とラぶラックキャット 作:那覇ダイア
とりあえず今回は、描写をトレイン周りに集中することにしました。
正式名称は特にない。
しいて言うと、弾丸を含めてハーディスだ。
第六次銀河大戦末期。
正式に発足された“
その時に、一緒に装飾箱の中に備え付けられていたのが、この十三の弾丸の入った小箱だった。
『せめてあなたの引くその引き金で、少しでもこの銀河から悲劇が拭い払われますように────』
ベール越しとは言え、セフィリアの種族的な理由からか、その場には妙に神聖な雰囲気が漂っていたことは覚えてる。
その時点で既に三児の母になってたってのを後で知ってさらに驚いたが、ま、あの時揃ってた連中はケッコー後日に驚くことになる面子が多い。
セフィリアの表向きの正体については、本人がガバガバな発言でもう俺は知ってたんだが。
例えば
例えば
まあとにかく、その時に渡された弾丸の効果は、実際の戦場で嫌でも思い知った。
「ま、当然の結果と言えば結果なんだよな」
「く……、“
一見ダメージを負っていないように見えるシャルデンだが、手首を押さえ、その
サヤたちを縛っていた血の鎖も消え。
俺に襲い掛かった血の騎士も掻き消え。
なんなら地面の底に巡らせていた血も、爆発したみてーに一気に裂けた地面から「噴水のように」噴きだして、辺り一面真っ赤に染めている。
いや、それも段々と黒ずみ、土と色が同化していって。
そしてシャルデンは、全く反撃する余地もない。
まあ、反撃できはしないはずだ。
間違いなく、コイツで殺して来た経験値が違いすぎる。
一つは“
そしてもう一つが、俺の
この二つに共通するのは、どちらも精神エネルギーとかを抜きにした「単独での戦闘を想定されていない」ということだ。
俺のハーディスだって原作ブラックキャットよろしく打撃に使ってはいるが、これだってそもそもコイツが頑丈すぎるせいで、前世を思い出す前の俺が戦場をごり押しするように使っていたのがきっかけだし。本来は打撃武器として使うような設計はされていない。
つまり弾丸を形成されなければ、そもそも射撃にすら使えやしないっつーこと。
クリード……、ザスティンのイマジン・ソードなんてその最たるもの、普段は柄から先が存在すらしないハリボテ以下の状態だ。
で……、クリードのと違い、このハーディスは「弾丸のガワを撃ち出す」装置といえるんだが、本来の使い方としては内部に込めた弾丸を、精神エネルギーとかのガワで覆って撃ち出す仕様────「込めたオリハルコンの弾丸を撃ち出す」仕様なんだが。
その際に、銃と異なり弾丸自体も俺から精神エネルギーとか、そういうモンを吸収する。
吸収されたエネルギーを蓄えた弾丸は、弾丸を込めた際に
そいつが乗った状態で射撃し、対象にぶち当たれば何が起こるか────。
「俺が敵と認識していたもの……、お前が操作していた血液は、もう使い物にならないはずだぜ」
「…………!」
ヴラム星人の操る血液は、家族や親類から取り込んだ血液。
自分自身の血液を操るのは、本人が差し違えを覚悟する時のみ。
身体を傷つけ、取り込んだ
だからこそ、ハーディスから放たれた
接触と同時に炸裂し、
結界、とシャルデンは言っていたが。
地面の下を経由してすべて繋がれた血液は、一か所でも崩壊すれば
俺が敵と認識している範囲までを、弾丸は正しく、全域に及んで分子レベルで分解し、破壊しつくすのだ。
前に、サヤに向けて放たれた腐蝕液に対して、使ったのもこの弾丸。
触れば腐ってポトリ、となるその液体自体の構造を何から何まで破壊しつくし、せいぜい庇った俺の身体がちょっと水ぶくれするくらいにまで「貶めた」。
大戦中は、それこそ宇宙戦艦相手に使い、
黒猫弾と追尾弾と併用し、超遠距離からでも「当たれば即死」級の攻撃がどこから降り注ぐか判ったものではない。
敵どころか味方ですら「超兵器」としか表向きに言われてなかったコイツのことを、どれほど恐れたか。
……ついでに現場に高確率で黒猫が現れるって、どこからか噂されて、変な風評被害も発生したかな。
いや、そいつは置いておいて。
「どうして……、嗚呼、
「…………」
電波でも受信してそーなこと言ってるが、目の感じからしてだいぶ病んではいそーだし、吸い上げた血に対応した同族とかの声が幻聴とかで聞こえたりしてたんだろう。
いや、もしかしたらそれは本当に、怨霊とかの声だったのかもしれねーが。
だが……その根幹を為す血液が、シャルデンの体外に放出されていたその全てがことごとく、もはや何も残っていない。
一瞬で、もう何かの
もっとも、そんな話詳細についちゃグチグチ説明してやりはしねぇ。
言われても意味不明だろうし、ぶっちゃけ俺もセフィリアの受け売りだ。
ただ、結果を知っているだけ。
一度「殺された」っつーことが決定したものは────もう元には戻らない。
俺が殺して来た人たちと同じよう。
「許せない……! 殺し屋クロ、貴様は…………!」
「俺個人への怨恨に
「…………!」
だからまあ、今にもそのままこっちに殴りかかってきそうな。
ナイフ片手に俺に切りかかるか……、いや、さらに手首の傷を深くして自分の血を操り、俺も自分も死ぬような動きでもしそうな、怒りに震えた目。
もともと状況からしてセフィリアとかを殺したかったっつーのは判るんだが、それにしちゃいきなり俺を脅迫しようってのは無理があるだろ。
いや、あるいは……。
デビルークで
移せないっていうコトは────。
「自分じゃ絶対、セフィリアを殺せねーって確信を持っちまったか。自分の、心に」
「クロ・サーティーン……‼」
煽るつもりはないが、それでもその怒りの形相を見れば、言わんとしていることは判る。
判ってしまう…………、
その絶望は、どれくらい深かったことだろう。
一国の王妃だって知っていたかまではわからねぇが、片や自分は全てを失い、片や相手はこの世で最も恵まれたような立場にいるように見える。
それをどうあがいても、どうすることも出来ないっつー状況は。
原作のシャルデンでさえ、そもそも神氣湯っつーギャンブルに手を出していたことを思えば。
自分の命を、敵にベッドするのにすら力が足りないと理解していた、その心の瑕は。
「単に死にたかったのか? 理由さえあれば何でも良いとは言わねーけど」
あえての俺の挑発に、ナイフで手首を切る冷静さもなく、腰に構えて迫って来るシャルデン。
俺はそれを、ハーディスで薙ぎ払い叩き折り、その勢いで足元に転がす。
びしっと決まっていたサングラスも、シルクハットも崩れて。
恰好的にはボロボロだが、自分でつけた手首の瑕以外はダメージはほぼないはずのくせに。
それでも、シャルデンは明らかに憔悴していた。
膝をつき、顔を上げ、鬼のような形相で睨むシャルデン。
「必ず……、必ず殺す……! 貴方たちのような巨悪が、
「そーかよ」
言いながら俺はスクラッチし、ハーディスを構える。
シャルデンの、眉間に。
息を呑む音────あっちでわめいていたキョーコすら大人しくなり、視線が、俺とシャルデンに突き刺さる。
俺の銃口を前に、シャルデンの目は震えている。
その目が語っていた。こんな所で何も為せずに終わってしまうのかと言う、恐怖を。
だがそこに…………安堵したような、妙に深い呼吸の
人間の心なんざ本心一つで何でもかんでもすべてが決着する訳じゃないっつー典型だ。
無念と、これで終わってしまって良いと言う、自覚もしてないかもしれない望みの現れ。
────
「っぷは、クロ様!? それはちょっと、えっと、…………わっひゃぁ!?」
サヤの羽交い絞めを抜け出したらしいキョーコの声
それを追いかけてくる、サヤの妙に早い足音……というかちょっと待て、サヤお前、普通にキョーコ追い越してるんじゃねーよ。
あっ、負けじと走ってキョーコがすっ転んだ。
だが、そのどちらもが。
俺がハーディスの引き金を引く速度には、間に合わない。
だからシャルデンに向けて、俺は────。
『『『────────────────ッ‼』』』
「……はい? えっ、ね、猫……?」
「ぷっ、ははははははッ!」
────俺は、空気読まねーで
にゃーん! って。
自分に纏わりつく大量の可愛い黒にゃんこに、流石のシャルデンも困惑どころか頭の中真っ白っつー感じだな。サングラスもう落ちてるけど、かけてたらそりゃ盛大にズレてたろうっつーくらいの、おまぬけフェイスだ。
おーお、こっちに寄って来る足音が急速にゆっくりになってやがる。
ちらっと見れば、キョーコは「ぽかーん」とハトが豆鉄砲くらったみてーな顔してるし。
そのままサヤにも視線を向けて、こっちにもうちょっとで辿り着くっつー距離まで寄ってきていたのに、肩をすくめた。
「えぇ……? いや、別にトレイン君が人、撃っちゃうところ見たかった訳じゃ全然ないんだけど、えぇ…………?」
「いや、そもそも今の俺の状況で殺せる訳ねーだろ。オフだぞ、オフ」
大体、騒ぎになった星系から離れるっつー大義名分で旅行してるんだから当然だろ、と言ってやれば、あー、と一応は納得したサヤだったが。
当然、俺だってこれが本心の全てって訳じゃない。
単に、サヤ相手に
ただ、そんなことを考えてる俺に。
「…………そっか」
何故かサヤは、少しだけだが……、何かをこらえるような、強張った笑みを浮かべた。
※ ※ ※
ぐだぐだにはなったが、あのまま戦闘を続けるような気じゃ無くなったシャルデンを、警察に届けて……というとケッコー語弊はあるんだが、例の端末を通じて窓口側から銀河警察に連絡を入れる形で、サヤは対応を丸投げした。
こういう時、ギルド所属な賞金稼ぎの
具体的に言うと、事情聴取に時間をとられないとか、な。
クレープは台無しになったが、流石にもうどうこう言ってられる状況じゃねぇ。
本当に内気らしくほとんど俺達と会話をしなかった子を含め、キョーコたちを関係者の元まで送り届けて。
収録が始まったのを野次馬に紛れてちらりと見て、俺達はその場を後にした。
『やっぱ報酬、貰う気ないじゃねーか』
『女の子の笑顔なんて、それだけで報酬じゃないっスか! 五人で集まって、泣いて笑ってて』
『女相手にキザなこと言いやがる……』
『男相手に言った方が問題じゃない? というか、それを言うならトレイン君の方がけっこーアレだと思うけど? 転んだキョーコちゃん、お姫様抱っこで途中まで抱えてたし』
何か目がすっごいキラキラしてたから、何かの趣味をぶち壊しちゃったかもよ? とか言って来るサヤ。
何が壊れたんだと問い返しても、「ふーんだ」と取り合いもしない。
『トレイン君の場合、むしろキザとかじゃないことの方が問題かもしれないっスね~』
『何がだ』
『別に! ……本当にわかってないみたいっスねー、私言うと藪蛇っぽいから指摘しないっスけどッ』
『本当に何なんだ……?』
そんなやりとりをしながら、端末を見て「あっ、ちょっと寄りたいところがあるんスよ!」と俺の腕を引くサヤ。
あれだけドンパチあった後だってのに、表面上は特に気にした様子も無く、服屋に俺の手を引き────。
『あははっ! ね、可愛いでしょ~これ! トレイン君がくれたネックレスとも、相性悪くない感じ?』
『────』
俺が絶句したのも、無理ねーと思ってくれ。
いやだってよ、これは流石に……。
『だから、こういう時は可愛いって言うスよ? 女の子のたしなみってやつっスね』
『………………』
『あは♪ もしかして見惚れちゃった?』
『………………』
『……えっと、マジで反応されるとちょっと、私もちょっと、えーとですねぇ、はい?』
いやだって言葉にならねぇって。
ぶっちゃけその後数時間の記憶がぶっ飛ぶくらいには、俺はどうかしていたとしか言いようがない。
ただ、そのまま俺も何か青い浴衣着せられて。
花火大会やるらしいから、見に行こうよ! と手を引かれ。
人込みではぐれると面倒だしということで、終始俺の手を握ったままのサヤに振り回され。
風船のヨーヨー釣ったり、射的が俺とサヤの独壇場だったり。
とにかく炭水化物ばっかり食べまくるサヤ見ててちょっと胃もたれを覚えたり。
なんとなくそんなことがあったような気はするが、そのあたりの記憶は本当におぼろげで。
何と言うか、俺の前世が原作トレインじゃなかったことに申し訳ない気がしてくるくらいだった。
本当だったら、原作でもこうして二人で馬鹿やって遊んで、花火見てって、そういう出来事があったかもしれない。
原作で
『たーまやー!』
『……』
「ほらトレイン君も! こういう風に言うのが風習らしいっスよ?
さんはい! たーまやー!」
『……た、まや?』
『イントネーション!』
何度か駄目だしされながら、サヤの奢りのラムネを一緒に開けたりして。
シュワシュワしたこの味わいのなつかしさに、覚えていない前世が郷愁に駆られて少し涙ぐんだりとかはあったが。
それでも、やっぱりこの時、俺の内側は全部、サヤ一色だった。
それこそもう、致命的なくらいに。
この世界でトレインとして生きてきた十数年が、どこかに飛び去ってしまいそうなくらい。
「……のぼせる」
風呂場で思い返す、数々のサヤの顔。
得意げにゴム銃を肩に乗せてウインクして微笑むサヤ。
たこ焼きに暑い熱いと言いながら、こっちにも「あーん」と無理やり押し込んで俺が猫舌らしく慌てるの見て笑う少し意地が悪い顔のサヤ。
途中、迷子の子になってた子たちの親を探して、その途中に何を言われたのか「違うっスよ! トモダチ!」と俺の腕を抱き着くように引っ張ったりするサヤ。
何をどう思い返しても、金太郎飴みてーにサヤの顔しか出てこない。
夜の闇、祭りの明かりに照らされた、ちょっとした万華鏡みたいな幻想的なイメージが、サヤの実像としての記憶に重なり…………、それは取り返しがつかないくらい、一枚の絵みたいに綺麗で。
洗面所から丸見えになってる、いかにも金持ちとかが泊まりそうな部屋の、ちょっと手狭な浴槽。
そこに背を預けながら、ぼーっとしてるしか頭が働かない俺。
このまま自分が何者かすら忘れて、ただひたすらに、あの「綺麗なもの」を反芻するだけの機械になったような、そんな変な錯覚すらする。
……頭が寝ぼけてンのかと思うくらいに、色ボケてる自分が、もうどうにも制御が出来ない。
相対したら襲う、という意味じゃない。
大人しいガキみてーに、視界に
事前知識があるとはいえ、何がそんなに良いのかねぇと自問自答するが、答えは出ない。
理由なんて後付けすら考えられないくらい、俺はアイツに惚れてしまっているらしい。
だからこそ、辛い。
「………………はぁ」
銀河単位で、戦争を生き抜いて。
その上で、銀河単位で暗殺を生業とするエージェントとして生きている今の人生は。
きっと、俺の人生観も含めて、原作トレインのようには振舞えなさそうな気がする。
サヤと、その生き方が重ならないような……、そんな気がする。
サヤを、友達だと言ってのけて鼻で笑えるくらいに、しっかりとした一個人として見ることが出来ない。
下手に、好きと言う感情が暴走してしまっているせいで、相手に受け入れて欲しいと言う欲望ばかりが先行しすぎるせいで、自然体で付き合っていくことが難しくなってしまった気がする。
だからこそ生き方に憧れて、自分の人生を変えるようなことは出来ない。
むしろ、あの生き方を守ってやらなければと……、誰にも頼まれてないはずの自分勝手な義憤が湧いて、それが、今の生き方を
「……こんな答えが出ねー悩みに四六時中頭悩ますような、ナイーブな人間じゃないはずなんだがなぁ」
だから、胸のわだかまりを誤魔化すように独り言を言って、顔を軽く両手で叩いて。
そんな風に、自分のことしか眼中になかったから、気付けなかった。
こんなに近いっつーのに。
ぶっちゃけ、その辺のすりガラスとか曇ってないからすぐ姿とか確認できたはずだってのに。
「…………よっと、お邪魔するっスよ? トレイン君」
「…………
「……えっ? 何、その、何?」
我ながらだいぶキモい感嘆符になっちまったが、俺がどれだけ動揺してるかっつーのをそれで察してもらいてぇ。
なにせ風呂場の扉が開いたと思ったら……、前にファッションショーしたときの、マイクロじゃないフツーの感じの、結び目が無駄に大量にある紐ビキニを身に纏ったサヤが。
いや、確かにさっきまで一緒の部屋に居て、テレビ見ながら雑談して、すぐ風呂上がるとか言って入った割に長かったってのはそうなんだが。
「せっかくだし背中、流すっスよ? ……って、流石にちょっと、この恰好のままは寒いから、私もお風呂、入らせて?」
「…………あ、ああ」
こんなことを言いながら、動揺したまま身動き取れず、一糸まとわず脚広げてる俺の真向かいに入ろうとしてくるものだから。
いや、これどうしろと?
初めてクリードの狂気に触れた精神が正気(?)に戻ったのを目の当たりにした時以上、人生最大最強レベルの動揺が、俺の全身を襲っていた。
【後年】
恭子「お姫様抱っこ……、王子様……、けど絶対あれは滅茶苦茶迷惑かけてたと思うし、あのお姉さんもデキる大人って感じだったから、う~ん…………、うがーっ!」
ルン「どうしたの?」
恭子「えっ!? な、何でもないっていうか、黒歴史っていうか……、そっとしといて……」
Q.オリハルコンの弾丸イズ何?
A.アニメ版の黒猫における最終兵器……、というか、
なお
Q.(水着)とらぶる?
A.(水着)とらぶ…………るかまだ未定。ただ某症候群の条件は徐々に徐々にリトさんに寄ってきている……。