とラぶラックキャット   作:那覇ダイア

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Vol.1 屋根の上の女
#01.目覚める宇宙猫


 

 最近黒猫見たので、ToLOVEる原作前スタートな感じで初投稿です。

  


 

 

 

 

 

 殺しに感情はない。

 任務だとかどうだとか、俺には関係のない話だ。

 よくあの四人の老人(ジジィ共)が「これであの惑星の地区にも平和が~」とか「独裁者は滅びた~」とか、論評なのか色々言っているが、興味があるわけでも無い。

 ただ、俺を拾った男がそういう生き方しか教えてこなかった。

 銃の引き金を引いて、殺す。

 単純で、それ以上でも以下でもない。

 だから今日の殺しも、特に何かあるわけでも無く終わった。

 とある星系の連邦、首相に上り詰めた男。

 殺害のため現場の情報収集を少しすれば、それだけで大量に、男が裏で為してきた悪行の限りを耳にした。

 よほど恨みを買っていたのだろう、“組織(クロロス)”が目を付けなくともそのうち誰かに殺されていたかもしれない。

 護衛も大した手合いじゃなかった。

 だからいつものように()()()侵入して、いつものように引き金を引いた。

 タイラント。

 その男には最近結婚した若き妻がいた。

 妻は男にすがり、泣いていた。

 裏で為した悪行の分、金回りが良かったからか。

 女が男と結婚したのは、そういう目的だと愚痴を言っていたスラムの酔っ払いもいた。

 ただ…………、その涙に嘘の()()がないような、そんな気がした。

 ……後ろ髪を引かれるようなことじゃない。

 ただそのまま、その場からいつも通り姿を消すのみ。

 精神エネルギーや生命エネルギーを弾丸に変換する“装飾銃(ハーディス)”は、その銃創から足がつくことがない。

 男の頭蓋の内側で炸裂した後は、もはやその形もないだろう。

 殲滅ではなく暗殺というオーダーだったから、確実に、重要器官を一発のみ銃撃。

 男の返り血を浴びるような下手は打っていない。

 だから俺も、銃撃した弾丸が男を殺しきる前にその場を後にしている。

 あの連中の中で、俺の速度についてこれる異星人は誰もいない。

 だから騒然となる会場から離れ、上司(ナンバー2)に連絡をどこでとろうか考えている時だった。

 

「待てよ! …………何故、殺した……!」

「……?」

 

 だから、少しだけ意外だった。

 あのパーティ会場から俺を追って来れる誰かがいるとは、ついぞ思ってもみなかったから。

 聞き覚えの無い声だ。

 年は俺より上だろうが、年よりと言うほどに老いてはいない。

 姿を見られた……、殺すべきか、半殺しにして警告とするべきか。

 特に振り返らず、男の声を聞き続けた。

 

「あいつは、サンフェネク星系から手配書が出回っていた! このブラッキオじゃ表向き英雄だろうが、裏では恐喝に暴力にクスリや女の売買、果ては奴隷惑星まで手掛けていやがった。

 だから、生きて確保してやらなきゃいけなかった」

「…………」

「悪党だが、殺す必要はなかったろ……! 若妻のミスラも、歌手業の護衛にあの男のマフィアしてたってところが切っ掛けで付き合いが出来たらしいが…………、ちゃんと愛してた。少なくとも、俺にはそう見える」

「…………」

 

 臭いは、鉄と()()()()

 数は、2か?

 ……見知った臭いもあるので、1で良いだろう。

 

「殺し屋が雇われたって不思議じゃない男だ。……絶対誰もここで堂々と殺しはしないだろうってところで堂々と侵入して、馬鹿みたいに早い、猫みたいな動きでターゲットまでたどり着いて殺すなんて、人間業じゃないようなことをして、殺せる。お前みたいな凄腕が雇われたって不思議じゃないくらいには、あの男がしていたことは許されることじゃない」

「……」

「じゃあ、あの女性(ヒト)の涙はどうなる……! もちろん許されないのは間違いない。だけど、だったらそれには相応の償わせ方ってものがあるはずだ。違うか殺し屋!

 悪党だったら誰彼構わず生きる価値はないから、何も考えずに殺しとけば良いってか!?」

 

 男が俺の肩を引く。

 鬱陶しいが、巻き込まれるのも御免だ。

 

「伏せろ」

「えっ?」

 

 俺の声掛けがあったせいか、手を払って背を地面に押してやれば、すんなりとその流れに逆らわずに身を伏せる男。

 同時に頭上をかすめる数多の斬撃。

 ブーメランみたいなものじゃないな。

 力任せとするとマスール星系銀河かタイタン星人あたりか……いや、足音からしてどちらも体重がないから違うか。

 ひょろりとした電子バイザーに防御サイバネティックスーツの男。

 サイボーグ化、かつ元から達人と。

 見たところ能力もしっかり使用できているようだし、改造によって元の戦闘力に問題は生じていないようだ。

 まあ、それでも所詮はこの程度。

 ついでに足元で這いつくばる男も観察する余裕がある。

 白いスーツ? 汚れ目立ちそうだな。

 眼帯に珈琲(コフィ)のような匂いのする煙薬草(パイプ)

 年は…………。

 

「死にたく無けりゃ逃げな、オッサン」

「お、オッサン!? 俺まだギリギリ二十代だぞ!?」

 

 この状況でそう返せるだけ肝が据わってるのか何なのか。

 

「よくもタイラント様を……! 生きては帰さん、この場で屍を晒すが良い!」

 

 ま、オッサンに返答する必要もないからそのまま、サムライサイボーグとの戦いに集中する。

 戦いと言っても、相手は()()()みたいなもの。

 繰り出される飛ぶ斬撃を躱して、時にハーディスで受けて流す。

 とある惑星の古代文明が鋳造したオーパーツ、超金属「オリハルコン」で作られた俺のハーディス。

 組織(クロロス)で認められた際、クロノ星系のチャーム人の女から託されたコイツは、並の物質で破壊されることはない。

 男の矜持を折るように、一つ一つ、斬撃を丁寧に()()()()躱して実力差を理解させる。

 何度も何度も両手の剣を振るい斬撃を飛ばし、こちらの急所を狙っていた男。

 それが功を奏することも無く、ただただ無様をさらす。

 わずかに俺の顔を掠めたのみで、その斬撃は一つたりとも致命傷となりえず。

 ハーディスを()()()()()()振るい、男の身体を殴りつける。

 ……脆いな、この一発で相手の腕が肩からひしゃげたぞ。

 二の腕から折れ、人工筋肉とパイプと、電子部品が飛び散る。

 その肉体になってから「痛み」を味わっていなかったのか、男は情けないくらいの悲鳴を上げてその場に倒れる。

 眉間にめがけて、ハーディスを構える。

 

「ひ、ひィ……!」

「…………」

 

「ば、馬鹿!? 止めろ!」

 

 オッサンの声など気にせず、銃撃。

 ハーディスの弾丸は()()()()()()()、男のバイザーだけを砕いた。

 生身なのか生体部品の流用なのか、縫い目の多い男の顔があらわになる。

 その表情には、情けないくらい恐怖の二文字が踊っていた。

 引き金を引くのに、特に感情はない。

 だが……、恐怖に溺れる男から、わずかに違う臭いがした気がした。

 殺したあの男に縋りつく、女の泣く姿────その涙のような匂いがした。

 そんな、少しの感傷。

 

「…………あの男以外、殺せとは言われていない」

「……ッ」

「俺のことは忘れろ」

 

 ハーディスを向けたままそう言って、俺はその場を後にした。

 飛び上がり、周辺にあった超巨大樹を駆け上がり、超電磁パルスを放つ柵の生成するバリアにハーディスで人一人分通れる風穴を空ける。

 システム上、この1秒程度の穴は感知されないので、そのまま特に気にせず、俺は外で待っていた男の小型宇宙艇(スペースサイクル)に乗り込んだ。

 

 ステルス状態に移行して、そのまま一気に大気圏を抜け宇宙空間へ。

 組織……“黙示の秤(クロロス)”が提供したスペースシップに収容された俺達は、そのまま引き上げとなった。

 

「ダメじゃないか、十三番目の黒猫(クロ・サーティーン)。目撃者はしっかり殺さないと、アシがつくよ?」

 

 スペースサイクルから出ようとすると、運転席にいた男はそう言って来る。

 さっき、俺が決着つける直前までバリアの外から、こちらの様子を窺っていたのだろう。

 実際、コイツの()()はしっかり敷地の中までしていた。

 

狂気の聖剣(ザスティン・マッドガイ)

「その呼び方は止めてもらいたいかな、特にマッドガイの方……。今の私は聖剣(ザスティン)だよ。というか、そうやって目撃証言ばっかり残るから『不吉の届け屋』なんて噂が出るんだよ」

「興味はない」

「まあ、()()……というか組織(クロロス)も君をそういう形で喧伝して、方々に牽制をかけてはいるようだけれどね」

 

 爽やかに微笑む男の表情を見ていると、何と言うか、人は変るものだなあと変な感慨が湧いてくる。

 近々デビルーク星系王室の親衛隊に配属されるらしいこの男は、本来、俺と同じように組織に所属していた。

 この趣味の悪い色をしたホストみたいなスーツを脱ぎ捨て、そのうち鎧を着こむことになるということだ。

 仕事も、暗殺のような裏向きは減ると聞いているが…………。

 初対面の時のことは今でも覚えている。

 俺の仕事ぶりを見て、よくわからないが感動したのかとにかくテンションが高かった。

 そして明らかに、目が濁っていた。

 指名手配犯なんて生易しいものじゃない。

 それこそ銀河系一つくらいはあっさり虐殺しかねないような、そんな心の闇を秘めていた。

 ……それが、気が付けばいつの間にやらこの腑抜け具合。

 一体どんな出会いがあったのか、興味がないと言えば嘘にはなる。

 直に聞き出す程の興味はないが、多少の野次馬根性だった。

 

「……二番目の賢者(オーディン・ツー)に報告する」

「了解。何か食事をとるかい? 後でスペースパーキングシティで、少し買い出しするつもりだけど」

「必要ない。携帯食で事足り────いや、……」

 

 ザスティンの軽い調子に応じていると、ふと脳裏に過ったのは。

 

「…………ミルク缶だけ、いくつか」

「本当、ミルクが好きだね()()()()は」

 

 久しく呼ばれてなかった俺の本名を呼び、()()()()は弟でも見る様に目を細めた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 猫ってのはどこにでもいる。

 野良猫だろうが飼い猫だろうが、宇宙のいたるところに。

 かつてとある星系で猫は神であり、また神の遣いだったとか教わったか。

 世界の安定と秩序を守るため、その銀河では猫は知的生命体の感情の機微を監視し、調停していたらしい。

 そんな謂れがあるせいか、それにあやかってのことなのか、少なくとも治安が多少安定している星には猫が持ち込まれ、そのまま住み着いていた。

 それは、俺が拠点にしているシンヨーク星系の巨大宇宙洪でも。

 

「見ろよ白猫。月が4つあるだろ? あのうち一つは巨大貿易船がそう見えるだけで、うち一つは人工衛星の類なんだぜ?」

『────?』

「わからねーか? ……ま、そりゃそうだな」

 

 特に誰に聞かせるでも無く独り言を言いながら、自分の住んでる賃貸の屋上で、誰もが寝静まった時間帯に月を見上げる。

 星から観測できる最も大きな第一衛星を月と呼ぶが、このシンヨークにおいては自然の月は2つ。

 1つはさっきも言った通り巨大な商船。

 いわゆるワープ装置を積載した貨物船は、多方向からの衝撃に強くするために円形になりがちだ。

 もう1つは人工的に作られた惑星……、確か、何かの科学実験とかするのに用いてるとか言ってたか。

 一応は組織も出資している団体の実験場らしく、下手に興味は持つなと上からお達しがあった。

 

「ま、こんな話お前にするくらいには参ってるのかね。……飲むか? もっと」

『────!』

 

 にゃおん、と。

 こっちの言ってることがわかってるみたいに俺を見上げて甘えてくる白猫に、肩をすくめてミルク缶から液体を注いでやった。

 いわゆる円環型(ヘイロー)のコロニーになっているこの宇宙湾岸洪(ステーション)は、遠心力による重力が発生しているので、こうやって非固形物のものを渡してやるのも造作はない。

 俺の注いでやったミルクを、一心不乱に舐める猫に苦笑い。

 時々、こうやって屋上に来ると、この猫は俺にミルクをたかりにくる。

 前にたまたま零したのを舐めたので、味を占めたらしい。

 まあ何だ……同じ()()()、邪険にするのも据わりが悪かったから、任務の合間でたまに世話やいているのだった。

 

「愛とか忠誠、ね…………」

 

 空気自体は浄化されてるとはいえ、ヘイローにおいては流動していることに違いがない。

 なのでここの空気はどこか可燃ガスくさい。

 お陰で人よりも十数倍鼻が利く種族の俺としては、普段なら感知できる他のイキモノの臭いも感知に時間がかかる。

 それは、良い面もあり悪い面もあった。

 柄にもなく、少し(メランコリー)になってる時なんか特に。

 

「………………俺には復讐相手も、残っちゃいないがな」

 

 今日あった、殺した男と、縋る女と、歯向かったサイボーグとの姿に。

 ほんの少しだけだが、惨殺された家族と、俺を拾ったあの男の死に際が脳裏を過り。

 

「…………」

「ありゃ? 先客だー」

「……?」

 

 思考の内側にこもってた俺に、かけられた声。

 女の声だ。

 若い……、俺と同じか、少しは下か。

 そっちの方を見て、そして、俺は目を見開いた。

 

「……………………アンタ、何だその衣装……!?」

「何だって、初対面なのに失礼だなー。サキ星系の民族衣装だけど?」

 

 黒髪のショートカット。

 切りそろえた髪にやや幼い容姿。

 そして身に纏っていた衣装は…………、何だ、こう、形容できねぇ。

 今まで見たことも聞いたことも無いような様式の衣装だ。

 少なくとも生きて来て、そんな服の実物をお目にかかったことはない。

 しいて言えば、柄と言うか布の感じとか……………‥。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()っていうのが近いか? それ。

 

 

 

 …………邪馬台国(やまたいこく)って何だ?

 ん?

 いやちょっと待て、邪馬台国ってアレだろ? 古代日本だろ? 別に変な話じゃないっていうか、まあ「そういう衣装なんだなあ」って感じだし。

 いや、目の前のコイツの顔立ちとかだと浴衣とかも似合いそうな…………。

 

 浴衣?

 

 

 

 ────トレイン君……? 私のこと、は…………、忘れても、……いいから────

 

 

 

 突如、脳内に溢れ出した────存在しない記憶。

 呆然とする俺に、少女は不思議そうに顔を近づけて来る。

 

「む、どうしたのかな、きみ? お熱?」

 

 顔を近づけて…………、って、いや近い近い近い!

 思わず慌てて離れると「あはは、ヘンな顔~!」と笑う。正直、何がツボだったのかさっぱりわからないが、こっちとしては妙に造形の良い可愛い顔立ちが目の前に迫ってくると言うだけで心臓に悪い。

 悪いし、その上でさらに言えば、質の悪い夢だ。

 

「(BLACK CAT(ブラックキャット)に転生……? は? でも宇宙!? 何だこりゃ、この黒猫ってどういう世界観だ…………?)」

 

「私、サヤ。サヤ・メロディベル・ミナツキ。きみの、名前は?」

 

 そう言って手を差し出してくる彼女の容姿や雰囲気は、なんとなく「今の」俺の記憶にはあるはずのないものなのだが、妙になつかしく……。そりゃ当たり前か、だって見覚えのあるキャラクターだもの。

 太古の昔……といえば大げさだが。どうやらかなり昔、親から借りて読んだ漫画の世界に転生したような、そんなことになっているらしい。

 

 らしいのだが…………、何か俺の知る作品の世界観と全然違うんですけど!? あれ? 黒猫って地球舞台だったよね、宇宙!? どういうことなの……?

 

 

 

 

 


Q.どういう世界観?

A.ToLOVEる-とらぶる- の世界観(宇宙)をアニメ版 BLACK CAT に寄せた感じになります。クロを筆頭に一部とらぶる側のキャラクターにも影響が出てたりします。

 

Q.主人公が持ってる知識は?

A.黒猫の原作漫画に、とらぶる本編は流し読み程度。ララの本名が判らないので、セフィリア(?)についても色々気付いてない。

 

Q.(トレイン)とらぶる?

A.(トレイン)とらぶる予定。たぶん3話以降。

 

 

 

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