チートで雑な召喚士もどき(TS済)の長い旅路―なお原作知らず―   作:葛城

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第19話: なんかイベントが進んだ気配がする

 

 

 そうして、こっそりつまみ食いをしつつ……なんと、寿司まであったので、ちょろっと一つずつつまみ食いをしつつ、酒も奪いつつ……日が暮れたので、屋敷を出て適当にぶらつく。

 

 これだけ食えば普通は太るが、私は常人とは体質が違う。

 

 グルメ細胞が混じっている私の身体は、食べたら食べた分だけ私に力を与える。

 

 もちろん、絶対に太らないというわけではないのだが、それこそ24時間ずっと食べ続ける必要があるし、私の場合は『食没』と呼ばれる秘儀を会得しているので、余計に……さて、話を戻そう。

 

 

 ぶらぶらと、当てもなく日が暮れた田舎道を歩く。

 

 虫の声がうっすら聞こえる、風のささやきがする。

 

 

 でも、どういうわけか、これだけ自然に囲まれた環境だというのに、下手したら都会の方が虫の音がしていると思えるぐらい静かだ。

 

 そして、相変わらず、陰気な気配がじんわりと……まあ、これは私がそういうのを感知できるからで、常人には分からない感覚である。

 

 普段はいちいち感じ取っても何の意味もないどころか、オカルト的存在に目を付けられるのは、非常によろしくない。

 

 なんでかって、あいつら……だいたいがまともな自我が残っていない霊魂なので、朝も夜も関係なく縋ってくるのだ。

 

 これがまあ、生前から悪霊の類ならば、考えることもせず霊光波動拳なんだけど……実際、そういう類はそれほど多くはない。

 

 だいたいは、己の死を受け入れられずにさ迷っている、普通の人間の霊魂だ。

 

 死を受け入れられていないから、自分たちを認知できる者を見つけたら群がってしまう……どうか、自分を助けてほしい、と。

 

 私としては、うっとうしいからとはいえ、そういう霊魂まで消滅させてしまうのは……こう、色々と嫌になるわけで。

 

 だから、普段はスイッチをOFFにするのと同じく、そういう感覚を閉じているのだが……しかし、それでも、だ。

 

 ここまで陰気な気配がある場所だと、それでも感知してしまうというもので……いや、本当に、なんだこの場所? 

 

 

(こんな陰気臭い場所で飯を食うのは嫌だな……よろしい、先に元から絶っておくか)

 

 

 とりあえず、霊的な気配を追って……河川敷へと向かい、そのまま空を飛んで……上空から、辺り一帯の地理を確認する。

 

 現在、私たち(正確には、水木だが)が寝泊まりしている屋敷や、その周辺の家屋を含めて村の周囲には、山が広がっている。

 

 全体図としては、すり鉢状というか、盆地というか。川が通っているようだが、村は、ちょうど川の行き止まりの周辺に広がって形成されているようだ。

 

 例えるなら、丸型フラスコの周りに村が……だろうか。

 

 外へと続くトンネルを除けば、おそらく他に出入りの道はない。川を遡れば出られるかもしれないが、相当な遠回りになるのは一目でわかった。

 

 そして……私の視線が、丸型フラスコ川の円の中心……そこにポツンと存在している、離れ小島へと向けられる。

 

 感じ取れる気配の方向からして、薄々察してはいたけど……やっぱり、そこのようだ。

 

 自然発生的な澱みとは違う、何者かが意図的にそこへ集めているような……まあ、いいか。

 

 

 ──あらよっと。

 

 

 そんな感覚と共に、ひょいっと小島へ着地する──すると、どうだ……途端に私に圧し掛かって来るのは、なんとも陰湿なオカルトパワー。

 

 川を挟んで村の方に居ても感じ取れていた気配が、何百倍、何千倍にも濃縮されたような……それでいて、常人ならば息苦しさを覚えるほどの、なんとも表現し難い不快感が……ふむ。

 

 

「しゃらくさい」

 

 

 霊力を内より湧き起こし、霊光波動拳を発動……これにより、私の身体はうっすらと光り輝き、周囲の澱みを瞬く間にかき消してゆく。

 

 

 それも、当然だ。

 

 

 例えるなら、冷蔵庫の中に、溶解寸前まで加熱した鉄球を入れたような状態だ。

 

 無駄に放熱しないよう押し留めているが、たかが冷蔵庫の冷風で冷やせるわけがなく……しかも、その鉄球は常に加熱状態にある。

 

 あまりにも桁が違うパワー格差によって、私を中心にして円形の清涼な空間が形成され……そして、それは、人ならざる者たちの注意を引くには十分過ぎたようだ。

 

 ぞろぞろ、ぞろぞろ、と。

 

 暗闇に紛れて、夥しい数が私の視界に現れ始める……が、しかし、彼らが私に襲い掛かって来ることはない。

 

 彼らは、一目見た瞬間に実力を察したのだ。

 

 戦いになるとか、そんなレベルではない。

 

 文字通り、攻撃が届く範囲にまで近づく前に、その身より放たれている霊光波動拳のパワーによって塵に変えられる、と。

 

 言うなれば、一匹の羽虫が、雲にまで届く巨人に挑むようなものだ。

 

 

「去れ、この先に用があるだけだ」

 

 

 なので、私がそう告げて、少しばかり視線に力を込めれば……途端、まるでアリの巣を突いたかのごとく、ワラワラと彼らは一目散に離れて……いや、あのね? 

 

 

『お、おたすけ~』

 

『か、怪物じゃ~』

 

『逃げろ、逃げろ~』

 

 

 だからといって、そんな命辛々みたいな勢いで涙ながらに逃げられると、ちょっと寂しいというか、傷つくんだけど……まあ、いいや。

 

 邪魔する者が無くなったので、えっちらおっちら先へと進み……なんか、穴があった。

 

 ただ、普通の穴じゃない。穴を塞ぐように、文様が淡く光っている。

 

 何かしらの術式というか、結界で出入りを塞いでいるようで……不思議な文様の向こうには、大量の怨霊みたいなのが外へ出ようと渦巻いて……ヨシ。

 

 

 ──テレポ。

 

 

 結界を素通りして、内部奥深くへ……そこには、血のように鮮やかな花を咲かせた巨大な桜が、湖の上にデカデカと鎮座していた。

 

 明らかに、人為的に作られたモノだ……が、それよりも。

 

 

「……うっわ、きっしょ!!」

 

 

 私の視線が桜……ではなく、そこから離れた場所、陸地のところにポツンと作られた祭壇っぽい場所にデカデカと設置された、巨大な写真を捉えた。

 

 どれぐらいデカいかって、目測でも3m以上はあるんじゃなかろうか。

 

 写真には、一人の老人が映っている。

 

 お世辞にも人が好さそうには見えず、むしろ、人間の醜悪さをこれでもかと煮詰めたような……趣味が悪すぎて、一周回って笑えて……っと、その時であった。

 

 なにやら、どこからともなく雄たけびが突然したかと思ったら、何もない空間よりにじみ出るようにして……巨大な骨の化け物が出現した。

 

 状況からして、この地のボス……あるいは、それに近しい存在か……ほぼほぼ実体化しているようで、もはや怨霊というよりは、骨怪物だ。

 

 

 ──グォォォオオオオ!!!! 

 

 

 骨怪物が、吠える。

 

 見た目通り狂っているようで、実力の差が分かっていないようだ。

 

 だから、私は……押し留めているパワーを少しばかり開放し、霊力を少しばかり分かりやすい状態にする。

 

 

 ──グォォォオ……オオォォ??? 

 

 

 すると、今にも飛び掛からんばかりに雄たけびをあげていた骨怪物の動きが、明らかに鈍った。

 

 それも、致し方ない。

 

 遠目にはE級妖怪だと思っていたのに、いざ対面したらSSSSSSS級妖怪だった……みたいな感じだ。

 

 言うなれば、こいつ弱そうじゃ~んって意気揚々とちょっかい掛けようと肩を叩いたら、明らかに堅気じゃない強面顔が振り返り……しかも、よく見ると首も太く筋肉パンパンだった、みたいな。

 

 

 ──グォォ、ォォォ、ォォォ……。

 

 

 その声を言葉にするなら、『やっべぇ……(涙)』だろうか。

 

 目に付く者すべて殺しまわるみたいな状態とはいえ、ある程度思考出来るだけの理性は残っているようだ。

 

 もしも完全に理性を失っている化け物なら、四六時中周囲の壁を殴り続けているはずで……だからこそ、私との力の差に気付けてしまったわけなのだけれども。

 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

 

 さて、天より振り下ろす攻撃技、『ゴッドハンド』……巨大な拳を具現化させ、骨怪物に叩き込む。

 

 この『ゴッドハンド』は、すごいぞ。

 

 なにせ、物理攻撃の中でも最上位に位置する攻撃だ、だいたいの雑魚敵は一撃で仕留められる威力がある。

 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

「おすわり」

 

 ──グワァ──!!! 

 

 

 十二分に格の違いを叩き込めば、骨怪物はおとなしくなった。途中で泣きが入ったけど、こういうのは最初が肝心である。

 

 

「さて、あなたにインタビューを行う。正直に答えるように」

 

 ──ぐ、グォォ……。

 

 

 その声は、先ほどよりも明らかに小さく弱弱しくなっていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、だ。

 

 

 すっかり縮こまっておとなしくなっている骨怪物より、色々と話を聞けば、だ。

 

 まず、この骨怪物の名は『狂骨』。

 

 主に人の怨念より生まれる妖怪で、この骨怪物はその怨念が幾重にも折り重なり、凝縮されたことで産まれた特大の狂骨だということ。

 

 道理で、こっそり『ライブラ』を掛けた際、ページ数にして数十万とか出たわけだ……長すぎて即座に読む気力を失った私は悪くない。

 

 で、この場には、長年に渡って凝縮された恨みで充満しており、常人なら短時間でもここに滞在すると命に係わる……とのこと。

 

 普通ならば怒り狂って暴れまわるのだが、度重なる特大拳骨を数十発も脳天から落とされたことで、一時的に正気を取り戻した、とのこと。

 

 当然ながら一時的なので、そのうちまた正気を失って暴れまわるそうだ……いや、なんでよ? 

 

 そう尋ねたら、『とにかく恨みと憎しみが後から後から湧いてきて、それで頭の中がいっぱいになるから』とのことらしい。

 

 なるほど、だから脳天を叩きまくったショックで……で、だ。

 

 

 ──狂骨曰く、だ。

 

 

 どうやら、ここはかつて幽霊族と呼ばれていた妖怪(厳密には、違うらしい)が、数多く囚われていた場所らしい。

 

 なんでそんなの知っているのって聞いたら、どうやらこの狂骨とやらは、その幽霊族の恨みが混じっており、その記憶の一部も混じったそうだ。

 

 

(幽霊族ってなんだよ……)

 

 

 聞きなれぬ単語が出たので尋ねたら、『さあ……?』って首を傾げられた。

 

 いや、自分のことだろって思ったけど、あくまでも混じっているだけで、狂骨自身にあるのは、只々ひたすら『この恨み晴らさずいられるか』という思いだけらしい。

 

 

「……え、じゃあ、さっさとぶっ殺せば良いのでは?」

 

 

 正直、生かしておく理由が私にはないし、むしろ、こいつ殺しておいた方が良いのではという感想しか私にはない。

 

 なので、その言葉と共に、先ほどよりも15倍以上のパワーを込めた『ゴッドハンド』を狂骨の頭上に出現させる。

 

 

 ──グワァ── ユルシテ、ゴメンナサイ!!!??? 

 

 

 なんか、狂骨がめっちゃ命乞いしてくる。

 

 いや、命乞いされても、怨霊なんだから生きていないじゃん……そんな目で見られても、欠片の罪悪感も湧かないのだけど? 

 

 だって、こいつってば結果的に無事に済んだだけで、私に攻撃しようと……しかも、私じゃなかったら即死クラスの攻撃しようとしていたわけだし。

 

 なんなら、攻撃しなくても、私以外がこいつに近づいただけでもスリップダメージを与え続ける(しかも、容赦なく最後は呪い殺される)ようなやつだし。

 

 なら……ねえ? 

 

 

 ──アノ、セメテ、コノムラノヤツラダケデモ……

 

「いや、大惨事じゃん……」

 

 ──コノムラノヤツ、ワタシタチヲクルシメツヅケタ……

 

「苦しめ続けた?」

 

 

 さらに話を聞けば、そこからボロボロと出てくるわ、出てくるわ、この村の闇……というか、恨みの一端。

 

 思い出そうとすると理性が飛ぶので、詳しくは話せないらしいが……どうも、この狂骨に宿っている記憶には、長く苦しめられ、搾取され、殺された……というのが数多くあるらしい。

 

 しかも、死してなおこうして閉じ込められ、時には都合よく操られて利用される時もあるとかで……その辺りで再び理性が飛び始めたので、『ゴッドハンド』にてなだめた後。

 

 

「せめて、子供ぐらいは許してやったら? 何も知らぬ存ぜぬな子供にその罪を背負わせるのは、どうよ?」

 

 ──ウ~ン……。

 

「それじゃあ、同じ子供でも、ただ利用されているだけの立場だったら……なら、どう?」

 

 ──ドウイウコト? 

 

「たとえば、種馬用とか生贄用に育てられていただけの子供とか」

 

 ──ウンウン……ウン? 

 

「子を産むためだけに育てられていたとか」

 

 ──エ、ナニソレ……。

 

「そういうの、あるんだよね。次代を産むためだけにずっと軟禁状態で暮らして、年頃になったら爺みたいな男の子供を産むだけの……とか」

 

 ──エェェ……(ドン引き)

 

「そういうのぐらいは、見逃してやったら?」

 

 ──ウ、ウ~ン……マア、ソウイウノナラ……。

 

「よし、交渉成立。忘れていたら、そのたびに『ゴッドハンド』を叩き込むから、そのつもりでね」

 

 ──ア、ハイ……。

 

 

 そうして、狂骨との話もここらでキリが良いと判断した私は、もう夜も遅いし帰ってひと眠りするかと……かかとをひるがえした時であった。

 

 

 狂骨より、桜の方を見てほしいと言われた。

 

 

 なんでって尋ねたら、『まだ、あの桜の下には生きている者がいる、女だ、助けてやってくれ』とのことらしい。

 

 マジかよってな感じで、実際に桜の下……湖になっている、木の根元を探ってみれば……マジで居たよ、本当にまだ死んでいない。

 

 

「おお……間一髪、なのかね?」

 

 

 『ライブラ』にて確認……幽霊族とかいう知らん種族で、人間では……あ、さっき狂骨が話していた種族か。

 

 現在進行形で長らく消耗し続けているせいで、かなり見た目が変わっているっぽいが……たしかに、女だ。

 

 とりあえず、霊力を分け与え続ければ、回復するようだ……まだ止まっていない胸の鼓動へと、活を入れる意味もあって霊力を流し込む。

 

 まるで、砂漠にバケツの水を掛けたかのような手ごたえの無さに、「ふむ、もっとか……」私はそのまま一定量の霊力を流し込み続ける。

 

 いくら回復するとはいっても、いきなり豪雨のごとき量を流し込んだら負担が大きすぎるので、時間を掛ける。

 

 そのまま……何時間ぐらい、霊力を注入し続けただろうか。

 

 まあ、それでも渇きに乾ききった器を満たすには至らないようで……しかし、気付けにはなったのか、閉じていた目が……緩やかに開かれた。

 

 

「おい、あんた、まだ生きたいって思っている? 思っているなら助けるけど、どうする?」

「……イキタイ」

「そうか、なら助けよう。しばらく私の影の中で寝ておけ」

 

 

 ポツリと、生きる意志を見せたので、私は小さく女が頷いたのを確認してから、己の影の中に女を避難させて。

 

 それから、狂骨に手を振って……『テレポ』にて、水木の下へと戻ったのであった。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうしたら、だ。

 

 

「……??? 水木よ、なんでこんな場所にいるのだ?」

「それはこっちのセリフだ、丸一日どこへ行っていたんだ?」

「うむ? そうか、丸一日も経っていたのか」

 

 

 まさか、一日近く治療に時間を費やしていたことが判明し。

 

 

(……牢屋? 中に閉じ込められているのは……幽霊族? なんだこの村は、人外との遭遇率が高いな……)

 

 

 どういうわけか、その牢屋に閉じ込められている男から……妙に鋭い視線を向けられ。

 

 生きている幽霊族との遭遇二人目になるという、思ってもみなかった事態になったのであった。

 

 

 

 

 

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