【総理大臣訓示:法治国家の矜持】
同時刻、首相官邸・地下通信指令室。 全国の自衛隊主要拠点、空母ジョージ・ワシントン、警視庁臨海美術館前線本部、百里基地、そして米軍統合司令部——全通信回線がひとつに束ねられ、総理大臣・高城遼子の姿が配信された。
スーツに身を包み、威厳をまとった女性指導者は、一拍置いてから、静かに、力強く語り始めた。
「国を守る者たちへ。この時代に生きる私たちは、いま、人類史の転換点に立っています。あの“魔王”と呼ばれる存在は、ただの敵ではありません。理屈や条約を超越した、“神話の悪意”のような力です。そして、これに一人で立ち向かってきた者がいます。そう——神風怪盗ジャンヌ」
「彼女は法を破り、社会の秩序に背いている。それは事実です。だが同時に、魔を封じようと命を賭す姿に、人間として心打たれぬ者などいない。私もまた、一人の人間として、その勇気に涙しました」
「しかし——私たちは法治国家の矜持を持たねばならない。いかなる大義であれ、法を越えて行動すれば、それはやがて“力こそ正義”という暴力の連鎖を生む。ジャンヌの祈りを本物にするためにこそ、我々は法のもとに立たねばならない。正義は、法の上にしか成り立たないのです」
「白峰あかね警視——あなたと第四機動隊の任務は、ただの逮捕ではありません。それは、国家が混沌の中でも理性を選び取るという意思表示なのです。あなたの祖父は、あの浅間山荘事件で殉職し、命を賭して法の正義を守った。あなたの父もまた、第四機動隊に所属していた。あなたはその血を継ぎ、今まさに、日本という法の“秩序の魂”を担っています」
「そして、自衛官諸君——破魔雷作戦に従事するすべての航空・海上・陸上部隊の諸君。
あなたたちの任務は、かつてなき超常の敵への迎撃。しかし、それは武力を誇示することではない。
これは、国家が“守る力”を持つという事実を、内外に示す儀式であり、“武器を信頼に変える”決意の証です」
「空を飛ぶ者、海を制する者、大地に立つ者——すべてが一つの意志のもとに集い、闇を打ち払う。その姿は、日本がいかなる試練の時代にあっても、決して膝を折らぬことを世界に証明することでしょう」
「我々は、ただ平和を願うだけではない。祈りの形を“行動”へと変える国民でありたい。ジャンヌのように、祈るために闘う者がいるなら、我々もまた、法を守るために立たねばなりません」
「米軍の皆さん——かつて私たちの祖父や曾祖父は、太平洋で刃を交えました。しかし今日、孫や曾孫たちは、共に空を翔び、海を駆ける仲間です。これは贖罪ではなく、未来のための選択です。あなた方と肩を並べること、それこそが新たな歴史の扉を開く鍵です」
「この作戦の名は“破魔雷”。それは、邪を砕く雷であると同時に、人間の“希望”が放つ閃光です。今、我々はジャンヌの祈りを否定するために立つのではない。祈りが届く世界を築くため、その道筋を正すのです」
「空にいる者よ。海にいる者よ。大地に立つ者よ。そして、法律の盾と矛を携える警視庁の諸君——いまこそ我々の魂が試される時です。あなたたちは歴史の証人であり、未来の礎です」
「これは、ただの迎撃作戦ではない。
これは、我々の文明と矜持をかけた、“祈りと法”の戦いです」
「立て、日本の盾たちよ。法の名のもとに、闇を照らし、祈りを守れ——」
「——未来は、あなたたちの手の中にある!」