神風怪盗ジャンヌ vs鬼の第四機動隊   作:山さん

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同盟の視線

ホワイトハウス 地下ブリーフィングルーム

 

午後10時45分(ワシントン時間)

 

重厚な木扉が閉じられる音と共に、空間の空気が切り替わった。

オーバルオフィスとは異なる、ホワイトハウス地下の戦略ブリーフィングルーム。

机の中央には巨大なスクリーン、周囲にアメリカの国旗と大統領旗。

 

会議室にはすでに面々が集まっていた。

 

アメリカ合衆国大統領:ロバート・J・グラント(モデル:ドナルド・トランプ)

 

統合参謀本部議長:マイケル・ストラットン

 

国務長官:エレナ・サンダース

 

国防長官:ジョン・アービング

 

CIA長官:マリク・デュラン

 

NSC国家安全保障会議メンバー数名

 

 

机上の資料には、1枚の写真と、衛星画像の束。

 

写真に映っていたのは――白峰あかね。

警視庁第四機動隊 隊長。ニックネーム「鬼の姫君」。整った容姿に鋭い眼差し。

だが、視線の先にあるのは、単なる美しさではなく、“国家の盾”としての矜持だった。

 

 

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「……“法と秩序に対する力による現状変更は、認めない”、だとさ」

 

大統領ロバート・J・グラントが、例のトランプ特有の手ぶりで言った。

 

「これは、中国への間接的な挑発にも聞こえるし、我々の外交ポジションに響く言葉だ」

 

大統領の目は笑っていない。

彼にしては珍しく真剣な調子だった。

 

 

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「これは認知戦だ」

 

まず言葉を発したのはCIA長官・デュラン。

 

「表向きは警察の指揮官による訓示。でも、その構造は完全に“国家の価値観を提示するプロパガンダ”だ。しかも国内向けだけじゃない。国際社会へのメッセージとして、極めて巧妙だ」

 

 

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統合参謀本部議長・ストラットンが資料を広げる。

 

「この“白峰あかね”、ただの警察官じゃない。警察官一家の血筋。祖父はあさま山荘事件で殉職、父親は公安出身。本人は若くして第四機動隊の隊長に昇進。伝統ある日本の治安部隊の象徴的人物だ」

 

「しかも、あの訓示――ジャンヌを“敵”として全否定しない。“西郷隆盛”と同様の扱いで、“敵ながら英雄”と評した」

 

「……その上で、“生け捕り”を明言。警察が、命を奪わずに正義を全うする意思を世界に示した」

 

 

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「我々と違って、だな」

 

国務長官・サンダースがため息まじりに呟く。

 

「我々は標的を殺す。速やかに、効率的に。だが日本は……悪魔と戦っていても、人間なら捕らえる」

 

「彼女のその姿勢が、むしろ世界に“文明の成熟”を見せつけている。これは、アメリカの道徳的影響力にも少なからず影響する」

 

 

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国防長官・アービングが、別の書類をテーブルに滑らせた。

 

「問題はそれだけじゃない。自衛隊が“魔的存在”に対して軍事作戦を明言した件だ」

 

「高城総理の承認のもと、百里基地に前方展開させた第8飛行隊のF−2戦闘機と93式空対艦誘導弾を改修した“液体窒素弾頭”を配備。誘導方式は慣性航法+赤外線。後期型はGPS/INS併用」

 

「作戦名は――“破魔雷(はまらい)”。」

 

「冷却爆撃で対象を凍らせた後、CH-47チヌークで“巨大鉄球”を投下し、破砕するという前代未聞の戦術」

 

「報道陣に公開されており、旧UGMの“マーゴドン対策”を参考にしたと公言している」

 

 

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一瞬、静寂が広がる。

 

魔王。悪魔。霊的存在――

それらは“非現実”のカテゴリーに属するはずだった。

 

だが日本は、あえて現実の兵器体系でそれに挑もうとしている。

 

軍事大国・アメリカにとって、それは“脅威”であると同時に、“刺激”でもあった。

 

 

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「……で、どうする?」

 

グラント大統領が尋ねた。

 

「この件――我々も関与するべきか?」

 

 

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統合参謀本部議長・ストラットンが静かに応じた。

 

「今のところ、直接の脅威は確認されていません。ただし――」

 

「日本が霊的存在に対して“正面から向き合い始めた”という事実は、アメリカの安全保障にも無関係ではありません」

 

「もし“それ”が我が国にも波及した場合、対応が遅れれば“世界のリーダー”としての立場が崩れかねない」

 

 

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CIA長官・デュランが続ける。

 

「空母打撃群の艦載機に搭載できる兵装を日本と共有することは可能です。“氷結弾頭”は気象兵器研究にも応用がある。技術的支援の名目で、我々も入り込む余地はある」

 

 

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国務長官・サンダースは慎重に言った。

 

「だが今は、出しゃばりすぎれば、日本国民の反感を買うリスクもある。彼らは今、“自分たちで秩序を守れる”と感じている。介入の是非は――高城総理と直接話すべきでしょう」

 

 

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しばらく沈黙が流れる。

 

大統領・グラントは腕を組み、しばし目を閉じて考えた。

 

やがて開いたその口は、静かだが確信に満ちていた。

 

「……わかった。とりあえず、高城と話してみよう」

 

「敵は“見えない悪魔”だが――その影は、太平洋を越えてくるかもしれん」

 

「だから我々も、“霊的な世界”に、片足を突っ込む覚悟がいる。国家の威信を保つためにな」

 

 

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画面の中、白峰あかねが車列に乗り込む姿がスローモーションで再生された。

 

彼女の姿は、銃火を掲げる戦士ではない。だが――

**言葉で秩序を守り、信念で治安を支える一人の“戦う国家公務員”**であった。

 

その姿が、いま、ホワイトハウスの戦略会議の議題になっている。

 

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