元捜査官の終着点   作:すとろまとらいたー

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今更ですが、本小説ではクインケにつく分数の意味をあまり具体的に定めておりません。ですので必ずしも赫包の数ではございません。


第12話 願わくば

「死ねェ、屑! 人類の敵である喰種、ましてや喰種に与する人間など言語道断!!」

 

[アヤネ弐式]の先端が藍の肩を抉りとる。一瞬にして距離を詰めた赤坂はクインケを起動する間も与えずに藍を斬る。

 

「ぐうッッ……。アンタは……訳もなく命を狙われる喰種(彼ら)の気持ちを考えたことあるのか?」

 

肩で息をしながら睨む藍の問いを赤坂はフン、と鼻で笑う。

 

「訳もなく、と言ったな? 人を殺し、挙句その血肉を貪ったとしても果たして訳もなくと言えるか? 遺された者の気持ちを考えたことさえない癖に。」

 

「では……喰種に産まれたことを悔やめ、そう言いたいのか?」

 

「あぁそうだとも。人殺しの罪に塗れる事でしか生きられない命など僕たちと同等の価値は無い。生まれてきたことが間違いだったんだよ。」

 

藍は歯を食いしばり、体勢を立て直しながら怒りの表情を浮かべると同時に力を込めてアタッシュケースのスイッチを押し込んだ。クインケ、[パッチワーク]が形成される。

 

「……命を奪いながら生きるのは人間も同じだろ? 確かに人間が食する動物の命より人命は重い……。だが、本質は変わってねェ!!」

 

藍は[パッチワーク]を甲赫へモードチェンジし、赤坂を斬りつける。それを受け止めると、赤坂は「アヤネ弐式」を伸ばしていく。[パッチワーク]で受け止めようと藍が防御の姿勢をとる。そのまま[アヤネ弐式]と[パッチワーク]がぶつかろうとした時、赤坂は[アヤネ弐式]の持ち手部分にあるボタンを押す。

 

瞬間、攻撃の軌道が逸れ、まるで[パッチワーク]を避けるかのように伸びていき、正面から伸びたはずの[アヤネ弐式]は大きく迂回して藍の背中に向かっていく。

 

「ッッッ!? クッソ、そんな機能も搭載したな、ソレ。」

 

慌てて[パッチワーク]を後ろに回し、[アヤネ弐式]を攻撃して弾く。弾いた勢いのまま前に飛ばされるも、前転して姿勢を整えつつ赤坂に近づく。

 

「自作のクインケですら忘れるぐらい喰種の世界に染まりきったか?」

 

伸びていた[アヤネ弐式]を短くして、迫ってくる藍を正面から攻撃する。[アヤネ弐式:はしなりながら[パッチワーク]とぶつかり合う。

 

「……オレは喰種捜査官だ、これまでも、これからもな。」

 

その藍の一言が赤坂の逆鱗に触れた。[アヤネ弐式]の動きが激しくなる。

 

「……せるな。…ふざけるな。」

 

「???」

 

[パッチワーク]で切り結びながら藍は疑問を呈する。

 

「笑わせるな! お前みたいな屑が喰種捜査官を名乗るなァ!!! 山辺特等のことを平然と攻撃するような屑は喰種捜査官どころか、人間では無い!!」

 

赤坂は激高し、[アラタ改]を起動し、[アヤネ弐式]のボタンを押し込む。[アヤネ弐式]は赤坂の想いに応えるかの如く1本の鞭状の形から8本に別れ、その中心部分からは薄青色の剣状の赫子が出現する。赤坂は[アヤネ弐式]を藍へと伸ばしながら、自らは中心部の剣で藍を攻撃しようとする。

 

藍は多方面から攻撃してくる鞭を弾きつつ、赤坂と距離を取る。

 

(この8本をいなすだけで精一杯。あの剣を同時に相手取るのは無理だ、100%負傷する。)

 

「どぉした? さっきまでの威勢はどこ行ったんだ? 人間と喰種は本質は変わらないんだろ? 」

 

赤坂は攻撃しながらも必死に距離を取る藍を追撃していく。

 

「この考え方を否定する人間・喰種がほとんどであることは承知の上だ。そうやって頑なに和解しようとしないからいつまでも無駄な血が流れるんじゃないのか?」

 

「和解だと? ……お前が本当に元喰種捜査官だと思うと恥ずかしい!! 」

 

赤坂は怒りのままに地を踏み込め、藍に急接近すると瞬時に[アヤネ弐式]の側面部の8本を収縮させて空気抵抗を最小化し、中心部の剣で一気に首元を斬りつける。

 

「!!! 」

 

何とか攻撃そのものには反応できたものの、完全には回避しきれず、藍の首筋から血が流れる。藍は致命傷にはならないものの戦闘が長引けば出血量次第で影響が出ると判断した。再び8本に側面を分離させて藍へと迫る赤坂。

 

「……なあ、オレは[アラタ]使ったことないからわからんが、それって痛いもんなのか?」

 

「……答える必要があるか、喰種の質問に。」

 

大きく振りかぶって渾身の一撃を繰り出す赤坂。その攻撃は[パッチワーク]を破壊し、藍に命中し、土煙と瓦礫で視界が塞がる。

 

「……やったか?」

 

正直なところ、赤坂は確信こそなかったものの致命傷に成りうる一撃を与えたと踏んでいた。だが、藍は喰種。未知数な化け物であることから慢心はしなかった。

 

「……やっぱさ、そのクインケ使っときゃ良かったなって思うんだ。かなり強いクインケだ。()()で当たってたら間違いなく即死だったな、今の攻撃は。」

 

「……!? 何をした!」

 

赤坂は土煙の中に立っている藍に質問する。

 

「鱗赫にモードチェンジだ、相棒(パッチワーク)。」

 

藍は[パッチワーク]のボタンを押し、土煙を薙ぎ払う。赤坂はその姿を見て目を見張る。

 

「何!? そ、それはまるで……。」

 

「そうだ。CCGの十八番、[アラタ]を参考にして作ってもらったオレ専用防御型クインケ、[キマイラ1/2]だ!! 」

 

藍は全身に薄灰色の鎧を装着していた。

 

「まさか[アヤネ弐式]を正面からまともに受けて罅すら入らないとは……。予想以上の出来にオレもびっくりしてるんだぜ。」

 

「クッ……。ここに来て新型か。」

 

赤坂は悔しそうに歯噛みするもクインケを構え直す。

 

「こいつはCCGで言うところの『キマイラ』の赫者化してる時の赫子と甲赫の赫包で作ったらしいからヘタしたら[アラタ]よりも硬いかもな?」

 

「……だから何だ? 僕が上司の仇(お前)を前にして尻尾を巻いて逃げると思うか?」

 

言い終わらないうちに藍は[パッチワーク]を振るい、赤坂を攻撃する。赤坂は焦ることなく刺突を避けると藍の懐へ潜り込み、攻撃する。その衝撃で藍は大きく吹っ飛んだ。

 

「……斬撃・刺突が効かないと分かれば別の方法で殺すだけだ。クインケは使い方次第って山辺特等に教わらなかったのか?」

 

藍は瓦礫に埋もれた体を起こすとこちらに刃を向ける赤坂に返す。

 

「……そんなこと、もう忘れちまったよ。なんてったってオレは……」

立ち上がり、クインケを構え直して口を開く。

 

「アンタら曰く、もう喰種捜査官じゃなくて、喰種の『黒鴉』だからな! 」

 




[アヤネ弐式]
Rc type:甲赫、鱗赫、尾赫 レート:S+
赤坂の使うクインケ。手元のボタンを押すことで尾赫を主としたデフォルトモードから剣状の甲赫を8本の鱗赫で覆った構造に変化する。

[キマイラ1/2]
Rc type:甲赫 レート:SS
大橋璃奈が海野藍の為に自らの皮膚、赫子を削って作り出した防御型クインケ。CCGの「アラタ」シリーズよりも防御力は高く、とても頑丈。当然、その分身体的負担は大きくなる。
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