終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~ 作:大仙古墳
じゃあ、やりますか。
「ちょうど三体だし、一人一体でいいよな?」
「いや、エドガーくんに無理はさせられないし、全部私が……」
「それじゃあスノウさん一人で行けばってなっちゃうじゃん」
「……」
「不服そうな顔だな」
「……じゃあ。せめて、危なくなったらすぐ呼んでね」
「――その時は。エド、わたしに言ってくれていいからねぇ」
ああ、ほらもう。睨みあうなってば。
……よし。そろそろ真面目に準備しないとな。剣を抜いて、と。
俺たちに向かってくる魔物は全部同型。黒い毛皮にしなやかな四肢で、大きさは俺たちと同じくらい。
「影豹《シャドウパンサー》か。特別な能力はないけどスピードには注意、だったよな」
「うん。お互い、気をつけよう。私は右をやるよ」
「じゃあ、わたしは左にしよ」
「俺は真ん中でりょーかい」
三人それぞれ武器を手に構え、身体に魔力を流す。
ドッと溢れた魔力が四肢に巡って、身体能力が跳ね上がったのが分かる。うーん、この万能感。
隣からも魔力の気配を感じる。準備は万端みたいだ。
じゃあ……最初は、真ん中の影豹が突出して向かってくるから、俺の出番だな。
「気をつけて、エドガーくん!」
「危なかったら下がっていいからねぇ」
「大丈夫だって、こんくらい」
過保護な二人に苦笑しながら腰を落として……今だ。
強化された足で地面を蹴って、強力な反発を足の裏で受けると、俺の体は弾かれたように前へ進む。
スピード自慢の影豹くんにも負けちゃいないぜ。
「おっ、これにも反応できるんだな。低位の中では強い方なんかな」
一瞬で眼前に現れた俺に、それでも影豹は一拍遅れて攻撃してきた。その鋭い爪で、今まで多くの人間を切り裂いてきたって?
「俺には当たんないけどな」
一歩横にずれるだけでこの通り、難なく回避。で、空振って隙を見せたとこに……。
「ほいっと」
強化した腕で振るう、これまた魔力で強化した長剣。切れ味も増してるし、腕力ゴリ押しで両断できるってな。
悲鳴もなく、ドサリと地に伏せる影豹。
さて、一瞬ではあったけど。そうこうしてるうちに、二人も戦闘開始したみたいだな。
「俺はもう終わったからなー。手伝ってほしかったら言ってくれー」
「私は大丈夫……!」
「もちろんわたしも……!」
ま、そだろな。二人とも優等生だし。じゃあ俺はおとなしく見学しときます。
ぷらぷらと長剣を揺らしながら、まずはスノウさんの様子を見ると……。
そりゃ余裕だよな。スノウさんは細身の剣を一閃した後の姿勢で、崩れ落ちる影豹に背を向ける。
俺みたいに一刀両断ではないけど……その代わり、影豹の傷口に霜が降りて一部凍り付いてる。
スノウさん、魔法を使わなくても素の魔力に属性が乗ってるもんなあ。あれかっこいいよな……。
なんてことを思ってると、少し遅れてメリーの方も終わりそうだ。小柄な体形を活かしてちょこまかと翻弄して、ちょうどいま短めの剣を影豹に突き刺したのが見える。
で、あんまり体格の面で優れてはないメリーがそこからどうするかというと――
「――
そう唱えた直後。剣が刺さったところから影豹の血が一気に噴き出して、そのまま力なく倒れ伏す。
うーん、相変わらずえぐい。魔法じゃなく単純な魔力操作であれだからな。さすが優等生。
メリーは一応俺と同じCクラス――いわゆる底辺クラスにいるけど、実力的にはSクラスでもおかしくないんだよな。ただ各クラスにもまとめ役の優秀な生徒が必要で、特に良い家柄でもないメリーがCクラスを押しつけられたってわけ。
……じゃ、無事戦闘も終わったし隊列に戻るか。
「おつかれー、二人とも。さすがだったな」
「エドガーくんだって、やっぱり前よりずいぶん強くなったね。あんまり危ないことはしてほしくないけど……」
「壁外に来て危ないことしないってのは無理だろー」
……ん? なんかメリーに睨まれてる。なんだよ。
「どしたよメリー。なんか問題あった?」
「……なんで、エドがそんなに強くなってるの。なんでわたしに教えてくれなかったの?」
「ええ!? 俺言ったじゃん、前の演習の時!」
「あれは……! いつものエドの、バカな軽口だと思って……」
おん……。まあ、普段の行いを顧みると反論はできん。が、しかし。
「いいじゃん、強くなったんだから。いいことだろ?」
「それは……そうだけどぉ」
前までずっと文句言ってたじゃん、俺が弱いって。幼馴染として今のほうが安心できるんじゃないの?
どうも歯切れ悪いな、メリーのやつ。顔も暗いし。
「なんだよ、幼馴染が強くなって嬉しくないのかよ。もうメリーにあんま迷惑かけなくてすむじゃん」
「……べつに、迷惑なんて……」
「それにほら。今度は、俺がメリーを守ることだってできるし」
「……!」
おや。うつむいてた顔を上げたぞ。
「そもそもさ、今までが逆だったんだって。男が美少女に守られるなんて格好つかないじゃん」
「美少女……」
「な! いいだろそれで」
「……いいかもぉ」
お。さっきまで曇った表情だったのに……ちょっとニヤつきだした。
どうだ。これまで面倒かけられてた幼馴染が、成長して恩返ししてくれるって言うんだ。そんなん嬉しいに決まってるだろ?
ふふふ、メリーには子どもの頃から世話になってたからな。うちの親が死んでからは、おじさんおばさんにだって助けてもらったし。
「……まあ、そこまで言うなら……許してあげよっかなぁ」
「おう、そうしてくれよ」
「――……君たち」
「ん? なんだよスノウさん」
「私の前であんまりそういうの……しないで?」
「そういうのって――あっ、はい、ごめんなさい」
ひええ。美少女の怖い顔ってほんとに怖いよな。
最近好感度上がったのはいいけど、幼馴染との会話も気をつけろってか。くわばらくわばら……。
俺は後ろに二人を連れて、足早に隊列に復帰した。
「ただいまーっと。……どうだマーリン、ちゃんと魔物は退治してきたぞ。これで文句なかろう」
「……チッ。あんな雑魚を蹴散らしたくらいででかい顔をするな。確かに、なぜか前よりは腕を上げたようだが……その程度の実力じゃ、スノウさんの足を引っ張ってることに変わりはないからな、この劣等が……!」
やっぱりこいつがこだわってるのはスノウさんなんだよな。こんなやつに執着されて、美少女も大変だよなあ。
あ、またスノウさんに睨まれて縮こまってら。学習しないやつめ……誤魔化すように探索の号令を上げよって。
さて。それじゃ、副指揮官サマにも言われたし、行きますか……。
――で。もう、探索を再開してずいぶん経つ……。
場所も先生が言うには先遣隊が消えた辺りまで来ているらしいけど、まだまだ目的の精霊は見つからん。
俺以外の生徒たちも最初の緊張はどこへやら、次第に集中が切れてきた感じだ。先生も俺たちの様子は把握してるだろうし、そろそろ休憩にでも入るかも。
……だってさ。さっきからこの一帯を巡ってるけど、精霊がいる様子も、戦闘の痕跡だってないじゃん。ほんとにここで合ってんの?
なんて。少しの慣れと飽きが隊の中に広がり始めた、その時だった。
なんか……。
冬でもないのに。――ちょっと、肌寒い?
「なあ、スノウさん、メリー。この辺、ちょっと寒くないか?」
「エド。うん……確かにちょっと、空気が冷たいかも……」
やっぱり? そうだよなー。
と、俺とメリーは軽い感じで異変を感じ取ったんだけど。……スノウさん、固い顔でどうしたんだ?
「スノウさん? どうかした?」
「――これは。氷属性の魔力が、漂ってる……? 誰の……まさか――!」
独り言のように呟いていたスノウさんが顔を上げた、ちょうどその瞬間。
なんだ――!? このとんでもない魔力!
「――総員、戦闘態勢! 敵襲!」
「マーリン! 何が来たんだ!?」
「こんな魔力、明白だろうが! ――精霊だ!!」
精霊!
隊列に遮られて、はっきりとは見えないな……。けど、隊列のさらに前で、空に向かって立ち昇る超巨大な魔力があるのははっきり分かるぞ。
それに、さっきとは比べ物にならない、凍えるような冷たさを帯びた魔力が広がってく。
精霊の領域か……!
みんな混乱してはいるけど、ちゃんと魔力を励起させて、武器も抜いてる。マーリンはまた指示を出そうとしてるみたいだけど――。
それを遮るように響く、人ならざる者の声。
「――来ましたか。約束通り……ではないようですが」
女の声? このきれいな声、相当の美女と見た。
とか言ってる場合じゃないな、この魔力……。
それに、約束? なんのことだか知らないけど、俺見てたからな。先生が一瞬びくっと反応したの。