元捜査官の終着点   作:すとろまとらいたー

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クインケの説明は基本的にあとがきに載せることにしました。
その方が読みやすいと思ったからです。


第3話 白鳩の戯れ

「そんで、こいつら誰? 喰種だったらとっくにちょっかいかけてきてると思うし、白鳩だよね?」

 

「多分白鳩。けど…。」

 

「けど?」

 

「明らかに違うのが何人かこっちに接近してきてる。敵対勢力なのかそうでないのかはよく分からない。」

 

「今日はゆっくり休めると思ったんだけどなぁ。どこで足ついたんだろ?」

 

「あなたしか居ないでしょ? それにご飯食べに行った時マスクつけてなかったでしょ?」

 

 

「デスヨネー。」

 

「白鳩には顔割れてるんだから気をつけてって前も言ったじゃん!」

 

「ごめんごめん。じゃ、そろそろ出ますか!」

 

「このまま目的地まで突っ切るつもり?」

 

「一応そのつもりだけど、どっか適当に寄るかもしれないなぁ。いかんせん数が多い。」

 

「んじゃ、璃奈、クインケと仮面取って。」

 

「はいよ。あ。」

 

「どした?」

 

すると璃奈は笑みを浮かべた。しかし、どこか怒っているような笑みだ。

 

「次、クインケのせいにしたら藍の血吸うからね?」

 

「ハイ、以後気をつける所存です!!」

 

「宜しい。」

 

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「すみません。CCGの赤坂です。こちらのホテルに今日チェックインした男女2名について、伺ってもよろしいでしょうか? ある男女1組が喰種の疑いがかかっていて、このホテルに潜伏している可能性が高いんですよ。」

 

「当館は今日は10部屋注意6部屋がご予約されており、そのうち男女のカップルでのご利用が3部屋です。どのカップルもチェックインは今日です…。」

 

「それでは、そのカップルのお名前をお伺いしても?」

 

「それでしたら…少々お待ちください。」

 

そう言ってホテルオーナーはフロントの奥に戻って行った。赤坂の無線が反応する。

 

「こちら山辺。どうだ赤坂、『黒鴉』はどの部屋にいる?」

 

「今調べて貰ってます。」

 

「くれぐれも油断するな。奴は我々の手口を分かってるはずだからな。」

 

 

フロントでそんなやり取りをしていると、奥のエレベーターから大きなキャリーケースを持ったサングラスをかけたグラマラスな若い女性が歩いてきた。

 

「すいませーん。103号室の者なんですが、チェックアウトしまーす。はい、鍵と代金です。」

 

「はーい。またのご利用をお待ちしております。」

 

そう言って女はホテルを出ていった。

 

 

「すいませーん、まだですか?」

 

「すいませんねぇ、はいこれ、本日のお客様のご予約リストですね。っと、あれ? 103号室のお客様はカップルのお客様としてご予約されてますね?」

 

「ハッ!やられた!!!」

 

赤坂はすぐさま無線を飛ばす。

 

「こちら赤坂ッ! キャリーケースを持った20代くらいのサングラスを着用した女が出てきました!!!」

 

「何!? 遂に動いたか!」

 

「ですが、肝心の『黒鴉』はどこへ?」

 

「それについてはアテがある。赤坂、すぐこっちに来てくれ!」

 

「すぐ向かいます!」

 

「捜査へのご協力ありがとうございました!」

 

「いえいえ。それじゃ、喰種をやっつけてきてください。頼みます!」

 

そうして赤坂はホテルを後にした。そしてその様子を非常用階段から見届けている者がいた。それぞれ、黒いペストマスクと継ぎ接ぎだらけのマスクをつけた藍と璃奈である

 

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遡ること15分。

 

「…恐らく、奴らは客の混乱を避けるためにホテルに喰種が滞在してることを全体放送したりはしないだろう。だからフロントで宿泊者のリストからオレらを見つけようとするはずだ。」

 

「それで? どうするの?」

 

「もう策は打った。さっき俺らの部屋の鍵と隣の部屋の鍵をすり替えた。ここのホテルはオートロックだから鍵を使ってドアを開けることはあっても閉めることは無い。後は金と鍵があればそれでチェックアウトできるからな。ちょうど隣の客はチェックアウトするらしかったからこいつを利用させてもらったわけだ。」

 

「じゃあ。後は非常用階段から裏口に回って目的地に向かうのね?」

 

「少し遠回りだか、白鳩を避けるならこれが1番いい。急がば回れって言うだろ?」

 

 

そうして現在。

 

「よし、白鳩が向こう行った。オレらも行こう!」

 

非常用階段から飛び降り、ホテルの駐車場を通り抜け、道に出る。

 

「ここを左に曲がって進めば着くはずだ。走るぞ!」

 

「うん!」

 

2人は走り出した。が、突然2人を強烈な光が照らした。

 

「わっ!? 眩しい!」

 

光の元には山辺率いる山辺班の捜査官たちが並んでいた。先頭にいた山辺が罵るように口を開く。

 

「やはりここだったか。害虫共め、考えが浅いわ!」

 

「何でこっちからオレらが出てくることがわかったんだ?」

 

「ふん、キャリーケースの女性を自分たちのフェイクとしてやり過ごしたつもりのようだが、そんな甘い手には引っかからんよ。」

 

すると、山辺の後ろから先程のサングラスの女性が現れた。

 

「お前は!? さっきの!」

 

「彼女は上等捜査官の金森里美。つまり、貴様らが鍵をすり替えた人物は我々の仲間だったという訳だ。」

 

「こりゃあ1本取られましたな。……なぁ、オレらは無益な戦いをしたくないんだ。お前らもまだ生きていたいだろ?だから互いに利のある取引をしないか?」

 

「聞くだけ聞いてやる。続けろ。」

 

「オレらは逃げることが出来、あなた方は死傷者0! 悪くない話だろ?」

 

すると、山辺は目元を抑えて笑いだした。

 

「フハハハハ…。聞くに耐えんな。死傷者0? 我々は元より刺し違えても貴様らを討伐するつもりだ。舐めるなぁ!」

 

山辺はクインケ[アルト1/3]を起動し、他の捜査官に合図を出す。

 

「オレと赤坂で『黒鴉』を殺るから、「キマイラ」を頼む! 行くぞ、赤坂ぁ!」

 

「はい!」

 

赤坂もクインケ[ヤマアラシ]を起動し、戦闘態勢に入る。

 

「あれぇ、懐かしの[アルト1/3]にそっちのクインケはこの前璃奈が仕留めた喰種のクインケかな?」

 

「やはり『ヤマアラシ』を殺ったのは貴様らか!」

 

悪態をつく山辺の攻撃を避けながら続ける。右、左、上、斜めと連続して繰り出される斬撃を後ろにさがりながら避けていく。

 

「あの喰種そんな名前で呼ばれてたのか、知らなかっ「油断してると、背後を取られる! アカデミーで習いましたよね?」

 

「なっ!? いつの間に!」

 

山辺の攻撃の合間に藍の背後に赤坂は回り込み、藍の背後をとった。そしてそのまま右から左へと[ヤマアラシ]を振り上げる。

 

「!!」

 

その刃が藍を捉える前に硬い何かに遮られ、ガキィィーンと甲高い音と風圧が発生する。

 

「オレはあなた方を舐めてないし、油断もしてない。常に真剣だぜ。」

 

左手に握っていた、藍のクインケ[パッチワーク]を瞬時に起動させ、2人の攻撃を同時に受け止める。そしてそのまま振り払って距離を取った。

 

「く、クインケ! 山辺特等、あれは?」

 

「奴がCCGを辞める時に最後に作り、持ち出したクインケだ。レート、赫子の酒類共に不明だ。やはり一筋縄では行かないか…。()()を使おう!」

 

『[アラタ改]、起動!』

 

山辺、赤坂の体が黒い鎧のようなもので覆われていき、その鎧はほんのりと赤く光る。

 

「[アラタ]か。おかしいな、それは対喰種用の鎧のはず。1人の人間に対してそこまでするのか?」

 

「貴様は人間では無い!!! 平和を脅かす人類の敵、喰種だ!!!」

 

「酷いなぁ。()()そんなこと言わなかったじゃないですか?ねえ、山辺()()。」

 

「なっ!?」

 

一瞬、山辺の気が緩む。この隙を藍は見逃さなかった。すぐさま[パッチワーク]を甲赫から鱗赫へ切り替え、そのまま前に突き出す。[パッチワーク]はその勢いに乗って…

 

…[アラタ改]ごと山辺の左横腹を貫いた。

 

「ガアッ…不覚!!」

 

鮮血が舞い、山辺は倒れた。

 

「ッ!山辺さん!!! クソっ、やっぱりあんたは身も心も正真正銘の喰種だ! 山辺さんはあんたのパートナーだったんだろ!」

 

「そうだね? それで?」

 

「それでじゃない! あんたは同じ人間どころか世話になった者でも傷つけ、殺せるってのか!? ふっざけんな!!」

 

「では聞くけど、殺されそうになったら、相手が何であろうと自分の身を守るために「ゴチャゴチャうるせぇ!! よくも…よくもぉ!!」

 

激昂する赤坂の攻撃を受け止め、藍は赤坂に問いかける。

 

「オレらは今、命のやり取りをしてンだよ? オレが黙って殺されると思ってたのか?」

 

「だったら卑怯な手でも何でも使うのか?」

 

「卑怯な手? 何言ってんだ?これは命のやり取りって言ったろ? 生きるか死ぬかなんだから卑怯もクソもないだろ? 喰種を殺せても相打ちじゃなんの意味もないんだぜ?」

 

そう言いながら、藍は笑ってみせる。

 

「ほら、早くしないと山辺上等、あいや、今は特等だったか。死んじまうぞ?」

 

赤坂は目の前の仇をみすみす逃すことと、山辺の命を助けることを天秤にかけていた。

 

(ど、どうすればいい?出来るなら山辺さんを助けたい! でも、「喰種に遭遇したら手足をもがれても戦え!」って前言われたんだよな? このままこいつを逃がすのはあまりに危険すぎる…。一体どうすればいいんだ!)

 

 

「藍、こっちは終わったわよ。そっちは大丈夫そう?」

 

「はっ! 新手か!?」

 

赤坂の後ろから継ぎ接ぎだらけ仮面を付けた喰種が現れた。

 

「き、『キマイラ』!? そんな…じゃあ他の皆は…」

 

「ん?あぁ、あたしがみんな倒しちまったよ。まあ、食後の運動にはちょうど良かったかな?」

 

「あ、璃奈!もう少し待っててくれ。こっちは今コイツらの内、片方は戦闘不能にしたんだが、あと一人残っててなあ。追っ手を賭けられるのも面倒だからここで止めといた方がいいかと思ってな。」

 

(挟まれた…。でも、今生きてるのは恐らく山辺特等のみ…。だったら!)

 

赤坂はクインケを構え直して、藍に向かっていく。

 

「どぉりゃあぁぁぁ!! 皆の仇を討たせてもらう!!」

 

「懲りねぇ野郎だな。」

 

藍は[パッチワーク]を突き出して、赤坂の攻撃を受け止める。

 

「なんのこれしき!」

 

赤坂は藍の突きを躱しつつ、真横から[パッチワーク]に斬りつける。すると、[パッチワーク]の刀身が赤坂の一閃を受けて折れる。

 

「何ッ!? あ、しまった!!」

 

藍は動揺してクインケの持ち手を離してしまう。

 

「貰ったぁぁぁ!!!」

 

「クッ…。」

 

赤坂は最後の一撃を藍がクインケを拾い直そうと屈んだ隙に一気に上から振り下ろした。

 




※クインケ解説
[パッチワーク]
Rc type:羽赫・甲赫・鱗赫・尾赫、レート:SS
藍が璃奈の赫包から作ったキメラクインケ。見た目は日本刀の持ち手部分そっくり。クインケ鋼は持ち手にしか使われていない。持ち手部分にある4つのボタンで刀身を羽赫・甲赫・鱗赫・尾赫に切り替え可、2つ以上のボタンを同時に押すことで璃奈同様異なる種類の赫子を同時に使用可能。ただし、クインケの特性上、璃奈の赫子ほど柔軟に変化できない。

[ヤマアラシ]
Rc type:鱗赫、レート:S
第1話にて璃奈が殺した喰種の赫包から作ったクインケ。鱗赫のクインケの割には癖が少なく、かなり扱い易い上に再生力に秀でている。形状はしなる薄刃の両刃剣で、持ち手のボタンを押すと刀身が伸びたり横に広くなったりする。山辺曰く「甲赫のクインケかと思った。」

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