劇場版『呪術廻戦 0』において描かれた、
ナナミンの黒閃4連発を自己流で改変した内容になります。
ネタ回です。キャラ崩壊にご注意ください。
2017年、東京・京都百鬼夜行。
呪詛師•夏油傑による蛮行。呪術高専創立以来、最大規模の対処となった呪術テロ。
とはいえ。五条悟がいる以上、原因は絶たれる。
故にこそ、集団による事態収束こそが至上命題だった。
そしてやはり、悪い予感はあたった。
――呪詛師ミゲルによる、呪詛師集団の一斉離脱。
――対して、こちらは大半が満身創痍。
そんな場面で、
騒動に便乗した呪霊が、大量に湧いたのだ。
「ここは私が。皆さんは後方へ!」
本戦に立て続いて生じた後処理戦。
最前線に立てるの私だけだった。
時間稼ぎにおいては成功だった。
仲間は無事全員、離脱したのだが――。
「……クソッ」
ここは――領域内。そして相手は、
(特級案件……全くもって、タチが悪い)
――特級特定
高専登録済みの、悪意ひしめく小世界。
七海は辛うじて、墓場に身を隠し、呪力を潜めていた。
(正直、死んでも悔いはない……とはいえ。どうせなら一思いにやって欲しいモノですね)
この領域は、必中効果が不完全だ。
①呪力のある物体にフルオートで『棺』が発生
②棺もろとも地中に埋める
③この状態で3カウント。0で病にかかり、死亡する。
条件付き、段階を踏む必中必殺の実現。
七海はかれこれ、呪力を込めた持ち物を囮にして、本体に殴りかかってきた。
だがそれも、いよいよ持ってお手上げだ。
(腕時計をどこかで落としてしまった。おそらくは棺の中だ。携帯も、どころかネクタイもナタもお陀仏……あと二回、あれを喰らえば動けなくなる)
最後の手段は、呪力を込めた拳ひとつ。
特攻の他にない。
もしくは、このまま見つかるのを待つか。
(灰原……私は、本当に何がしたいんだろうな)
――心底。クソッタレな二者択一に、嘆息を漏らした。
もはや、己を律する合理も役に立たない。
道徳や倫理で人は守れない。
だからこそ、そこに手を伸ばした。ありきたりな人々の笑顔を守るために。
だからこそ。こうして、道徳心の役立たない場面で死ぬ。それが、呪術師という生き物――。
だと、言うのに。
やけっぱちだろうか。
――――七海建人には、予感があった。
(根拠のない自信がある。わけがわからない。けど……どちみち、これで最初で最後)
シャツの第二ボタンを外す。
死守したオキニのゴーグルをかけ直す。
悪意の中で息を吸い、吐いた。
一か八か。故に、今だけは。
衝動に、任せても良いだろう。
「……これで死んだら祟りますよ。夏油さん」
――ターゲット、補足。
幸いにも、距離はそれほどない。全速力で行けば6秒で到達できる。
今の呪力量全てを投じる。
気分は、最高記録に挑むスプリンター。
一世一代――気張って、踏み出す。
「――ふんッ‼︎」
全ての手段を失った故に。
七海建人は形振りを構わず、
己の隠れ蓑、墓石を呪霊にぶん投げる。
呪力を込めたソレは、読み通り領域の対象となった――今しかない!!
(この領域の必中対象はひとつだけ。術を中断するか、3カウント後にしか私は狙われない――!)
「う、ぉおおおお!!」
一直線。迫る呪霊、その体に『線』を見出す。
無手での攻撃では切断は難しい。
それでも、術式による弱点付与は有効。
形状的に、『7:3』のポイントが複数重なる地点――突くならば、『丹田』。
骨盤、胸から足まで、頭から股。
多少なりとも脊椎動物に近い形である以上、狙うは正中線一択!!!
「『
疱瘡婆の、掌印が変わる。
その詳細を読む時間はない。
過去最大の過集中、視野の先鋭化、激鉄と化した思考の鈍化――まごうことなき、今際の際。
視野は、完成された。
だからか、確信は形になった。
術式によるクリティカルの予感とは、わけが違った。
今――――私に、『アレ』がくる。
「ぉおおおおっ――――『黒閃』ッ!!!!!」
天啓は、盛大な火花となって現れた。
マッチョマンのジャパニーズサラリーによる前後不覚のフルスイングは見事、的を貫き、
自ら設けた墓地の数々を、地面もろとも引っぺがして呪霊はゴム鞠の如く錐揉み吹っ飛ぶ。
それを見届けると共に――ひどく、冷静に。
己の異常を、七海建人は感じ取っていた。
「……これ、が。黒閃――――これが。私の呪力」
両手の、掌を開き、握る。
この手にまとわるモノ。
その感触は、過去最大に馴染む。
これまでとは、まるで別物――そう。
これは。七海建人の、人生初の『黒閃』。
それに伴う、潜在能力の解放が起きていた。
元より一級術師、確かな土壌のセンス。
そこに、黒い火花の
故に、彼は――――弾けた。
「オマエ……舐めた真似を、してくれたな」
自分の声と思えぬ声。
腹の底から出た本音に、敬語なぞ不要。
激情を伴い、七海建人は冷徹にも追撃に動く。
――疱瘡婆の掌印の工程は終わった。
――さっきのを喰らってキャンセルされた。
次が来れば、今度こそ必中がくる。
――――ならば!
「十劃呪法――――『
墓標の地盤を、拳ひとつで捲り上げる。
広がる解釈で見出した『7:3』が大板を砕き――瓦礫の数々、その全てをチャフとしてぶち撒け、叩きつけた。
「――――!?」
が、流石は特級。
初手の黒閃を弱点に受けても、呪力を込めた石飛礫でも、疱瘡婆を祓い切るには足りない。
苦鳴をあげつつも、その手は負けじと印を結び、無い目を凝らして必中対象を探し――、
「――――『黒閃』!!!!」
瓦礫の奥から。背景の中を走り、無数の足場を蹴って通った一撃。
七海の拳が、疱瘡婆の両腕をぶち折っていた。
「――――!!!??!?」
「あぁ……海が、見える」
黒閃、ニ連続。
湧きあがる、圧倒的な全能感。
呪霊の血潮を、ひどく心地よく浴びて、彼は――。
「そうか――――今の私はクアンタンだ!!!?」
錯乱していた。ガンギマリであった。
このまま領域が解ければ、結界消失と共に中身の呪具も消える。だから地面をめくって、棺から自分のネクタイとナタと腕時計を、瓦礫の中から拾い上げた――――それが、最後の理性だった。
「オマエをぉ、一冊目にしてやるってんだよ――ッ!!」
――――『黒閃』。
瓦礫の山の下、下敷きになった疱瘡婆を、その山もろとも一線。叩っ斬り、
ついでに勢いそのまま突っ走り、大ジャンプ。
領域が解けるのを待たず、その結界に『瓦落瓦落』をぶち込んで、打ち壊す。
「ふぉ――クアンタン! オーストラリア! めんそーれぇ――――!!!?」
そうして領域外、呪霊の群れにはトバッチリの雨が降り落ちた。
崩壊した領域の結界に七海の呪力がこもり、流星は滝の如く降り注ぐ。
その最中に唯一、さながらモーセの如く着地した七海は好き勝手、ナタと拳を振るい暴れ回る。
局所的ながら開かれた独壇場。
完全に、彼一人が場を支配するステージ。
(あぁ、もう、どうでもいい。さっきまでの怒りなんて、これまでのクソッタレな残業なんて!)
そう――黒閃は、圧倒的な全能感をもたらす。
意識的に行ってきた技が自然動作同然となり、
肉体と呪力の制御が限りなく調律され、術式解釈は拡大される。
そうでなくとも――百鬼夜行の度重なる戦闘と仲間の死、その終了後に生じた予定外の戦闘、挙げ句の果てに領域を使われ死にかけた――先ほどまでとの、落差。
普段が、真面目すぎたからこそ。
「ふォウ、ふっ、ハッ!! キェああああああぁ!!?!」
――四度目の、『黒閃』。
呪術史における、最高記録の樹立。
(今は――この世の全てが、心地いい!)
極度の緊張状態からの、それは――バカ真面目な大人の心を壊すには十分すぎた。
「そぅれそら35ページ目! 36、37! そいやっソイヤっそいやッ!!!?」
降り落ちる結界の破片を、再びぶん殴って『瓦落瓦落』として飛ばす散弾攻撃で雑魚を一掃。
上級呪霊ならば自らの拳で潰し、
なんなら、その呪霊を吹っ飛ばして、
ボウリングの如く『瓦落瓦落』を連鎖させる。
空間の隅から隅まで及ぶ破壊の手。
気分はまさしくスーパーマン。
ナタを手に乱暴する様は、まさしく鬼の有様そのもの。
「キェエエエエエ! ぃいいいヤぁあああッツ!!!」
傍若無人、前後不覚のサラリーゴリラ。
この場の、生態系の頂点は確定していた。
「あっはハハハハハ↑〜ッ――――天上天下ッ唯我独尊!!!!」
そう――今、この時までは。
「あっ、七海! 領域持ちやれたのっ、!? やー、見直したわ〜!」
「……」
……すんっ、と。我に返った。
なにせ、頭上。今し方、己の火力よりデカい威力を産んだ高層ビル相当の全長を持つ呪霊に――――それ以上の火力をジャブ感覚で出してワンパンする『規格外』。
などという。自分以上に狂ったモノを前に。
「……はい、お疲れ様です(小声)」
「ん、なに風邪? 寝込むの仕事終わってからにしとけよ~、また後日ね〜!」
んで。ヒト型をした天変地異は、ばびゅーんと過ぎ去っていく。
……今の、見られてなかっただろうか。
まずそれを気にした。
もしそうならば、五条悟に一生こすられるに違いないが、今の態度からしてそれはないだろう。
……そうでなくとも。
向こう暫く、会いたくない。
「……やってらんねぇ」
かくして、七海建人は。
来年までの一年限り、黒閃最多連続発生記録者となったのだった。
えっ、空港ナナミンはって?
記憶にございませんな。