チートで雑な召喚士もどき(TS済)の長い旅路―なお原作知らず―   作:葛城

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なので、『ふらん』=『喪黒』説、あると思います


フランケン・ふらん 編
第11話: 欲望を抑えきれず自滅するパターンも多い


 

 

 

 ──結論から言おう。

 

 

 後で『ふらん』と改めて自己紹介をした彼女だが、率直に言って、めたくそに頭がおかしいやつだった。

 

 私自身も大概なのだが、それを差し引いても……いや、というか、頭がおかしいとかそんなレベルじゃない。

 

 分かりやすい気狂いではなく、冷静かつ合理的に頭が狂っているタイプのヤベーやつだった。

 

 はっきり言うと、ふらんという女性はとんでもねえマッドドクターであり、そもそもからして、人間ですらなかった。

 

 いわゆる、人造人間というやつで。

 

 顔や腕に付いているツギハギはファンションでも何でもない。本当に組織を繋いでいる縫合らしく、そこを外すとちゃんと手足がバラバラになるようだ。

 

 そして、マッドドクターと断言しただけあって、思想というか思考があまりにヤバい。

 

 言うなれば、健康にするため(治療するため)なら如何なる姿に変えても問題無しと認識し、なんなら生きたまま全身の皮を剥いでも欠片も気にしない……と言えば、ヤバさが想像できるだろうか。

 

 

 ──Q.これまで相談を受けて行った手術の中で印象に残っているのは? 

 ──A.そうですね、母乳が出ないという相談を受けて、脳下垂体へのアプローチを行い、ホルモン分泌腺を培養して母乳を出せるよう行った手術ですね。

 

 ──Q.その後、どうなったの? 

 ──A.その人は母乳を出せない人のために自分の母乳を提供したいとの事で、最終的には全身に数十個の乳房を増殖し、母乳が出せるようにしました。

 

 

 とか、それぐらいならまだ可愛い方で。

 

 

 ──Q.他には、何か有りますか? 

 ──A.そうですね、精神病の疑いがありましたけど、全ての感覚器を取り除きたいという当人の強い要望を受けて、外科的アプローチにて全ての感覚器を麻痺するために『オミソイド』という生体ロボットを全身に接続しました。

 

 ──Q.え、なにそれ──え、なにそのフナムシみたいなの? 

 ──A.寄生虫をモデルにした、重度のやけど被爆などの神経障害緩和治療のロボットです。これを全身の皮膚を剥がしてから装着させることで、彼は全ての感覚を麻痺させ、真の静寂を手に入れました。

 

 ──Q.えぇ……(ドン引き)

 ──A.どんな人間にも幸せになる権利はあります。たとえ、聴覚を失い、嗅覚を失い、味覚を失い、視覚を失い、触覚を失ったとしても、私は人を助けるのが使命ですから。

 

 

 とまあ、一事が万事、そんな感じである。

 

 話が通じているようで通じていないし、通じていないようで通じているし。

 

 おおよそ、一般人が持っている出すべき時に出す倫理観がない。なのに、変な所で倫理観を出して来るあたり、本物の気配がビンビンする。

 

 実際、拒否しても拒否しても諦めなかったふらんの手で、なんか無理やり(別に、何かされたわけじゃないし……)ふらんの自宅へと連れて行かれたわけだが。

 

 有り体にいえば、そこはモンスターハウスであった。

 

 純粋な人間が、煽り抜きで一人もいない。いや、それどころか、人間の姿をしている者が片手の指に収まる人数しかいない。

 

 見た目が精神的なダメージを与えるグロい姿をしたやつなら両手の指はおろか、下手したら三桁ぐらい居そうな感じなのに。

 

 

「……あのさぁ、無理やり連れてくるまでなら許してあげるけど、さすがに人体実験をしようってんなら、こっちも手加減はしないよ?」

 

 

 そんな中で、手術台へ横にされている私は、興奮した様子でメスやら機械やらを用意しているふらんへと忠告する。

 

 既に、私が負った傷は完全回復をしており、今の私は生まれたままの恰好だ。

 

 しかも、逃げ出せないようガッチリ固定されている。全身を拘束するベルトは分厚く頑丈で、刃物が有っても切ることに難儀してしまいそうなぐらいであった。

 

 ちなみに、なんで裸なのかって、タイミングが無かったから。

 

 身体自体は治せるが、服はまた別だ。いつでも『異空間』から取り出せるけど、そうすると、もっと面倒な事になるので裸のままでいる。

 

 今さら誰かに裸を見られたところで気にする事ではないが……実験動物のように扱われるのは少々勝手が違う。

 

 

「大丈夫! 痛くしないから! 調べたらすぐに元に戻すから!」

 

 

 ふんす、ふんす、ふんす。

 

 マスク越しでも、やはり興奮を隠しきれない様子のふらん。

 

 横を見やれば、われ関せずといった様子ながらも、いちおう私の方を注意深く監視しているヴェロニカなる女性が。

 

 その奥、手術室の隣の部屋。ガラス越しに見える向こうには、人面犬(あるいは、人面猫?)や、全身包帯女(気配枯らして、人間じゃない)、その他諸々の怪物たち。

 

 とにかく、人外の者たちが、それはもう気の毒そうに私を見て……う~ん、マジでモルモットの気分だ。

 

 

「……はぁ、忠告したからね」

 

 

 まあ、忠告はした。

 

 それで十分だと判断した私は、一息でベルトを引き千切って手術台から降りる。「──うそっ!?」心底驚いたふらんを他所に、私は一つ伸びをして──次いで、接近してきたヴェロニカへと指パッチン。

 

 

「えっ!?」

 

 

 直後、両腕を落とされたヴェロニカはその場に急停止──まん丸に見開いた目で、パッと私から距離を取った。

 

 私の指パッチンは、鋼鉄の戦闘機を一発で切り落とし、分厚いコンクリートの塔を切り落とし、超神の身体すらも切り裂く。

 

 ヴェロニカの身体が一般的な肉体とは違ったとしても、所詮は肉と骨の限界までしか強度が無い以上は、大した意味はないのである。

 

 

「そこのガラス向こうに居る人たち? 言っておくけど、君たちが私の下へ来るまでに、私はあんたらを100回ずつ殺せるからね、おとなしくその場から動かないように」

 

 

 次いで、他の者たちにも忠告する。

 

 それは、我に返ったふらんに対しても同じである。

 

 どうやら、ふらんは、マッドドクターではあるが、荒事に対してはそこまで強くはないようで、オロオロとした様子であった。

 

 対して、荒事担当はヴェロニカのようだが、そのヴェロニカは私の指パッチンで完全に戦闘不能である。

 

 これは、ヴェロニカが弱いのではない。むしろ、私に接近しようとしたヴェロニカの動きからして、一般人では手も足も出ない強さだ。

 

 実際、『ライブラ』で調べた限り、ヴェロニカの全身には様々な武器が内蔵されているようで、文字通りの全身凶器といった感じである。

 

 ただ、相手が悪過ぎたのだ。

 

 その程度では十傑集はおろか、国際エキスパートにすら勝てない。ましてや、この私を抑え込もうなどと……ん? 

 

 

「……切り落とした私が言うのもなんだけど、痛くないの?」

「私、痛覚が人より鈍いから……」

 

 

 強がりでもなく、本当に感覚が鈍いようで、ちょっと顔をしかめる程度の様子で……ただし、出血量はどうにもならないようで、どんどん顔色が青ざめて──あ、そっちは駄目なのか。

 

 

「『時空魔法:ストップ』」

 

 

 とりあえず、ヴェロニカの動きを止める。

 

 ただ動きを止めるのではなく、ヴェロニカの時間を止めるので、私が魔法を解除するか、自然に解除されない限りは、半永久的にその状態で……さて、と。

 

 

「ふらん」

「え、あ、はい」

「いま、その人の時間を止めました。今なら出血も何もないので、手術で傷口を塞ぐことは可能ですよ」

「──っ!」

 

 

 ハッと、目を見開いたふらんに、私は……ガラス向こうの者たちに視線を向ける。

 

 

「あんたらも、私を狙うならもう手加減はしない。でも、私を諦めるなら、私からは何もしない」

 

 

 そう、化け物たちに忠告した後で──改めて、私はふらんを見やった。

 

 

「返答は?」

「──ごめんなさい! 諦めます!」

 

 

 と、いうことになった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………さて、だ。

 

 

 そうして、初っ端からそこらのグロ映画顔負けのスプラッターな展開が始まるところを、私の機転でそうならなかった……わけで。

 

 お詫びとして、飯を奢れと注文し、近場にうちが利用できる店が無いので家庭料理で良いかと言われ、了承した私だが。

 

 

「……なんだろう、普通の家庭料理が出てきた」

「そりゃあ、家庭料理だし」

「私、最悪は人肉のステーキを出されるかもとちょっと後悔していたところなんだけど?」

「まあ、そう思うよな。俺も逆の立場だったら、同じ事を想像していただろうし」

 

 

 思っていたよりも普通なのが出てきて、そういう意味で驚いていた。

 

 あと、実際に話してみると、一番理性的というか、まともな感性というか、常識が通じるのが人面猫(犬じゃなくて猫だった)の沖田(おきた)さんだったことも驚いたけど。

 

 だって、さあ、想像してみてほしい。

 

 化け物がうようよ居るホラーハウスで出された料理が、白米に肉じゃがに冷奴に漬物と味噌汁という、普通の料理である。

 

 いや、手間暇が掛かっているのは分かるのだ。

 

 特に、肉じゃがは上手に作られていて、煮崩れがほとんど見られないし味も美味い。あと、良い豆腐を使っているようで、冷奴がやたら美味い。

 

 もうね、意外性のおかげで本当に美味い。

 

 いちおう、料理に睡眠薬でも仕込まれていたら嫌だなと『ライブラ』で調べてあるから、そういった危険性が無いのは確認済みだけど。

 

 ……そうして、食後のデザートまで用意してくれたので、それをしっかり堪能した後で。

 

 

「──小町さん! どうでしょうか!? 血液サンプルをいただけないでしょうか?」

「ふらん、貴女って変な所でバカって周りから言われたことない?」

「え、どうしてそれを?」

 

 

 なんか、改めて『採血させてくださいお願いします!』と深々とお願いされた。

 

 コイツ、やっぱマッドだなと呆れた私は悪くないだろう。

 

 なんとかしろと周りの者たちに視線を向ければ、誰も彼もが気まずそうに視線を逸らした──おい、やっぱ問題児じゃないか、コイツ。

 

 

 とりあえずは、だ。

 

 

 食事中の時もあの手この手で言葉を変えてオネダリされたけど、それを踏まえたうえで、改めて私は一切の協力を拒否した。

 

 理由はまあ、色々あるけど……一番は、私の身体は常人とは違うからだ。

 

 具体的には、私の肉体を構成する細胞には『グルメ細胞』と呼ばれる特殊な細胞が混じっている。

 

 この『グルメ細胞』を簡単に説明するなら、要は美味いモノを食べれば食べるほどに細胞そのものが活性化し、パワーアップするという特殊な細胞である。

 

 私の『グルメ細胞』はその中でもさらに特殊なモノ。毒性があるとかそういう類のモノではないが、万が一にも悪用されると大変なことになる。

 

 だから、採血の類は一切受けるつもりはないのだ──という話を、改めてふらんに説明した。

 

 なにせ、『グルメ細胞』は時に、説明出来ない奇跡を起こす。それは、医学や科学で説明できるモノではない。

 

 それで、ふらんもいちおうは納得した……わけではなさそうだが、少なくとも、お願いしますのゴリ押しでは通じないと悟ったのか、腕を組んで考えこみ──。

 

 

「──研究に限定しますし、外部に一切漏らしませんし、貴女の血液を使ってナニカを作ったりはしませんので、どうか、どうか!!」

 

 

 ──かと思ったらまあ、早かった。

 

 

 いや、というか、もうこの人、本当に骨の髄までマッドだなあ……そんな目で、思わずふらんを見ていると。

 

 

「──お、お金ですか? その、最近は大口の仕事が少ないので、ちょっと金欠気味というか……」

 

 

 なんだろう、あまりにズレた返事をされて……私は思わず、ため息をこぼした。

 

 今の今まで金の話なんて一言もしていないし、血液事態を渡すのが嫌という話をしているのだが……堪らず、私は他の化け物たちへと視線を向けた。

 

 

 ──悪気は無いのです、そういうやつなんです。

 

 

 すると、そんな返答……ではないけど、『どうしようもないやつなんです』といった思いが込められた視線が……あ~、うん。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………と、なれば、この場を終わらせても、どっかで監視してきそうな……あ~、も~、う~ん……ならば、うん。

 

 

「それじゃあ、私の要望に応えてくれるなら、血を少量ばかり提供しましょう」

「本当!?」

 

 

 こういう類の相手は、条件を付けて契約してしまえば良い。

 

 少なくとも、こちらが契約を破らない限りは、向こうも契約を守り続けるだろうし……ていうか、こうでもしないと、下手したら寝ているうちにまた拉致される可能性あるし……で、だ。

 

 

「私は旅人。色んな世界に行くわけだけど、中には私の見た目だと非常に目立つ時があるのよ」

「なるほど」

「いちおう、特殊能力(要は、魔法)で隠すことはできるけど……それを見破られる世界だと、逆に面倒な事態になるかもでしてね」

 

 

 これは、別にふらんに絆されて条件を出したとか、そういうのではない。

 

 実際、見た目の問題は色々と大変なのだ。

 

 私の見た目は最初の時からまったく変わっていないが、ここでは私の事を高校生以上には思っても、小学生だと思う者はいない。

 

 しかし、場所が変われば、私の見た目への印象も変わる。

 

 幸いにも、今のところはそこまで問題にはなっていないが……ヤンさんたちが居た世界では、誰からも子供(10歳前後)に見られていたのが、その証拠だ。

 

 今後、もしも私の見た目がその時と同じく子供としか見られない世界に行った場合……下手したら、外に出るたびに警察が来るかもしれない……なんて可能性も、0ではない。

 

 1人や2人を誤魔化すならともかく、その度にお尋ね者のように魔法で身を隠すのもなんか嫌だし……帽子を被る程度の間隔で誤魔化せる手段があるなら、欲しいと思ったわけで。

 

 

「つまり?」

「私の意志一つで、見た目をある程度は自由に変えられる……そんな事は可能ですか?」

「──やりましょう! やらせてもらいます!!」

 

 

 だからまあ、外科的なアレで解決できるなら、解決してもらおうかな……と、思ったわけである。

 

 まあ、最悪、あまりにもマッドな結果になったら『グルメ細胞』が元に戻すだろうし……そんな感覚で、私はふらんの手術を受けることにしたのであった。

 

 

 

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