「24区の喰種を全部駆逐するのは流石に無理だろ…。白鳩じゃあるまいし…。」
聖堂の長椅子のひとつに座って藍は頬杖をついて退屈そうに話す。璃奈は正面の十字架に寄りかかってステンドグラスを眺めている。
「というわけで、一方通行にすればいいの。ここから入れるけど出るのは出来ない、そんな構造にすれば最も安全性が高いと思うのだけれど?」
璃奈はクルッと振り返り、目を輝かせながらそんな提案をする。それを聞いて藍は目を細める。
「具体的にはどうやるんだ?」
「24区の壁を応用して、壁を作る。教会側を他の24区の入口と同じ構造にするのに対して24区側の壁を通常より厚く作って格段に入りにくくする。完全には防げなくともこれで十分だと思う。」
「出来んの、それ?」
「出来なかったら提案しないよ。」
そういうと、璃奈は赫子を出して納骨堂へと向かっていった。藍はそれを見送りながら
「上でクインケの手入れしてるから用があれば呼んでくれ。」
そう言って出ていった。
そして数時間後、璃奈が聖堂に現れる。
「………お、出来たのか?」
サムズアップして自信満々に答える璃奈。
「バッチリ、エトでも来ない限り大丈夫。2人は?」
「ずっと寝てる。起きる感じはしないから心配しなくていい。そんじゃ、一区切り着いたところでちょっと作戦会議だ。」
そうして藍はあるものを取りだした。
「それは…?」
見たところ黒を基調としたドレス状の服だが、所々に白い装飾がされており見た目ほど地味ではないことを璃奈はすぐに理解した。
「修道服だ。ここに居座る以上、教会の役職が無いと不自然に思われるだけだ。という訳でキミにはここのシスターとして活動してもらう。」
「そういう藍くんは何するのさ?」
璃奈がやや不服そうに言い返すのを見て藍はドヤ顔で返した。
「そりゃあ司祭だよ。つまり、シスターの上司ってこと。上の立場ってこと。分かったかね、シスター?」
そう言って璃奈の頭をぐりぐりと指でつついた。璃奈はその手を払い除けて修道服を掻っ攫うと、渋々着始める。
「ハイハイ、追いかけっこするよりは全然マシなので。当分の間は貴方様に使えますよ、
その言葉を聞くと、安心したように藍は話し出す。
「幸いなことに必要な道具、所謂聖書とかその辺は揃ってるから表向きは………よし、キリスト教の布教者の端くれっていう設定で活動していこう。もしかしたら白鳩も来るかもしれんしな。」
「その時はどうする?」
「オレの素顔を知ってるCCGの人間であれば逃げる。知らないのであれば何もしない。いいか、こっちから手は出すなよ。」
念押すると、璃奈は1つ質問をした。
「じゃあさ………『V』が来たら?」
藍は目を見開く。が、口元は笑っている。その表情を見て璃奈は藍の解答に内心期待する。
「勿論、殲滅する。『庭』出身もこれに準ずるものとしようか。」
「そう来なくっちゃね。アタシたちの敵はあくまでも『V』のみ。『CCG』、『アオギリの樹』、『ピエロマスク』等その他喰種集団とは基本的には逃げる選択をしよう。」
「じゃ、寝るか。」
そうして2人は司祭室へと向かっていった。
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翌朝、女性2人を見送った藍と璃奈はそれぞれの役職の制服に着替えると、藍は敷地内及び外装の掃除を、璃奈は聖書を読み始めた。そんなこんなで時間を潰していると、当然教会なので人が少しずつではあるものの集まり始める。
教会の中に入った人々は長椅子に座り、璃奈の読み上げる聖書を傾聴している。藍はその声を外から聞いていた。璃奈は聖書の大まかな内容を読み終えると、一息ついてこう話した。
「…最後に付け加えますが、喰種という非人道的な怪物がこの東京に多く蔓延っているのをご存知でしょうか? ですが、怖いからと言って彼らに屈していい訳ないのです! いいですか、皆様。これは神からの試練なのです。喰種などという異教徒共を神の尖兵たるCCGと共に殲滅し、真の安寧を築くのです。入信してもしなくてもこの思いは変わりませぬ。CCGに協力することを誉と思いなさい!」
璃奈の宣告が教会中に響き渡り、それを聞いていた人々の拍手が聞こえてくる。
(……らしくないことを。だが、これが広まれば必ず「V」の関係者やCCGの人間がここに来る。アイツも考えて動いているんだな。)
藍は素直に関心した。正直なところ、璃奈がバカではないのは知っていたがそこまで頭が回る方とも思っていなかった。故にこういった感想を抱いたのである。
結局、来訪者の勢いは衰えず、夕方までふたりはその対応に追われながら1日を終えたのだった。
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「またね、おねーちゃん。しさいさまもさようなら。」
「今日はありがとうございました。入信してもしなくてもいいなんて自由なんですね。」
「またのご来訪、心よりお待ちしております。」
子連れの女性を見送ると、璃奈は正面の扉を閉めて背伸びをしながら倒れ込むように椅子に座る。藍は聖堂の2階部分からその様子を見て一言「お疲れ様~」とだけ声をかけた。
「はぁー終わった。最初はどうなるか結構不安だったけど、喰種について触れてからは全然違ったね。人もいっぱい来るし、寄付金もそこそこ集まったのには本当に驚いたよ。」
「全くだ。ま、喰種の話をしだした時はこっちも少し驚いたがな。」
「え、不味かった?」
「いや、パーフェクトだ。これで早かれ遅かれCCGの誰かしらが来る。まぁ余計な客も来るかもしれんが。」
「喰種も来ると思う?」
「そりゃ自分たちのこと悪く言ってるんだからいい気分はしないだろ。というかソレ自分で言っててどうなんだ?」
璃奈は髪を手櫛で梳かしながら藍の目を見る。
「…聞くまでもなかったな、疑って悪かった。」
「別にー、怒ってませんけどー?」
「後で璃奈にクインケ作ってあげるから、な?」
「……それ、誰の赫子で作るの?」
その質問を聞いた途端、藍は冷や汗を流す。
「あ………いや、そのー何だ、喰種だからこその特別な機能とかもつけるのでどうか赫包をお恵みください。お願いします。」
その態度を見て少し考えながら璃奈は判断を下した。
「全部治ったら考えてあげる。」
「おおお…ありがたき幸せ!」
嬉しそうな藍を横目に璃奈は呆れと諦めのため息をついた。
「クインケ絡みとなると調子いいんだから。っていうかあたしクインケ無くても戦えるけど、何で作るの?」
「わかってないなぁ。赫子ってのは言わば『液状の筋肉』、身体と繋がっているから身体にダメージを受けるとリンクしている赫子にも相応の影響が出る。そこでクインケを使うのよ。」
「つまるところ、赫子の使用による消耗を抑えるためにクインケを使えと?」
「That's Right 要望があれば実現可能な範囲で聞くけど?」
璃奈はあれこれ想像してみる。が、クインケを使われることは有ってもクインケを使ったことがないためどのようなクインケが自分に合っているのかが上手くイメージできなかった。その為、敢えて逆に質問してみる。
「藍はあたしがどんなクインケがあってると思う? 使ったことないからかイマイチピンと来なくて。」
そうか、とだけ言うと藍は考え込み、璃奈を舐めるように見る。
「…何か視線が気持ち悪いんだけど? 舐めるように見てさ。あたしの身体見て案でも浮かぶの?」
「いや、ね…。だいたい決まった。」
嬉しそうな藍の顔を見て、璃奈は俯いて1つの質問を藍にする。
「……ねぇ藍はどうして……。」
「ん? 何だ、至らない点でもあったか?」
藍は笑顔で璃奈の顔を見る。その顔はいつもの明るい表情ではなく、シリアスな雰囲気を纏った何とも言えない表情だった。
「どうしてあたしの赫子で作ったクインケ
今まで思ってきた疑問をぶつけた。
Q:藍はクインケ鋼はどうやって調達しているの?
A:基本的に捜査官との戦闘や逃亡でクインケを盗んで、そのクインケのクインケ鋼部分を利用しています。