元捜査官の終着点   作:すとろまとらいたー

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璃奈の鱗赫は口をつけて相手を食いちぎることもできます。が、彼女はこれを運搬手段として利用することが殆どです。


第9話 虫の知らせ

「いらっしゃい。あら、リナちゃんじゃない!? 元気してた?」

 

璃奈が店に入ると、カウンターの奥にいる女性が嬉しそうに声をかける。

 

「これはこれは、珍しい。」

 

「……何故赫子を出したままなんだ?」

 

カウンター席に腰掛けて、血酒を飲むのはウタ、その隣に四方蓮示。

璃奈はもたれ掛かるようにカウンター席に座ると、藍を赫子から吐き出す。

 

「あら、その子どうしたの?」

 

「イトリ、この子でも飲める物今ある?」

 

「それは…どういう意味?人間なの、その子?」

 

訝しむような表情で璃奈を見つめるイトリ。璃奈はやや自慢げに答える。

 

「そうよ。あたしの相棒(ダンナ)。」

 

「一応強いのから弱いのまで色々あるけど、対価として話を聞かせて貰うわよ?」

 

「構わない。藍、起きて。お店着いたよ。」

 

璃奈は母親が子供を起こすかのように血と粘液に塗れた藍をゆする。

 

「んあ? ここは…?」

 

寝ぼけながら辺りを見回す藍の問いにイトリが答える。

 

「ここはあたしの店、Helter Skelter。あたしが店長のイトリ。宜しくね、坊や。」

 

「こんばんわ、海野藍だ。『シンデレラ』1つ頼む。」

 

「じゃ、リナちゃんに1つ目の質問。何があったの?」

 

「訳あって24区に行った。帰りにここで飲もうとして帰る途中でちょっと、ね。」

 

イトリは「シンデレラ」を藍に出して続ける。

 

「アイ君をその途中で拾ったと?」

 

「違うよ。藍と一緒に24区に行ったの。」

 

「何しに? 藍君を食べるため?」

 

瞬間、璃奈が赫子をイトリに突きつける。

 

「あたしはさっき言ったよな? 相棒だって? 餌扱いしないで貰える?」

 

「冗談よ、冗談。疲れてるからってそんなカッカしてもいい事ないわよ?」

 

「続けるよ。あたしは24区で藍と手合わせしてたの。そした「手合わせ!? てことはその子、白鳩なの!?」

 

「話を遮るのは感心しないよ、ウタさん。元白鳩ね。」

 

そこで黙っていた藍が口を開く。

 

「オレは元捜査官だが、今は璃奈と行動してるし、何よりCCGの人間に追われる立場だ。あんたらをとっちめるつもりは毛頭ないよ。」

 

「それで24区て手合わせして結局引き分けだったんだけど、それのせいで喰種と白鳩が集まってきちゃって。24区からここに向かってた。」

 

「でも、それだけじゃそんなズタボロにならないわよね。誰か大物と会ったのね?」

 

イトリは興味あり気に尋ねる。

 

「有馬貴将と鉢合わせしたの!ツイてないわホント。」

 

「有馬と!?」

 

「へぇー、24区にあの有馬貴将がねぇ。蓮示くん、前有馬と戦って殺されそうになったんでしょ?」

 

「…芳村さんと出会うきっかけだった。」

 

「それで、勝てたの?」

 

目線が2人に集中する。

 

「無理ゲー。戦い始めた瞬間に左腕持ってかれたし。藍は有馬の部下に邪魔されて有馬と戦えすらしなかった。完敗。」

 

それにウタが笑顔で続ける。

 

「喰種と人間が手を組んで白鳩と戦うってのが面白いね。そんなこと普通ありえないからさ。」

 

「じゃ、イトリ。あたしは話したからあなたの番ね。」

 

イトリはしばらく考え込むと、

 

「んー、じゃあ久々に来てくれたのもあるからサービスしてあげる。今度20区で大規模な戦いが起こるんだって。そうなのよね、四方?」

 

イトリは四方に確認する。

 

「…あぁ。芳村さんと入見・古間が戦うらしい。俺には守るものがあるんでな…。」

 

四方はグラスを見つめ、呟くように告げる。

 

「これは中々面白いかも。ねぇ藍、20区で今度戦いがあるらしいんだけど、参戦しない?」

 

「何しに行くんだよ? わざわざ危険な所に足を運ぶ必要は無いだろ?」

 

面倒くさいとでも言いたげに顔を顰めて藍は理由を尋ねる。

 

「クインケよ、クインケ。ここまで大規模ってことは良いクインケ又は強い赫包が手に入るんじゃない?あたしの赫包を使いたいなら、それを治せるだけの良質なの欲しいからさ。」

 

前々から藍は[パッチワーク]以外にも璃奈の赫包を使った新たなクインケを作ろうとしていたが、璃奈の赫包が再生するまでは彼女に大きな負担がかかるとして作ろうとはしなかった。が、確かにそれを解決し得るとしてこの「20区掃討作戦」に乱入することを一考の余地ありと考えていた。

 

「…一理ある。だがオレ達はマスター(芳村さん)を助けるつもりは無いぞ。恐らく彼はそんなこと望んでないからな。」

 

「それはそうかもね…。あそこのコーヒー、もう1回飲んどけばよかった。結局、次の賭け(ゲーム)やらないで終わっちゃったし。」

 

「そうだな…。そろそろ帰るか?」

 

「そうね。話は聞けたし、もう帰りまーす。」

 

藍は空のグラスをカウンターに乗せる。

 

「ありがとう、中々美味かった。機会があったらまた来るよ。」

 

「じゃあね、イトリ。ウタも四方さんもまたいつか。」

 

そう言って2人は店を後にした。

 

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「ねぇ、彼らのこと、どう思う?」

 

「…研とは異なるベクトルだが、人間と喰種の関係に何かをもたらし得る。」

 

「…そういえば彼、今何してるの? 蓮示くんやたらと気にかけてるからさ。お店にいないの?」

 

「…反アオギリとして活動しているらしいが。俺は帰ってきて欲しい。」

「大変ねぇ、どこも。」

 




四方さんは飲めないのでイトリは血酒ではなく水を四方に出しています。
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