神風怪盗ジャンヌ vs鬼の第四機動隊   作:山さん

2 / 33
切り札 それは鬼―

【警視庁・庁舎内 会議室】

 

重厚な防音扉が閉まる。

時計の針が静かに進む音がやけに耳に残る。

 

長机に並ぶ、警視庁の要職たち。刑事部長、警備部長、公安部長。

その前に、捜査一課の刑事・東大寺氷室が直立していた。

 

刑事部長・香取が、苦々しげに唇を結ぶ。

 

「……東大寺くん。これまでの君の働きは認める。だが――残念だが、次のジャンヌ事件の対応からは外れてもらう」

 

氷室の眉が僅かに動く。口は開かない。ただ、険しい目だけが理由を問うていた。

 

「次回以降、現場指揮は別の者が担当する。君は待機だ」

 

一瞬の沈黙。

 

代わって、警備部長・鳴神が低い声で言った。

 

「――入りなさい」

 

コツ、コツ、とブーツの音が会議室に響く。

 

入ってきたのは、整然と制服を着こなし、冷ややかに状況を見渡す若き女性指揮官だった。

彼女は、隊服の袖を静かに折り、三人の部長に対して見事な敬礼を見せる。

 

「第四機動隊、隊長・白峰あかね、指揮命令を拝命し、出動準備完了しております」

 

その瞬間――

 

氷室の目がわずかに見開かれた。

 

(まさか……女か……それも――)

 

警備部長が続けるように言う。

 

「紹介しよう。**“鬼の姫君”**と呼ばれる、第四機動隊 隊長・白峰あかね警視。次回のジャンヌ予告への出動は、彼女の指揮の下で行われる」

 

公安部長・笹塚も腕を組んだまま補足する。

 

「通常の捜査や包囲では彼女は捕まらない。――我々が“ジャンヌ”と呼んでいるあの女は、明らかに人間離れした行動能力を見せている。機動力・跳躍・索敵回避……」

「科学的証明はできないが、通常の犯人対応では追いつけない。そこで、我々は切り札を切る」

 

刑事部長が静かに付け加える。

 

「あさま山荘事件と同じだよ。正規の法手続きでは突破できない“壁”があるならば、それを“力”で突破するしかない。もちろん――生け捕りが前提だ」

 

氷室の拳が震える。

 

「……力業、ですか……。たかが少女ひとりに、鬼の第四を――?」

 

そのとき、白峰あかねが一歩前に出て、凛とした声で言った。

 

「失礼します。

私は、“たかが”という言葉で彼女を侮るつもりはありません。むしろ、彼女は、制圧すべき“敵”としては、かつて私が相対してきたどの対象よりも――理解不能で、脅威です」

 

静寂が走る。

 

あかねはその場にいる全員に軽く会釈した後、氷室にだけ向き直った。

 

「東大寺警部補。あなたの捜査記録、全て拝見しました。――貴方の執念には敬意を払います。

ですが今、これは**法の領域を越えた“秩序の綻び”**に差し掛かっている。ゆえに、第四機動隊が引き継ぎます」

 

氷室は黙ったまま、彼女を睨むように見据える。だが――どこかで、自分の届かぬ正義があることもまた、悟っていた。

 

背後のガラスには、東京の夜景。

その遥か上空には、再び“ジャンヌ”が舞い降りる夜が近づいていた。

 

 

---

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。