とラぶラックキャット   作:那覇ダイア

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#10.送る宇宙猫

 

 今回からちょっとタグ一つ追加しようかと思います。

 


 

 

 

 

 

 

「────えっと、つまり? お姉ちゃんにわかりやすく教えてくれると、助かるんだけど……」

「だから、この地図だと行けないよ? ここ彩南だけど、北彩でさえ一時間くらいだし、新幹線で。でもそれも通り過ぎてるし、そもそも県どころか地方違うし。地図もこれ、近畿だし」

「う~~~~、まさか()()と首都の配置がここまで異なっているとは……」

「きゅうれき?」「?」

「あー、悪いなボウズ。とりあえず座標がわかったってだけでも大丈夫だ、ありがとう。

 そっちの妹ちゃんも、もう行っていっぜ」

「大丈夫? お兄ちゃん、もっとお話したほうがいいよね?」「うん、本当、大丈夫かな? って思う。お兄さんたち、外国の人みたいだし。全然わからないんじゃない?」

 

 わからないから問題だらけっちゃ問題だらけだが、そういう話をし出すともう収拾がつかねぇことはわかってるし、流石に小学生くらいの子供引き連れて大人二人があーでもないこーでもないと無様を晒すのも絵面が酷い。

 とりあえず大丈夫だと納得させて、その小さい兄妹と別れた。

 兄貴の方が髪の色がちょっと薄目で、妹の方はウェーブがかった感じだ。

 妹の方はテンション高く兄の手を握って、「お父さんのとこ行こー!」って引っ張ってってやがる。

 

 さて。

 どよ~ん、と効果音でも出てそうな勢いで落ち込んで口から魂垂れ流していそうなサヤに、俺は肩をすくめた。

 

「だぁからお前だって言ってたじゃねーか。首都の場所が変わったって知ってたんだろ? これくらい予想できるじゃねーか」

「で、でもトレイン君……、私が聞いた情報だと、怨霊(サイオニック・ハザード)のせいで疫病とか出たから首都を移さざるをえなくなたって」

 

 ハイそれ平安時代、と頭の中でツッコミを入れつつ「たぶん年代から違うんじゃねーか、それ」と当たり障りない程度に話してやった。

 

 

 

 俺とサヤは現在、予定通りに地球に来ていた。

 渡航の許可自体は、ケッコー簡単に下りた。

 ……まあ、下りたとは言っても意味不明なくらいにセフィリア(上役のナンバー1)に心配されたし、元気だっつーことを納得させるために模擬戦したりとかして、ようやく判ってもらった感じだったが。

 

『アークス流星剣術・終の第三十六手────滅界(ラグナ・ロック)!』

『ガチで殺す気で襲い掛かってくる奴があるかッ!? 超電光銃(レールガン)ッ……!』

 

 ……わかってもらえる前に思いっきりこっちを粉微塵にしそうな勢いで最終奥義とか繰り出して来やがったが、ま、まあ許容範囲、許容範囲。

 黒いスーツ姿……というかブラックキャットのセフィリアの服を喪服みてーに仕立てた感じの恰好に、頭にはこれまた喪服みてーな黒いヴェール。

 髪色だけは柔らかで、でも妙に鮮やかにも感じる不思議な桃色。

 ヴェールからわずかに覗く美しい顔の輪郭は、その表情は、剣みてーに鋭く研ぎ澄まされていて。

 その相手から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を辿りそうな攻撃を放たれた身としちゃ、まあ、生きた心地はしなかった。

 何でいきなり奥義使ったのか、理由を聞いちゃいなかったがどうせ「テンションが上がってつい……」とかそんな理由だろうが、まあ、言うだけ無駄だ。

 仮に聞いても「私が美しいばっかりに……」とか意味不明な世迷言を言って来る可能性だってあるし。

 剣握ってる時は性格が厳格になるセフィリアだが、根っこのところがちょいとボケてるのまでは矯正できやしねーので、そこだけ気を付けてればまあ大丈夫だ。何が大丈夫かは知らねぇ。

 

十三番(サーティーン)。ナノテクノロジー兵器関連の任務の際、敵の攻撃により体質が変わったとは聞いていましたが、確かにこれならば問題はないでしょう。……ただ、そのうち精密検査は受けなさい。自覚はしているでしょうが、その異常な生態電流の発生は、まちがいなくあなたの身体に負荷をかけます。任務の成功率を上げるためには────』

『へーいへい』

『話は最後まで聞きなさい。全く…………。

 よいしょっと、ふぅ。

 そ、れ、は、そうと! あなた! お世話になってる女の子に何か返したいって言っていたわよね~? 何々、ついにあなたにも春が来たってこと!? お義母(かあ)さんその辺ものすごい興味あるんだけど、聞かせて聞かせて?』

『だぁ、もうっ! 剣置くの早すぎるわ、もうちょっと真面目なテンション維持しろってのッ! というか誰が()()()()()だ、誰がッ!』

『いやんもう、旦那様(ギド)だってあなたのことは息子みたいに()()()()()()し、私だってそう思っても良いじゃないっ』

『何がいやんだ、年齢(トシ)考えろ年齢(トシ)

『年齢なんて、美しさの前には無力……、全てはこの私が美しいのがいけないのよ、美しさは罪……!』

 

 まーた始まったと、突然ナルシズム極まりねぇ自己嫌悪に陥り始めたセフィリアから一歩下がる。

 というかその()()()()っつーの、溺愛するほうじゃなくて普通にスパルタンの方っつーか、なぁ?

 まあ、そのお陰で身体能力が頭一つ抜けたのは間違いないし、感謝自体はしてるんだが。

 

 いやそんなアレなことは置いておいて。

 もともとは前に、ベルゼー(上役のナンバー2)にセフィリアとアポイントとってくれないかと打診していたのが切っ掛け。

 その相談ついでに、旅行に行きたいと言う話を振った流れだった。

 ま、結果的に死ぬほど面倒くせーこと(体力的な意味で)にはなったが、旅行直前にサヤが「明日から気合入れていくっスよ~!」とテンションを上げまくっていたから、それはそれで良い。

 俺個人としても、ちゃんと旅行に()()()()()()()()っつーのがまた有難い。

 正直、あんまり今の自分の自制心を信用できねーものだから、いやこれは本当に。

 曲がりなりにも友達だって思ってくれてる相手に、不義理を働くのも色々とアレだし。

 セフィリア的には「表での交友関係があるなら、そこから情報収集もできるだろうし、事情をわからないなりに交友関係があるなら続けても良い」くらいのゆる~いお墨付きはもらっているので、それを自分から崩すリスクは極力避けたいところだ。

 そんな訳で買い出しとか行ってもらっててだいぶ手間をかけたクレヴァーには謝りつつ、組織(クロロス)の潜入工作員から一人来てもらったんだが。

 

『シャオリーです。便宜上、ただ単にシャオリーと呼んでください』

 

 うん、はい、ナンバー(テン)のキツネヤロー。

 少女のような雰囲気のやわらかで幼い風貌、長い髪、ややハスキーな少女のような声。

 身長もサヤとどっこいどっこいの感じで、そんな()がスーツ姿で、うん、まあ、初対面だが見覚えしかない奴だった。

 変装のエキスパートだって紹介された男は、原作ブラックキャットにおける番人(ナンバーズ)……、こっちでいう番人(ライダーズ)に相当する部隊所属の、トレインの後輩にあたる男だった。

 原作でも考えが読めない雰囲気で、作中では情報屋に変装したりトレインに変装したりと色々あったが、ネームドではあるがレギュラーっつー訳ではないくらいの立ち位置。時代的? には、まだ一般エージェントとかそんなに類だろう。

 それがニコニコと、どこか面白そうに俺とサヤを見比べているのは、何っつーかこう、心臓に悪い。

 

『任務の話はクレヴァーから聞いています。僕は基本的に存在を消していますので、どうぞ気にせず観光してください。何かあった時の現地スタッフ……、サポーター? くらいに考えてもらえれば』

『はえー、君、すーごい可愛いね……』

『何逆ナンみてーなこと言ってんだ』

『いやだってトレイン君、目立つっスよ! 変装得意って言ってたし、ここは腕前を見せてもらわないと』

 

 サヤのテンションに苦笑いのシャオリー。

 俺も俺で何かちょっとモヤっとして気が気じゃねぇ。

 とはいえそれも、シャオリーがほぼ1秒に満たない時間、顔面に手をやるとすっとすぐさまオッサンやら子供やら女やら、ありとあらゆる顔に変化するのを見て終わる。

 目を白黒させるサヤと、舌を巻く俺。

 多少なりとも変装をたしなむからこそ、全く隙が無い変装っぷりには正直、原作で知っていたとしても脱帽だった。

 なるほどこれなら、その辺の一般人に紛れ込まれたら全く判断がつかないだろうという出来である。

 

 

 

 で、そんなシャオリーすら現地の土地勘がないからこその、俺達三人そろっての迷子だった訳だが。

 場所は一応、東京。

 ただ今いる街は都心部っつー訳でもないし、とはいえ極端に山の方っつー訳でもない。

 ありていに言うとこう、普通。

 学校とかあって、駅も程々ににぎわって……、ま、そこは若干都会らしさを感じないでもないが。

 さっきみたいに十代行くか行かないか? くらいの子供たちがフツーに行きかえるくらいには平和な場所。

 ことさらこの惑星圏において、わざわざ平和そうな場所を狙ったわけでも無かった割には、ずいぶんと治安は良さそうだが、前世的には当然といえば当然という感覚もあって、むしろ時代とかズレてないようでほっとする。

 後ちゃんと国名が「日本」だったことで、やっぱりこの世界が純ブラックキャットの世界じゃないことは理解したが(※あっちは日本じゃなくてジパング)、どっちにしても俺の前世の記憶だってロクに当てにはなりはしねぇ。

 県とか位置関係自体はそう変わりないんだが、細かい市町村になると、そこは流石にしっちゃかめっちゃか。

 何よりサヤが「観光マップ」として持って来た資料、紙自体は比較的最近刷られたやつっぽかったがどう見ても現代じゃなくて平安時代くらいの日本みてーな感じのやつだし、まあ、うん……。

 極めつけは、そのパンフの旅行会社潰れてるし、もうにっちもさっちもどうにもって話だった。

 その辺の小学生の兄妹(きょうだい)が気を利かせて「何か困ってます?」と聞いて来てくれたから、まだマシだったものを。

 いや、本当、正直助かったっつーか、なあ。

 シャオリーはまた喧騒に紛れてこっちを監視っつーか護衛っつーか、そういう感じで()()()し。

 思わず、その辺の街路樹でツインテの女の子が「ほぅ」って感じで何かほっぺ赤らんで初恋みてーな感じでお前のこと見てるぞって教えてやろうか迷うくらいには、男の子(ボウズ)にはマジで世話になった。 

 前世分の知識もあるおかげか、おおよそ言ってたことも理解できたし。

 ぶっちゃけサヤの民族衣装、邪馬台国風だなあと思ってたんだが、サヤが言ってた「私の血筋のルーツ」とか言う所、多分本当に邪馬台国あったところのようだ。

 で、俺たちが来たのは東京。

 そりゃ、全然場所重ならないだろって話だ。

 少なくとも古代というか、あの年代って関東側に首都置かれてねーし。

 

「一応、この国の国際空港だと首都あるところじゃないと、旅客船の受け入れしてねーっつう話だったからな。時間もがちがちに指定されてるし」

「宇宙人、公表されてないってけっこー面倒っスね~。空気がおいしいのは嬉しいっスけど」

「ま、それはそれとして、どうする? 予算はまあ換金レート的に持ってきた分だと大丈夫だと思うけど」

「流石に不覚だったっスよ~。でも……、行くって言いたいけど、フツーに結構高級ホテルとったんスよね?」

 

 やっぱりもったいないっス! と自分の中の何かと戦ってる風なサヤに、俺は思わず笑ってしまった。

 

「何! トレイン君、何か言いたいことあるわけッ!?」

「おーおー、そんな猫みてぇに『シャーッ!』って歯剥きだして威嚇すんなって」

 

 ンな可愛らしい激怒なんざ、微笑ましいし好感度上がるしかねーぞ、俺。

 当然口に出して言う話じゃないが。

 ま、ご機嫌とりって訳じゃねーけど……、この辺で良いか?

 

 とりあえず腹も減ったし外がすごい暑い! ということで、その辺にあったファーストフード店に一緒に入る俺達…………、窓から一瞬、女子高生を追い掛け回すパンツ一丁に丸サングラスのだらしねぇ体型のちょび髭のオッサンが過った気がするが、それについては全力で見なかったことにして。

 とりあえず雑に、一番高い値段のハンバーガーのセットを頼むサヤと俺。

 サヤはフライドポテトのL、俺はサラダ。

 意外と小食っスか? と言われたが、別にそう言う訳じゃない。

 ただなんとなく……、ついクセで。こう、前世的な。

 あんまり食べられなかった覚えがあるっつーか、大体残したのは親とかに協力してもらってたような気がする。

 別に今なら余裕で食えるとは思うんだが、子供の胃袋の感覚を微妙に思い出しちまってるって感じだ。

 ……両親の顔どころか、自分の顔も名前も思い出せないくらいのペラッペラな前世だが。

 

「こんなに食べられて、共通通貨だと3=¥(3イェンビリィ)しないとか、文明度の違いを思い知らされるっスね~、我が祖先の母星ながら…………」

「片田舎っつー扱いですらないからな、換金レート。()()()()()サキ星系の星間窓口があるっつったって」

 

 例えると、片田舎の山奥の山村近くにあるバス停くらいのノリだ。

 

「もきゅもきゅ……んっ、ん。で、どうするっスかね? 私の血筋を辿るってテーマにかこつけて旅行しよう計画! さっそく出だしからくじけてるっスけど…………」

「首都だったら美術館とかで何かやってねーか? 古代文明の展示とかみてーなの。窓口でもらった専用端末で調べれば良いだろうし」

 

 専用端末っつーのは、要するにスマホとかタブレットそのものだ。

 ちゃんと地球の通信網に乗っているタイプのもの。

 ただUIとか操作性は宇宙文明基準になっているし、ついでに言うと、通訳機能とかすらついている。

 コイツが壊れると、観光客の宇宙人にとっては致命傷っつーことだ。

 …………あー、なんかセフィリアが前に「うちの娘、何か端末に依らない言語翻訳装置の開発に乗り出してるんだけど、やっぱり頭良いのよ~うちの子!」とか滅茶苦茶親バカに自慢して(?)きたことがあったのをふと思い出したが、そりゃ今は関係ないとして。

 

「お、あったあった。『邪馬台(やまと)の国幻の女王・ヒミコ展』…………、小美呼(おみこ)()の方から資料持ってきてるとか書いてあるけど、よくわからねーな」

「……トレインくん、えっと、ニッポンの文字読めるんスか?」

 

 おっと迂闊。

 とはいえ、一応はタブレットに文字翻訳機能はついている。

 それを使ったと口頭で誤魔化しつつ、画面に対して全翻訳をかけてサヤに見せた。

 ふーん? と、瑠璃色の目がきらきら光る。

 興味津々って感じだ。

 

「衣装とか確かに、それっぽいっスかね……? こう、文様と言うか造形というか」

 

 展示されている民族衣装は、サヤが普段着込んでいるタイプのものだ。

 ……ちなみに言及忘れてたが、流石に現在のサヤの恰好はフツーだ。

 ホットパンツに半袖で、動きやすい感じのやつ。

 ただ、サヤの民族衣装と決定的に違うところがある。

 勾玉とか、そういう装飾品の類だ。 

 そういうのは持ってないのかと聞けば、いやいや無理っスよと苦笑いを返される。

  

「見た目だけ拘っても良いっスけど、もうちょっと宗教的な意味合いとか強そうっスから。全然そういうの知らないのに、下手に手を出すと火傷することもあるっス。よほどその上で、私の主義主張とかに合致してたら、まあ、諦めるっスけど」

「そういうもんか?」

「そうっス! ()によって千差万別で、何が身の危険の引き金になるかわからないから、そこは慎重になるよ」

「その割には普段から横乳丸見えの民族衣装(アレとか)着てるが…………」

「だって、可愛いでしょ?」

「…………」

「可愛いでしょ?」

「………………」

「かーわーいーいーでしょ?」

「………………………………」

 

 

 

「かわいいって言ぃいいいいぃぃぃえぇええええッ!」

「──ッだぁら止めろっての! ほっぺ引っ張んなって、というか近いって言ってんだろ顔! 顔!」

 

 

 

 きゃっきゃうふふとわちゃわちゃしてる俺達に、突き刺さる周囲の何とも言えない視線。

 マダムな年齢の方々が「まあ見ました? お熱いですわねぇ」「まだ夏真っ盛りには少々早いというのに、おほほ」とか談笑してるのが聞こえて来て、俺としては心臓に悪い。

 ついでにガーリックソースの臭いに紛れてほんのり香るサヤの()()()()()()もまた、心臓に悪かった。

 

 ま、そんな感じでしばらく戯れた後。

 

「ほい」

「? 何、トレイン君。……箱?」

 

 ラッピングされてるけど、と何故か訝しい感じの表情なサヤに、少し言葉が出てこない。

 別にキンチョーしてる訳ではないというか、大したものじゃないっつーか。

 ただまあ、そもそも女子にプレゼントするなんて前世も今も含めて初めてだから、ぎこちなさが残るのは仕方ねぇ。

 

「いや何っつーか……、色々世話になってるし、な」

「世話ねぇ。まあ、軟禁されてからトレイン君の寝ぐせ直したりとかはしてあげたけど」

「そういうのじゃなくって。いやほら、そもそも命の恩人だって言ったろ?」

「……それこそ気にしなくても良いんだけどさー」

 

 とりあえず、何かしら気持ちを返したいと言う単純な話。

 世話になってるからこそ、何かこう……上手くはいえないんだが。

 やっぱ柄じゃねーなと思いながら、若干しどろもどろになる。

 

 と、何故か突然サヤがはっとして、ジト目になって自分の身体を抱きしめる。

 そんなことすると胸元がちょっと大変なことになるんだが……。

 

「…………トレイン君、もしかしてその世話になってるってこう、アレな意味じゃないよね」

「アレな意味?」

「だ、だから、こう…………、えっちな意味っていうか」

「               」(※絶句) 

 

 一瞬、思考が真っ白に染また。

 顔を赤らめてじーっと見て来るサヤに、どぎまぎと心臓がぎこちないのもあるんだが。

 再起動には、まあ、ちょいと、それなりに、時間を要した。

  

「……いい、い、いや、友達ってそういう意味じゃないって()お前、言()ただろ…………」

「そ、それ、そ、それはそ()そそ、そうだけ()ど…………」

 

 何をしどろもどろになってるのか二人とも何故か言語中枢が怪しい。

 少し押し黙った後「保留!」と言って、サヤは俺のプレゼントの箱を開けた。

 雑に破かず、すっ、すっ、と器用にテープとか剥がして折りたたんでいくあたりは、ガサツとはいえ一応は女子らしいというか。……いや、偏見か?

 ともかく手のひらサイズのその箱を開けたサヤは、目をさっきみたいに見開いて、きらきらとしていた。

 

「うわっ、キレー ……! ビー玉っぽいけどビー玉じゃないし、何これ!? すっごいキラキラしてて、色々光とか入ってくんだけどー!」

「俺もよくわからねーけど、上司いわくお守りらしい」

「上司さん?」

「そ。既婚者で()()()()

「そりゃまた相談相手には打ってつけと言うか、筋金入りっスね……。で、お守りかー」

 

 サヤが持ち上げているのは、まあ、ブラックキャット読んだことがあればピンときそうな感じのネックレスだ。

 原作で、浴衣姿のサヤが首にしていたやつ。

 ……ついでに言うと、現代編でクリードもたまーにしていたタイプのやつ。

 アレ絶対、原作サヤ殺した()()()()()として、あえてトレインの暗殺者としての精神を煽るために似たやつ選んで付けてたろって思ってンだが。

 まあ、この世界じゃそういう展開にはならねーだろってことで、なんとなく上司(セフィリア)に頼んで選んでもらった。

 

 もともと石の部分は、サキ星系の古代文明の頃に輸出されてた鉱石か何かで、それをどっかの星系がタリスマンとして削ったものらしい。

 それを通してる紐(というか小さい縄?)も、ちょいと縁起物のやつだとか何とか。

 詳しく聞いたって解説できる自信がねーから、俺は金払いだけしている。

 前世が目覚めるまで、暗殺者クロとしての俺はほぼ金の使い道がなかったらしく、貯金が意外と溜まっていたのもあったから、まあ、多少は奮発した。

 少なくとも、本気で助けてもらったのに対して、何も返さないっつーのはしっくりこないし。

 

 一応縁起物だから、売らないで着けとけよ、とだけ一言念押ししたが。

 

 サヤはサヤで、そのネックレスをじーっと見て、何かこう、ぶつぶつと呟きながら考え事をしているらしい。

 

「どうした」

「…………………………………………うん、わからん! 保留!」

「は、はぁ……?」

 

 やっぱりよく判らないが、すっと紐のジョイント金具の部分を開けて首に回し、すぐさまつけた。

 似合ってる、似合ってないの審美眼は()()()()()()()()()()()から何とも言えねーが……、まあ、らしくはなったんじゃねーかな?

 

「うーん……」

「どうした? さっきから様子、変だけど」

「いや、何でもないっていうか……、無意識? うん、まあ、大事にはするケド」

 

 そしてネックレスの宝石部分をくるくるといじりながら、何故かサヤは視線をあちこちに向けきょろきょろして、そこから少しの間俺と目を合わせようとしなかった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 で、それからしばらくして。

 

「あの! あの! キョーコは迷子ですが、キョーコのくちびるは開いています! 開いてますよ! いつでもばっちこいですよ!」

「何だその倍プッシュ……?」

 

 何か誘拐されかかってた子供……、十歳ちょっとくらいか? さっきのボウズよりは年上っぽいが、そんな子を助けたら、何か足にかじりつくように抱き着かれて懐かれて。

 サヤはサヤで、何故かその子を見て「むぅ……、ん?」とどこかしっくりこないような顔をしていた。

 

 

 

 

 


【ネックレスを渡された直後のサヤ】

サヤ「(いやいやこれ、ぱっと見安っぽい感じでビー玉みたいに見えるけどよく見たら絶対高級品じゃん! めっちゃキラキラしてるじゃん!? 何、私が普段使いしやすいように仕立てたってことっスか? やるっスねトレイン君……って、いやそうじゃなくって! というか、これってアレっスよね? こんなお値段はるネックレス送って来るとか、流石にいくらトレイン君が生き方雑でも、ちょっと深読みしろってことじゃないっスか? そうっスよね? えっ、えっ、束縛? 首輪? 独占欲? 何か前に聞いたことあるっスけど、トレイン君私に独占欲? 本気っスか? そりゃ、友達いなさそうだしトレイン君的には私ってたぶん()()唯一のお友達っスけど────いや、フツーにえっちぃ目でも見てるっスね。ってことは何? 発情期じゃなくて普通に()()()()()()()だったってことっスか? マジで? 本気で言ってる? だって私だよ? 私。どうしよ、これ受け取ったら「そう言う意味で」受け入れるって深読みされないっスよね?)」

クロ「どうした」

サヤ「(いや、別にトレイン君嫌いって訳じゃないし、付き合いやすいと言えば付き合いやすいし、子供の頃の姿とかすっごい可愛かったっスけど……、何か私だけトレイン君から何かを強制されるってのも釈然としないって言うか……、いや私自身トレイン君のことどう思ってるかとかそのあたり全然考えてもいなかったし、正直あれなかったらもうサヨナラしてた関係だから、ぱーっと明るく楽しく、縁が有ったらまた会いましょうくらいのノリだったんだけど、これかなり本気じゃないっスか。殺し屋やってるような男の子なんだし、あの雰囲気だとたぶん過去とか家庭環境とか私みたいに色々複雑だったと思うんだけど、そんな子がこういう手段に出るって、超本気じゃん。ええっと…………)、うん、わからん! 保留!」

 

Q.セフィリアがいきなり奥義使ったのナンデ!? ナンデ滅界ナンデ!?

A.当然手加減はしてるので、全身裂傷くらいにする予定だった。セフィ視点だと、旦那が拾ってきた旦那の小さい頃に似てる感じの男の子が、最悪ヒトじゃなくなるレベルの事態に遭遇してた上に、明らかに寿命削るんじゃないかっていうような感じで身体に負担をかける技を習得してるし、そんな状態で全身精密検査もしないで旅行に行きたいとか言ってる感じ。旦那いわく「命に別状はなさそう」とは(直感で)言われてるが、それはそうと安静にしてなさい……という、愛の鞭的なナニカ(?)

 

Q.道案内してくれた兄妹って、もしや……?

A.一体誰トさんと何柑ちゃんなんだ……。ちなみにコソコソ隠れて見てたツインテの子も、一体どこのなんとか川さんなんだ……。

 えっ校長? 何の話です?(すっとぼけ)

 

Q.キョーコ!

A.キョーコ、いえすキョーコ(恭子)。詳しくは多分次回冒頭。まだ幼いので、キャラクターがとらぶる時代ちょっと黒猫寄りに、あーぱーなテンション。

 

 

 

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