口を開く。

 

「――そんなことよりも、エドガーくん。……身体と頭は……どう、かな」

 

 なんだその質問。

 

 スノウさんは俺に悲壮な顔を向けてくる。

 

 で、俺の身体と頭だって……?

 

「身体の方は、ぜんぜん大丈夫。ほら、足も腕も元気に動く」

 

「あ……良かった……」

 

 心底ほっとしたような顔するんだな。確かにスノウさん、前から優しくはあったけど、ここまで露骨じゃなかったよな。

 

 まあ、いまはいいか……。

 

「あとは、頭な。何を心配してるのか知らないけど……こうやって普段通り話せてるんだから、まあ問題ないだろ」

 

「……」

 

 何その意味深な沈黙。相変わらず悲壮感溢れる、どころか泣きそうな顔してるし。

 

「なんか、まずいことある感じ?」

 

「…………うん。ほんとうに……ごめんなさい」

 

 え? それは何に対する――

 

「エドガーくんが使った魔法――その代償は……脳に起因する何らかの能力、あるいは記憶である可能性が高いって。身体には目立つ損傷が無かったから、きっと見えないところで代償を払ったんだって先生が」

 

 あ、その話!? そういえばちゃんと言えてなかったっけ、俺は魔法使っても代償いらないって。

 

 心配いらないって、ちゃんと教えてあげないと。

 

「そのことなんだけど――」

 

「――私が! すべての責任は、私がとる……! こういうケースでは、だいたい魔法士としての力を失うと、そう聞いてるけど……でも、何があっても今後のエドガーくんの人生は、私が面倒を見るから!」

 

「ええ!?」

 

 なにそれ、求婚!? 言ってること、プロポーズと同じようなもんじゃん。今後ずっとスノウさんが養ってくれるってことだろ? 最高かよ。

 

 ……もうこれ、俺の力のこと黙っとこうかな。それで一生が保障されて、超絶美少女のスノウさんともずっと関わりを持てるとか。

 

 俺、親もいないし貧乏だし。必死に働いて食い扶持稼ぐより、スノウさんにぶら下がってたほうが安泰じゃないか?

 

「……じゃあ、まあ。それでお願いできる? あ、全然贅沢言う気はないから。全然ほんと、せまーい部屋と飢えないだけの飯があれば、それだけで俺満足だから」

 

 しごく真面目に、申し訳なさそうな顔でこくりと頷くスノウさん。

 

 いやほんと、スノウさんの家からしたら小遣いくらいの額貰えればいいから。名家の跡取りを竜から守ったんだし、さすがにそんくらいの報酬は貰ってもいいよな。

 

 そんなお気楽な考えだったんだけど……。

 

 ――スノウさんは、俺の低い望みのはるか上をぶち抜いてきた。

 

「じゃあ、今日から――」

 

 その真っ白な肌に良く映える、青い瞳で俺を見つめて。うっすら頬っぺたを赤くしてるのが気になるけど……スノウさんは俺に言った。

 

「――エドガーくんには、私の家に来てもらう。……部屋は、私と一緒でいいよね」

 

 なんで?

 

 

 

 そうして。

 

 しばらく医務室で検査を受けて、目立つ異常はないってことで。

 

「――ほんとうに、身体には異常なかったんだね。歩行機能も問題なさそうだし……」

 

「ああ、ぜーんぜん問題ない。スキップだってできちゃうぜ」

 

「ああっ、まだあんまり激しい動きは……!」

 

 焦ったスノウさんに腕を掴まれる。……手、やらか!

 

「ほら……まったくもう。キミはまだまだ病み上がりなんだから、大人しくしておかないと。ね」

 

「うーん、了解」

 

 なんか甘々すぎて怖いな……。俺に魔法を使わせた負い目からか、とんでもなく過保護になってる。

 

 ぜんぜん今まで通りの、ちょっと素っ気ないくらいでいいんだけどな。なんか申し訳ない。

 

「でもさ、ほら。身体は見ての通り平気だし。あ、あと魔力だって普通に使えた」

 

 手のひらからボッと魔力を放出する。何回か魔法でバフかけてたら、素の魔力量もけっこう増えたんだよな。

 

 でも、この行動はさすがに俺の考慮が足らなかったみたいだ。

 

「――ッダメだ!! は、はやく止めて! ああ、でももう使っちゃったら……なんで、こんなところで!?」

 

 前までの俺の魔力量と比べて明らかに多い魔力の放出は、どうもスノウさんにとっては地雷みたいだった。ここが学園の廊下だと忘れたような狼狽っぷりで、周りからもめっちゃ視線を向けられる。

 

 いかんいかん、すぐ説明しないと。

 

「落ち着いてスノウさん。これ、別に魔法とか使ってないから! 魔力量増加の魔法使ったら、なんか何もしてないときでも魔力増えたみたいでさ」

 

「……そう、なの?」

 

「そうそう。だから俺、むしろ前までより強くなったんだぜ」

 

「それなら……。――――。……でも」

 

 うん? 納得してくれたと思ったら。なんか、スノウさんの綺麗な目から光が消えたぞ。

 

「――エドガーくんは、もう魔法なんて使わなくていいからね。これ以上傷つかなくていいよう、ずうっと私の傍で…………なにもしなくても、私がお世話してあげるから」

 

 ひえっ。今の言葉に、冗談の色なんてひとかけらもなかったんだけど。

 

 いや、やっぱ冗談だよね?

 

 どうもスノウさんの雰囲気が異様で、聞き返すこともできずに。

 

 これまでと一変したその態度にも突っ込みは入れられず、俺はおとなしくスノウさんについて進むのであった。

 

 

 

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