チートで雑な召喚士もどき(TS済)の長い旅路―なお原作知らず― 作:葛城
ぜったいアレ、ちん〇だろ……と
※ グロテスク注意
第8話: どう見てもアレは、ちん〇
察するタイミングは色々あったけど、やはり、この世界は小町として生きてきた日本とは、違うようだ。
具体的には、チェーン店の名前がちょっとばかり違っていたり、通りの名前がちょっとばかり違っていたり、あとは著名人の名前が違っていたり。
まあ、特に問題はない……そこまでは。
問題なのは、私を訪ねて(優しい表現)来た、天邪鬼と名乗った男……どうやら純粋な人間ではなく、獣人と人間のハーフだと言う。
たしかに、天邪鬼さんより感じ取れる気配には、人間とは異なるモノが混じっている。
見た目は人間……いや、よく見ると微妙に獣人の特徴が現れているが、私のように感じ取れなければ誰も気には止めない程度の差異だろう。
で、だ。
話をしに来たという天邪鬼の言葉は嘘ではなく、私が無知である事を察して、天邪鬼たち……すなわち、一般人が知らない世界の事を色々と説明をしてくれた。
それを簡潔にまとめるならば、だ。
まず、この世界には人間たちが住まう『人間界』の他に、二つ世界があるという。
それは、天邪鬼さんを始めとして、獣人と呼ばれる種族たちが住まう『獣人界』。基本的に、天邪鬼さんのようなモノ好き以外は、人間界に来る者はほとんどいない。
そして、牛丼屋で瞬殺した糞ボケカスのアレは、魔族と呼ばれる種族で、『魔界』に住んでいる。魔族は、けっこう人間界に来ているらしい。
人間たちはその事に気付いている者はほとんどおらず、獣人や魔族が人に化けて生活している……ということにも気付いていない。
そして、どうして天邪鬼さんが人間界に来ているのかと言うと、だ。
それは、3000年も前より『獣人界』と『魔界』にて言い伝えられている、『超神伝説』というものが関係していた。
……『超神伝説』の内容は、そう多くはない。
3000年に一度、この世に『超神』と呼ばれる、神をも超越した神、超神が復活するというもの。
超神が復活すると、『人間界』、『獣人界』、『魔界』が一つとなり、永遠の国を作る……というものだ。
天邪鬼さんは、その『超人伝説』をずっと前から……何十年、何百年も前から調べ続けている。
しかし、伝説の詳細を知る者は誰一人としておらず、今のところ天邪鬼が分かっているのは、『とてつもない力を持った存在』ということだけ……で、あるらしい。
「……胡散臭い伝説ね」
ルームサービスで頼んだジュースをちゅ~っと吸いながら、私は率直な感想をこぼした。
「せやな、ワイもそう思うで」
「そう思うのに、何百年も探しているの?」
「せやで、馬鹿馬鹿しい事やろうな。でもな、ワイは見てみたいんや。超神が作る、永遠の世界ってやつをな」
「永遠の世界?」
「それが何なのかは知らん。でもな、今よりも、もっともっと良い世界になるかもしれんやろ? ワイは、それを見たいんや」
探し続けている天邪鬼さんも同じ事を思っているのか、否定はしなかった。ちゅごご、とあっという間に飲み干して氷だけになったグラスをワゴンに置くと、それでも、不敵に笑った。
「……でもな、ワイもずっと前から調べとるんやけど、詳しくは今も分からんのや。獣人界には、ほとんど伝承が残っとらんせいや」
「と、なると、『魔界』の方に?」
「あ~、それはアカン。魔界というか、魔族ってのはあんたが思うよりはるかに話が通じんのや」
「そうなの?」
「ワイが言うのもなんやけど、ほとんどのやつは本能を最優先に生きとる。腹が減れば生きたまま腹を掻っ捌いて食って、ちん○が経てば女襲って遊び倒してから食って、暇潰しに人間を滅茶苦茶にして食って……ロクなもんやないで」
「えぇ……でも、中には話が通じる魔族とかいるでしょ」
「せやな、
「はあ……大変ですねえ」
慰めでもなんでもなく、それ以上の感想が出て来なかった私は、さてと……グラスをサイドテーブルに置くと。
「それで? 天邪鬼さんは、なんの目的で私に?」
「はっきり言わせてもらうなら、あんたが超神に関係している何者かと思ったんや」
「なるほど。ご期待に沿えず申し訳ありませんが、私は超神とは違いますので」
「……せやな」
私の言葉に、天邪鬼さんは納得したかのように頷いた──で、だ。
「よっしゃ、次はワイの番やで。あんた、いったいなにもんなんや?」
「別世界の……そうね、異世界人です」
今度は私の方が自己紹介をするのだが……まあ、案の定というか、天邪鬼さんは半信半疑な様子であった。
いや、むしろ、半分だけでも信じてくれただけ、マシだろう。
ちなみに、信じた理由は『あんた、相当の力を隠しとるやろ?』という事らしい。なるほど、獣人というだけあって、獣特有の勘の鋭さはあるようだ。
実際、天邪鬼さんの勘は正しい。
私がこっそり『ライブラ』でも調べた限り、天邪鬼さんは強い。少なくとも、私が瞬殺したあのクソボケアホうん○魔族に比べたら、東京タワーとうん○ぐらいの差がある。
でも、私より弱い。どれぐらい差があるかって、それはもう天邪鬼さんの物差しでは測りきれないぐらいに。
例えるなら、天邪鬼さんでも30cm定規で1mm~5mmの差を張り合う中で、私だけ天文学的数字……みたいな感じだ。
ぶっちゃけてしまえば、どんぐりの背比べみたいなモノだけど、それでも、一端とはいえ私が力を隠していると気付けるだけ、大したものと思うべきだろう。
……まあ、とはいえ、だ。
「──戦うの?」
その返事の裏にうっすら見え隠れしている剣呑な気配を察した私は、軽く『威嚇』する。
具体的には、方向性を定めて意図的に『力』を放出するだけ。その際に、『やんのかテメー、手加減しねえぞ』といった思いを少しばかり込めるのがコツだ。
というのも、私の威嚇は獣がやるそれとは格が違う。
猛獣であろうとその場で腰を抜かすほどに威圧的で、心臓の弱い人ならそのまま心臓発作を起こして突然死、森の中で使えば、その一帯からあらゆる生物が逃避を始めるほどだ。
「……すまん、ちょっと見てみとうなっただけや、堪忍やで」
当然、そんなのをまともに受ければタダでは済まず……天邪鬼さんも、顔どころか全身から冷や汗を吹き出しながら、引きつった笑みで誤魔化したのであった。
……とりあえずは、だ。
『超神伝説』とか『獣人』とか『魔族』とか、私にとってはどうでもいい。
私を警戒するのは勝手だし、警戒してくるのも気にはしない。監視をしたいなら、好きにすればいい。
しかし、直接手を出してきたり、間接的に害そうとするならば、
私は容赦しない。数多の宇宙怪獣を葬り去った、『疑似バスタービーム』にて蒸発させてやろう。
そんな気持ちで天邪鬼さんに釘を刺しておけば。
「わ、わかった! 獣人界の皆にも伝えとくから!! ほ、ほな!!」
真っ青を通り越して真っ白になった顔で、それだけを私に言い残すと……天邪鬼さんは、窓を蹴破る勢いで外へと飛び出し……ピューッと夜空へ飛んでいき……フッと、姿を消したのであった。
……獣の要素があるのなら、動物的な本能で力の差を感じ取ってくれたのだろう。
これだけ脅せば、万が一にもこっちを巻き込む事はないだろう。それでも巻き込まれたら、それはもう天邪鬼さんも予期していない事故みたいなものだから、諦めるしかない。
(……明日は、温泉にでも行ってみるか。温泉卵に冷酒をキメよう)
そんなわけで、この世界ではけっこう長く滞在する気持ちだった私は、シャワーを浴びて、寝間着に着替えて、それからベッドに入り、どーんと睡眠を取るのであった。
…………。
……。
……。
……。
……。
…………の、つもりだったのだけど。
「……人の話、聞いていたよね?」
むくりと、ベッドから身体を起こした私は、暗闇の向こうを見つめる。
「私はね、牛丼を台無しにしたおまえらが心底嫌いなんだよね……だから、顔も見たくないんだ」
……。
……。
…………ふむ。
「あと、10秒数えるまでに消え失せろ。でなければ、おまえだけでなく、おまえの背後にいるやつも大勢死ぬぞ」
……。
……。
…………よろしい、10秒数え終わった。
ぱちん、と不機嫌をそのままに指を鳴らす。
途端、照明が落とされた暗闇の中より、おぞましい悲鳴と鮮血が飛び散った──が、それだけではない。
私の指パッチンは、ただの指パッチンではない。
一つ鳴らすだけで分厚い鋼鉄はおろかビルすらも真っ二つにする、カマイタチを放つ。かつて、『素晴らしき』の二つ名を持つ者と戦った際に、ラーニングした技である──
“Topics! ”
“指パッチンとは、OVAジャイアントロボに登場する悪の秘密結社BF団の最上級エージェント、十傑集と呼ばれる者たちの1人が使う技である”
“名を、素晴らしきヒィッツカラルド。『私』は、コイツと戦った際に、この技をラーニングし、習得した”
“非常に使い勝手が良く、ほとんど体力を消耗せず致死の一撃を放てる。何がどう素晴らしきなのかは知らないけど、この技以外はそんなに強くはなかった”
──しかも、私の指パッチンは、それだけではない。
暗闇よりこちらの世界に出てきた魔族、その背後にて閉じかけていた空間の穴を切り裂いて、その先にある『魔界』へと、分裂したカマイタチが広がる。
言うなれば、一発の弾丸が1000発、10000発にも分裂して、一発とて威力が減退することなく、広範囲に広がったようなものだ。
パッと、私が感じ取れた限りでも……なんか思ったよりスカスカだったので、400体しか殺せなかったが……まあいい。
「で、あんたは?」
「……我が名は、水角獣。敵対するつもりはない、ただ、謝罪に来ただけだ」
その中で、私の指パッチンを避けきった魔族……なんだろう、人間に化けているけど、人外なのが隠しきれていないその男が、暗闇よりぬうっと姿を見せた。
水角獣と名乗ったその男は、獣というにはけっこう人の形をしている。まあ、一目で人間ではないのが分かる程度の違いでしかないけど。
「そう、それじゃあ、今のでチャラにしてあげるから。もう私に関わって来ないでね」
私がそう言うと、水角獣はやたら仰々しく頭を下げ……けれども、「一つだけ、約束してほしい」引かなかった。
「もしも、天邪鬼のやつから超神に関する手伝いを頼まれた時は、どうか何もしないでほしい」
「??? なんで?」
「やつは超神を、この世界を良くする神の類だと思っているようだが、実際は違うのだ」
吐き捨てるように……あるいは、心底忌々しいナニカを思い出したかのように、水角獣は顔をしかめた。
そうして、水角獣より語られた話だが……驚いたことに、それは天邪鬼さんが語った内容とは根本から異なっていた。
まず、超神というは、天邪鬼さんが語る存在ではない。
3000前年に一度よみがえるというのは本当だが、その目的は『人間界』、『獣人界』、『魔界』を一つにして永遠の世界にする……のではない。
真相は、その逆だ。
三つの世界を一つにするのではなく、三つの世界を破壊する存在。すなわち、全てを破壊して破壊して、破壊し尽くす、破壊の神。
それこそが『超神』であり、超神がよみがえれば最後、この世は、この世界は、全ての命が途絶えた……永遠の世界が生まれる。
それが本当の『超神伝説』であり、けしてよみがえらせてはならない存在である……という話であった。
「……なるほど、話はわかった。なら、私は傍観者でいるから、勝手にしていてよ」
「感謝する……これは、せめてものお詫びだ」
深々と頭を下げた水角獣は、そう言い残して暗闇に溶けて行き……気配も消えた。後に残されたのは、私に直接手渡してきた温かい風呂敷だ。
風呂敷の大きさは、お弁当箱ぐらい。感触からして、お弁当っぽい。
いや、これはお弁当というより……なんともかぐわしい香りに、私は思わずお腹をぐ~っと鳴らし……次いで、気付いた。
「この匂い──ほう、うな重ですか……!!」
照明を点けて、改めて中を確認すれば……そこには、底のご飯が見えないぐらい肉厚でタップリなウナギのかば焼きが。
(……そういえば、結局は牛丼半分しか食べてなかったっけ)
一つ、頷いた私は……箱の下に入っていたインスタント味噌汁を見て、次いで、部屋の隅に置かれている小さなテーブル……そこに置かれた紙コップと、電気ポッドを見て。
「……機会が合うなら、水角獣さんだけは助けてあげよう」
深夜の罪深いうな重を楽しむため、いそいそと準備を始めるのであった。
……。
……。
…………とまあ、そんな感じで、初日から色々あったわけだが……だからといって、別に何か事が起こったわけではない。
そりゃあ、そうだ。
私が首を突っ込んでいるならともかく、双方に『私の事は放って置け』と釘を刺したし、私は私で温泉に行ったり、漫画喫茶で漫画を読み漁ったり、そりゃあもう色々と満喫しているのだ。
むしろ、それで変に巻き込まれるなら、それはもうある種の因果律、運命と思って諦めるしかない。
で、そんな感じで、どれぐらい日数が経ったか。
この世界での私も、見た目が見た目なので襲い掛かってくる変質者をこっそりぶちのめして現金全部(当然、銀行のキャッシュも)を徴収することで、軍資金を確保していた私だが。
(……ん?)
時刻は、夜。
生ビールとから揚げと枝豆と冷奴という黄金の組み合わせを堪能し、サウナと水風呂を往復していた私は思わず足を止めた。
なんか、獣人とも魔族とも異なり、それでいて比にならないぐらいに強大な『力』を感じ取ったので、整いを一時中断し、『テレポ』にて上空へとワープした。
そうして、力の出所へと視線を向けた私は──堪らず、叫んだ。
「ち、ちん○をいっぱい生やした巨大人形怪獣?」
言い方はなんだが、そうとしか見えなかった。
言っておくが、誇張ではない。場所は、大きな病院。その中心部より、建物をぶっ壊しながら内側より姿を見せている身体、そして、ちん○。
本当に、ちん○にしか見えない触手がうねうねと身体から伸びている。顔は髑髏を思わせる造形だが、そんなのはちん○のせいで気にならない。
しかも、しかも、しかも、だ。
何故かは知らないけど、ちん○に……おそらく、人間と思わしき物体が張り付いて……取り込まれているのが見える。
いや、というか、ちん○だけでなく、化け物の身体全部というか、養分として食われているっぽいが……やっぱり、ちん○が気になり過ぎる。
「…………キモッ」
なんだろう、せっかく良い気分だったのに……同じ化け物でも、ここまで露骨すぎるのは……いや、それ以前に、わざわざちん○見たくねえし。
「……指パッチンしたろ」
とりあえず、気分を害した私は……ひたすら、指パッチンしまくった。
十数km近く離れていたけど、私の指パッチンは特別なので、威力の減退もなく……スパスパと、身体もちん○も真っ二つにして──いる、途中。
フッと、いきなり姿を消した。おそらく、転移の類で逃げたのだろう。
仕留めそこなったにしても、気は晴れた私は、わざわざ追いかけることもせず……気を取り直して、再び整い作業に戻ることにした。
やっぱり、ちん〇だろう……