元捜査官の終着点   作:すとろまとらいたー

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第19話 RESTART

ガラス越しに対面した数年ぶりの顔は藍には理由は分からなかったが、何故か哀しく見えた。藍はそんな気がした。

 

「ねぇ、そっちにも誰かいるの?」

 

「あぁ。何でいるのかは分からないが、アカデミーの同期だ。名は亜門鋼太朗。確か上等捜査官になったばかりのハズ。」

 

「へぇー、藍くんの同期かぁ。」

 

「しかし数年見ないうちに随分変わっちまったな。前見かけた時はこんなに筋骨隆々じゃなかった気がする。」

 

そんなことを話しているうちに部屋に再び嘉納が入ってきた。嘉納は亜門に拘束具を取り付けて寝かせると、口にチューブを繋ぎ部屋を出ていった。

 

「嘉納さん、今から何を?」

 

「強制的に人肉を食わせ、Rc値を測定する。」

 

そういいながら部屋の窓のそばにあるボタンを押した。

 

するとチューブを通じて赤色の液体が亜門の口に入っていく。

 

「2000…3500…4500…!? 10181…。こりゃあダメだな…。制御しきれるかどうか分からん。失敗作だ。元がかなり良い素体だったから期待していたのだが…。やはりこればかりは今のところは運に頼らざるを得ないか。」

 

嘉納は記録を取ると再びボタンを押して液体の輸送をストップする。

 

一連の光景を傍観していた2人だったが、藍はRc値の不安定な亜門を見て閃いた。

 

「なぁ。これを上手く使えばクインケを人体に埋め込んで赫子のように使えるんじゃないか? そうすりゃより強い喰種捜査官を生み出すことが出来ると思うんだが。」

 

嘉納はふむ、と藍を見てから璃奈を見つめながら述べる。

 

「その発想を平然と口にするあたり、君は私が思っている以上に捜査官ではなくなっているようだね。現職の喰種捜査官は絶対に言わないし、考えもしないと思うよ。自分達の敵と同じようなことをするなんて嫌だろうから…。」

 

藍はその言葉と先日赤坂に投げ掛けられた言葉を重ねていた。そしてあの時、自分は赤坂の言葉に対してどう返したかを思い出す。

 

「「もう喰種捜査官じゃなくて、喰種の『黒鴉』」か…。今更だが結局はどっちつかず。オレは自認は人間だが…もう捜査官とは言えないのかもな。」

 

そこで嘉納は諭すように藍に言う。

 

「私が先程見せた資料の男性、つまりは眼帯の喰種こそが私の成功であり、最高傑作だと思っている。………だがね。」

 

と一拍置いて藍のクインケが入ったアタッシュケースを持ってきた。

 

「心としての成功例は君が最も近く、喰種と人間の両方を併せ持っていると思うよ。まぁ、それを善と見るか悪と見るかは君達次第だがね。これは海野くんのクインケだが、大橋くんの赫子で作ったものだろう? 修復しておいたからこれで問題なく使えると思うが、先ほど忠告した通り色々な意味でしばらく()()()()()は控えるんだね。」

 

「はい。わかりま…。どうしたんだ? 顔真っ赤だぞ。」

 

「え!? いやいや何でもない! 何でもないから。」

 

璃奈は慌てふためきながら、嘉納の方を睨んだ。

 

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最初の病室に3人は戻った後、嘉納はパソコンを見ながら話す。

 

「大橋くんの赫包も貰えたことだし、私はこれからやらなくてはならないことがある。ここにはいても構わないが、私は世話を見ることは出来ない。」

 

「なら、オレらもそろそろ出ていくか。因みにここに来てからどのくらい経ってるんですか? ずっと寝てたのと日光を浴びてないからか時間感覚が麻痺していて…。」

 

「大橋くんが君をここに運び込んだ日から今日で3日経過してるのかな。」

 

「3日!? 」

 

「何か急ぎ用でもあるのかい?」

 

「…いや、自分が意識を失っていた時間が思っていた以上に長くて驚いただけです。」

 

「帰りは大橋くんに護衛をしてもらうといい。そうでなければ次こそは君の体に赫包を移植することになるだろう。」

 

「ありがとうございました。では、また何処かで見える時まで。」

 

「君たちのこれからの活躍、高みの見物をさせてもらうよ。」

 

そう言って藍達はラボを後にした。2人が嘉納の視界から見えなくなると、嘉納は培養槽のある被験室へと戻る。と、数多の部屋の中に一つだけ警告灯が点滅している。

 

「警告灯が何故…? ここは確か…………。」

 

そう言ってその部屋を確認しに足を運ぶ。嘉納の顔には特に焦る様子もなかった。そうして件の部屋に辿り着く。

 

「なるほど…ドアを赫子で破壊したか。やはり数値が安定していなかったとはいえ、出力自体はかなり高いようだね。」

 

そうつぶやくと、嘉納は何処かへと電話をかけ始めた。

 

「…もしもし、私だ。失敗作(フロッピー)が逃走した。一応特徴を伝えると、筋肉質な男で赫子は羽赫。あとは…棍棒のようなクインケを所持している隻眼の喰種って所だ。処分をお願いしたい。」

 

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再び地下通路へと足を踏み入れた2人は行き先をどうするか話し合っていた。

 

「まず、行けない区を挙げていこうか。それである程度絞り出せる。」

 

「そうね、まずは1区、2区は警備の厚さから無理。」

 

「そうだな。流石にアジトをそこに作るのは無理だ。」

 

「それから今回の件でアオギリとの対立はほぼ決定的になったわ。」

 

「え? どういうことだ?」

 

藍は狐につままれたような顔をして璃奈を見た。

 

「あぁ、まだ話していなかったわね。藍くんが白鳩と交戦してる間赫包の捕食をしていたらエトと遭遇したのよ。で、そのまま流れで殺し合いに…。」

 

「結果は?」

 

「ダメね。アタシと戦ってる時も本気じゃなかったみたいで、赫者になって初めて本気で攻撃してきた感じだった。」

 

「で、その時の怪我はオレを喰って治した、と。」

 

「その話はしないで。本当に申し訳ないと思っているわ。」

 

「じゃあ11区もダメだな。接近禁止!」

 

「あと20区(ここ)。暫くは近寄れないと思う。まぁ『あんていく』がなくなった以上、態々足を運ぶ理由がないからそこまで気にしなくてもいいかも。」

 

とそこで藍ぎ何かを思い出したように疑問を口にした。

 

「そういえば前にちょっかいかけてきた喰種がいたのはどこだっけ? あそこなんかはどう? 特に危険な噂もなければ警戒が厚いわけでもない。ピッタリなんじゃない?」

 

「確かあそこは15区だった気がする。隣の区だからここからそう遠い場所ではないな。よし、行くだけ行ってみよう。」

 

「アテはあるの? ホテル暮らしとかもう勘弁してよ、前みたいにすぐバレるんだから。」

 

「ん、ないことはないが…。名前を変えて貰うかも…知れない。」

 

地下の闇の中に2人は消えていった。

 

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side~芳村エト~

 

 

「で、結局出来たのは『オウル』だけってこと?」

 

「報告を聞く限りではそのようです。フロッピーの行方は大方分かってはいますが、なにぶん元白鳩故戦闘能力が高く、手を焼いております。」

 

「つまんないなぁ。有馬貴将(アイツ)は容赦しないし、今回楽しかったのは大橋璃奈(キマイラ)と遊べたってことぐらいだよ。」

 

「お怪我は…?」

 

「治った。でもこれでまた暫くはリナとは会えないんじゃないかな。向こうにも相当のダメージは与えたはずだから表舞台には出てこないハズ。動くなら今だよ。」

 

そう言ってエトは薄ら笑いを浮かべるのだった。




これにて1章は終わりです。次からは空白の2年間を描いていきたいと思います。オリキャラも少しだけ増えるかもしれません。空白の2年は本編での描写以外は完全にオリジナルストーリーですので好き嫌いが別れるかと思われますが、応援よろしくお願いします。

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