終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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7話 山を断つ

 

「なースノウさん、精霊が言った約束とかいうの……めっちゃきな臭くないか? 先生もなんかビクついてたし」

 

「――そうだね。精霊の行動原理……人類圏の縮小と、魔法生物の繁栄。そのどちらとも違う目的……。それに、この荒々しい魔力……」

 

「絶対そうじゃん……この精霊の狙いって」

 

 うげー、と。眉を顰めながら、スノウさんと同時に口にする。

 

「――怨恨」

 

 だよなー。それしかないよな。

 

 この精霊の半身だった火竜を殺した、俺への復讐――。

 

「じゃあ、約束ってのは……――先生、俺たちを嵌めたな」

 

「――せ、精霊よ! 待ってくれ!」

 

 お、先生が何やら弁明し始めたぞ。

 

「き、聞いてくれ。俺たち人間は、お前のように強大な力を持っていない。だから、仮にお前の言う通りに目的の人物を一人送り出したとしたら、ここへ来る前に魔物に殺される可能性が高かったんだ!」

 

「――では、ぞろぞろと雁首揃えたお前たちは、彼の者を連れてくるための護衛と。そう言いたいのですね?」

 

「ああ、その通りだ……!」

 

「……いいでしょう。我が魂の半身を打ち倒す者が、ここへ辿り着けないことがあるものなのか、はなはだ疑問ではありましたが。なにか、卑怯な手を使っていたのだとすればそれも納得できる」

 

「あ、ああ。理解してくれて助かる……」

 

 冷や汗流して必死に言い訳しやがって。もうほぼ確定だろ。先生が嘘をついてこの隊を編成したこと。

 

 当然俺たち以外の生徒もそのことに気づいてる。ざわめきながらも、みんなの視線がこっちに向いたな。

 

「では、疾く差し出しなさい。――我が半身たる竜の命を奪った、その罪深き者を」

 

 ほらな、やっぱり。

 

 つか、向こうから襲ってきたのを撃退したらこれって、こんなん逆恨みじゃん。

 

 まあいいけどな。このとんでもない魔力……勝てるか知らんけど、少なくともその余裕は剥がしてやる。

 

「はいはい、今行くから待ってなって。あ、ちょっとみんな、道あけて」

 

「……エドガーくん。違うよ、行くのはキミじゃない」

 

「え? どういう……」

 

 なんだよスノウさん。そんな、決意を固めたみたいな表情して。

 

 呼び止められて振り向いた俺に、スノウさんが前を見るよう指さしてくる。

 

 指の先をたどって目を向けたら……うわ、先生顔怖っ!

 

「おい、エドガー。お前は、こんな時にまでふざけるのか……!」

 

「ええ? ぜんぜんふざけてないんだけど。大真面目だ」

 

「黙れ! この場にいる全員の命がかかっているんだぞ! お前は彼女――竜殺しスノウ・アイシールへ、大人しく道を開けるんだ……!」

 

 は? スノウさんに?

 

「そうだぞ、エドガー! こんな時くらい大人しくしててくれ……!」

 

「そうだそうだ! いつもとは状況が違うだろう!?」

 

 はあああ? みんな、スノウさんが竜殺しだと思ってたってことか!?

 

 いやまあ、確かに俺がやったってのはみんな半信半疑なんだろうと思ってたけど。もしかしてスノウさん、俺が殺したとまでは報告してなかったのか……!?

 

「ちょ、スノウさん! ダメだって! どうするつもりだよ、あんな強そうな精霊!」

 

「どうもこうも。今回の件に無関係なキミたちがこの場を去ったら……全力で、命を賭して戦うよ。……竜殺しを成した、その責任を取ってね」

 

「だから! 竜殺しは俺だって――」

 

「エド……!」

 

 うお、メリー!?

 

「もう、こんな時までふざけるのはやめてってばぁ! スノウさんのことは残念だけど……これが、一番犠牲者も少なくて、丸くおさまる方法じゃん……!」

 

「丸くないだろ! だってこれ、スノウさんを犠牲にするってことじゃん……!」

 

 あ、ダメだ。こんな言い合いをしてる間にスノウさん進んでるじゃんか!

 

 また俺のこと守ろうとしてるんだろうけど、こんな、確実にスノウさんが死ぬようなのはダメだろ!

 

 普段はスノウさんスノウさんと囃し立てる外野も、こんなときばっかりは何も言わないし……!

 

 そう思わずイラつきながら、無理矢理にスノウさんを引き戻そうとしたその時だった。

 

「――スノウさん……! 行ってはダメだ!」

 

 スノウさんの前に立ちはだかったのは……マーリン!? あいつ、たまにはやるじゃんか!

 

「どいて、セルビアさん」

 

「ど、どきません! こんな……一人の女性を見殺しにするようなこと、セルビア家の誇りが許さない! あ、あ、あんな精霊如き……この俺が!」

 

 ええ……。ちょっと、そうなるのは予想外だったぞ。

 

「うおおおぉぉおぉぉ!!」

 

 剣を抜いたマーリンが、唐突に。呆気に取られるみんなを置いて、ちょっと震えながら精霊へ吶喊する。

 

 みんなあまりに予想してない展開に固まっちゃってるじゃん。

 

 あ……でも、マーリンが突っ込んで道を開けさせたおかげで、俺のとこからも精霊が見える。

 

 スノウさんと同じ色合いの、白い身体に白い長髪。身体自体が高密度な魔力でできてるからうっすら半透明だけど……めちゃくちゃ美人な大人の女性だ。

 

 でもその綺麗な顔は、向かってくるマーリンに絶対零度の視線を向けていて。

 

 はぁ。しょうがないやつめ。やなやつだけど、まあ、スノウさんに向けるその想いだけは認めてやろう。

 

 今回はその勇気……蛮勇? に免じて。

 

 ……よっし。さっき魔物と戦ったおかげか、身体も魔力も、もうあったまってる。

 

 けっこう距離あるし、魔力ぶん回して……!

 

「エドガーくん……!」

 

「エド!?」

 

 静止する声を振り切って、一瞬で後ろに過ぎ去る隊のみんな。

 

 もう目の前には、化け物みたいな魔力を高める精霊と、へっぴり腰でも前に進むマーリンがいる。

 

 そして、その直後だ。ひときわでかい魔力が精霊から迸ったかと思うと――

 

 ――うおお、なんだこれ。空にバカでかい氷!?

 

 でも、これくらいなら、たぶんなんとか……。魔力増強の魔法なら、使っても地味だしスノウさんにはバレないよな?

 

 いいや、使っちゃえ。

 

「うわあああああ!? な、こ、氷!? やめろぉ! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……!」

 

 うーん、一拍遅れて気づいたマーリンの、この情けなさよ。普段の傲慢さはこれの盛大なフリかな?

 

 そこ危ないから、ちょっとどいてくれよ、っと。

 

「――死ぬ死ぬ死……え、は? エドガー?」

 

「どーも、クソ劣等のエドガーでーす」

 

「なん、え、これ――何だよ、その魔力!?」

 

 おうおう、驚いてくれちゃって。サービスで教えてやろう。

 

「聞いて驚くなかれ。これは魔力増強の魔法、その効果だ」

 

「魔法……魔法!? お前、そんな……! 代償が……!?」

 

 おや、意外な反応だな。マーリンなら、スノウさんとかと違って大した反応もないかと思ったから、こうしてあっさり教えたんだけど。

 

 これならもうちょい黙っといて、暴露のタイミング考えたほうが良かったかー?

 

 ……ふふ、我ながらクズな考えだけどな。

 

「さて、それはともかく。今はこの怪物級の大氷塊だ。俺がなんとかしないと、マーリンが死ぬのは当然で、後ろのみんなも壊滅的被害があるときたもんだ」

 

 俺の力に、何人もの命がかかってるってな。

 

 ――腕がなるぜ。

 

「さあさあ。それならみんな、その目に焼き付けとくことだ! 一週間前、いったい誰が殺したのか。人類を小さな壁の中に追い込んだ、この世界の覇者をな――!」

 

 精霊から、極寒の視線が向けられる。それと同時に降ってきたな。

 

 山のような、巨大な氷。

 

 迎え撃つは、ちっぽけな男が握る、山に比べりゃ頼りない長剣一本だ。

 

 でも、ここに込められた魔力は……山を作った精霊の魔法に、勝るとも劣らんからな……!

 

 大層な技名なんぞありはしないけど。

 

 今名づけるとするならば。

 

 さあ――

 

「――山断(やまだ)ち」

 

 

 

 振り抜いた剣の延長線上。

 

 鋭く研いだ莫大な魔力が、腕の振りに乗って遠く放たれる。

 

 そして。

 

 ――左右真っ二つに裂ける、遠大な氷の塊。

 

「――山断ちは成った、ってな」

 

 

 

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