とラぶラックキャット 作:那覇ダイア
文章量スリム化が難しいですね……。意図せずですが、今回も多めです。
「ふーん。……人に告白まがいのことしといて、同棲までしといて、早々に浮気っスか。ふぅん……。トレイン君、けっこー女たらしなんスね」
「いや、違ぇっての。というか同棲じゃなくてルームシェアって言ったのお前だろ…………?」
「世間体の話っスよ! 世間体のッ! 外から見たら私たちの関係の違い何てさっぱりわからないっスから!」
ぎゃーぎゃーとわめくサヤと俺は、一緒に射撃訓練場に来ていた。
構成としちゃバッティングセンターみてーな感じになっている。
人工芝の先に射的用の的みてーなサンドバッグが置いてあって、それに訓練用の弾丸をブチ当てるような、そんなノリだ。
時間ではなく弾丸数で
ま、俺の場合はそのままハーディスで生成する弾丸を使う関係上、残りの弾はサヤに渡して、時間は倍になってるんだが。
隣り合ってるスペース同士、周囲の連中がガンガンと射撃してる中でも普通に会話する分には声が聞こえるし、会話の内容は周りには雑音になる絶妙な位置関係。
そんなとこで、サヤはなんとなく俺から視線を逸らしながらぶつぶつと不満を漏らしていた。
服装は、浴衣じゃなくて民族衣装に戻ってる。
本人いわく「狭いから引っ掛かりそうだし」とのことだ。
とはいえネックレスはちゃんとしているので、俺としては少し嬉しい。
嬉しいし、ちょっと恥ずかしい。
「って、トレイン君ってば。聞いてるっスか?」
「あー、まあ、仕事の依頼といえば依頼っつー話なんだけど────」
「それは判ってるっスけど! もう、事前に
ブツブツ言いながらライフルっぽい形状に変形したSF銃で狙い打ってるのに苦笑いしつつ、俺もハーディスの引き金を引いた。
内装はザ・アメリカン! っていう感じだ。日本のアパートとかのサイズ比じゃねぇ。全体的にスペースの取り方が大きかったし、あと、床は土足だ。
そんな部屋の内覧に来たその当日、別れたはずのサヤと偶然再会した。
話を聞いてみれば、何てことはなく。サヤの方は予算の都合とか、すぐに引っ越して拠点を作りやすいステーションを探しての結果だとか、まあ色々理由はあったりなかったり。
前のステーションで戯れてた白猫まで連れて来て、そっちもそっちで再会と言えば再会だった。
ま、そして繰り返すが、何だかんだと話し合った結果、ルームシェアするに至る。
もともと組織の予算か俺のポケットマネーを使ってステーションとかアパートからの
その分の予算を自費で負担して、急に動いたためにサヤとしては思ったより出費を強いられたらしい。
『責任、とってもらうっスよ!』
何だか違う意味に聞こえるようなことを言われた俺がどんな表情をしていたかは、さっぱりわからねぇ。
ただ、サヤはサヤでそんな俺を見て爆笑してたので、ロクな顔じゃなかったのは間違いねえだろう。
……仮にも告白まがいのことした男と一緒に住むってのに思う所があるのではないかと思っていたが、本人いわく「せっかくだし、相性見るのも悪くないなじゃいっスかね? 一緒に暮らした時の」とか、何だかこっちを中途半端に期待させるようなことを言いやがった。
まあ、本人としては引っ越し代の予算が急だったのもあってカツカツで、色々大変ことになっているからというのが大きいみてーだが。
節約節約、とのことだ。
それでいて自分の貞操の心配をしねーのはどうなのかと思わなくもないが……、少なくとも「同居を許される」程度に好感度が上がってる、信頼されていると言う風に考えて良いのか? これは。
で、まあ。サヤとルームシェアするにあたって、俺達が決めた取り決めは3つ。
一つ。家事の分担はサヤが多め。
家賃やら
とはいえお互いの生活時間がそれなりにズレるだろうから、そこはまあ、ざっくりという感じだ。
二つ。プライベートルームには鍵をかけない。
ただし部屋に入る前は必ずノックすること。
感覚的には、部屋が隣り合っていた時のことを思い出してのことだろう。
家の中であっても、お互いのルームは別々で、あくまで共同生活していると言う体を崩さないようにしたいらしい。
で、三つ。これが今回の話に関係してくる。仕事関係とかだろうが異性と二人きりで出かけるときは、期間に関わらずにそれをお互いに話し合うっつー内容だ。
仕事がバッティングした時など、賞金稼ぎ同士で一時的なコンビを組んでコトに当たり報酬を山分けするといったことなど、よくある話。
俺の方も、任務の潜入で(ハニトラはしないが)目的の対象に迫るために、ツテを作るすることもゼロとは言い辛い。以前はザスティンが主体で動いていたが、アイツが騎士団に行った以上は俺が自分で動かないといけない。
かつての俺なら全然気にしちゃいなかったろうが、今の俺としては、アイツのそういう甘っちょろいところを大事にして、その上で本人に所属の選択をさせてやりたい。
…………まあ、サヤと会っても「何だこの女の子は……?」とハトが豆鉄砲喰らったみてーな顔してたし、あんまり警戒対象じゃないっつーのも理由の一つかもしれねーが、我ながら。
話が逸れたな。
とにかくそんな訳で? 異性と仕事するってのに限らず、一緒に出るってときはそれを事前に共有しとけっていう話になった。
ちなみにこの三つめは、俺じゃなくてサヤの提案だ。
『別にトレイン君のこと、どうこうって訳じゃ
色々言いながらネックレスをいじりつつ、ちらちらと俺を見てたのをなんとなく覚えてる。
別に顔を赤くしてる訳でもなかったし、匂いにも
それでもまあ、なんとなくそう言ってもらえるなら、俺としては願ったりかなったり。
事故とは言え「お前んこと大好き(※意訳)」とか言い放った側としては、自分から警戒状況について教えてくれるっつーのは大変にありがたい。
俺の心臓の面でもそうだし……、こう、第三者的な意見として
仮にも生物学的にはオスなもので。
で、その話の延長上で、俺はサヤに例の案件について情報共有している。
相手はミカド・ヘイルズ・ウォーカー。ブラックキャット的には茶髪リンスなイメージの容姿をしているが、職業は盗賊じゃなくて医者。研究者としてはクローン関係の技術が得意だとか本人はいっていたか。
以前、スヴェンと一緒にイヴの救出に来ていたうちの片割れの女だ。
どうやらあの後、俺個人の
いや、探って来たっつーか情報元は
で、本来なら殺し以外の話を受けることはない俺の立場なんだが、今回に関しては弱みを握られている。
具体的に言うと、イヴを逃がしたことを知られている。
おそらくスヴェン経由でその話を聞いたんだろうが……、暗にそれを匂わせて「バラされたくなかったら協力してもらえないかしら? 別に、取って食って骨の髄までしゃぶりつくそうなんて考えてる訳じゃないし♪」とか言って来るもんだから、冷汗は流石に流れた。
で、依頼された内容が、
確か原作でもあったな、リンスがトレインに一日婚約者になってくれって回。
恐竜とかどっかの暗殺者とか出てきそうな話。
もっとこっちは一日だけとは言わない。ぶっちゃけ、あのミカド・ヘイルズ…………、俺個人の頭の中で混乱するからもう茶髪リンスでいいか。茶髪リンスは、自分がかつて所属していたフレシア財団に行き、その情報網を使わせてもらえるか相談したいらしい。
もともとアイツが例の財団を出奔した理由事体がイヴに関係することらしいと聞いて、俺としては微妙な反応にならざるをえなかったんだが。
それはそうと、そもそも何で俺なのか。
婚約者という体で誰か連れて行きたいのが、ボディーガードとかが主目的なのはなんとなくニュアンスで察するところはあるんだが。
スヴェンいるじゃねーかスヴェンと、それについても聞いてはみた。
俺の質問に、茶髪リンスは苦笑い一つ。
『あんまり顔、会わせたくないのよね。ちょっと一つ、無茶振りしちゃったものだから……』
『何やったんだよアンタ』
『いやちょっと、私がやるにしてはタイパコスパどっちも見合わない作業をというか……、お金はある程度負担してるけど、まあ、うん。一応ほら、紳士だし?
『だから何の話だって』
要領は得ねーが、スヴェンを頼る気だけはないってのはわかった。
で、他にも誰かいなかったのかってのを聞いてみると、最終的には。
『ずばり、顔よ?』
とのこと。
いや、これは茶髪リンス本人的な好みの話ではなく。
『偽装とは言えある程度はビジュアルが良くないと、説得力ないもの。私もまあ、昔から友達と一緒にモテはした方だから。あの子は全然ポンコツでダメだったけど』
『わざわざ友達に言及する必要あるのか? それ』
『それはどうでも良いの。大事なのは説得力…………、オジサマ横に並べて『婚約者ですぅ♡』とか私がやっても、あなた相手にやってるより説得力低そうじゃない?』
それはそれで微妙なところだが、とにかく本人的には「婚約者」として誰かに紹介するなら、トレインとしての俺の見た目がまだマシ、ということらしい。
ま、そんな話出されてもなあというところだ。
俺個人というか、顔立ち自体はブラックキャット原作なトレインより、ちょっと髪がぺたってしてるっつーくらいの違いしかねー。
なんとなく鋭い目つきとか、表情の作り方が不敵な感じになるとか、そのあたりも踏襲されている。
顔立ちが綺麗かどうかは……、いや少年漫画の主人公としてそれらしくデザインされてる以上はまあ恰好は良いんだろうが、別に素直に誇れる話でもないから内心は微妙だ。
いや、サヤから煙たがられない理由の一旦になってるなら、むしろ悪くはないとは言え……。
まあそんな訳で、半ば脅迫される形で仕事を依頼……、いや半ばじゃねぇ、やっぱり完全に脅迫だな。
イヴを見逃したことをバラすっていうのは、暗殺成功率100パーセントっつー殺し屋クロの名に瑕がつく話だが。
そもそも
だからこそ俺に対して脅迫たりうるっつーか、まだ組織に対してどうするか決めかねてる俺からすると何とも言えねーところなんだが。
でも、下手しなくてもそれ自爆じゃねぇのか?
そもそもイヴ、保護しようとあんな衛星くんだりまで出向いて来てただろうに。
後から知ったが、しれっとトルネオもちゃんと居たらしいし。
そんなことを考えながら一旦保留っつー形で、事前の取り決め通りにサヤにこうして打ち明けているって訳だ。
依頼内容の内訳が終わった段階で、サヤはどこか不機嫌そうなまま。
「断りてーけど、断れないっつーか」
「トレイン君の好きにしたら良いんじゃないっスかっ」
「投げやりに言わないでくれよ、頼むから……」
結局射撃の練習が終わってもむくれたままで。
ただ「先に帰るっス!」と突然走り出したサヤを、いやちょっと待てよと色々戦々恐々としながら追う俺。
このまま自宅に帰らないでどっか行って知らない男にでも絡まれるんじゃねーかと、いやフツーに考えてそうはならないだろうという展開が脳裏を過り。
いや、もう、やっぱり首ったけなのは間違いねぇんだが、本当ロクな付き合いもなくどうしてこうなってるのやら。
円筒型コロニーになってる関係で建物と建物との幅が狭かったり、道幅もそれ相応に狭かったりする密集地帯となったダウンタウンを、追いかけっこみてーに走る俺達。
本気の本気で走れば簡単に追いつけるだろうが、道行く人とか、あと通路からぬっと生えてくるよくわからねぇペットやら、ここにも生息してる猫やらを蹴っ飛ばしたりして事故りそうなので、速度はあくまで標準的な走りに限定される。
サヤも俺の身体能力をわかっているだろうから、おそらくこの道の選びは意図的だ。
それによって、俺とサヤとの鬼ごっこは成立している。
「ほーらほーら、コッチだよー! そんなんで捕まえられるっかなー?」
「ンだとォ……?」
移動中、サヤは俺を楽しそうに煽って、空中をくるくる舞うように障害物とか人ごみとかを縫って駆け巡る。
あたかも服を「可愛いでしょ!」って見せびらかすみてーに。
動きだけで言えばパルクールみたいなものなのに、そういう忙しさを感じさせねー優雅さというか。
汗一つかかずにひらひらと舞う姿に、なんとなく見惚れる。
見惚れながら、俺だって優雅には動けねーがしっかりと色々避けたり飛び越えたりして追いかける。
……こっちは下手に衝突事故でも起こしたら
ちょいちょいと危ない交差があって、冷汗が止まらない。
そんな慌てている俺を見て、サヤは楽しそうに笑っていた。
「アッハハハハハ! トレイン君、おもしろい顔~!」
「この……、今に見てろよっ」
煽ってんじゃねーよ、という意図も込めて、ビルとビルの隙間で障害がない一本道になった瞬間、俺は前方に
おぉ! と驚いた表情のサヤを、まあ、慣れねーけど横抱きに抱っこして、そのまま上方へ跳躍。
壁と壁を蹴って軽々と動き、そのまま手近なビルの屋上へ。
「おぉ~~~~! 街キレー! 観覧車とかあるじゃないっスか! いやこれ、……すごいっス、何だろうこう、フツーだと怖いはずなんだけど、何か安心感あるっスね!」
楽しそうに言いながらサヤが自分の両手を俺の首に回してくる。
……意図した訳ではなかったがお姫様だっこになってて、何とも言えない気恥ずかしさ。
ただ、せっかくなのでこのまま飛び跳ねつつ、俺達の住むアパートの屋上まで。
お姫様抱っこのままひょいひょいと、あんまりサヤに衝撃を与えない程度に、軽い足取りで。
「やっぱ凄いっスね~。伊達や酔狂で、3年もしないうちに裏社会の伝説にはなっていないっスか」
「3年? いや、殺し屋クロの名前は────」
「何年前からってことじゃなくて、トレイン君の名前が売れるまでの時間ってことっス! 例えば戦時中も、黒猫が現れた戦艦は墜落するーって、もっぱら評判だったと聞くっスよ?」
「どこの情報だよそれ……」
「蛇の道は蛇、ということで。……あっ、女の情報屋さんからだから、えっちぃ要求とかされたりして情報売買してないから、そこは安心してね?」
「────ッ」
思わず顔を背けて噴き出しながら、サヤを下ろす俺。
動揺を必死に隠そうとしているが「トレイン君、顔真っ赤~!」とけらけら笑ってるサヤを見てると、なんだかどうでも良くなってくる。
実際、そういう話をしっかり共有してくれるなら、俺としては安心感が強いというか……。
ん?
「……いや、有難ぇけどさ、そういう話してくれるのは。でも別にお前、俺のこと好きとかじゃねーんだろ? 何で…………?」
「何で? うーん…………、何でっスかね?」
いまいち要領を得ないサヤの言葉に、嘘はない。
だからこそ二人して首を傾げながら、一緒に部屋に戻る。
リビングでとりあえず乾杯しようじゃないっスか~、とか言い出すサヤの機嫌は、いつの間にか直っていた。
椅子に座る俺達は、対面じゃなくて隣り合った形。
缶二つを手に取り、それぞれ開けて俺に一つ手渡してくる。
……指先が振れたのに少しドキリと胸の奥が早音を打つが、流石に初心すぎやしねーか? 俺。
乙女かよ。…………今時、純なって意味で使う乙女とか死語だろ絶対。
「人間やっぱ、頭でっかちに悩んだらとりあえず運動って、うん! これぞ正解!」
「……ま、よくわからねーけど何よりだよ」
「うん! やっぱりこう、らしくないかなーって思ったの。あれこれ悩むよりは、自分の『良いなー』って感情に従って行動すべし」
「…………で、今俺の鎖骨を指で撫でまわしてるのも、良いなーって思ったからやってると」
「うん、これぞ正解!」
正解じゃねぇんだよお前さぁ。
ちょっとひんやりとしてる指がつつっと胸の近くを這ってるのとか、体感だいぶエロい感じだからな?
いや、サヤ本人もちょっと頬が赤らんでる気がするから、よくわからねーけどコイツ的にもこれはエロ行為の一種なのかもしれねーが。
フェチか?
そんな感じでしばらくミルク飲んだり、アホみたいな雑談したりをしてたら、サヤがふと「思いついた!」みてーな感じで立ち上がり、自分の部屋に入る。
数秒も経たず、そのまま出てきたサヤの手に握られてたのは……。
「トレイン君にプレゼント~! じゃじゃーん!」
「…………何だこれ、猫用の、鈴?」
見た目は首輪。ネックレスというよりはチョーカー型に近い。
ひし型みてーな金色のパーツに、それの隣り合った変同士をつなぐような形で赤いベルトが接続されてる様な、そんな感じの形だ。
形状は地球の鈴とかとだいぶ違うが、この金色のひらべってー部分が宇宙的には鈴になる。
まあ何と言うか……、どう見ても猫用の逸品だ。
それを掲げてウインクしながら、サヤは得意げに続ける。
「トレイン君には、これを着けてもらいまーす」
「着けるって、猫用のやつだろこれ」
「うん。元々、一緒につれてきた白猫
「…………気が変わって、何で俺につけろって?」
「ん? んー、これ言うと何か私が自意識過剰に聞こえるからあんまり言いたくないっスけど…………」
要領を得ないようなことを言いながらもごもごと、反対側の手で俺がやったネックレスをいじるサヤ。
特に理由はないんだが、首元にそれをつけるってのに何となく抵抗感がある。
こう、ブラックキャット原作の「地球産の」首輪だったら全然問題ないんだが。
あのチョーカーみたいなの、ちょっと堅そうというか何と言うか。
だから思わず音を立てずに立ち上がって後退した俺に「あっ!」とサヤも立ち上がり、両手でチョーカーの接続を外して、構える。
「待つっスよほら~! 良い子だからちゃんと着けるっス!」
「本当に猫相手みてーな物言いしてんじゃねーよ!?」
そのまま、すわ! と勢いつけて俺に飛び掛かるサヤを、ギリギリで躱して逃げる俺。
室内だからドタドタとあまり音を立てる訳にもいかないので、二人そろってみみっちぃ感じに小走りで。
着けるっス~! とやっぱり楽し気なサヤを見てると、不思議と鳩尾のあたりがぽかぽかしてくるんだが。
「だから理由教えろよ、マジでさ!」
「悪い虫が寄ってこないように、かな? うん? この言い方だと何か変だな……、トレイン君わかるっスか?」
「わかるかよッ!?」
などとツッコミを入れつつ、きゃっきゃと戯れる俺達だったが。
インターホンが鳴り、二人して一旦足を止めて顔を見合わせる。
そして少し匂いを嗅げば、俺は相手の正体がわかった。
ちょっと出るから大人しくしとけよ、とサヤに言って(なお「私のことも猫扱いじゃないっスか」と軽く唇を尖らせてたのがちょっと可愛い)、俺は扉の方に回り────。
「隙ありっ」
「って、だから大人しくしてろって…………、いやもう良いから、早い所部屋に戻れよ!?」
背中を向けて扉を開けた瞬間、その隙を狙われて、チョーカーを巻かれた。
巻かれたといってもジョイントをしっかり固定できてないので、俺の背中に密着するように体を寄せて、何やら苦戦してるみてーだが。
いつもならそれに気が気じゃない感じなんだが、今はそれを意識すらできねぇ。
個人的に、今のこの状態は大変良くない。
こう……、ブラックキャット原作的な意味で。
「やぁトレイン、久しぶり? クレヴァーから聞いて来たんだけど、これ引っ越し祝い。僕とセフィリアから………と、おや? そちらのお嬢さんは?」
なぜなら、訪ねてきたのがザスティン……、
原作において、サヤの死因であり…………、トレインにとって絶対に打破しなければならなかったラスボスであったのだから。
服装もオフということなのか、
繰り返し言っているが、この世界におけるクリードがもはやクリードと呼べないナニカに変質してる。
今俺に向けて浮かべてる表情も、単なる友達とか見るくらいの気安さだ。
髪だって雑にオールバックとかにはしてないし、騎士団所属になってからは気品みてーなのも意識してるのか、以前よりもちょっとボリュームがある髪型になっている。
目は澄んで、正気の光が
だからといって、じゃあ大丈夫だとテキトーな感じで、俺はサヤとコイツとを対面させたくなかった。
サヤはサヤで「にゅあ? オトモダチっスか?」とヘンな感嘆符吐いて軽い感じで、俺の肩から前方を見て。
「…………あのトレインが女の子と付き合うとは、人は変わるものだねぇ」
「いやお前が言うなよ、この原型行方不明がッ」
何故か涙ぐみながら引き出物の袋を肘に下ろして、懐からハンカチを取り出して目元をぬぐうクリード。
そんな、親戚か兄弟かの成長を喜ぶみてーなリアクションされたって、どんな顔すりゃ良いんだっての。
そしてサヤはサヤで背後で「付き合ってないっスよ、一緒に住んでるけど」とか話をややこしくするようなこと言いやがって…………。
Q.サヤがチョーカーつけさせようとしている意図って?
A.「私以外よそ見しちゃ駄目っスよ!」みたいな気持ち。自分の友達が自分より別な友達と仲良くしてるのを見てちょっとモヤっとする感情と、それともちょっと別なナニカが重なってる。
チョーカー自体のデザインは、とらぶるのクロがしてたアレなので、今回でビジュアルがとらぶる仕様になった形。
ちなみに最後にザスティンに余計な事言ってるのは、ザスティンの中に「かすかに残る」クリード時代のヤンホm……、濃ゆい何かな臭いを感じているため(?)。