元捜査官の終着点   作:すとろまとらいたー

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新しいオリジナルクインケを考える時、1番難しいのはレートと機能を考えることですね。見た目と名前は案外すぐに決まります。


2章 雌伏する喰種
第20話 新居


15区にある目的地に辿り着いた藍と璃奈は目の前の建物の両開きの大扉を押した。

 

「ここは…廃教会?」

 

「あぁ。ちょっと前まで喰種の喰い場になってたんだが、この前来た時に駆逐した。元々の持ち主は随分前に食われちまったらしいからそのへんも気兼ねなく使える。」

 

藍はそのまま前に進み、辺りを見渡す。その体が奥のステンドグラスから差し込む月明かりに照らされる。

 

「…結婚するなら式はここがいいな。」

 

ボソッと呟いた璃奈を見て藍は嬉しそうに微笑む。璃奈の顔は恋する乙女そのものだった。

 

「なかなかロマンチックなところだろ? 周りにビルばっかって訳でもないからいい場所だと思うんだが、どうだ?」

 

「ビルがないとは言え大都会の東京に廃教会なんてあるのね…。にしてもまぁ随分と綺麗なこと。誰かに手入れさせてた?」

 

「ホントだ。最後に12区に来たのはかなり前だからそれ以来来てなかったんだが…。」

 

すると奥の部屋から足音が聞こえてきた。それと同時に何人かの話し声も聞こえる。

 

「今日は白鳩共がいなかったから簡単に捕まえられたぜ、へへっ。」

 

「しかし中々の上物がいたもんだ。若い女の肉は柔らかくて美味いと言うがそれが2匹も手に入ったとは…。今日はツイてるな。」

 

「どうする? 頂く前に折角だから楽しむか?」

 

「それもそうだな、ぐへへ。」

 

そうして声の主たちは奥の部屋へと通じる扉を開いた。

 

「なんだお前ら! …いや、人間だな?」

 

藍は溜息をつきながら面倒臭そうに2人に視線を向けた。

 

「はぁぁ……。前に駆除しきったと思ったが…新手みたいだ。道理で綺麗にされていると思ったよ、喰い場なら掃除くらいするもんな。」

 

すると2人の喰種は璃奈に話しかける。

 

(……どうやら璃奈が喰種であることに気づいたようだ。)

 

「おい、女。こいつは貴様の獲物か? ここは俺たちの喰い場なんだが?」

 

「…それはごめんなさい。なら彼は貴方たちに譲ってあげるわ。」

 

「へへっ。わかってるじゃねぇか。そんじゃ遠慮なく!」

 

男の1人が尾赫を発現させ、藍の腹目掛けて突きを繰り出す。

 

「…璃奈、オレは今怪我で動けない。だから、()()()()()()。」

 

瞬間、藍の視界の半分を璃奈の膜状の薄い甲赫が埋めつくし、尾赫を弾く。

 

「なっ!? おい、俺たちに譲るって。」

 

「譲るとは言ったけど食わせてやるなんて言ってないわ。」

 

弾いたのを確認すると藍はアタッシュケースの持ち手のスイッチを押してクインケを取り出す。取り出したのは勿論[パッチワーク]だが、すぐにモードチェンジして羽赫にすると、

 

「クインケ!? 何でただの人間が。」

 

「じゃあな。」

 

藍は大きく振りかぶって羽赫の散弾を射出、2人の体を蜂の巣にした。2人の喰種は全身から血を吹き出しながら倒れる。

 

「死んだ?」

 

「あぁ。即死だな。」

 

絶命したのを確認すると、璃奈は死体を2つともなんの迷いもなく赫子で飲み込んでしまった。うっ、と軽く嘔吐く璃奈を見てニヤつく藍。

 

「おい、ヤケ食いは体に悪いぞ?」

 

「これくらいなら大丈夫よ。」

 

「それよりも…。」

 

璃奈は視線を死体があったところの後ろに向ける。視線の先では若い2人の女が縄で縛られ、猿轡を噛まされていた。

 

「一応確認するが、お前らは喰種なのか?」

 

2人は涙目になって首を振る。その顔は恐怖と絶望に染まっていた。藍はとても会話できる状況ではないと思ったが、どうすれば良いかよく分からなかった。

 

「なぁ。こういう時、どうすればいいんだ?」

 

振り返って璃奈に尋ねるも、璃奈は不機嫌そうに藍を見ていた。

 

「…乙女心が分からないの? はぁ。」

 

やれやれと言った感じで璃奈は藍に呆れながら、女達に着けられている猿轡を外し、2人に話しかける。

 

「ねぇ、話せる?」

 

「ひぃっ。」

 

「お願い、殺さないで。」

 

懇願するように泣き出す女性たちを見て藍は苦笑いしながら璃奈に声をかける。

 

「おいおい、世界の何処に敵意がないのに赫眼を出したまま人間に話しかけるバカがいるんだよ? それじゃあ怯えるに決まってるだろ。」

 

「あ。」

 

璃奈はしまった、とでも言いたげに顔を曇らせる。すぐさま赫子を引っ込めて赫眼も元に戻して普通の人間であるように振る舞う。苦笑いしながら

 

「あ、あははは…。さっきのは見なかったことにして。」

 

などと口にしているが、女性たちは完全に怯えきってしまった。そんな2人を落ち着かせようと藍は声を掛けてみた。

 

「オレは璃奈(コイツ)といるが、喰種ではない。れっきとした人間だ。信用出来なくても構わない。話だけでも聞いてくれないか?」

 

2人のリアクションを見てみるとゆっくりと頷いている。話を聞いてくれることを確認すると藍は続けた。

 

「今日はもう遅いが故、この教会に泊まっていったほうがいい。勿論我々は危害を加えるつもりは毛頭ない。明日の朝にこの近くのCCG支部にでも行けば保護してくれるさ。それが嫌だと言っても我々は止めないが………命の保証はしかねる。」

 

女性のうちの1人がおずおずと藍に質問する。

 

「……貴方たちのこと、CCGに言うって言ったらどうする?」

 

「ちょっと!」

 

もう1人が慌てて咎めるが、それが璃奈の耳に入ったようだ。璃奈は瞬時に赫子を取り出し…

 

「ひいっ!」

 

「おわっ! いきなり抱きつくなよ。」

 

藍を抱きしめた。それも彼を愛でるように、独占するように。2人は涙目で目をつぶっていたが、恐る恐る目を開けて目の前で披露される熱い抱擁に困惑していた。

 

「あ、え?」

 

困惑する2人を見兼ねて璃奈が質問に対する答えを出した。

 

「別にいいわよ、もうCCGからは追われる身だし。今更そんなの私達にとっては脅しにすらならない。」

 

「まぁ言ったところで追手が増えるくらいか? 最悪また引っ越しかもしれんが。君たちを何のリスクもなく助けた訳じゃない、これくらい想定していたさ。」

 

が、流石に追われることそのものは良しとしないのか、髪をぐしぐしと弄りながら、藍は付け加える。

 

「こっちとしても引っ越してきたばかりだから出来れば黙ってて欲しいんだけど、どうかな?」

 

その問いに暫く悩んだ後、2人のうち1人が口を開く。

 

「…アンタたちを信用した訳じゃないけど、言っていることは正論。だから今日はここで休ませてもらうわ。」

 

「契約成立、だな。」

 

そう言って藍はクインケをアタッシュケースに戻すと、璃奈に目配せする。璃奈は赫子で2人を縛っている縄を断ち切った。

 

「あ、ありがとうございます?」

 

「礼は明日の朝に言ってくれ。今日はアンタらの護衛をしてやるから。」

 

女性達を残して奥の部屋へと進んでいく藍と璃奈。時間をかけてこの教会の構造を確認していく。その結果、この教会が普通の教会ではないことが判明した。

 

「璃奈、これって…。」

 

「成程。喰い場になっていた理由はこれがあるからじゃない?」

 

2人はある一室に辿り着いた。その部屋は恐らく納骨堂と呼ばれる部屋で、正面には祭壇があり、周りには納骨するロッカーのようなものが付いている。その祭壇の下に隠し通路があることが分かったので祭壇を退かした結果、下に続く階段を発見したのだ。

 

「この先は恐らく…。」

 

「ん? 心当たりあるのか?」

 

懐中電灯を点けて階段を降りていく。そして階段を降り終えると、壁が広がっていた。

 

「何だよ、行き止まりじゃんか。」

 

「いや、この壁…。」

 

そう言って壁を赫子で攻撃する璃奈。

 

「お、おい!」

 

「藍くん、この壁は…24区の壁よ。この教会、24区と繋がってるわ!」

 

「マジかよ…。てことはもしかしなくてもここに喰種が入ってくるってこと?」

 

「ここを安全に使いたいなら全員駆逐するしか無いようね。」

 

 

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