swapオルフェーヴルとトレセン学園   作:ヨルダン東海岸

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ドンナ 「前回までのあらすじ」
「ふふ…、この間はお世話になりましたわね、swapオルフェさん?」

swapオルフェ 「怪物が"進化"する前に計画を阻止できてよかったよ、これもラモーヌさんのおかげだ。それよりジェンティルさん?これは何ですか?」

ドンナ 「何って、トレーニング用のバーベルでしてよ?」

swapオルフェ 「何に使うのこんなに沢山。」


ドンナ 「あらあら、既にご存知でしょう?」


swapオルフェ 「」
ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙!!(レ)






修行編
システムと反逆者の調和


 

 

 

 

 

swapオルフェ 「」

あらすじで紹介した通り、今私は学園内のトレーニングルーム的な所で、バーベルを持ったままスクワットをやらされている。

 

何でこんな事をやってるのかって言うと、『必要な修行』だかららしい。

 

え?理事長とステイゴールドはどうしたって?別に何も無かったよあ待って辛いむりキツい

 

 

ドンナ 「6、7、8、9、9、9、9

9、9…」

 

 

swapオルフェ 「」

 

プルプル…

見たことない程情けない顔で「早く終われ」と全身で表現するswapオルフェ。

 

 

ドンナ 「腰が下がってきていましてよ?私は『10数えたら』楽になりなさいと言ったのよ?」

 

 

swapオルフェ 「ッ__」

 

 

これまでタバコと酒漬けになっていた彼女にとって、ウマ娘がする様なトレーニングは過激なのだ。

 

 

ドンナ 「…」

 

鼻でため息を吐いた後、何とも言えない顔で「10」と口ずさむ。同時にswapオルフェと、その隣で同じメニューをこなしていた人物も一緒に、支えを失った棒のように倒れ横たわる。

 

 

その人物の名前は樫本理子、URAからトレセン学園へやってきた、熱い思いを胸に秘めた女性であり、理事長代理でもある。 端的な口調ととりつくろわない様から一見冷徹に見えるがウマ娘を思う気持ちは人一倍。 優秀で仕事ぶりも完璧、隙がない彼女だが運動だけは大変苦手という噂も……?

 

 

「3分休憩したら続きを行うわよ?」

 

 

swapオルフェ 「も…むり…」

 

 

息も絶え絶えで、横たわったまま必死に否定の言葉を腹から絞り出す。

 

ドンナ 「情けない事は言わないでよろしくて?アレと戦った時は、こんな物では無かったでしょう?」

 

 

swapオルフェ 「」

バカ言え、それ以上の苦痛だわ!

 

 

 

思えば、全ては一昨日の出来事が原因だった……

 

 

 

遡ること二日前…

天皇賞・秋 芝2000メートル 馬場状態:良

 

なんでも、かなり大きなレースらしい、今日は休みなんで、暇だから見に行くことにした。内容は今後に関係ないので説明を省くが、走る足音がこちらまで聞こえるほど力強く、才能と努力のぶつかり合う、凄まじいレースだった。そして、私はそのレースに、柄にもなく熱いものを覚えたらしい。私の後ろに居た、別件でこのレースを見に来たルドルフがそれを教えてくれた。

 

 

そしてその日の昼頃、グラウンドにて…

 

 

ルドルフが私とオル、そしてゴールドシップとジェンティルドンナを生徒会室に呼びつけた。理由は意外にも、私との模擬レースだった。

 

後になって分かったが、この三名は距離適性が中・長距離で、おそらく私もその距離が適性だ。

 

グラウンドに着くや否や、四人で並ぶ。少ないながらも、周りからは「大名行列」なんて呼ばれていた。

 

 

ルドルフが笛を鳴らすと、各バ一斉にスタートした。出遅れのない、綺麗なスタート。

 

走ってる途中、私が感じた、ケツイとは違うあの熱いものが込み上げてくる。今ならどこまでも走れると思った、…だが現実は違った。

 

 

次に目を覚ました時に目に写ったのは知らない天井。私は保健室で寝かされていた。

 

理事長、たづな、ルドルフ、この三人が私の目覚めを喜んだ。

 

 

ふと自分の体を見てみると、ところどころ包帯が巻かれている、どういう事だろうか。

 

どうやら私は、レースの途中で派手に転んだらしい。…無理もない、タバコと酒に体を蝕まれ、挙句は走ったことが無いと来た。正直、最初のストレッチが無ければこんな物では済まなかったかもしれない。

 

 

 

そして現在に至る。

 

 

 

ドンナ 「こんな調子じゃ、次アナタを送る人になんて言われるか、死ぬ気で頑張って頂戴?」

 

 

swapオルフェ 「…は?次送る人って何…?これで終わりじゃないの?」

 

 

ドンナ 「そうよ。アナタを警備員としても、一人のウマ娘としても強くする、そのトレーニングの基礎である体力を付けるのがこの私、ジェンティルドンナよ。」

 

 

swapオルフェ 「それいつ終わるの?全体のメニューって。」

 

 

ドンナ 「…具体的な期間は無いわ、今はただ…アナタ次第、とでも言っておきましょうか。」

 

 

具体的な期間が無い、という言葉がswapオルフェの不安を加速させる。

 

面倒な事に巻き込まれたが、タキオンが回復するまでの暇潰しとして、仕方なくこなす事にした。

 

 

 

それからの日々は過酷な物となった。

 

毎朝7時に起き、トレーニングルームへ向かい、バーベルを持ち、そして倒れる。トレーニングが終われば、警備員として一日働く、そんな日が1週間程続いたある日…。

 

 

 

swapオルフェ 「ンギギギッ…!!」

 

 

ドンナ 「6、7、8、9、9、9、9

9、9…」

 

 

swapオルフェ 「グオォォ〜ッ!!」

 

ドンナ 「…」

 

 

目を閉じて笑みを浮かべ、「10」と数える。

 

 

swapオルフェ 「はぁ〜〜!」

 

 

バーベルをその場に降ろし、肘に手をつく。ヘロヘロではあるが、立つことが出来ている。

 

 

ドンナ 「やはり、やれば出来るのね。その調子よ、目標は100kg。後少しでしてよ?」

 

 

swapオルフェ 「え!?これで100キロないの!?未満なの!?キツいなぁ、そうに決まってる。」

 

 

swapオルフェの持っていた大きなバーベルには「かた」と書かれていて、文字のすぐ下に35kgの文字があった。

 

 

ドンナ 「2つで70kg、だから、両方とも50kgにする必要があるわ。」

 

 

swapオルフェ 「もうヤダぁ〜。やだ、やだ、ねぇ小生やだ!!」

 

「こうなったら…!」

 

 

キンッ…!

ジェンティルドンナを、青攻撃で硬直させる。

 

 

ドンナ 「!」

 

swapオルフェ 「ジェンティル、君は間違っている…。私にトレーニングは必要ない、なぜなら、後は帰るだけだからだ。ここに留まるつもりは無い!」

 

 

ドンナ 「…そう、残念ですわ。ではせめて……」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ…

ジェンティルが力み始める。

 

 

グッ…グッ……!

 

 

swapオルフェ 「!」

何だ!?この手の内側から押される様な感覚は…!…まさかコイツ!?

 

 

ドンナ 「私をっ……完璧に止めれるくらいにっ……!!」

 

 

ググッ……ググッ……!!

 

「だあぁぁっ!!」

 

 

バリィィン!!

 

 

ここしばらくの間で、強くなったswapオルフェの青攻撃を、力ずくで解除する。

 

 

swapオルフェ 「!!?!!?」

 

 

ドンナ 「なってもらわないと行けないわね。」

 

 

swapオルフェ 「」

と…解きやがった、私の青攻撃を…力技で…!

 

 

ドンナ 「あら、案外脆いものね。」

 

 

澄ました顔で呟く。

 

swapオルフェ 「ドンナさぁ…、どんだけパワーあるのよ…?」

 

 

ドンナ 「そうですわね…、実のところ、私にも分かりませんのよ。これまでに持った一番重い重りは…、確か700kgだったかしら。」

 

 

swapオルフェ 「700!?」

 

 

 

〜swapオルフェの想像〜

 

 

プチswapオルフェ 『ぐぐぅ〜…!』

 

プチドンナ 『トレーニング内容を10倍にしますわよ。』

 

 

ガゴンゴゴン!!

swapオルフェの持っていたバーベルが九つ降ってきて、積まれる。

 

 

下段の一つがズレて、崩れてこっちに向かって転がってくる。

 

 

プチswapオルフェ 『あぁあぁあぁ あ〜↑!』

 

徐々に後退りし、逃げる。

 

 

〜想像終了〜

 

 

 

swapオルフェ 「…!」

あれ?こいつDustジャーニーより強くねー?

 

 

ドンナ 「では、トレーニングを続けますわよ?」

 

 

予想もしなかったジェンティルの強さに、「はい…」と答えるしか無いswapオルフェ。

 

 

swapオルフェの不満そうな顔を見て、ジェンティルが思い出したかのように話し出す。

 

 

ドンナ 「…そうですわね…、このトレーニングが終わったら、私にもトレーニングしてくださる?」

 

 

swapオルフェ 「トレーニング?私にできる事なんて無いよ(不貞腐れ)」

 

 

はっきり言って、彼女はパワーだけならswapオルフェよりも強い、そんな彼女が教えてもらいたい事とは何なのだろうか。

 

 

ドンナ 「ありますわよ。……あの時、私は動ける状態では無かった。けれども、私の身体は立ち上がり、走り、そしてチャンスを作った。この『力』の正体をアナタは知っているのでしょう?あの力を使いこなしたいのでしてよ。」

 

 

swapオルフェ 「…ケツイの事か…う〜ん…アレはなぁ…。」

 

 

やや困惑した顔をする。

 

「その……あれだよ、ほら…こう……」

 

 

素振りをする。

 

 

ジェンティル 「あっはは…、アナタ…面白いのね…。」

 

 

教えるのが下手なswapオルフェに苦笑いするジェンティル。

 

 

swapオルフェ 「どうやってって言ったってさぁ…、こう…強く念じる事…って言うのかな…、何か今、大切な人のことを強く考えてみてよ。」

 

 

大切な人。ジェンティルの大切な人と言えば、色々と居るだろう。家族、クラスメイト、etc…

 

 

 

ジェンティル 「……」

 

 

 

ゴルシ 『ドンちゃん何やってんだ?』

 

ゴルシ2 『瞑想か?一緒にやろうぜ!』

 

ゴルシ3 『瞑想なんて面倒っちぃから、あっちでたこ焼き食おうぜ?』

 

 

集中している所を、ジェンティルの瞑想の中のゴールドシップが邪魔をしに来る。

 

 

ドンナ 『ああもう!煩いですわね!!向こうへ行きなさい!』

 

 

ゴルシ 『ちぇ〜…つまんねぇの、行こうぜ。』

 

 

3人のゴルシの幻影は何処かへ向かう。

 

 

 

ドンナ 『大切な人…』

 

 

ゴルシ 『なあ、知ってるか?タコって心臓が3つあるんだぜ?』

 

戻ってきた幻影たち。

 

 

ゴルシ2 『実はアタシ…3cmくらい浮けるんだぜ?』

 

 

ドンナ 『……』

 

 

ゴルシ3 『いいか、アタシからのアドバイスだ…、常に自分に嘘を付き続けろ、そうすりゃ、傷つかずに済むぜ。』

 

 

 

ドンナ 「嫌味かしらッッ!!?」

 

 

突然大声を上げるジェンティルに「うおっ…!?」と声を上げて驚くswapオルフェ。

 

 

swapオルフェ 「…どしたん話ピポパ?」

 

 

ドンナ 「…このままでは無理そうですわね…。ケツイの習得は諦めますわ。」

 

 

ジェンティルは、いともすんなりそれを受け入れた、後悔も無かった。「やれる事はやりましたわ」、そう思った。

 

「そうと決まれば…、さあ、休憩は終わりでしてよ?」

 

 

swapオルフェ 「うへぇ〜…」

 

 

地獄の様なトレーニングに再び戻ったのだった……

 

 

swapオルフェ&理子 「あああぁぁ〜!!」

 

 

 

……

 

 

 

……

 

 

 

その日の昼頃…

 

 

swapオルフェ 「」

いつもの特大お茶漬けを持って彷徨う私…

 

 

ふと横を見ると、スペシャルウィークやキングヘイローが座っている、当然、グラスワンダーも…

 

 

「…」

 

一瞬嫌な顔をし、グラスワンダーの正面の席に座る。

 

「邪魔するよ。」

 

 

グラス 「ッッ__」

 

 

スカイ 「えぇ〜!?このタイミングで現れる!?」

 

 

スペ 「よ!学園の英雄!」

 

 

スペシャルウィークの言葉に一瞬反応するが、これから真面目な話をするからとでも言わんばかりに無視する。

 

 

グラス 「な…何でここなんですか…?」

 

 

swapオルフェ 「…グラス、もうこんな関係辞めにしよう(シリアス)」

 

 

グラス 「……」

 

 

しばらく沈黙が続き、先に破ったのはグラスだった。

 

 

「…終わらせたいのなら、やらなきゃ行けないことがありますよね?」

 

 

勝ち誇った顔ではなく、やや躊躇いのある顔で話す。

 

 

swapオルフェ 「はい私が大人げなかったですすみませんでした!!」

 

 

ガバ…!

 

座った状態で出来る最大限の謝罪をかます。

 

 

スカイ 「」

えぇぇ〜!?謝罪するの!?しかもその謝り方だと10対0でスワオルさんが悪いみたいに聞こえない??

 

 

swapオルフェの謝り方に違和感を覚えるも、特に口出しはしないセイウンスカイ。

 

 

グラス 「…、顔を上げてくださいスワオルさん。」

 

 

swapオルフェ 「ん。」

 

 

グラス 「…正直、この件に関しては、私が引きずりすぎなのもあったかも知れません、貴方に怒り、挙句は貴方と大差ないことを私もしていました。」

 

 

「大差ない」とはどういう意味か。グラスワンダーは、ここ最近、ビワハヤヒデ達が動画にしていたネタ(というか語録)を乱用していた。自暴自棄になっていたのだ。

 

だがその考えはあの時、swapオルフェがDustジャーニーを撃退した時に変わった。というより、変えられた。親の仇かの様に目の敵にしていた彼女が、自分たちにはどうすることもできない者相手に、逃げずに立ち向かい、最後は撃退までしたのだ。彼女の置かれている状況を考えれば、あのまま見捨てられてもおかしくなかった、だが彼女は生徒たちを見捨てなかった。どんな事情があれ、生徒たちからすればそう思うのが普通だ。つまりグラスワンダーは、swapオルフェーヴルというウマ娘に、二度脳を焦かれたのだ。

 

 

「…あのあとから、ずっと考えていたんです、本当はこんな事終わらせるべきだと、でもやっぱり、プライドは許してくれないんですよね。」

 

「だから、このタイミングで来てくれたのは、私にとって好都合でした、嫌味ではなく、私が意見を固める前に来てくれた、という意味で。」

 

 

swapオルフェ 「…やっぱり私達仲良くできんじゃん。握手、しようや。」

 

 

グラス 「ええ。」

 

 

柔らかな笑顔を浮かべ、手を差し伸べる。

 

 

キング&スペ&エル 『…ゴクリ…!』

 

 

お互いの手が掌に触れる。

 

 

ぶぅぅぅ〜ぶりゅりゅぅぅ〜…

 

ぶぅぅぅ〜ぶりゅりゅぅぅ〜…

 

 

swapオルフェ「!」

音が二重だ、私のともう一つ…まさか。

 

 

グラス 「その顔は「してやられた」って顔ですね?」

 

 

子どもらしい、満面の笑みを浮かべる。

 

 

swapオルフェ 「してやられた、…っは!」

 

 

キング 「いや、わざわざ拾いに行く事無かったでしょ!?」

 

 

「くく…たっはははぁ〜!」

 

 

グラス 「ふふ…あはは!」

 

 

 

スペ 「やっぱり、スワオルさんは悪い人なんかじゃ無かったんだ、ただ少し不器用なだけで。」

 

 

エル 「これで万事解決デース!!」

 

 

 

キング 「…ねぇ、スカイさん?もしかして、こうなる事が予め分かっていたから、あえてこんな態度取ってたの?」

 

 

スカイ 「別に?これははっきり言って予想外の展開。まあでも、スワオルさんも偽物のジャーニーさんの件で踏ん切りが付いたんだろうね。」

 

 

Dustジャーニーが居なくなってからの、初登校の日、全校朝会で理事長から告げられたのは、「あの朝朝会に現れたのが偽物のドリームジャーニー」だと言うことと、「不審者は出現しなくなった」事の2つ。結果として、swapオルフェーヴルは帰っていないし、ドリームジャーニーも戻ってきていない。学園の抱える問題は、何一つ解決していないのだ。

 

 

片手間でグラスワンダーとよりを戻したswapオルフェーヴル、後はタキオンが転移札を作って、何事もなければ帰って、それでおしまい。残り短いトレセン学園の生活に別れを告げるべく、やり残した事や、生徒たちとのよりを戻していくのだった。

 

 

 

その頃、タキオン達…

 

 

タキオン 「シャカール君、私の隠し事を聞いてくれるかい?」

 

 

だいぶ調子も戻ってきたタキオンが、シャカールに質問をする。

 

シャカール 「断る(辛辣)」

 

あっさり断るシャカール。

 

 

タキオン 「そんな事言わないでおくれぇ!一人で抱えていると不安と責任で押しつぶされそうだ〜!」

 

 

シャカール 「…っるっせェな…何だ、言ってみろ。」

 

 

パソコンをいじりながらも、なんだかんだ聞いてくれる。

 

 

タキオン 「いやねぇ…、この前、偽物のジャーニーさん、……Dustジャーニーを倒すために、swapオルフェ君に御札を送ったのは覚えているだろう?」

 

 

シャカール 「まあな、それがどうしたってンだ。」

 

 

タキオン 「その事なんだがねぇ…。…実はあの札を作っていた時の夜、製作意欲が湧いて、"swapオルフェ君が居た世界に送る札"に作り替えていた事を今思い出したんだ。」

 

 

これは即ち、Dustジャーニーが送られたのは、swapオルフェが居た世界だということだ。

 

ピタ…

パソコンを操作する手がピタリと止まる。

 

 

一瞬画面をみたまま固まり、直後タキオンの顔を口を開けたまま、焦っているような、怒っているような、何とも言えない表情でこちらを見る。口をパクパクと震わせ、何かを言おうとはしているのだろうが、上手く言葉にできない。

 

 

「一つだけ分かることがある。もしこの事実を彼女が知ったら…、私は殺される!」

 

 

シャカール 「……オメェ、そりゃ…マズい…だろ…。」

 

 

口調がロジカルじゃ無くなる。

 

 

驚愕の事実を知らされたシャカール、この事実をswapオルフェーヴルが知るのはいつになるのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プルルル…プルルル…

 

??? 「Hello!Can I speak to N…」

「…あれ?番号 間違えたかの?」

 

 

軽快でリズミカルなリズムが流れる。

 

 

??? 「間違え〜たよッ!ごめんなちゃいッ!」

 

「掛け間違えたのうッ!気まずいのうッ!」

 

「間違え〜たよッ!ごめんなちゃいッ!」

 

「掛け間違えたのう さよな〜らッ!」

 

 

ツー…ツー…

 

 

———————————————————————————

 

 

この世では、手に入れられる幸福の総数に限界がある、その総数を超えれば、その分だけ釣り合いを取るために不幸が知らない誰かに降りかかる。言い換えれば、誰も何も求めなければ、幸も不幸も無い、虚無の世界が誕生する。生物はそれを、そうなる事を本質的に理解しているからこそ、変化させる為に幸福を求めるのかもしれない。これを何と呼ぶのかは分からないが、とりあえずは「幸せとは誰かを不幸にして手に入れるものである」、それだけだ。

 

 

 

……

 

 

 

……

 

 

 

仕事終わりにて…

 

 

ドリジャ 「……」

私は今、実に不愉快です。元の世界にはまだ帰れない、何処かに旅をしようとしたら、swapタキオンさんは留守、挙句の果てには間違い電話。私はどうすればいいのでしょうか……

 

 

 

swapジャーニーの家に帰りながら、ナレーション風に語る。

 

 

 

ここに来て、かれこれ一ヶ月が経ちました。起きた事と言えば、この世界で「ウマートフォン」が一般普及した事と、独自のネットワークが形成された事くらいでしょうか、私のウマホが原型になっているので、当然充電器も使えるので、これでやっと不自由なくウマホが使えます。

 

とは言っても、私の心は既にボロボロ、支えになっているのは、ウマホのフォルダのファイルに入っているオルとのツーショット写真。

 

 

私を不安にさせる要素の一つに、…あの橋に居たダイヤさんの言葉。

 

 

「世界のすべてが普通に廻っているのに、そこに自分だけが存在しないなんて考えたことありますか?怖いですよね…。」

 

 

…的な事を呟いていましたが、まさに今、私がそんな状況です。私が居なくても、トレセン学園の人たち、トレーナーさん、…そしてオルは、ある程度普通に暮らしてる。暮らしが破綻する程、私に依存している人なんて存在しない、そんな事は理解しているのに、何故だか心にぽっかりと穴が空いたような感覚に襲われます…。

 

 

 

帰宅後、リビングにて。

 

 

 

swapジャーニー 「ジャーニーよ、余はこれからウマチューブで人気者になろうと思っている。何かいいアイデアは無いか?」

 

 

ドリジャ 「アイデア、ですか。そうですね…、この手のコンテンツは、他の人がしないような事をすれば人気者になれます、今家にある物で出来ることと言うと……。」

 

「…顔芸…でしょうか?」

 

 

浮かび上がる"その血の運命(さだめ)"

 

 

swapジャーニー 「顔芸か…。」

 

引きつったような、睨みつける顔をして「こうか?」と聞き返す。

 

 

ドリジャ 「」

何処となくゴールドシップさんを連想する顔ですね…、まあ、顔芸で人気者になるならこれくらいの事はしてもらわないと。

 

「しかし、顔芸だけで動画にするのは少し物足りないのでは?」

 

 

swapジャーニー 「うむ…そうだな…。」

 

「なら、2人で顔芸をするのはどうだ?」

 

 

ドリジャ 「え…、なぜ私まで…?」

 

 

swapジャーニー 「お前は人気者だ、人気者にコラボは付き物だと、ドトンも言っていたからな。」

 

 

なんて浅知恵を教えてくれたんですかあの方は…

 

ドリジャ 「…じゃあ、しましょうか?」

 

 

しばらく2人で変顔をし続けるという、ドリジャにとっては半ば屈辱的な事を5分ほどした…

 

 

 

swapジャーニー 「よし、こんなものでいいだろう、次は昼ごはんだ!」

 

 

swapジャーニーに連れられるがままにスイーピーズへお邪魔する。

 

 

「スイープ!トイレ借りるぞ。」

 

 

swapスイープ 「奥行って右。」

 

スサササ…

 

ドリジャはそのままカウンター席につく。

 

「いつもの2つでいいわよね?アンタと、あの子ので。」

 

 

ドリジャ 「えぇ、お願いします。」

 

 

しばらくして、頼んだものが来るが、swapジャーニーがまだ戻ってきていない。

 

 

「…」

 

 

swapスイープ 「お腹でも壊してるんじゃないの?あの子ああいう時に限って顔に出さないし、周りに余計な心配させたくないだけなんだろうけど。」

 

 

心配するドリジャに、声を掛けて安心させるswapスイープ。少しすると、店内のBGMが変わり別のBGMが流れ始める。

 

 

 

swapスイープ&ドリジャ 「!?」

 

 

ガチャ…!

swapジャーニーが出てくる。

 

 

swapジャーニー 「思ったより操作に手間が掛かったが、上手く行ったようだな。」

 

 

どうやらバックヤードにある、店内BGMのジュークボックスに、地上から流れてきたレコード(をswapグルーヴが修繕したもの)を勝手に付け替えたようだった。

 

 

swapスイープ 「ちょっと!勝手に曲変えないでよ!」

 

 

swapジャーニー 「これくらいの方が映えるだろう、よし、ジャーニー!やるぞ!」

 

 

ドリジャ 「はい?」

やるとは…何をするんでしょう…?

 

 

swapジャーニー 「何をキョトンとしている、余とダンスを踊るのだ!」

 

 

ドリジャ 「はい…??踊るんですか?ここで?」

 

 

突拍子も無いswapジャーニーの言葉に、口調が崩れるドリジャ。

 

 

swapジャーニー 「決まっているだろう、他に踊る場所があるか?」

 

 

ドリジャ 「え…えっと、スイープさん…?よろしいんですか…?」

 

 

swapスイープ 「いいわよ、どうせ止めても辞めないだろうし。」

 

 

スゥー…

 

そう言うと、徐々に下(カウンターの見えない所)にフェードアウトする。

 

swapジャーニーが撮影モードにしたウマホをセットし、BGMがサビに入った所で踊り始める。

 

 

2人とも(というかドリジャはswapジャーニーに合わせているだけ)上手く踊れたようだ。

 

 

 

……

 

 

 

……

 

 

 

swapジャーニー 「ふむ、上手く撮れているな、編集が終わり次第ウマチューブにアップしよう。明日が楽しみだ!!」

 

「そうだ、スイープ、この動画のタイトルにお前の名前を書いてもいいか?」

 

 

swapスイープ 「いいわよ、露骨に私の名前を出さないならね!」

 

 

swapジャーニー 「ガッテン!傑作を仕上げてくるぞ!!」

 

 

そう言うと彼女は、カウンターの上の食べ物のことも忘れて帰ってしまった。

 

 

ドリジャ 「……あの、これ…。」

 

 

swapスイープ 「いいわよ持ち帰って、渡しとけばそのうち食べるでしょうし。」

 

 

ドリジャ 「…何から何まですみません。」

 

 

swapスイープ 「なんでアンタが謝るのよ、別に嫌じゃないし、経営が成り立てば、私はそれでいいのよ。まあ、事前に許可くらいは取って欲しいけどね。」

 

「でも、注意とかはしないであげて、アンタの所と、常識とかマナーとか全然違うだろうけど、あれでも常識人な方だからさ。」

 

 

杭を刺されるドリジャ。

 

 

ドリジャ 「ええ、そこは大丈夫ですよ。」

 

 

ひとまず頼んだものを食べ終わり、swapジャーニーの分は持ち帰ることになった。

 

 

「…」

 

swapジャーニーさんは、誰から他人との関わり方などを教わったのでしょうか…、この一ヶ月、彼女の親などを見ていないどころか、彼女自身からも口にはしていません。となると今行方不明になっている彼女のお姉さん…swapオルフェーヴルさんに教わったのでしょうか、まあ…、それなら妥当でしょうね…あれだけ部屋が荒れていた訳ですから…。

 

 

 

 

 

——————

 

 

swapオルフェ 「べぇくしょい!!」

 

「誰かが私の噂をしている、まあ英雄だからね、仕方ないね(自惚れ)」

 

 

オルフェ 「勘違いだ余。」

 

 

——————

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

……

 

 

 

 

……

 

 

 

 

スノーフルの遺跡手前、かつてドリジャが目覚めた場所にて…

 

 

ビュン!

パラ…

ヒラ…

 

転移札が地面に落ちる。

 

 

Dustジャーニー 「………!」

 

 

起き上がると同時に、周りを見渡して様子を確認する。

 

 

「…」

記憶は…、……ある…、ッ…swapオルフェーヴルとか言いましたかあのウマ娘…!必ず殺して私の経験値に…!!

…いや、落ち着きましょう…。ここは…スノーフルの…、メジロラモーヌの住んでいる…。

 

 

「…」

分からない…私は"どの時点の"スノーフルに飛ばされたんだ…!?もう人間は遺跡を出たのか!?それともまだ遺跡の中なのか…!?

 

 

ひとまず、経験値を得るために街の方へ向かう。

 

 

ズゾァ…ズゾァ…

 

ヒュン!

"近道"でスノーフルの街へ向かう。

 

 

散々とした街の様子に困惑するDustジャーニー。

 

「どうして誰も居ないんでしょうか?…いや、とりあえずギムレッツに向かおう。」

 

 

しばらく歩いて、スイーピーズに着く。

 

 

「何!?ギムレッツじゃ無いのか…?…スイーピーズ…?ホットランドのあのウマ娘がなぜここで店を構えている…!?」

 

 

ひとまず店の中に入る。

 

swapスイープ 「あらジャーニー、どうしたのその格好、イメチェン?結構似合ってるじゃない。」

 

 

Dustジャーニー 「………。」

 

「そ、そうです、似合ってるでしょう?これを見せたかったんですよ。」

 

 

ズレたメガネを元に戻し、焦りながら話す。

 

「では、私はこれで…。」

 

 

swapスイープ 「ちょっと待ちなさい。」

 

 

ピタ…!

マズい、バレたのか…!?

 

 

「…アンタ、フードは外した方がいいわよ、印象が悪くなるわ。」

 

 

フードを外す。

 

Dustジャーニー 「…はぁ、そうですか、分かりました、ではこれで…。」

 

 

そそくさと店から出て、フードを被り直す。

 

Phantomオルフェ 「姉上!なぜあの場でヤツを殺さなかった!」

 

 

Dustジャーニー 「周りにあれだけウマ娘がいては、大事になるだろう?それに、まずはこの世界のオルを……手にかけないと……。」

 

 

話し出す内に声が小さくなり、手が震え始める。

 

 

Phantomオルフェ 「何を不安に感じる、余はここに居る、それ以外の余は全て偽物だと思え。」

 

 

Dustジャーニー 「…そうだね、オル。ありがとう。」

 

 

幻影のオルフェーヴルに絆され、全ての不安が吹き飛ぶ。

 

 

「じゃあ、始めようか、オル。」

 

 

ギュィィィン…!

ダァァァァ!!

 

 

ブラスターを真上にぶっ放し、レーザーの威力で、天井の一部が激しい音とともに崩れ落ちる。

 

 

ゴゴゴゴゴ…!

 

ダァァァァ!!

 

 

致命傷になりそうなほど大きな岩を、全てブラスターで粉砕する。

 

「Loveは自分の手で殺さないと手に入れられないからね。」

 

 

不気味な笑みを浮かべながら、独り言を呟く。

 

 

やがて、「何だ何だ」と言わんばかりに、建物からウマ娘たちが出てくる、当然、swapジャーニー達も…

 

 

swapジャーニー 「おい!今の音は何だ!?」

 

 

ドリジャ 「何か大きなエネルギーで爆発が起きたような音でしたが…。」

 

 

swapジャーニー 「ジャーニー!お前はひとまず、エアグルーヴに連絡を……、ん?」

 

 

ふと、街の真ん中で佇むDustジャーニーに目が行く。

 

 

Dustジャーニー 「ハッハッハッ……」

慌てふためく者、冷静に避難の準備をしている者、これからそのすべてが私の経験値となる…!!

 

 

なんて独り言を呟いていると…

 

 

ザ…!

swapジャーニー 「そこの貴様!」

 

 

swapジャーニーの方から話しかける。

 

 

Dustジャーニー 「」

聞いたことのある声だ、いや、聞いたことがあるどころかまるで…

 

「どうか、しましたか?」

 

 

振り返りざまに、フードの中から不気味な笑顔と、不気味な色の目が顔を覗かせる。

 

 

swapジャーニー 「ッッ!…貴様がやったのか…ジャーニー…!」

 

 

あえて余計な質問はせず、単刀直入に聞く。

 

 

Dustジャーニー 「そうだ、と言ったら?」

 

 

swapジャーニー 「…余が貴様を改心させてやる!」

 

 

バッ!

両手を左右に広げ、声高らかに言い放つ。

 

Dustジャーニー 「改心させる!?貴方が私を!?できないことは言うものじゃ無いですよ!」

 

 

swapジャーニー 「やってもいないのに、できないと決めつけるな!お前は改心出来ると、余が証明してやる!」

 

 

Dustジャーニー 「そうですか、では…」

 

 

ヒュン!!

目の前まで移動し、鋭く尖ったニンジンを振りかざす。

 

 

「どうぞ私を納得させてください。」

 

 

 

(一瞬スロー)

 

 

 

swapジャーニー 「ッッ__」

 

 

 

ダッダッダッ!!!

ドンッ!

 

ドリジャがswapジャーニーを突き飛ばす。

 

 

ザシュッッ!!!

 

 

ドリジャ 「ガフッ……!?」

 

 

ドゴッ!!

思いっきり蹴られ、そのままの姿勢で反対側の壁に吹き飛ばされる。

 

 

ドゴォォォン!!

 

 

「ッッ__」

 

 

ギュィィィン…!

Dustジャーニーがブラスターを構えて、トドメを刺そうとする。

 

 

ヒュンヒュン!

ザンザン!

 

オレンジ色のニンジンが数本Dustジャーニーに刺さる。

 

 

Dustジャーニー 「……」

 

 

ブラスターを引っ込める。

 

 

swapジャーニー 「…よくももう一人のジャーニーを!許さんぞ!」

 

 

ボォ…!

 

オレンジ色のニンジンを数本召喚し、Dustジャーニー目掛けて飛ばす。Dustジャーニーはそれを簡単に捌いてゆっくりswapジャーニーに近づく。

 

 

 

……

 

 

 

……

 

 

 

ドリジャ 「」

うう…何が起こったのでしょう…、声を出すどころか…指一本動かすこともできません……この意識も…いつまで持つか……、…オル……今は何をしているだろうか…、私がいなくても…この先元気に過ごせるのだろうか……、別れの挨拶もできないなんて……

 

 

ぼやける視界の中で、オレンジ色のニンジンと、通常のニンジンが飛び交う光景が一瞬映る。

 

 

「………」

 

 

一瞬瞼を閉じた様に視界が暗くなり、次明るくなった時には、目の前に謎の人物が立っていた。そのウマ娘は、あの時ホットランドで私を助けてくれたウマ娘と同じ髪色をしていた。

 

 

??? 「ランズエンド。『私』は、君の魂に"エナジー"をあげるよ。」

 

「"swapジャーニー"を助けてあげて。」

 

 

 

ドリジャ 「……!!」

 

 

ピカァァ!!

 

謎のウマ娘がドリジャの肩に軽く触れると、ドリジャの周りが強い光で包まれる。

 

 

swapジャーニー&Dustジャーニー 「!!!」

 

 

なんの光だ…!?

あの方向は…私がもう一人の私を吹き飛ばした方向…!

 

 

「…まあ、アナタを殺した後にじっくり始末するとしましょう。」

 

 

ブラスターをswapジャーニーに構えて放とうとする。

 

 

swapジャーニー 「くっ…!」

 

 

ゴォォォ!!!

 

Dustジャーニー 「うっっ…!!?」

 

 

押される程の強烈な圧が、後ろから襲いかかる。

 

 

咄嗟に振り返るとそこには、ドリジャと同じ顔をした、全く別の雰囲気と格好をしたウマ娘が立っていた。

 

 

タバコに火を付け、煙を思いっきり鼻から放出した後に一言。

 

 

??? 『アファーマティブ、『Neоジャーニー』は任務を遂行するよ。』

 

 

 

 

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