チートで雑な召喚士もどき(TS済)の長い旅路―なお原作知らず―   作:葛城

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第2話: 天津甘栗は次回にお預け!

 

 

 ──私は一つ、勘違いをしていた。

 

 

 てっきり、男女のペアかと思った人型ロボと少女だが、実際は一機と1人のペアであった。

 

 そう、改めてシャイアンと名乗った人型ロボは、どうやら中に人が乗っているのではなく、人と同等の高度な知能を持つ、自律型戦闘ロボットであった。

 

 ちなみに、意外と声色はダンディ。ある意味、見た目とマッチしているのかもしれない。

 

 ならば少女の方はアンドロイドかと最初は思ったが、どうやら違うようで……見に纏っているゴテゴテとした機械は、いわゆるパワードスーツというやつのようだ。

 

 名は、イクール。

 

『こんな場所で立ち話はなんだ』という事で、都市の方でお茶でも飲みながら……という流れになった。

 

 

「それで、あんたの名前は?」

「……いくつかあるけど、小町(こまち)とでも呼んでくれ。直近では一番呼び慣れている名前だから」

 

 

 まあ、その前に、名を尋ねられた私は……小町と名乗る事にした。今しがたの発言通り、特にそれ以上の意味はなかった……っと。

 

 

(──あ、鳥ラクダ、忘れてた)

 

 

 その際、鳥ラクダの事を思い出した私は『テレポ』にて離れている鳥ラクダへと向かい、一緒に連れて行くことにした。

 

 

「あっ! そいつ、私を置いて逃げ出したやつだ!」

 

 

 すると、どうやら鳥ラクダとは知り合いだったようだ。

 

 どういう事かと話を聞けば、どうやら人形ロボ……シャイアンと初めて出会った時に、この鳥ラクダは怖がるあまりイクールを置いて何処かへ走り去って行ったらしいのだ。

 

 私ならいざ知らず、こんな広い砂漠の真ん中でそんな事をされたら、よほど幸運でなければ野たれ死ぬのが確定である。

 

 そりゃあ、恨み言の一つや二つは出るのが当然だろう。

 

 鳥ラクダもそれは分かっているようで、ちょっと気まずそうに顔を逸らしていた。妙に人間臭いというか……いや、まあ、いいけど。

 

 私としては別にイクールに返却しても良かったのだが、当のイクールは一言文句を言っただけで気が済んだようだ。

 

 むしろ、『シャイアンが居るから……アンタが欲しいなら、そいつ譲るよ』と言われてしまった。

 

 そう言われても、私は満足したら別の世界へ転移するつもりである。

 

 連れて行こうと思えば行けるけど、そうすると鳥ラクダは番を見付けることが絶対に出来なくなってしまうし、世界によっては生きていけない場合もある。

 

 さすがに、そこまで自分のワガママを押し通すつもりがなかった私は、足はもうあるからとイクールの申し出を断ることにした。

 

 

「ふ~ん、じゃあ、私が売っちゃうけどいいの?」

「いいよ。それよりも、その売ったお金で何かご飯を食べたいな」

「ご飯? よぉ~し! それじゃあ、ご飯とは別に、機会があったら天津甘栗買ってあげるよ!」

「甘栗……あるの?」

「小さな村にはないけど、伊達に城塞都市ケルトリアじゃないからね。表のルートでは中々出回らないけど、裏のルートを探せば売ってくれるところがあると思うわよ」

 

 

 と、いう流れになった。

 

 

 ……そういえば、名を知らなかった。

 

 

 私が遠くからずっと眺めていた都市の名は、『城塞都市ケルトリア』というらしい。

 

 ちなみに、イクールが着ているゴテゴテとしたパワードスーツだが、さすがに都市の中では脱ぐようだ。

 

 露わになったその身体はけして大柄とは言い難い。顔立ちも整っているので、どちらかと言えば快活な看板娘といった印象であった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………で、だ。

 

 

 この世界では初となる人々の街に入ったわけだが、想像していたのとは違う光景が数多く見られた。

 

 特に違うと思ったのは、想像していたよりも文明は進んでいる……という点だ。

 

 街並みこそ粘土とレンガを組み合わせたような、なんともレトロな印象を覚えたが、街中を歩いている人たちが、その印象をガラリと変える。

 

 有り体に言えば、イクールのような肉の身体の人間よりも、機械人間(?)の方が非常に多かった。

 

 パワードスーツなんてものがあるくらいだから、相当に進んだ文明なのは想像していたが、まさか、シャイアンのような(そこまで巨大ではないけど)機械人間がデフォルトとまでは想像していなかった。

 

 次に、生身の人間のほとんどは仮面やマスク(あるいは、それに近しいモノ)で顔を隠している。

 

 聞けば、砂埃がとにかく多いので、呼吸器などを守るために装着しているのだとか。

 

 もちろん、イクールのように、暑苦しくて嫌という人は外しているらしい。あるいは、そういう人は必要時以外は外に出ないのだとか。

 

 

「──ん? 機械人間が珍しい?」

 

 

 非常に興味深く周りを見回していると、振り返ったイクールからそう笑われた。

 

 

「はい、始めて見ました。ここらでは普通なの?」

「ん~、そうだね、ケルトリアでは珍しくないかな。でも、私のような生身の人間しかいない場所だって普通にあるよ」

「あ、そういうのか……」

 

 

 身軽になったイクールと、けっこう身軽に動くシャイアンに連れられて、贔屓にしている店に案内された私は……ついで、といった感じで、売ったお金で奢ってもらい、この世界初の料理を堪能していた。

 

 意外なことに、シャイアンもコーヒーを飲んでいた。

 

 ロボットなのにと思ったら、『固形物は無理だが、コーヒーなどは楽しめるのさ』とのこと。ちなみに、煙草も嗜むのだとか。

 

 

『──それにしても、君はいったいどこから来たんだい?』

 

 

 そうして、食後のデザート……といった感じで、レモンに似た酸味がある桃をかじっていた私に、シャイアンはそう話を切り出した。

 

 

「何処からと問われたら、別の世界から……としか」

「別の世界? それって、絵本とかにある、魔法の世界ってやつ?」

 

 

 本当かな? 嘘かな? 

 

 そんな興味がこれ以上ないぐらい表情に現れているイクール。初見時は快活な印象を覚えたが、印象通りに好奇心は旺盛なようだ。

 

 

「『テレポ』」

 

 

 なので、私はテレポートを行い──イクールの背後に移動する。

 

 思わず、「えっ!?」イクールは驚いて椅子から腰が浮いた。

 

 イクールからすれば、眼前の私がいきなり消えたのだ。驚いて椅子を蹴飛ばさなかっただけでも、度胸がある。

 

 

「こちらですよ──」

 

 

 声を掛けながら、再び『テレポ』にて元の席へ。

 

 振り返ったイクールが、誰もいないことに首を傾げながら視線を戻し……元の席に私が居るのを見て、ギョッと目を見開いていた。

 

 

『……テレポ、だったかな。どういう原理で移動したのかがいまいち分からないのだが……それが、魔法なのかい?』

「はい、他にも多くの魔法がありますが、見せびらかすモノではないので、これ以上はお見せしません」

『そうだな、その方がいい。君のその力は、むやみやたらと騒動を引き起こしそうだ』

 

 

 立ち位置の関係から一部始終を目撃していたシャイアン。

 

 にわかには信じ難いが……と前置きをしつつも、私の事をこの世界の人間ではないということだけはどうやら信じたようだった。

 

 

「え~!? 私は何も見ていない! シャイアンはズルい!」

『ズルいって、君は実際に魔法を体感したじゃないか』

「こういうのは、体感したなんて言わないの! シャイアンはもう、女心ってのが分かってないよ!」

 

 

 ただ、からかわれる形になったイクールは納得出来ないようで、シャイアンにやつ当たりをしていたが……で、だ。

 

 しばし、イクールとシャイアンは仲良く戯れた後で……ふと、イクールより質問をされた。

 

 

「そういえば、小町は何の目的でこの世界に来たの?」

「美味しいご飯を食べるために、です」

「……まっ、なんでもいいけどさ」

 

 

 私としては心から本気なのだが、どうやらイクールは信じなかったようだ。

 

 まあ、客観的に考えたら、別世界から別世界へと渡り歩いてくる魔女の目的が『美味しいご飯を食べるため』だなんて……疑われて当たり前である。

 

 でもまあ、偽り無く100%本気だし、何を言われても思われてもどうでも良いから、私は特に気にすることなく、かじっていたレモン風味の桃をパクリと食べ終え……さて、と二人(?)に尋ねた。

 

 

「ところで、この世界には他に美味しいご飯が食べられそうな都市はありますか?」

「あ、それ本気なんだ……」

「はい、本気です。で、なにかご存じならば教えてほしいのですが……」

 

 

 私の言葉に、イクールとシャイアンは顔を見合わせると……同時に、う~ん、と考え込むように唸ってしまった。

 

 

「……あ、いや、無いってわけじゃないの」

 

 

 そこまで悩ませてしまうのかと申しわけなく思うと、そうじゃないよとイクールは言葉を続けてくれた。

 

 

「心当たりというか、別の都市や国に行けば有るとは思うけど……でも……」

「なにか?」

「実は、私が生まれるずっと前から世界中で戦争が起こっていてね。『ブラジル皇帝軍』ってのが世界中に戦争を吹っかけているせいで……滅ぼされた国もけっこうあるんだよ」

「なんと……」

 

 

 詳しく話を聞けば、この皇帝軍……そりゃあもうやりたい放題で残虐らしく、逆らう者は皆殺しというスタンスらしい。

 

 イクールの話はけして誇張されているわけではなく、本当に多くの国に攻め込んでおり、抵抗した国は徹底的に破壊し尽くされ……ということだ。

 

 しかも、事の問題はそこだけではない。

 

 どうやら、今より1000年ぐらい前にはもっと大規模な……地球全土といっても過言ではない大戦争が起こっていたらしく、その影響は1000年後の今でもまだ残っているのだとか。

 

 

「さっき話した天津甘栗だけど、皇帝軍が暴れ回る前はそこらの通りでもいっぱい露店で買えたもんさ……それが今や、戦地から離れているこの都市ですら物流が滞って表では滅多に手に入らない貴重品さ」

「……なるほど」

「でも、それも時間の問題だよ」

「え?」

「だって、ブラジル皇帝軍はもう、私とシャイアンでコテンパンにしちゃったし……今はもう残党ぐらいしか残っていないもん……ねえ、シャイアン」

『ああ、そうだな。とはいえ、長らく続いた戦火でこの国のみならず、世界中が疲弊してしまっている』

「そうそう、天津甘栗もそうだけど……元に戻るには、あと何十年掛かるか分かんねえぜ」

『な~に、もとより人間1人で出来ることなど高が知れているさ。精一杯、やれるだけの事をやれば上等だよ』

「それは分かっているけどさ……」

『1000年かけて壊してしまったんだ。直るには、また1000年掛かるだろうさ、ちょっとずつ進むしかあるまい』

「もう、シャイアンは本当に頭が固いぞ! 女の子が気落ちしているんだから、優しく慰めなさい!」

「──よく、頑張りましたね」

「ありがとう……でも、先は長いなあ、ほんと……」

 

 

 そう言って、なんとも気落ちした様子で肩を落とすイクールに……私も、ちょっとばかり肩を落とした。

 

 どうやら、この世界での美味しいご飯というのは、あまり期待しない方が良いみたいだ。

 

 それだけ長く戦火が続いたということは、人々の意識は『質より量、味より量』という方向にシフトしている可能性が非常に高い。

 

 実際、イクールの話を聞く限り、ギリギリ戦火が届いていないっぽいここですら……うん。

 

 今しがた奢ってくれたご飯も、真新しさを感じる味わいではあったけど、10段階評価ではギリギリ3ぐらいだし……悲しいかな、それがこの世界の現状のようだ。

 

 

 と、なれば、だ。

 

 

 この世界の天津甘栗にはたいへん興味を引かれるが、わざわざ危険を冒してまで裏ルートとやらから調達されるのは……気持ちは嬉しいが、そこまでしてもらうと逆に気を使う。

 

 かといって、世界が安定して『量より質』の人が増えて、料理が新たに発展してゆくまで待つのは……いくら不老不死に近しいとはいえ、気長すぎる。

 

 

 ……残念ながら、というやつだ。

 

 

 私としては、今回は縁が無かった……というだけの話であり、それ以上でもそれ以下でもない……のだけれども。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………でもまあ、せっかく出会ったのだ。

 

 

「では、長々とお話してくれたお礼に、この種をあげましょう」

 

 

 私は、『異空間』より取り出した……とある植物の種を、イクールとシャイアンに見せた。

 

 それは、『マナの樹』の『種』である──

 

 

 

 “Topics! ”

 

 “マナの樹とは、『聖剣伝説』というゲームに登場する、超自然力(マナ)を司る樹の事。作品によって設定が異なるが、要は超凄いパワーを持つ凄い樹である”

 

 “その力は多岐に渡り、人々の心の影響を受けてプラスにもマイナスにも働いたり、邪悪な心を浄化したり、清らかな水が湧き出たり……もう在るだけで世界の中心みたいなアレである”

 

 “なお、『私』もマナの樹が有る世界に転生したのだが……守るために色々動いたけど、だいたい最後はラスボスっぽいやつに殺された思い出しかないので、けっこう複雑である”

 

 

 

 ──この『種』は、なんかそのマナの樹の精霊から『あんさん、よう頑張っとりますので……』という感じで貰った種である。

 

 

 正直、私が所持していても使い道が無いし、マナの樹は他の植物とは違い、日光や水で成長するわけではない。

 

 育てるのは、宇宙的なパワーだったり、人々の想いだったり……植物が育たない、こういう不毛な場所にこそ、マナの樹の真価が発揮される。

 

 しかし、マナの樹だけではけして大地は復活しない。

 

 あくまでも、マナの樹だけに頼らずに……という強い意思と想いがあってこそ。

 

 イクールたちの想いが本気ならば、この種は必ず貴方たちの助けになる。世界に緑が広がる土台になってくれるだろう。

 

 ……そう、種についての説明をしてから手渡せば、イクールとシャイアンは……しばしの間、その種を見つめた後で、私に向かって頭を下げた。

 

 

「──もしも、次に会う時……世界が今より良くなっていたら、その時は天津甘栗を奢ってね」

「そうさせてもらうよ。ありがとう、小町。ぜったい、この種を育てておっきな大樹にしてやるから!」

 

 

 その言葉だけで満足した私は……そばの空間に穴を開けて別世界への扉を開くと、イクールとシャイアンに手を振ってから……次の世界へと飛び込んだのであった。

 

 

 

 

 

 …………。

 

 ……。

 

 ……。

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………そうして、世界を渡った私を出迎えたのは。

 

 

「……えっと、お嬢さん? どうやってここまで入って来たのかな?」

 

 

 なんか、先ほどまで居た世界とは打って変わって、機械ちっくというか、とても人工的な空気というか、人工物に囲まれた場所というか、広間で。

 

 そこには、大勢の男たちが……それも、なんか体格があるというか、いかつい雰囲気ばかり放つ男たちが集まっていて、彼らは一斉に銃を私に向けていて。

 

 その中でも、ひと際よわっちい気配を放っているというか……それでも、片手に銃を……うん、形状からしてそうとしか見れないそれを私に向ける男に、私は答えた。

 

 

「私は、小町と言います。ちょっと別世界から渡ってきたので、ただの偶然です」

「……そうかい。僕は、ヤン・ウェンリー。いちおう、司令官を務めている」

「はあ、ヤンさんですね。ところで、ここはどこでしょおうか?」

「君は軍艦の……それも、一定の階級以上のモノしか出席を許されていない場所に居るのだけど……状況は、分かっているかな?」

「はて、もしかして不法侵入的なアレですか?」

「そうだね、申しわけないけど、拘束させてもらう。抵抗する場合は、射殺も考慮する必要があるので、おとなしくしてもらえるかな?」

 

 

 どうやら、この世界の軍人さんたちであった。

 

 




次回原作世界は、銀河英雄伝説です

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