とラぶラックキャット   作:那覇ダイア

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#17.狙われる宇宙猫

 

 今回、何かの真実発覚回。

 


 

 

 

 

 

 

 何もなかった。

 本当に何もなくて拍子抜けするくらい何もなくて、むしろこれから今後何かトラブルが発生するんじゃねーかっつーくらい何もなかった。

 

『僕……、いや、私はザスティンと、今はそう名乗っています。トレインが世話になっているようで、どうも────』

『あっ! 思い出した、ザスティンさんってデビルーク王室の親衛隊じゃん! この間テレビでやってた!』

 

 そんなことを喚き散らしたサヤとクリード(ザスティン)のやり取りは、原作が原作だってのに原形行方不明な(性格が丸くなった)ザスティンのお陰で酷く穏当に終わった。

 親衛隊行ってのは俺の方が初耳だったんだが(そもそもテレビ的な映像受信装置とかゼロとは言わないがあんま見ねー)、サヤの方が有名人に対する接し方で、終始ザスティンが恐縮。

 テレビでパレードやってたり、模擬戦とかみてーなのもやってたりとか、まーそれなりにお披露目会をやってたらしい。

 それはそうと俺としては「魔女め!」とかいつ狂い出さないか個人的に心配しつつ。

 いつでも抜ける様にハーディスの入ってるジャケットの懐に手を届くようにして、サヤの隣に座っていた俺だったが。

 当然のようにクリードから、メロン的な果物と引っ越しそば的な麺類を手渡されて、軽く話し合って、それで()()()()()()()()()終わりだった。

 

『トレインのこと、よろしく頼むよ』

『それなりに任されるっスよ! ……ただ、本当は()()()()()と思うっスけどね、トレイン君』

『僕も最近はそんな気がしてるけど、どう動くか最後に決めるのはトレインだから。……その時も、出来れば任せたいところだ』

『肩の荷が重くないっスか? まあ、別に見捨てはしないっスけど…………』

 

 何かよくわからねーことを言い合って、そして弟を頼む的な感じで頭を下げるクリードは一体どういう立場なのかって文句を言ってやりてぇ。

 いやこっちのクリードは原作と違って、俺より年上だから本当に弟みたいに思ってるのかもしれねーが。

 ブラックキャットにおいてはクリードとトレインは同い年だったが。

 今世においては、俺がチビのガキだった頃既に特務部隊で日本刀(⁉)を振るってる青年だった。

 ……嗚呼、だから、クリードがトレインと会って狂気のままに歓喜するっつーのが、こっちの世界じゃ絵面としてだいぶ()()みてーな感じだったりしたんだよなぁ。

 それもあって、前世思い出す前は割とクリードが嫌っつーか、生理的嫌悪感があったっつーか。

 ちなみにだが、それもある日を境にたった一日で別人みてーに豹変してたもんだから、俺としては恐怖の二文字だった。

 

 で、何で今そんな話を思い出しているかっつーと。

 

「────OK。色々聞いて来たけどこれが最後の質問よ?

 あなた、初めて恋をしたのはいつかしら?」

 

 SF映画の資料室みてーな、大量の筐体とか画面が置かれてたり吊るされてたりする広い部屋で、茶髪リンス(ミカド・ヘイルズ・ウォーカー)は俺に聞いて来ていて。

 だからこそ、サヤに関係する事柄が今俺の脳裏に駆け巡ってるってだけの話だった。

 

 

 

 ミカドの仕事を引き受けてから、実に3カ月くらい。

 それくらい経っても彼女が目的としている相手が情報網に引っ掛からない。

 脱走した範囲からして、デビルーク中心部を除外し(流石にそこに居たら捕まってるだろうと考えているらしい)、その上で銀河連邦内で情報調査。

 何度も何度も、何日も何日も出入りする俺と茶髪リンスは、警備員のオッチャンとか、あとは例のマダムともしっかり面識ができちまった。

 マダム……、マダム・フレシアはまあ何と言うか、原作通りのビジュアルと言うか、その上で衣装が宇宙服っぽい感じになっていて色々とコメントに困るっつーか、そんな感じだった。

 顔は彫が深くて濃く、ややでっぷりした体型で、髪型はクリスマスとかに食べそうなターキーの脚二本を対照的にくっつけたような髪型だし。

 それらが透明なメットの中に綺麗に入ってるのは、どことなくワンピ〇スの天〇人ととか思わせる。

 いや、ザマスとかは言うが性格は割とフツーだったんだが。

 茶髪リンスに対する扱いも「ドクター・ミカド!」とか言って、そんなに軽く見てる感じじゃなかったし。

 

『フローラちゃんのエサについて相談させていただきたいザマスよ……、最近元気なくって…………』

『うーん、()()()()()の食性を前提に、一度献立を────』

 

 いや、まあ話してる内容はよく分かりはしなかったんだが。

 ただ、そのフローラちゃんって原作だとティラノサウルスとかじゃなかったか?

 いるのか? 宇宙にティラノ……、宇宙恐竜!?

 

 まあそれは置いておいて。

 俺自身、そのまま何の進展もなく、金だけもらって茶髪リンスに同行し続けている訳じゃねぇ。

 途中途中仕事は入るが、そういう意味ではなく。

 これも、俺としては立派な組織(クロロス)からの依頼だ。

 そうなってしまった。

 引っ越し祝いを持って来たザスティンだったが、メロンの網目にわざわざ符丁が書かれていた。

 ……遺伝子操作してわざわざ網目に必要な指示を入れる組織のやり方に、変な所にこだわってんなーという感じで半笑いにはなったが。

 サヤに気付かれてないのを確認した上で、俺はその日の夜に出かけ、とあるバーに顔を出した。

 まあ、当然のようにザスティンがいたんだが、アイツはめずらしくピアノを伴奏していた。

 厳密にはピアノ的な楽器ではあるんだが、基本的な操作とか響とかもピアノと一緒だから別に良いだろう。

 ただ、曲は何か聞き覚えがあった。

 指の動きがゆったりとしていて、どこか物悲しく、懐かしさを感じるそれ。

 あっち滞在中にCMか何かで聞いたんだろう、クラシックというか、映画のCMでかかってた曲だった。

 俺に気付くと伴奏を止め、拍手とチップを受けながらお互いに一杯ずつ注文。

 俺? 俺はカルアミルク(※的なカクテル)の酒抜きだ。

 

『何か心境の変化でもあったか? セフィリアに心折られてからお前、全然ピアノとか弾かなくなってたろ』

『よく覚えてるねトレイン。……いや、どうだろうね。上手くは言えないが、僕の狂気や怒り(過去)を正面から受け止めてくれる女性(ヒト)に出会えたから、もう少しだけ、芸術に向き合ってみようかなと』

『ふーん』

 

 何か知らねーが普段より元気になってるザスティンは、少し照れたように笑いながら、セフィリア直筆の任務依頼を手渡して来た。

 内容は……「開発衛星から奪取された、ナノテクノロジーに関する重大な情報記録媒体の確保もしくは破壊」。

 盗んだ奴は、ミカド・ヘイルズ・ウォーカー。

 賞金稼ぎは伴っていたが、情報源自体は彼女が有しているものと見られる。

 …………途中までだが読んだ感想としては、これ絶対ティアーユ博士の精神体か何かのこと言ってるだろってモンだ。

 後半まで依頼書を読んだ感じだと、組織としては研究施設を牛耳っていたトルネオのグループが、ナノテク研究に際して何かしらの情報媒体から必要なデータを抜き取っていた、みてーなところまでは把握していたらしい。

 ただ、破壊された惑星のデブリのうち、地下施設にあったと思われるコンピューターから、どう調べても件の情報が確認できず。

 データが集積された何かだけ、意図的に抜き取られているように見える、とのことだ。

 で、音声は入ってなかったらしいが監視カメラの映像で、それをやった犯人が茶髪リンスだろうと断定。

 必要に応じて自由にやって情報を抜き取れ、という、そんな感じの仕事だ。

 

 早々に殺すなり脅すなりして情報を抜き取っても良い、という話ではあるが、実はそこまでしなくても良いらしい。

 その理由の部分を見て、何でこれがセフィリアの手描きで持ってこられたのかについて察した。

 

『………………クローン技術の権威の一人だから、殺すとうちの娘の相談先が減る? 技術的な進歩どうのこうのとか書いてあるけど絶対私情だろ』

『まあ、そういうことらしい。僕としても、情報端末についても、彼女個人は専門ではないし、繋がりがあったナノテクの権威の科学者も()()()()だそうだから、悪用の心配は薄いと上は判断した』

『ガバガバじゃねーか』

『どうなんだろうね実際? それこそ予知能力者くらい抱えていても、不思議じゃないと思うけど、うちの上層部』

 

 俺とクリードとの雑談はともかく。

 そんな訳で、俺はこの依頼を受けることにした。

 剣を手に取ってねー時のセフィリアは、政治的判断に加えて個人の判断もケッコー大きい人物だ。

 育ちの関係があるのかそれ以外の理由もあるのかは知らねーが、まあ()()らしいっちゃらしいっつー話ではあんだろう。

 で、まあそういう理由から色々アレな内容になっちゃいるが、俺個人としてもメリットがデカい。

 どう考えてもこの依頼、殺す形で進めたら、茶髪リンスどころかティアーユ博士までぶっ殺すことになる。

 それは……、スヴェンもイヴも敵に回すような形になるから、出来れば控えたい。

 どう決着にもっていくかというのは考える余地はあるが、期間が最長1年くらい設けられてるので、ゆっくりとやらせてもらう。

 

 そう考えていたある日のこと。

 

『どうしたのかしら? 眼鏡ずれてるし……、ほっぺが、えーっと?』

 

 気にするなと笑いたがったが、流石に目立っていたから誤魔化すのは無理だった。

 一応簡単な変装ということで、髪型を変えたり眼鏡をかけたりくらいはしてンだが「あら? まあまあインテリ風に見えて好みね」とか言われて腕を絡められたりしたこともあったが。

 そんな俺の変装した恰好といえど、思いっきり平手打ちを喰らったままなら、そりゃ目立つ。

 眼鏡もずれてるし、そりゃ流石に目立つか。

 いや、仕立て人はサヤなんだが、こうなった原因自体は俺にあるから何も言えねー。

 例によってハプニング的なことが起こって、妙な形でサヤを()()()しちまって、だいぶアレな形で倒れ込むことになったし。

 いくら自分たちの家の中とはいえいきなりの全裸だった訳で、こう「まだ早い! というか全然どうするか決まってないッ!」とか言いながらのオシオキ。

 ビンタ一発程度で済ませてくれただけ、まだ温情措置っつーところかね。

 いやでも、日に日にこういうハプニング的な何かが悪化していってるもんだからなあ……。

 言い訳するなら、今回に関してはサヤも少しは悪かったっつーか、浴衣の下に下着の類を一切身に着けてなかったせいもあるっちゃあるんだが。

 で、何か悩みがあるなら相談に乗ると茶髪リンスから言われて。

 最新情報にアップデートされているデータベースとかに条件を入れて、検索結果が出るまでの時間で軽くカウンセリングでもしてあげると、何か妙に同情されて言われた。

 

 で、まあ諸症状について色々とぼかしながら話した結果。

 

「所かまわず女の子相手にハレンチなことを無作為に仕出かしてしまう体質……、病名をつけるなら、突発性ハレンチ症候群ってところかしら」

「アンタ、俺が馬鹿だからってテキトー言ってるだろ」

「フフフ……、いや馬鹿にしてないわよ? あくまで仮称だから。それに三か月一緒に居るけど私はされたこと無い訳だし、あなたは多分軽症の方だもの」

 

 くすくすとからかうように笑って来る茶髪リンスに「そうかよ」と適当に返すしかない俺だったが。

 その後色々と質問を受けて、その間々にサヤのことが脳裏を巡っていた訳だ。

 

 たとえば、仕事帰り。

 茶髪リンスがらみじゃない仕事……、殺しの任務も当然入る。

 ずっと茶髪リンスにつきっきりと言う訳ではなく、コイツの依頼も一応休日が設定されているからだ。

 だからいつものように、特に何ら感慨もなく、殺す。

 たったそれだけで、その度に、帰ってくるたびに。

 サヤは毎回、少し寂しそうな笑顔で「ただいま」と俺に笑うのだ。

 それがどこか、辛い。

 俺はアイツにそんな顔をして欲しくないってのに。

 俺が下手に同居してるせいで、そんな顔させちまってるってのが、どうにも悲しかった。

 ただ、だからといって今更俺はサヤから離れることは出来ない。

 アイツがいなかったらもう、俺は持たないという確信があった。

 イヴの時はまだ殺しちゃいなかったから、誤魔化しが効いた。

 だけど、やっぱり無理だ。

 今までの経験があったから、殺す技能はある。

 殺すと言うことに忌避感が、強いって訳でもない。

 ただそれでも、以前のように猫と過ごしたり、一人で空を見上げてミルクを飲んでるだけで時間潰してる様な、何もない人生に戻ることは…………、もう無理だと、それだけは確信が出来ていた。

 

 

 

 我ながら弱くなったものだと苦笑いしながら、茶髪リンスの質問に答える。

 三十何問の質問も、これで終わりだ。

 ……終わりにだいぶ爆弾を持ってこられた感じだが、別に隠すようなことでもないから言おう。

 俺にとっては、きっと全ての終わりで始まりだった、あの屋根の上の女のことを思い描きながら。

 

「多分、最近」

「最近ねぇ。ちなみにその恋は……、実った?」

「あー、…………」

「うふふ、冗談♪ 今のナシってことで、野暮なこと言っちゃったわね。

 まあ素直に実ってたら悩んではいないでしょうし、とやかくツッコミは入れないわ」

「………………」

 

 そもそもお前の依頼が原因で今現在猫用のチョーカーみてーなのを付けることになってるんだが、というのを言おうか言うまいか一瞬悩んだが、何かこれはこれで別な揶揄われ方をしそうな気がしたらから、あえて何も言うまい。

 ひとしきり笑った後、茶髪リンスは「仮説は立てられたわ」と言う。

 

「あなたのその体質、女の子への極度の困惑から生まれてるかもしれないわね」

「困惑ぅ?」

「家族構成とかはともかく、さっき聞いた質問から仲間思いとか家族思いな性格とは出てるのよ。で、そんなあなたにとって女性というのは全くの未知の存在」

 

 何か言い回しのスケールが変になってきたな。

 

「初恋の女の子が出来てから、知らず知らずの内だけどあなたはパーソナルスペース、自分が安心出来る自己の領域の境目を段々と壊されてきた。不可抗力もあったんでしょうが、きっと今までにない刺激に対して、健全な男の子としてのフラストレーションが蓄積される一方。

 でもあなた生来の性格から、その欲求不満の優先度はとても低くなり続け、短期間とはいえその生衝動(リビドー)は内側で徐々に徐々に煮詰められている。

 つまり、意志とは関係なく肉体が、本能が女の子の身体にそれとなく反応するようになってしまっていると思のよ」

「……………お、おぅ?」

「聞く限り、その()()()()ことってまだ冗談で済ませられるレベルだと思うのだけど……、肉体接触が増えれば増える程、生来の性格が異性への情動と反発して煮詰められ、インフレーション化していってしまう。

 仮説ではあるけど……、あと半年以内にはもう責任とらないといけないくらいになりそうだから、早い所告白して返事貰って付き合っちゃいなさい」

「そんなに酷ぇのか俺の身体……」

「ついでにとっとと合意の元でヤッちゃえば万事解決♡」

「つーかテキトー言ってるだろお前……」

 

 思わずドン引きするのと同時に「責任とらないといけないくらい」ってどういう状態なのかと、それはそれで()衝動が煮詰まっていく感じがする。

 いや、流石にそんな形で色々とアウトなのは、俺もサヤも本意じゃねーんだが……。

 ん? あれ、でもちょっと待てよ?

 

「その言い方だと、エロいことになる対象って別にアイツだけじゃないだろ。それこそお前だって含んでもいるはずだが。そこのところどうなんだ?」

 

 少しでも茶髪リンスの仮説を否定する材料を集めたい俺に、しかし茶髪リンスは少し思案してから「意外と簡単かもね」と笑う。

 

「あなたは殺し屋。そして、その子が出てくるまであまり周囲に好意的に関わろうとさえしていなかった」

「そんな話までしたか? 俺」

「初歩的な推理よ、()()()? まあ、以上の二点から推測は可能だけど……、聞く?」

 

 さっきからだいぶトンチキな話が飛び交っていて眉唾ではあるが、一応仮にも研究者を自称するこの女の話を聞こうと、そういう気にはなっていた。

 藁にも縋る思いというやつだ。

 いや本当、サヤとの関係は死活問題なので……。

 

「うん、だから女の子……、困惑しているのは異性に対してだけなのよ。あなた」

「…………は? いや、話を繰り返されてもなぁ」

「もっと言うと、()()()()()()()()()()()()()()って意味。普通の人なら道行く相手に目を奪われることもあるでしょうし、私のおっぱいに目が釘付けになったりもするでしょうけど」 

 

 別に釘付けにならないから自分で胸を揉みしだくなとツッコミを入れておく。

 寄せて上げて何かを()()()()()()ような仕草をしても無反応な俺に「そういうところ、それよそれ」と茶髪リンスは微笑んで首肯した。

 

「だから……、あなたにとっては、潜在意識では他人は全部殺す対象ってところなのよ。映画とか小説風に言うと……、糞袋? 品が無い例えかしら」

「…………」

 

 似たようなことをたまに考えてるが、品が無いと言われればちょっと怯む。

 

「自分以外の誰も彼もが、そんな()()()()()()世界で暮らしていたのが、あなた。だけどそんなあなたに、天使が舞い降りた」

 

 その表現も大概古いが……。

 ステーションのネオンや月光に照らされるサヤの笑顔が、不意に脳裏を過り、身体がちょっと暑くなる。

 

「そこで、あなたの世界は開けたのかもしれない。……内面についてのカウンセリングじゃないから、そこは今回取り扱わないけど。とにかく、その初恋はあなたの人生を決定的に変えたと言えるかもしれないわね。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことなんだもの」

「…………俺にとって、異性だって想える相手はそいつだけだって言いたいのか?」

「そう! そう聞くとロマンチックじゃない? 愛は最強ってことね」

 

 そこだけは揶揄う気配もなくニコニコ微笑む茶髪リンス。

 俺は俺で、眼鏡を外して視線を逸らすしかない。

 

 ────トレイン君!

 ────こんな私、大好きだって、そんなこと言ったのトレイン君が初めてっスよ?

 

「……どっちにしろ問題が山積みになっただけなんだがなぁ」

 

 つまり、俺にとって世界の半分はサヤ()()だって、そういうことらしい。

 いや、前世に目覚めている以上は理性の面ではそうじゃないんだが。

 少なくとも肉体面で……えっと、つまり、()()()()()()()がアイツ一人に限定されているから、エロいやらかしがアイツ一人だけに集中してるっつーことだな。

 

 流石に死にそうになるくらい恥ずかしいんだが……どうにかならねーかコレ?

 

 誰に言う話でもなく、そのことを胸に秘め。

 ……この後どんな顔してアパートに帰ったもんかと、少し頭を悩ませた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 そしてアパートに帰って。

 入口が、まるで大砲でも喰らったみてーにボロボロになってた。

 いきなり意味が解らなかったが、俺は、この構図をどこかで見たことがある。

 

「どういう、ことだ……?」

 

 原作ブラックキャットで、そう、確かこんな絵面を見たことがあった。

 スヴェンとトレインのアジトに襲撃して来た相手によって、拠点が壊され……。

 いや、主目的はそこじゃない。

 

 

 

 慌てて部屋の奥に駆け付ければ……、火傷したみてーにボロボロになってる、ズタボロになった民族衣装姿のサヤがいた。

 

 

 

「なん、だよ?」

 

 一瞬、思考が真っ白に染まった。

 だが、背中が辛うじて動いているのを見て、死んじゃいねぇってのだけは判った。

 慌てて駈け寄れば……、銃創こそなかったが、まるで熱された鉄球を何発もブチ当てられたみてーな、そんな変な火傷の数々。

 だが、生きている。

 生きていてくれた。

 

「トレイン、君…………」

「……っ、サヤ!」

「あ、はは、ちょっと下手、こいちゃったかな? まあ、命あっての物種、だから、全然おっけーだけど」

 

 あはは、と力なく笑いながら、サヤは意識を取り戻した。

 いや、というか取り戻したじゃなくって、消耗するからあえて気絶したフリでもしてたな、コイツ。

 見た感じ、腹部とか致命的な急所だけは守り通しているみてーだし。

 

「あー、乱暴とかはされなかったか?」

 

 隠すようなことじゃねーし、隠した方が後々サヤにとってダメージになりそうなことだから、俺は特に隠さず聞く。

 少なくとも、表向きの理由は。

 こっちの内心を察してるのか、サヤは苦笑いを向けてきた。

 

「うん。目的が……、そういうのじゃなかったし」

「強盗か?」

「そうでも、ないかな? えっと……、背中、見れる? 後でちょっと、トレイン君のツテで何か治療できる方法、考えて欲しいんだけど」

「…………ッ」

 

 惨い事しやがるぜ。

 どうやら相手は、サヤを殺すつもりだったらしい。

 サヤが目的と言う意味じゃない、むしろサヤは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あえて殺されかけていた、というところか。

 サヤ本人は死んだフリしてやりすごしたっつーか、これだけ痛めつけたらすぐ死ぬと判断されたってところだろうな。

 

 なにせサヤの背中には……、雑にナイフか何かで刻んだ文字が、メッセージが書かれていたのだから。

 綺麗だった背中に、赤く、雑に斬り刻まれた文字が、……本当に雑な傷として残っている。

 首のすぐ下から、腰、尻のすぐ近くまで。

 

 ────殺し屋クロ。小娘の仇を討ちたくば以下の座標の衛星に来ることだな、と。

 

「……悪い。何か巻き込んじまったみてーだ」

「いや、トレイン君のせいじゃ…………、ない、でしょ?」

「俺を名指ししてる以上は、俺が目的みてーだからな」

「…………それでも、だよ」

 

 ちょっと寝るから病院よろしく、と言って目を閉じるサヤ。その手を握って、俺は…………。

 

「お前は好きじゃないだろうが……、オトシマエは付けるぜ」

 

 多分、前世を思い出してから初めて。

 明確な殺意ってものを自覚した。

 

 

 

 

 


Q.芸術分野に目覚めたザスティン?

A.本作的にはもともとクリードなので、むしろ回帰して来た。本人は語ってないが、地球で良い出会いが有ったのが切っ掛け……かもしれない。一体何ドナさんなんだ(すっとぼけ)

 

Q.(いっぱい)とらぶった?

A.(いっぱい)とらぶった。3カ月経ってるのでどんどんパワーアップしていってる。ミカドも言ってるけど、このまま放置するともうサヤ限定で不本意な形にとんでもないことになるのは間違いなし。

 

Q.ハレンチ症候群についてこの見解正しい?

A.微妙に正しくはない。とはいえ触れるかどうかは微妙ですが、半分くらいは原作ダークネスの方のオチまでで分かるかなって具合です。

 

Q.そもそも組織が監視してそうなアパートがどうして襲撃されたの?

A.アパート事体を組織が運営してる訳じゃないって言うのと、今回の情報漏れは掃除屋ルート。クロはしらないけどこっちにもアネット的な人物がいて、そこからサヤの住所と言う形で漏れた。

 

 

 

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