元捜査官の終着点   作:すとろまとらいたー

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更新遅くなりすいません。年末年始はバタバタしておりまして中々手をつけられませんでした。本日からぼちぼち活動再開していきます!


第22話 詮索

「じゃあな、気をつけろよ。」

 

「…ありがとうございました。」

 

喰種の女と人間と名乗るアタッシュケースを持った男と別れた後、大学生である篠瀬あおいは恐怖の時を共に過ごした学友である奥野芽衣と最寄りのCCG支部局へと向かっていた。

 

しばらく歩いたところで不意に奥野が篠瀬に尋ねる。

 

「ねぇ、あおいちゃんはあの人たちのことどう思う?」

 

「どうって…悪くは思っていないけど…。仮にあの人が本当に人間なら彼は『喰種対策法』に違反してることになる。毎年それで逮捕されてる人が何人もいるから…。どっちにしろたまたま殺されなかっただけで、私たちを襲った喰種はなんの躊躇いもなく殺していたし。」

 

「私はね…いい人だと思う。仮に2人とも喰種だったとしても私たちを助けてくれたことには変わりないから。」

 

「芽衣は相変わらずお人好しなんだから。」

 

昨日危うく殺されかけたというのにブレない奥野を見てやや呆れつつも、篠瀬はその質問の意図を探る。

 

「で、なんでそんなこと突然聞くの?」

 

「……落ち着いて聞いて欲しいんだけどさ、私は彼らのことをCCGに言いたくない。」

 

「…私の話聞いてた?」

 

「彼らが悪い喰種には見えないの。だから…。」

 

「違う、違うよ。そういうことじゃなくて…彼らを庇うってどういうことかわかってるの?」

 

「でも…CCGの人達は私達を助けに来てくれなかった。彼らが教会に来ていなければ私たちはここで話していない。」

 

そこで急に声のトーンを落として奥野は反論する。その目はとても悲しそうでありながら安心も垣間見える。普段中々見ない奥野の反論にやや驚いたのか、篠瀬は引き気味になる。それを隠すようにして諭すように返す。

 

「確かにそうだね。……それとこれは別の問題。その時の気分で軽率な行動とるといつか痛い目見るよ? 私は友達としてそれを止める義務がある。」

 

「そこまで言うなら分かった。言うよ、ちゃんと。だから……一緒に行こう?」

 

歩きなぎら話しているうちに目的地に着いたようだ。2人の目の前には15区のCCG支部局のビルが佇んでいた。建物からはスーツ姿の人々が老若男女問わず出入りし続けている。

 

「……ここが15区のCCG支部局。」

 

奥野は真横にいる篠瀬の右手をぎゅっと左手で握ると、自動ドアをくぐった。内装の見た目は大きな総合病院或いは市役所と言った感じで、ロビー前に幾つか腰掛けがあり、様々な部所のあるカウンターがあった。それらを確認すると、篠瀬は窓口にてカウンター越しに局員捜査官に話しかけた。眼鏡をかけた男性が対応に出た。

 

「こんにちは。本日はどういったご要件でCCGに?」

 

「えっと……情報提供、というか被害報告というか…。」

 

「お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 

男性局員は2人の名前を聞くと、パソコンを見つめて何やら調べ始めた。30秒ほどして職員の口が再び開く。

 

「病院からの連絡がないのを見るに、お怪我はされなかったということで大丈夫ですか?」

 

「はい。」

 

篠瀬が返事をして、奥野の顔を見る。奥野もそれにうんうんと頷いている。

 

「かしこまりました。暫くそちらで腰掛けてお待ちください。職員が呼びに参ります。」

 

2人はカウンターを離れると窓際のソファーに座った。そして当たりを見回してみる。2人ともCCGという組織の名前は知っているが、名前しか知らないので、その実態を初めて目にしてとても興味深く思った。

 

「何かもっとこうさ……自衛隊みたいなのを想像していたんだけど、全然違うね?」

 

奥野の言う通り、殺伐とした雰囲気はなく、笑い合う職員や楽しそうに話す職員もおり、彼女が思っていた以上にフラットな雰囲気を持つ空間である。

 

「どこにでもありそうな会社というか役場というか……。ここだけ見たら何の違和感も抱かないけど、彼らは日々喰種と戦っているって思うと感謝しないと。」

 

「確かに…。」

 

ややバツが悪そうな表情をする奥野を見て篠瀬は追及する。

 

「さっき『昨日のあの時に喰種捜査官が来なかった』って話をしてたけど、私たちの代わりに誰かを助けていたと思えば、それはもうしょうがないとしか言えないと思う。」

 

「だったら尚更彼らはッ…。」

 

「そこのお二方。」

 

奥野が声を荒らげて反論しようとしたところで2人に声がかかった。顔を声の方へ向けると、優しそうな女性が微笑みながらこちらを見ている。

 

「お待たせしました。付いてきてください。詳しい話はそちらでお伺い致します。」

 

「あ、はい。」

 

議論に熱が入っていたが、急に綺麗な女性が声をかけてきたことで2人とも先までの言い争いがまるで無かったかのように無言で歩く。そのまま一行は階段を登り、3階にある部屋に入った。

 

「そこにお掛けください。」

 

「は、はい。え、えっと…。」

 

2人が目の前にあるパイプ椅子に腰をかけると、目の前の女性は改まった様子で懐から名刺を取り出した。

 

「自己紹介が遅れました。私、CCG本局所属山辺班、金森里美と申します。階級は上等です。どうか宜しくお願いします。」

 

2人は差し出された名刺を受け取り、まじまじと見つめた。その記述内容について、篠瀬はひとつ質問してみる。

 

「あの、この『本局』っていうのは何ですか? ここは『支部』であることは知っていますが…。もしかして本局に行った方が良かった感じですかね?」

 

金森はうふふと微笑みながら返答した。

 

「そんなことはないですよ。むしろ本局は忙しいから取り合ってくれないと思います」

 

「そ、そうですか…。」

 

「それで…話しにくいかもしれませんが、当時どのような被害に合われたのですか? ゆっくりでいいですからわかる範囲で説明してください。」

 

その問いを聞き、2人は顔を見合せた。この質問に対してどう答えるべきかをここに来るまでの道中で少しの議論を重ねたと言っても過言では無い。だが、2人の意見はもう既に決定していた。暫しの沈黙の後、最初に口を開いたのは篠瀬だった。

 

「昨日、私たちはアルバイトの退勤時間が通常よりも遅くなりました。それが大体午後10:30頃だったと記憶しております。そして……芽衣と共に私の家に帰るべく15区の家路に着いたのですが…。」

 

「ふんふん……それで?」

 

メモを取りながら相槌を打つ金森は、思っていたよりも安心していた。通常、喰種に襲われて生き残った人物に面談をすると酷く焦燥していたり怯えていることがあり、特に若い人間であるほどその傾向が顕著になるからだ。

 

「そのタイミングで喰種に遭遇してしまいまして。」

 

「どんな喰種だった? 覚えてる範囲でいいから教えて?」

 

金森は少しだけ身を乗り出して当時の状況を聞き出そうとする。

 

「えっと…2人組の男で、年齢は…詳しくは分かりませんが、そこまで歳をとっている訳ではなさそうでした。」

 

「ふむふむ…老人ではない…と。で、そいつらから必死に何とか逃げ切って今に至る訳だ。」

 

と、そこでここまで沈黙を貫いていた奥野が口を開いた。

 

「…私たち、捕まったんです。」

 

「え?」

 

予想していた返答ではなかった為、金森の口から思わず変な声が出てしまう。

 

「足が竦んで動けなくて…でも捜査官さん達が必ず助けに来てくれると思って。」

 

「……よく頑張ったわね、貴女達。」

 

「……喰種達は私たちをただ食べるだけでなく……その……酷い事をしようとしていたみたいで、路上で拘束された後……すぐ近くにある教会に連れ込まれました。」

 

話を聞いていた金森の表情が僅かに固くなる。ここまで彼女達の話を聞いてある疑念が生まれたからだ。

 

「貴女達は自分で拘束を解けなかったの?」

 

「はい。後ろで手を縛られていて…。」

 

「そう。それはここの教会であってる?」

 

手元のデバイスに表示された地図を見せ、確かめる。

 

「はい。」

 

(……その時間帯に通報は無かったし、誰も外に出ていない。そして彼女達は自分たちの力()()では逃走不可能…。)

 

金森は手元にある幾つかの資料に目を通しながら思考する。ゆっくりと、確実に真相にたどり着きつこうとする。

 

「…でもよく助かったわね?」

 

 

「……ある方達が助けてくれたんです。」

 

奥野の声が少し上ずり、震える。瞳には涙がうっすらと浮かび、だが強い決意の意思が垣間見える。

 

「その方達が身代わりになったってこと?」

 

「……………。」

 

奥野は遂に俯いて黙ってしまった。話すのが辛そうに見えた金森はここで話を篠瀬に振った。

 

「……その助けてくれた人の身元は分かる?」

 

篠瀬は俯く奥野を横目にはっきりと()()()()を述べた。

 

「詳しいことは聞いていないから分からないです。しかし……喰種の女と人間を名乗る男でした。」

 

「!!」

 

今度は明確に金森の表情が変化する。金森は驚きのあまり目を見開いた。そんな歪な組み合わせの2人組はひとつしか思い浮かばなかった。

 

(15区で「キマイラ」と「黒鴉」が目撃された!? 確かに「20区掃討作戦」での赤坂上等との交戦記録がいちばん新しい目撃情報だったけど…何故15区にいる?)

 

金森が考えを凝らしていると不意に篠瀬が声を掛ける。

 

「あの……難しい顔をしてますけど、大丈夫ですか?」

 

「え、あ、すいません! 一応伺いますが、その後は?」

 

「彼らが私達を教会に泊めてくれました。そのままここに来ました。」

 

「………。」

 

暫く考え込むと金森は2人の目を見る。そして諭すように柔らかな口調で述べた。

 

「驚かないで欲しいんですけど、そいつらは2人とも我々CCGが駆逐すべき喰種です。今回は偶々殺されなかっただけ、恐らく次はない。もし見かけたらCCGに連絡してくださいね。」

 

淡々と述べる金森の言葉を聞き、黙っていた奥野が口を開く。

 

「……確かに女の人の目は紅かったけど、男の人は人間って言ってたし、喰種らしい特徴もありませんでしたよ?」

 

「それが彼らの手段なんです。あいつらはそうやって人間を騙して食い殺している。」

 

「そ、そんな……!」

 

最後の希望が打ち砕かれ、奥野は唖然とした。彼女は良くも悪くも人を疑わない性格のようだ、と金森は感じた。

 

「とりあえず、情報提供ありがとうございます。今回の話は捜査に役立てて、絶対にその喰種を駆逐してみせます! 件の教会にも連絡を取ってみますので。また何か伺うかもしれませんのでその時はどうぞ宜しくお願いします。」

 

そうして金森は立ち上がると軽く礼をして部屋を出ていった。残された2人もその部屋を立ち去ろうとする。篠瀬は奥野を見る。

 

「……これで良かったんだよね、あおいちゃん?」




この2人の大学生の大学は金木君とは違うところです。名前はまだ決めておりません。
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