チートで雑な召喚士もどき(TS済)の長い旅路―なお原作知らず―   作:葛城

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第一章は、Dragon’s heaven編 となります

そんなにこの章は長くは続きません


Dragon's heaven 編
第1話: 私「良かった、人間がいた……?」


 

 

 ──そうして、意気揚々と狭間の世界から飛び出した私を出迎えたのは……広大な地平線の彼方にまで広がる、広大な砂漠であった。

 

 

 そう、砂漠である。

 

 比喩でもなんでもなく、言葉通りの砂漠である。

 

 降り注ぐ日差しは適応していない者ならば痛みを覚えるほどに強く、気温も合わせて高く、空気はひりつくほどに乾燥していて、水気というものをまるで感じない。

 

 何の装備もせずに出歩けば、半日と持たずに脱水症状を引き起こして命を落としかねない……それぐらい厳しい環境である。

 

 ただ、それだけ厳しいのだから生き物が居ないかと問われたら、そういうわけでもない。

 

 パッと見た限りだが、鳥は飛んでいる。鳥が飛んでいるということは、どこかで植物が繁茂していて、そこに虫などが居るわけだ……が、それでも、だ。

 

 これには、私もちょっとばかり驚いた。

 

 いちおう、人間が居る世界だと調べてから移動してきたつもりだ。なので、人間がどこかに居る世界だというのは確定している……はずだ。

 

 正直、自信はない。

 

 実際にどれだけの人が居るか、どれだけの文明を築けているかは実際にその世界に到着しないと分からないからだ。

 

 これまたいちおう、原始時代のようなウホウホやっている……という世界は、入る前に除外するようにはしているが……それでも、けっこう大雑把ではあるけれども。

 

 

「……とりあえず、鳥が飛んで行った方角に行くか」

 

 

 特に制限時間があるわけでもなく、自殺しなければ実質的には不老不死である私には、膨大な時間がある。

 

 装備など無くともこの程度の環境など平気だが、平気になる装備を身に着けている今は、余計に余裕が有り余っている。

 

 

 ──急ぐ理由も無いし、まあゆっくりやっていくか。無くなったら無くなったで、その時考えよう。

 

 

 そんな気持ちで、私は……当てもなく、飛んでいく鳥の後を追いかけ、緩やかに歩き出したのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、どれくらい歩いただろうか。

 

 

 日が暮れて、朝が来て、日が暮れて、朝が来て、一回だけ一日中雨が降って、後は晴れっぱなしで。

 

 10日ほどは数えていたが、それ以降はもう面倒臭くなって数えるのは止めた。いちいち数えたところで意味はないと思ったから。

 

 相変わらず、景色は変わらない。

 

 どこまでも砂漠は続いているし、空気は乾燥しているし、鳥は飛んでいるし、暑さは感じないけど気温は高いし……でも、期待はちょっとばかり膨らんでいた。

 

 理由は、オアシスをいくつか見付けたからだ。

 

 まあ、オアシスとは言っても、これまで見付けて来たモノの中で、地下の水源より湧き出ていたのは少数だ。

 

 大半は粘土層でコーティングされたような感じで固まった巨大なクレーターに、雨水が溜まっているだけの水溜りだ。

 

 意外に思うかもしれないが、雨が降った後の砂漠はしばしばそういう光景が数多く見られる。水はけが悪く、水が流れ出てゆく先が無い事が多いからだ。

 

 結果、雨が降った後は大小様々な水溜りが形成されたり、雨量が多い時は鉄砲水が発生したりして水害になってしまう事だって、珍しくはないのだ。

 

 とはいえ、水溜りであろうとも、水があるのは事実。

 

 適応出来ない生物は受け付けずに死ぬが、適応できた生物にとっては恵みの水。

 

 実際、空から降りてきた鳥もそうだが、身体はラクダっぽいのに顔が鳥っぽい動物が水溜りに口を突っ込んでいるのを見た……おまけに、だ。

 

 

「おお……この世界初の文明の利器だ」

 

 

 今日、この日に見掛けた大きな水たまりに顔を突っ込んでいる鳥ラクダ(私・命名)っぽいやつの背中には、鐙(あぶみ)のようなナニカが装着されていた。

 

 明らかに、自然発生的なモノではなく、意図的に誰かが作り出して装着させたモノ。放し飼いの可能性は低く、おそらくは逃げ出したのだろう。

 

 まあ、どっちでもいい。重要なのは、人間が居る可能性が高い、ということ。

 

 人間が居るということは、食べ物があるということ。

 

 そして、食べ物があるということは、なにかしらの料理があるやもしれない、ということ。

 

 腹に貯まるのが最優先みたいなのがデフォルトの可能性が高いけど、料理というのは実に奥深く、美食を求める気持ちに人種の違いはない。

 

 飯マズで有名な国の料理だって、そうなるに至るまでには様々な理由があったし、そうなる前は様々な料理があった……という話も、けして珍しくはないのだ。

 

 だから、私の中で期待が膨らむのも当然といえば当然であり、それだけでも世界を渡って来て良かったなあ……と思えるわけであった。

 

 

「……それにしても、君はずいぶんと痩せてしまっているね」

 ──クワっ? 

 

 

 まあ、それはそれとして。

 

 背中に鐙を乗せた鳥ラクダに近寄れば、鳥ラクダは不思議そうな顔でこっちを見てくる。手を伸ばしても避ける素振りはなく、体毛の間に絡まっている砂のザラザラとした感触がした。

 

 これだけで、この鳥ラクダがいかに人慣れしているのかが分かる。

 

 野生動物ならば、近付くことはおろか、目が合っただけで逃げ出しても不思議ではないし、なんなら威嚇や攻撃をしてくるのが普通だからだ。

 

 

「ほら、お食べ」

 ──クワっ! 

 

 

 『魔法:ライブラ』を使い、状態の全てを確認して(肉食か草食か分からないし)から、『異空間』より取り出した肉や野菜を置く──

 

 

 

 “Topics! ”

 

 “『ライブラ』は、『ファイナルファンタジー』というゲームに登場する空想上の魔法であり、対象の能力を調べる事ができる魔法である”

 

 “当然ながら現実には存在しないのだが、『私』が転生してきた世界の一つには、まさしくファイナルファンタジーな世界もあった”

 

 “つまり、『私』はファイナルファンタジーのあらゆる魔法や技や道具を習得して保持しているし、それはファイナルファンタジーに限ったことではない”

 

 “『私』はその事をほとんど覚えていないが、魔法などに関しては生存のために必要と必死に覚えたおかげで、今でも使うことが可能である”

 

 

 

 ──食べ物を目にした途端、鳥ラクダは目の色を変えて顔を近付けると、すごい勢いでついばみ始めた。

 

 

 その食べ方は、なんだかペンギンに似ている。

 

 パクッと食いちぎっては頭を上げて飲み込み、パクッと食いちぎっては頭を上げて飲み込み……生粋の野生ではないから、獲物を上手く捕らえられなかったのだろう。

 

 水だけはガブガブ飲んでいたので、しばし眺めていると……食べ終わった鳥ラクダは、『クワッ!』と一声鳴くと、なんだか甘えるようにすり寄ってきた。

 

 

「どうした?」

 ──クワッ! 

「……帰るの?」

 ──クワッ! 

「え? 良ければ案内するって?」

 ──クワッ! 

 

 

 強く鳴いた鳥ラクダに、私は頷いた。

 

 

「ありがとう、それじゃあ案内を──乗せてくれるの?」

 ──クワッ! 

 

 

 どうやら、けっこう義理堅いようだ。

 

 せっかくだからと好意を受け入れた私は、サッと砂埃が溜まっている鐙に腰掛け……少し間を置いてから、鳥ラクダは走り始めた。

 

 見た目はそんなに早く走れなさそうに思えたが、意外に速い。トットットッ、と軽快な足取りで進み、振動もほとんど感じない。

 

 ライブラである程度は把握していたが、鳥ラクダは砂漠に特化している生き物だ。

 

 固いアスファルトでは足や爪を痛めてしまうが、柔らかく足を取られやすい砂場では、実に効率的に移動出来るような構造になっている。

 

 おかげで、私の知るラクダよりもよほど軽快に進んでくれる鳥ラクダは、そのままトットットッと砂漠を駆け抜け続け……そうして、ついに見えてきた。

 

 

「おお……でけぇ都市だ。傍にはオアシスっぽいのもあるね」

 

 

 それは、遠目にも分かるぐらいに巨大で砂がこびり付いた……おそらくは金属で構成された……いや、軽くライブラで調べてみたら、金属と岩石を組み合わせて構成された都市であった。

 

 平地からの砂が入らないよう高台になるようにして作られているようで、入口と思われる場所へは長い階段が通じている。

 

 都市自体が巨大だから、まるで砂漠の大地よりニョキッと生えているような印象を覚えた。

 

 

「……鳥ラクダ、君はあそこから来たのかい?」

 ──クワッ! 

「そうか、それじゃあ、そこまでは一緒に行こうか」

 ──クワッ! 

 

 

 トットットッ、走る速度が速くなった鳥ラクダから振り落とされないよう気を付けつつ……ふと、常時張り巡らせている魔法センサーが、黒い敵意を捉えた。

 

 

「鳥ラクダ、一旦止まって」

 ──クワッ? 

 

 

 指示に従って足を止めた鳥ラクダは、不思議そうに首を傾げた。落ち着きなさいと軽く首筋を摩りつつ、私は……上空彼方を見上げた。

 

 

「5時の方向、およそ9000m上空……驚いたね、まさか高高度を移動できる機械……飛行機があったのか」

 

 

 常人ならば見えない距離だが、距離だけで特に遮蔽物(雲ぐらいなら貫通)がないのなら、視認することは可能である。

 

 

 ……で、だ。

 

 

 飛んでくる飛行機の造形からして、旅客機の類には思えない。おそらく、攻撃……はっきり言えば、軍などが所有する戦闘用だろう。

 

 と、なれば、気になるのは目的だ。

 

 巡回しているだけなら、問題はない。

 

 問題なのは、アレが自国を(あるいは、自領土)のモノではなく、他国のモノで……奇襲を目的に動いている場合だ。

 

 私がこれから向かおうとしている都市以外ならば捨て置くが、飛行機の進行方向からして、目的地は私と同じっぽい感じがビンビンする。

 

 というか、それ以前に敵意がヤバい。

 

 抵抗し逆らうなら皆殺しにしてやろうという気配がこれでもかと伝わってくる。

 

 仮に私が無関係を装って離れたとしても、あの飛行機に乗っている者たちは……なんの良心の呵責もなく、私の姿が目に止まったら、機銃を放射するだろう。

 

 

(……じゃあ、先んじて撃ち落とすか)

 

 

 何事も、先手必勝である。

 

 向こうはまだ何もしていないとか、何の意味もない。

 

 まだ殺していないだけで、向こうがこちらを見付けたら殺しに来ると分かっているのだから、自分が生き残るためには先んじて殺すしかない。

 

 

「鳥ラクダ、ちょっと離れていなさい」

 ──クワッ! 

 

 

 背中から降りた私の指示に従って、鳥ラクダは小走りで離れてゆく。万が一にも、余波の影響がいかない辺りまで移動したのを見送ってから……私は、『異空間』より杖を取り出した。

 

 その杖の名は──『神器エーテルフローズン』。

 

 先端に巨大な魔力結晶が取り付けられた杖であり、神器という名が付いているだけあって、その性能は……見る者が見れば、あらゆる国宝を対価にしてでもなお足りぬ、至高の逸品である──

 

 

 

 “Topics! ”

 

 “『神器エーテルフローズン』とは、スターオーシャン3というゲームに登場する武器であり、いわゆるゲームクリア後の裏ボス戦にて手に入る廃人向けの最強武器の一つである”

 

 “○○○○○回目の転生時、その世界での『私』が手に入れた杖だ。過去に戻れるなら、断罪者との戦いの時にこそ欲しいと心から思ったものだ”

 

 ”なお、この武器をカスタマイズして強化するために、とんでもなく労力が掛かったのは……まあ、うん、止めよう、思い返すとなんだか色々と辛くなる”

 

 

 

 ──それを、私は構えると、彼方より迫る飛行機たちへと振るった。

 

 

「裁きの矢を──『メテオスォーム』!!」

 

 

 それは、宇宙から無数の隕石を召喚し、相手に叩き落とすスキル。相当強固な装甲と機動力でなければ成す術もなく……爆炎と共に四散して終わりである。

 

 実際、異変に気付いた飛行機は逃げようとする素振りは見せたが、それだけ。

 

 回避行動を取ると同時に天より降り注いだ隕石が直撃し……避けられた飛行機は一機もなかった。

 

 奇跡的に無傷のまま飛行機の外へ放り出された者はいたが、高度9000mからの落下に耐えられるわけもなく……例外なく、全員が即死した。

 

 そして、それはあまりにも遠く、上空彼方にて起こった事で。

 

 私以外にその事に気付ける者はおらず、かの者たちは誰にも知られることなくその命を終える結果に……いや、待て。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………見ている者が居る。

 

 

「……? これは、ホバークラフト……いや、ホバークラフトが搭載された戦車……というより、ホバークラフトを搭載した人型ロボット?」

 

 

 魔法的なセンサーで探ってもいまいち分かり難い。

 

 幸いにも、こちらに向かってまっすぐ近付いてきているので、遠慮なく目視にて確認した私は……ふむ、と一つ頷くと。

 

 

「『テレポ』」

 

 

 魔法による瞬間移動にて、その人型ロボットの前にワープ移動を行った。

 

 

『どわぁあ──!?!?!?』

 

 

 途端、向こうは相当に驚いたのだろう。

 

 おそらくは操縦者と思わしき男の声が砂漠に響く。

 

 急停止に合わせて、ぶぉわ、と舞い上がる砂塵をバリアにて防ぐと『驚いた……イクール、大丈夫か?』体勢を崩していた人型ロボットからそんな声が……と、思ったら。

 

 

「それはこっちのセリフだよ、シャイアン──じゃ、なくて!」

 

 

 ロボットの背後より、なにやら全身ゴテゴテの機械を装着した女の子が飛び出してくると。

 

 

「──こらぁ!! ビックリするじゃないか!!」

 

 

 金髪に緑色の瞳をした女の子は……おそらくはイクールという名の、美しい顔立ちとは裏腹に頬を紅潮させて私に怒鳴って来たのであった。

 

 それは、この世界では初となる人間との遭遇であった。

 

 

 




※ イクールの声は若い頃の皆口裕子(ドラゴンボールのビーデル)です、ガチで。
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