とラぶラックキャット 作:那覇ダイア
決定的に何かが動くような、動かないような、そんな回です。
サヤいわく、リベンジとのことだ。
「だってトレイン君、余裕そうにしてたからしばらく小さい姿のままかなーって思ってたら、すぐ戻っちゃったから」
「で、それで何がリベンジだってんだ……?」
「もっちろん! 一緒にお風呂入って洗ってあげるの」
「意味わからねぇ……」
いや本当悪いけど本気で意味わからねーんだが……?
困惑する俺を余所に、湯船で対面に膝を抱えて座るサヤは、楽しそうに笑う。
こっちもこっちで腰にタオル巻いて
いや、水着の方が
まあ、そうこう言っても俺自身、サヤを前にするとあんまり自分が何話してるかわからなくなるくらいには、頭の中が「ボンッ」って爆発しそうな感じだ。
今だって何か話してサヤに笑われてるが、自分がどんな醜態晒してるかわかったもんじゃねぇ。
ただ俺の意識にあるのは…………。
首の裏。
左の胸の上。
右の脇側の胸の下。
背中。
両方の腰。
へそのすぐ下。
今挙げた全ての箇所が、
布地が小さい訳じゃねぇんだが、ピンク地に黒い水玉模様のそれは普段の衣装の色使いとも異なり、強引にこっちの視線を引き付ける何かがある気がする。
胸の方とか。
股の方とか。
何かちょっと引っ掛けるだけで、
それを着て「可愛いでしょ~!」とか言ってるサヤは、やっぱり感性がどっかズレてる気がする。
普段着のように使ってる民族衣装だって、さらし巻いてるとはいえ横乳は丸見えだし、腰とかスリッド入ってそこも地肌丸見えだし。
後、わざわざ風呂場までネックレス持ってくる必要あったか……?
そうこう熱に浮かされたようにふわっふわな思考のまま、為されるがままに風呂から上がらされ、椅子に座らされ、サヤもサヤで膝ついて俺の背中にボディタオルであわあわ洗って来る。
「本当に前の方、やらなくて良いんスか~?」
「当 た り 前 だ 何考えてやがるッ⁉ 死ぬぞ⁉」
「えっ、死んじゃうんスか⁉」
主に俺のメンタルが死ぬわけだが、色々ガサツなのはともかくとして一応は自分と相手の性別と状況くらいは考えてもらいたいとこだ。
まあ、俺の方はあんまり深く考えると色々拙いというか、ようやくフワフワした思考のお陰で
というか本来一人用なのか、割と風呂場が狭くてちょっと、色々とこれはこれでドギマギする。
こっちの背中洗ってるサヤが、意図せず身体を寄せてくるものだから、
タオルを上から押さえつけつつ、平常心を
「ったく、鍵は何かあった時のためにお互いスペアのカード交換してたからっつっても、本当に何が目的だ……。というかシャオリーとかに止められなかったのか?」
「えっと、こっちに来た時ホテルマンのおじさん……多分シャオリーくん? が、どうぞごゆっくりって」
アイツもアイツで本当に何考えてやがんだ。
シャルデンとの戦いについては、戦力不足で参加しなかったのは妥当かもしれねぇが(というか俺相手には足手まといだ)。
「ま、個人的にトレイン君的にはご褒美なんじゃないかなーと邪推するっスけど、これ」
「あ?」
「報酬の話っスよ! えいっ」
「って、こらッ」
そして言いながら、サヤは俺に抱き着くように体を寄せて、ボディタオルをこっちの胸板とかに回した。
ついでにサヤの顔が、頬が、俺の左頬にやわらかく触ってこそばゆいっつーか、何やってんだお前っ⁉
胸、めっちゃ
「ふっふーん」
「鼻息、当たってるから……」
「ああ~! 照れちゃって可愛いっスね……。というかやっぱりトレイン君、鎖骨、綺麗っスよね~。いっつもあんなヘンな格好して晒してるだけあるっていうか。自信ありっスか?」
「は? ヘンな恰好とは何だヘンな恰好とは」
「えぇ~? だっていっつもスーツ着てる時とか、ジャケットのボタンはちゃんとしめてるのにシャツ、着てないじゃないっスか。寒くないんスか? 胸元とかお腹とか絶対すーすーしてると思うっスけど」
「いやだって、シャツ着てたら破れるし……」
「おぉ何か予想外の理由だった…………」
パンツは最低限、人間としての尊厳があるから履いちゃいるが。シャツとかインナーに関しては、大体俺の素の身体能力と可動とか機動とか、色々動きが激しすぎて
お陰で潜入の時とか以外、ロクにワイシャツとか着用できねーっつーか、動いてる時手首とか肩のところでダマになって邪魔になるだけなんだよなぁ……。
「というか人に照れてるとか言って、お前はどうなんだよ、お前は」
「私? ん~ …………、まあトレイン君だからな~」
「どういう意味だ……」
「もう何と言うか、出会ってから全然短いんだけど、家族みたいな感じ?
こう、色々雑なところとか」
「良い根性してんじゃねーか……」
言ってる内容に色々言い返してやりたいが、それはそうと近距離から零れるサヤの吐息やら、肉感やらで理性がヤバい。
早い所洗い終われというか、気が済むまでとっとと洗え、という風にしか思えない自分が、色々情けなかった。
振りほどこうと思えば振りほどける癖に……、実際、ご褒美と言えばご褒美ではあるので、何も言えねぇ。
こっちの正気度が試されてるギリギリのラインを攻めていることを除いて、キョーコのアイドル仲間を助けるっつーのに対する俺側の報酬として釣り合っているかは、何とも言えないところだが。
色々思考が堂々巡りになり始めてる俺に、サヤはアハハと笑ってから。
「ま、最後に記念ってことっスかね~」
などと、不穏なことを言い始めた。
何が最後かと問い返せば、サヤは「えーっとぉ」と少し思案を……って、いい加減離れねーか?
「いやだって、合法的にトレイン君の鎖骨触れる機会なんてこれが最後かもしれないし、少しくらいはこう……」
「俺の鎖骨の何がお前をそう釘付けにしてんだよ、ってだからそうじゃないっての。何が最後だって?」
「あーうん。旅行、明日か明後日にはトーキョーじゃないところ行こうって決めてたじゃん。だから。
私、この旅行終わったらあのステーション出るし」
そして、続けられたサヤの一言に、俺は一瞬言葉を失った。
「色々あったけど、トレイン君、まあ大丈夫そうだし? 危なっかしいのはあるんだけど、それでもちゃんと
ブラックキャット原作でも、トレインの性格がある程度落ち着いたのを見計らって、サヤは引っ越しを検討していた
「…………そうか」
「んん~? 何々、どうしたっスか~? ひょっとして寂しいとか」
「いや、まあ、………………そりゃあ、な」
「ほほぅ」
「……知り合ってから3か月も経っちゃいねぇが、まあ、なんとなくこういうやりとりが出来なくなるっつーのは、しっくり来ないってのは、ある」
「…………うん、そう、だろうとは思ってたよ」
何か意味深なことを言い始めたサヤは、ここでようやく俺から離れて。
ただ、俺の両肩を掴んで、こちらに振り向かせないようにする。
「だから、私は早くトレイン君のところを去った方が良いって思うんだ。それこそ明日にでも、早ければ早い方が良い」
「……要領を得ねーな。何だ、何か俺が気に障ることとかしたか?」
「そんなこと全然ないっスよ。私もトレイン君と、遊んで歩いたり、ミルク飲んだり、からかったり、鎖骨撫でるの嫌いじゃないし」
「オイ最後」
「アハハハッ! うん、やっぱりそういう感じだと落ち着くっスね。でも、だからだよ」
今日のトレイン君を見ててさ、と。
サヤは、俺の背中に額をつける。
「あのクレープ屋さん……、戦ってた時にさ。トレイン君、何で殺さなかったのかなって」
「いやだから、騒ぎにならねーためにステーションから逃げてるのに、わざわざ別なところで騒ぎ起こしたら本末転倒で────」
「────それ。トレインくんの組織が本気出したら絶対関係ないよね。多分」
「…………」
否定はできない。
実際俺はそのあたり感覚がマヒしているが、サヤは一般人の目線でしっかり理解したのだろう。
メディアを屈指し、警察をも裏から操り、自分たちは何もせずにいられるっていう状況が成立するだけの……、組織の影響力を。
「多分だけどさ。昔のトレイン君なら、殺してたんじゃないかなって思うっス」
「…………」
「だから、そんなトレイン君の選択を、私がいることで縛っちゃうっていうのは、私としては本意じゃないかなーって。そう言う感じ。あの場で言うなら、キョーコちゃん達に見えないような状況になってから、一発撃てばそれで終わりだったはずだし」
「……別に、お前が俺を縛ってなんて────」
「例えばさ、例えばトレイン君が、もう殺すのも殺されるのも御免だー! って思ってたりするなら別だけどさ」
サヤは言葉を重ねながら、俺に指摘する。
「トレイン君、忌避感とかそういうのってないでしょ? 殺すのには」
「………………」
「えっと、別に良い悪いって話じゃないよ? うん。やりたいようにすれば良いと思う。
トレイン君にはトレイン君なりの理由があって、あの綺麗な銃の引き金を引けばいいって、それが大事だから。
だけど…………、他に足枷があって、そのせいで躊躇ったりして、そのせいでトレイン君が死んだりしたら、私、やりきれないから」
サヤのその言葉を、俺は否定するのが難しかった。
あの時シャルデンを殺す殺さないが、完全に俺だけの自己判断ではないと言っているサヤ。
サヤの生き方に憧れがあるかどうか、今の俺はわからねぇ。
ただ単に、サヤを気にしてるから、サヤなら嫌がるだろうからと、少しカッコ付けている面がないとも言わない。
そういうのが回り回って、俺の致命傷に繋がりかねないと言う、サヤの指摘。
「あの人だけじゃなくって、多分、これからも出てくると思う。トレイン君は
私なんかのために、トレイン君の生き方を縛って欲しくない」
「…………」
「だから、うん……、私のことは少し忘れた方がいいかなって。だから、ここでお別れするの。
うん、これぞ正解!」
そう言って、俺から離れて立ち上がるサヤ。
バスルームの扉に手をかけて「じゃ、のぼせないようにね~」と微笑みながらここを出ようとする。
いつものように、当たり前のように、慣れた笑顔で。
自分の決断に、自分で責任を持っている、そんな振る舞いで。
気が付くと、俺は左手でサヤの右手を掴んでいた。
「……あれ? と、トレイン君?」
「…………あっ、い、いや、あー、……」
じっとりとしたサヤの汗ばんだ肌。
意外そうに俺を見るサヤの、くりくりとした翡翠と瑠璃色が混じったような目。
考えが上手くまとまらない。
上手く、サヤに対して何か言ってやることができねぇ。
サヤの懸念は、多分正しい。ここまで頭がぐだぐだにシェイクされたみてーになってる時点で、俺の中におけるサヤの比重があまりにも大きすぎる。
そのせいで「殺し屋として」生きてきた今までの俺との乖離から、俺自身へ様々な被害が生じるのは間違いない。
原作トレインのように、自分でそうなりたいと決めて、自分なりに憧れたサヤの生き方へ寄せていると言う訳でもない。
要するに、色恋にかまけて学校の成績がガッタガタになってる中高生とかそんなノリだ。
そしてそれは、俺の立場からすれば文字通り命に直結する。
殺すべき相手を殺せないというのは、俺の命も危ないと言う事。
だけど……、だからといって、俺自身が殺し屋を辞められるかって言うと、そうでもない。
それこそブラックキャットのように、1惑星内で話が完結するってんなら、喜んでセフィリアに啖呵切ったりも出来ただろう。
だが────こと俺の今生きる世界は、宇宙規模に拡大したSFみてーな世界観。
訳の分からなねーことも多いし、戦争だって経験するとは思いもしなかった。
ペラッペラの前世からすれば、何回心が死んでもおつりがくるレベルで、何もかもが違う。
こんな場所で起こる大規模な、それこそ宇宙崩壊クラスの事件に対して、色々と制限が多い賞金稼ぎのまま生きるって言うのが、本当に正しいか判断もつかない。
「縛ってんじゃねーよ。……ちょっと怖いだけだ」
「えっ? …………怖いって、えっと、何?」
だから……、少し思い違いをして欲しくないことがあった。
それをどう表現するか、この時の俺は考えられるだけの頭がなかったんだろう。
何せもう言い訳できねーくらいに頭ピンク色だったし。
「────いやだから……、単に、お前に嫌われたりしたくないって、それだけだよ。大好きな奴に拒絶されたら人生終わっちまうし」
後悔ってのは、やった後から悔いるってなものだったか?
まあこの時点でまだ俺自身、頭ン中は若干フワフワしてたから、自分の発言の意味を自分で理解するのに時間を要したんだが。
まず最初に反応したのはサヤの方。
周囲をきょろきょろ見回して「えっ? えっ?」とか色々言いながら、ネックレスをくるくる指でいじる。
数秒そうした後、何かを納得したのか「あー、うん、まあ、うん」と、要領を得ないリアクションをしてから。
「…………
は?
一瞬、サヤのシルエットに何かがダブったというか、重なったような気がしたが、瞬きすれば別にそんなことはなく。
俺の目の前には、らしくなく視線をそらして掴まれてねー方の人差し指を咥えて何か堪えるような感じで、頬を赤くしたサヤ。
サヤは「よいしょっと」とその場に座る。
……椅子に座ってるからこっちの視線の方が位置、高いな。
上目遣いみてーな感じで、ちらちらと見上げて来るサヤ。
「ええっと、まあ、元々そんな気はしてたといいますか、ネックレスでだいぶ確定してきた感じはあったんですけど…………」
「お、おぉ……?」
「何で発言者が不思議そうな顔してるんスかね……?
もしかしてテンパりすぎて、自分が何言ったかわかってない?」
落ち着いて深呼吸して、お姉さんと一緒にちょっと直前の発言を振り返ろうか、と。
お前の方が年下だろとツッコミを入れつつ、サヤが直前の会話を再現したのを聞いて。
俺はその場で脱力して、前方に思いっきり倒れそうになる。
あっ! とサヤが少し前に出て、俺を抱き留めようとして。
何故か支えきれず、そのまま押し倒される形で倒れる。
「ちょ、ちょっと、トレイン君意外と重いっスね……、筋肉太り? いや全然太ってないし、鎖骨キレーだし」
「お前の中で俺の鎖骨の重要度ってどうなってんだよ…………」
「んー、もうちょっと
「変なこと言うなぁ……」
「ヘンなのはトレイン君の方じゃないっスか」
何がだ、と聞けば、だって、と唇を尖らせるサヤ。
「だって……、こんな私、大好きだって、そんなこと言ったのトレイン君が初めてっスよ?」
「………………」
「まだ会ってから三か月くらいのくせいに、さ。……
「何だそりゃ……」
「私、引き取り手がいなかった一番の理由、かな? …………何だろ、これはこれで胸のここが、ぽかぽかするっスけど、でも、うん…………」
そう言って、サヤは押し黙り。
俺もまた、言葉を続けられずに倒れた姿勢のまま固まる。
どれくらいそうしてたか……、しばらくすると「重いっスよ」と言ったので、俺は上体を起こそうとして。
起こそうとして、やらかした。
こう…………、具体的に表現するともういよいよ我慢が限界になりそうだから婉曲表現すると、上も下も、こう、
「…………だから友達って、そういうえっちな意味じゃないんだけど。というか、前隠して!」
まあ、そうだよな、適当に倒れたら、あれだけ結び目がいたるところにある水着だし、どっかしらひっかかっても不思議じゃないよな、あー ……。
ジト目でこっちを見て来るサヤだが、前みたいに何故かビンタしてこない。
片手で胸元、片手で下の方を隠しながら、倒れた姿勢のままじーっと見て来て。
俺は俺で、何と言うか……、とりあえず土下座だけは不可避だった。
そして、何もかもがこの場で保留されることになった。
ある意味俺達同士にとっちゃ、救いではあるのかもしれなかったが。
※ ※ ※
旅行自体は、翌日には終わりってことになった。
ただ惑星出て、宇宙船で別なステーションに行ってすぐ解散って訳でも無かった。
『はい、これ』
『……?
「うん。本当はあげないつもりだったんだけど……、まあ、その、ちょっとこれで『また縁が有ったら!』ってするには一言で片づけられない感じになって保留しちゃってるし……」
「あ、あー ……」
お互い顔を合わせて、気まずい空気感が漂った。
地球の空港みてーな感じになってるステーションの待合室で、サヤと俺は二人して言葉が出ない。
移動中は、昨日のことなんてさっぱり忘れたみてーに、二人して船内弁当にあーだこーだ言ったり、地球の映画の何かえらくブラックキャット的に見覚えのある女優が主演してるミステリーアクションものの感想言い合ったりと自由にやってたんだが。
流石に話題にそれが上がれば、二人そろってこうもなるだろう。
『わ、私、一応トレイン君のことは友達だって思ってるけど。そこから先に何かあるかとか、出来るかとか、そういうの全然考えてなかったから』
『お、おぉ……』
『だから、このままテキトーに流しちゃうのも何か違うんじゃないかって、そう思ったっス』
だからまだ保留だけど、とサヤは言った。
『
『…………』
『だから、死なないでね。……ここが、きゅって絞まっちゃう感じがするから』
胸元を抑えて、サヤはそう寂しそうに笑っていた。
俺も、まあ、おうとか、適当な言葉しか言えなかったことしか覚えちゃいねーんだが。
でも旅行中のときよりも、このあたりの記憶ははっきりしている。
サヤに俺自身を拒絶されなかった────多分それだけで、気持ちがちょっと落ち着いたんだろう。
空回っていた気分が、何かこう、腑に落ちたような納得感がある。
「……んで、ここのアパートだったか? クレヴァーが手配したっつーところ」
デビルーク圏にあるゴッサムステーション、
立地そのものは以前のステーションとそう差はないように思うが、風景は色々と違う。
ヘイローのタイプのステーションの方が、歴史的には新しい。
コロニー型は歴史が古かったりして、建物もまあまあ良い感じにレトロな風情だ。
……まあコロニーの一番の問題としては、空を見上げても青空が無いっつーことなんだが、こればっかり慣れしかねぇな。
ヘイローの規模でコロニー建造っつー話も最近は上がってるらしいし、そこまでのサイズになれば色々小細工できるから青空だって発生するらしいんだが。
ここだと隙間隙間で外宇宙は見えるようになってるから、常に夜みてーな環境になってるし。
ンで、建物はちょっと古めだが防犯とかその他諸々はしっかりしてるらしいこのアパート、リクエストしていた通りに屋上階が設けられてる。
やっぱり屋上に登って、ぼーっとしてる時間は欲しい。
猫とか、サヤとかと会うあわないはまた別な話として…………、もともとは一人だったのだから、その習慣だけは変えたくないと。
そう思って、荷物を搬入して。
とりあえず屋上の様子を見に登った時だった。
「…………、さ、サヤ?」
「……えっ、トレイン君⁉」
『────?』
そこにはまあ何と言うか、白地に朝顔模様の浴衣着たどっかの誰かさんが、どっかで見覚えのある白猫抱っこして、空を見上げていた。
他人の空似と言うにはアレ過ぎるし、まさかと思って声をかけて見ればドンピシャで。
ついでに白猫も、俺のことを覚えてたのか手をぶんぶん振り回してにゃーにゃー鳴いてやがる。
ミルクの催促でもしてんのか、おい。
とりあえず皿だけ持ってきて、猫にミルクをやりながら。
俺とサヤは、隣に並んで空を見上げて、ぽつぽつと話す。
「別にこう、ストーカーした訳じゃないっスよね……?」
「しねーよ、いや別に未練がましくないとは言わねーけど、いや……んー」
「はっきり言うっスよ、ほらもう告白も何か雑な感じでポロっとしちゃってるんだし」
「された側がそう言うなよ、泣くぞ、俺でも。
…………いや、だから、要は拒絶されなかったし、連絡先ももらったから、別に無理に追いかけることじゃねーだろって。お前が俺の事気にして離れたっていうなら、それはそれで、まあ……」
「んー、でもまあ、ゴッサムのステーションで合流することになるとは思ってなかったっスけど。
いや、トレイン君のお仕事的にステーションは回避できないか……、私が迂闊だったわけだ。でも今から場所また変えるってのもなー」
そう言って苦笑いして、サヤは空を見上げ。
「……もしかして、屋上あるところだったから? ここ選んだのって」
「そりゃ、嗚呼」
「そっか。……………フフ、やっぱ似てるね。私たち」
そう言って、俺を見て笑うサヤの顔はごくごく自然体で。
自然体で、可愛らしくて。
ただただキラキラしてるそんな笑顔から、やっぱり俺は目を離せそうになかった。
そして程なく「引っ越し代工面するって言ったけど結局もらわなかったし、こりゃもうトレイン君に家賃奢ってもらうのしかないのでは?」とか言い出したり紆余曲折あって。
ちゃんと数部屋、別々の部屋が
じゃあ私も一緒に住むっスよ! とかサヤが言い出したこともあり。
……何か本当、ぐだぐだのままルームシェアするような流れで決着になった。
別に付き合うとか、そういう訳でもないままに。
何っつーか…………、雑だな。こいつもこいつで、生き方が。
【トレインとサヤが再会したほぼ同刻、東京にて】
ザス「えっ? トレイ……いやクロ、もう旅行を切り上げて帰ってしまっただと!? えぇと…………、
??「そこの貴方、ちょっと退いてください────」
ザス「何ッ!? ホテルの窓開けて上空から美女がッ!!?」※ぐしゃりと下になって潰される。
Q.サヤの水着、そんなにほどけやすい構造してるの?
A.そうでもない。クロが上げてるうち、いくつかの結び目はダミー。ピンポイントで上下の紐を指に引っ掛けて解いてるので、本作クロも大分素質がある(?)。
Q.白猫続投!?
A.白猫続投! ちなみにお察しかもしれませんが(?)、黒猫ととらぶるにしれっと出てくる
Q.何だかんだ同居までするって好感度どうなってんだこの女……?
A.好感度は元々低くないけど、同居については、のじゃ口調の誰かさんが、潜在意識に訴えかけてる影響かもしれない……、孤独死は辛いぞ、いい年して仕事しかすることがないとか辛いぞ、みたいな感じの。
To be continued in Chapter 2 ...