終末世界で最強になった。よし、自己犠牲のふりで美少女たちの脳を灼こう。 ~魔法に重い代償が伴う世界で、俺だけ魔法使い放題~   作:大仙古墳

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9話 仲違い

 

 で、あれから都市に帰って一週間。

 

 今日も元気に学園に来た俺は、特別扱いで授業を免除されて。

 

 一人、屋内の予備訓練室で特訓してるってわけだ。

 

「――第一魔法。【雷】」

 

 バリバリバリ、と。掲げた手の先、魔法陣から飛び出した電撃が、訓練室の壁にぶつかって弾けた。

 

 うん、上出来だな。ちゃんと壁壊さないように加減も出来たし、自爆もしなかったし。

 

 扱いの難しい【雷】もマスターできたから、第一魔法はもうこんなもんでいっか。

 

 あとはより上位の第二魔法をもう何個か覚えれば……それでいけるもんかなあ、あの精霊。

 

「あいつめっちゃ強そうだったもんなあ。でももう一週間経ってるし、あんまり時間残されてない気もする」

 

 先生、精霊とどんなやり取りしてるか教えてくれないし。俺が一番の当事者なのに。

 

 ……ま、いっか。負けたら負けた時だわ。

 

 なんて、いい加減なこと考えてたら。

 

「――エドガーくん、いる?」

 

「お。スノウさん」

 

 入り口を開けて訓練室に入ってくるスノウさん。今日もめっちゃ疲れた顔してる。

 

「もう授業終わる時間か。じゃ、帰ろうぜ」

 

「……うん、まあ。そのために呼びに来たんだけど。相変わらず軽いね、エドガーくん……」

 

「それが俺の取り柄だからなー」

 

 スノウさんはなんか釈然としなさそうな顔してる。でもしょうがない、そういう性格なんだよ。

 

 じゃあ御者さん待たすのも悪いから行くか。

 

 ――この一週間ほど俺専用になった訓練室を後にして、外に出たその瞬間。

 

「――!」

 

 訓練室の外にいた生徒みんなが、一斉に俺の方を向く。

 

 みんな毎日おんなじ反応だよなー。

 

「……出てきたぞ。竜殺し……」

 

「……あんな子が? そんなすごい風には見えないけれど」

 

「あいつ、あんな間抜けヅラで山を斬るんだってな。俺は思ってたんだ、いつか都市に牙を剥くって」

 

 うーん、酷い言われっぷりだ。

 

「はは。今日も好き勝手言ってるぜ」

 

「笑いごとじゃ、ないよ……」

 

 ギリっと音がしたからスノウさん見たら、すごい思い詰めた顔で歯を噛みしめていた。

 

 ほんといい子なんだよなあ、スノウさん。俺なんかのために。

 

「――道を、開けてっ。見せ物じゃないんだから!」

 

「お、あれがウワサの白雪姫か」

 

「お父さん――騎士アイシールが例の精霊に殺されたって聞いたわ。あの竜殺しのせいなのに……よく一緒にいられるわね」

 

 あ……その発言はいただけないな。スノウさんだってお父さんのことは気にしてるはずなんだ。

 

 別に俺のせいってわけじゃないし、近いうちに助け出すつもりでもいるけど。それでも。

 

「あのなあ、お前ら――」

 

 そう、文句を言おうとした時だった。

 

「エドガーくん、いいからっ。早く行こう、また面倒ごとになる前に……」

 

「でも、スノウさん。あいつらスノウさんのことを」

 

「いいよ。確かに腹は立つけど……いま私のそばにいてくれてるのはエドガーくんだから」

 

 だから俺のこと優先するって? ほんと、俺にはもったいないくらいにいい人だな、スノウさん。

 

「それに。私がそばで守る限り、エドガーくんは私の前からいなくなったりしないでしょう? お父さんと違って」

 

 ちょっと、ゾクッとするほど透明な目だ。ちょっと怖い。

 

「さ、行こうエドガーくん」

 

「うーん、分かった。……分かったから、そんなに強く引き寄せなくても――あ、ちょっと痛い痛い」

 

 スノウさんはぐいぐい腕を引っ張って、密着するほど俺を近づける。

 

 最近すごい近くに寄ってくるけど、くっついたり自分の領域内に俺を入れてると安心らしい。そうすれば何があってもすぐ対応できるからって。俺は子どもかな?

 

「……にしても。こいつらもよく飽きないよな。たまたま通りかかっただけのやつもいるだろうけど、昨日も一昨日も見たやつがそこそこいるし」

 

「暇なんだよ。それに、自分で考える頭を持っていない。竜を殺したなんて本当は物凄い偉業なのに、あの精霊の思惑に踊らされる凡愚だ」

 

「凡愚とか初めて聞いたわ。日常会話で」

 

 そうして、じろじろとぶしつけな視線や言葉を浴びながら、俺たちは学園の門に向かって進んでいたのだが。

 

 ん? あれは……。

 

「メリーじゃん、あそこにいるの」

 

 門もほど近いとこで校舎の影に立ってる。数日ぶりに見たけど……なんかちょっとやつれてない?

 

「なんだろ。もしかして俺を待ってんのかな。もう俺、教室に行けなくなってメリーとも話せてないし」

 

「どうだろうね。でも、べつに彼女と話すことなんてないと思うけど。幼馴染なのにエドガーくんを見捨てたような女とはね――」

 

 キンキンに冷えた視線だ。あの精霊に会う時まで、牽制しあってる感じだけどなんだかんだ関係は悪くなかったのに。

 

「俺は、あれくらいで見捨てられたとは思ってないけどな」

 

「それはエドガーくんが甘いよ。彼女はあの時、精霊と先生のやり取りに異を唱えなかった」

 

「しょうがないって。あいつは良くも悪くも普通だからさ」

 

「身近な人を見捨てるのがふつうなのかな。――それなら、私はふつうじゃなくて本当に良かったよ」

 

 すごいプリプリしてる。

 

 なんだろ、スノウさんなりにメリーのことは認めてたのかな。なのに期待に届かなかったから失望したとか?

 

 いやー、でのしょうがないと思うけどなあ。だってメリー、普通だからさあ。あそこで先生に食ってかかるの勇気いるって。

 

「まあ、そもそもメリーがここにいるのだって偶然で、おれとはぜんぜん関係ない可能性も――あ、こっちきたわ」

 

「話さなくていいからね、エドガーくん。……エドガーくんは、あんな女より私の方を大事にしてくれるよね?」

 

「おん……あー、挨拶くらいならいい?」

 

「――ダメ」

 

 あら厳しい。えー、ちょっと話すくらいならいいじゃん。

 

 そう思うんだけど、スノウさんは俺の手を取って早足で進んでく。メリーが進路上に出てきたけど……。

 

「そこの人、道塞がないで。私たちいま急いでるから」

 

「あの……スノウさん、ちょっとだけエドと話を……」

 

「エドガーくんの方は用なんて無いけどね。こんなとこでずっと待ってるなんて、なんだか重いし嫌がられてると思うよ」

 

 嫌がってはないよ。ていうか、スノウさんが重たいとか言うのギャグかな?

 

「スノウさん。ちょっとくらい話聞いてあげよかなあなんて……」

 

「ダメだよ。この人はエドガーくんのこと大切にしなかったんだから、大変ないま時間を取ってもらえると思うのが間違いだからね」

 

 取りつく島もないな。これメリーそろそろ心折れてるのでは。

 

 そう思って、ちらっと視線を向けたら。

 

「っ! ――あの、エド、あのね! わたし、エドに謝りたくって……」

 

「あ、この……! ダメだって――」

 

 そして。

 

 目を吊り上げたスノウさんが、メリーへ食って掛かろうとした、その時だった。

 

「――あそこだ! 目標を発見!」

 

 うん? なんだ――って軍人? なんで学園に? それもあんな大勢……。

 

 しかも、なんかあいつらこっちを指差してないか?

 

「気を抜くな、相手は竜殺しだ! かなりの手練れだろう。だが、何としても捕縛するのだ……!」

 

「気のせいじゃないわ。あいつら、俺のこと狙ってるじゃん」

 

 とうとう精霊の追加要求が来たか? それとも……。

 

 お、騒ぎを聞きつけて教師陣もやってきた。軍人たち止めようとしてるし、学園側と連携してるわけじゃないのか。

 

 ……ん? いや違うわ。学生隊の指揮官だったあの先生だけ、なんか軍人側についてる。お前の手引きかよ!

 

「エドガーくん、まずそうだよ。今のうちに逃げよう」

 

「え、え、えっ。何なのこれぇ!?」

 

 冷静なスノウさんに、混乱するメリー。

 

 けど、どっちにしろもう――

 

「もうこれ、間に合わないな」

 

 さすが職業軍人。教師陣を押しとどめて何人かが抜け、もう俺たちを囲んじゃったわ。

 

 スノウさん表情無くなってる、これ絶対ブチ切れてるやつだ。メリーは泣きそうになってるし。

 

 うーん、盛り上がってきたなあ。

 

 

 

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