とラぶラックキャット 作:那覇ダイア
プラズマ発生能力獲得RTA、は~じま~るよ~。
えっ? 開幕早々ガバ? 何のことです?
原作のブラックキャットで、トレインが子供化するエピソードがある。
あれの原因はクリードの暴走と、仲間を庇った結果というところから発生する「バケモノになるか何になるか」というところでの、そこから始まったコントのような一幕だった。
まあ、描写上コントじみてたが、トレインにとっては完全にあれは悪手でもあった。
理性を失った怪物にならなかっただけ御の字なのかもしれないが(ひょっとしたら何かしら守護霊(?)の加護(?)が働いたのかもしれないが)、それにしたってトレインにとっては致命傷だ。
トレイン=ハートネットの戦闘力は、おおよそ基本的な身体能力に依存している。
動体視力然り、素の視力しかり。
この二つについてはある程度維持していたようだが、そもそもの基礎的な体力というか、運動能力の喪失こそが子供化における問題だった。
銃の連射が出来ない。
どころか、狙撃一発の反動で取りこぼしかねない。
作中では、ハーディスの装飾紐(に見せかけた専用ワイヤー)を伸ばしに伸ばして手に巻き付けて取り落とさないようにしていたくらいだが、それでもこのせいで「本来のトレインからすれば」かなりの苦戦を強いられた。
要するにこんなもの、百害あって一利なし。
解除する方法は原作を知ってるがゆえに無くはないんだが…………。
おそらくこっちも、原作とそう差はない方法で元の姿に戻れる確信はあるんだが。
「はい、トレイン君♪ あーん♪」
「…………んっ」
「美味しい?」
「ミキサーですり下ろした林檎で感想求めるなよ」
うん、駄目、無理、死ぬ。
語彙力死んでて申し訳ないが、まあ、現在の感想はこんな感じだ。
とてもじゃないが、その解除方法とやらを試しても失敗する未来しか見えない。
何せ何故か熱を出して身動き取れない子供化した俺を、サヤがかいがいしく看病してるのだから。
『だって何かトレイン君、任務帰り? ですごい汗びっしょりで死にそうだったし、雨だって降ってたから風邪ひくかなーって思って、仕方ないから部屋に連れてきたのに……、何かこう、いきなり身体が小さくなっちゃったし? 可愛かったし? うん。イマドキ何かと物騒だから、一人で部屋に返すのはなしっスよ~』
そんなことを言いながら、完全に子供をあやす様に頭を撫でてきていたサヤ。目覚めた時点で、ベッドの上で全裸にタオルケット一枚だった俺としてはもう色々と訳が分からねーし、サヤもサヤで下着っぽい感じで(さらしとふんどし?)、一体どういう状況だって絶叫したのも当然だろう。
なおサヤ本人は。
『私、寝るときは下着だけの主義だし……暑くて暑くて』
襲うぞ、と言えば「はいはいもうちょっと大きくなってからね~」と、完全に子供をあやすノリで頭を撫でて来る始末。
全く意識されてない訳じゃないだろうが、それ以上に子ども扱いされていた。
一応、熱を出しかけていたこっちに気を遣ってベッドで寝かせてたとか、看病してたら眠くなってそのまま一緒にベッドで寝てしまったとか、そんなオチなんだろうとは思いはしたが……。
いや、だからといって無防備すぎないかお前。
『というか俺の名前知ってるって、絶対こっちの私物漁ったろ』
『そりゃ、盗みはしないけどちょっとはね~。住所知ってたら
『いや、その話こそ俺は初耳なんだが……』
マンションの屋上で遭遇する時点で察するべきだったかもしれないが、まあ、つまりそういうことらしかった。
正直ここだって任務の合間に寝に来たり、猫の世話したりするくらいの時間の使い方しかしていなかった以前の俺だ。
自分の部屋の周辺なんざ全く気にかけてなかったのだから、こういう展開が起こる可能性もゼロではなかったろう。
……なんとなく
ちなみにサヤが漁った俺の私物……、主にカードキーとか名刺関係だが、一番頻出する名前が「トレイン・
いやまあ、話を現在に戻そう。
こっちに「あーん」なんてしてくれやがった……、相変わらず下着姿に、その上からふりっふりの似合わないエプロン姿のサヤに。
目に毒どころの騒ぎじゃねェんだよ……。
胸とか、ケツとか、ほぼ身体のライン丸見えのまま活動していやがる…………。
こっちもちゃんと「服、買って来たから!」と子供用のやつ着てなかったら、色々と
「…………風邪薬買って来てくれたり、料理出来ないなりに頑張って病人食を食わせてくれてんのは感謝するけどなぁ、せめて部屋の中ではまともな服を着ろッ! さらしにふんどしにエプロンとかマニアックすぎるだろうがッ!」
「えぇ~……? いや、だって、暑いし」
「ガサツすぎてもうちょっと何か頑張れよ!? 女子として!!?」
「あーっ! ちょっとガサツって何よトレイン君! 君ちょっと失礼っスよ~! 猫しかお友達がいないのに渋く決めようとして失敗してるくせにー!」
「お前それ……おま、それは流石にちょっと、いや、デリカシー考えろッ!」
「やーい! ちーびちーび、ちっちゃい子~! 可愛いぞ~!」
「その煽りはケンカ売ってると見た、買うぞコラッ!」
解熱剤のお陰で少しは熱が下がってきたとはいえ、病人相手に何を取っ組み合いのけんかをしかけてやがるのか。
まあ身長差が現在はあるから、頭抑えられて大した攻撃はできねーんだが。
せいぜいがエプロン引っ張ったり、ぐいぐいと押したりくらいだ。
足払いも頑張れば出来そうだが、それを許してくれるほどこの女も甘くはない。
「ふっふーん、お姉さんに勝てるとは思わないことだ~!」
「多分、俺の方がお前より年上だぞ……?」
「えぇ~? でもほら、私、背丈162
「俺の方が身長高いじゃねぇか」
「今のトレイン君、大体120
「何で知ってんだよ」
「服、買いに行く前に測ったもの」
天下の“不吉の運び屋”もこれじゃかたなしっスね~! と、けらけら楽しそうに笑いながら俺を抱き上げ、またベッドに寝かしたサヤ。
当然のようにこっちの素性まで把握してやがるあたりは、まあ、やっぱり何だかんだ言ってブラックキャットにおけるサヤ=ミナツキに違いはないんだろうってのは良く判る。
「そういえばデビルーク系の血筋だっけ? 生態エネルギーを使いすぎると、身体が縮んでエネルギー回復につとめるーみたいな噂があったりするし、王様も最近見かけないのとかそうじゃないかなーって思うんだけど、もしかしてトレイン君……」
「いや違ぇからな。止めろ、そんな風評被害を俺に押し付けてくるな」
「風評被害?」
「ああ」
主に
もしそんな話が漏れでもしたら、只でさえ謎の息子でも見るような目の可愛がられっぷりだったのに、拍車がかかるのが目に見える。
しかしそれはそうと、この流れでデビルークの血筋の話なんざ噂話でも耳にしてる時点で、尋常じゃねぇ。
デビルーク王に関しては箝口令も敷かれてる上(そのうち公開するらしいが)、デビルーク王が表向き大戦後声以外でその姿を表に見せてないこともあり、弱体化の情報は洩れ次第騎士団やら親衛隊やらが狩り尽くしてるって言うのに。
まあつまり、サヤは
で、それがどうしてこんな単なる知り合いの野郎相手に、馬鹿みたいに世話焼きしてやがるのか…………、そういや他人の世話役の趣味だったっけ? 黒猫原作だと。いやあんまり覚えちゃいないが。
サヤ本人にどうして無駄に親身になって世話を焼くのかと聞いてみれば。
「なんとなくっスかね……? ほら、トレイン君ってば子供っぽいし。子供は好きだから、そりゃー世話焼くもの」
「理由、雑すぎねぇか……?」
「トレイン君、今の姿の方が色々あってるんじゃないっスか? 性格とか、声とか。私も甘やかしやすいし」
「アンタがどういう感情で俺に接してるか全然わっかんねーんだけど!?」
「ほーれ良い子良い子、今日はハンバーガーっスよ~? ……外食で」
「あっ(察し)、悲しいな……」
そうか、焼いて切って挟んでくらいだと思うんだが、それすら超リスキル的にダメか、そっかー ……。
「まー真面目に言うとっスね」
勝手に納得して生暖かい目をしていた俺に、気付いてないのかサヤは少し遠い目をして笑う。
雰囲気が少しだけ真面目になったので、俺も揶揄うテンションを抑えた。
「今のトレイン君見てると、育った施設のことを思い出すからっスかね~」
「施設?」
「そ! なーんか昔、虐待されてたらしくって? うん。私の記憶の始まりって施設入ってからしかないんだ~。しかも親戚中たらい回しにされて、引き取り手が一人もいなくって。施設の先生が親代わりで、ホームの下の子はみんな弟か妹でさ」
何てことのないように笑って話すサヤは、俺の頭をポンポンと撫でて。
「だから、実際の年齢なんて関係ないよ。トレイン君、いっつも話してる時はガサツで意外とひょーきんだけど」
「その人物評いらないだろ、オイ」
「まあまあ♪ だけど、いっつも
「…………」
「……多分だけど、殺し屋とか向いてないんだよ、きみ」
「……………………」
「それだけ。だから、私は私で私の接したいように君に接することに決めたって、それだけだよ?」
何と言うか、見透かされたっていうより俺がわかりやすいってだけかもしれねーが。
なまじ「前世」を思い出したせいもあって、今まで感じてなかった殺しに対する
とはいえ、その上で「殺し屋、やめないの?」とか聞いてこないあたりは、やっぱりサヤはサヤ=ミナツキらしく、出来すぎた良い女だった。
そう簡単に割り切れたら、原作のトレインも悩んじゃいなかったからな。
……こんな話を、エプロン脱ぎながらの下着姿で話してなけりゃ、素直に反応返せるってのになあ、本当に。
真面目な話しながらでも、ズボン押さえつけなきゃいけねー自分の情けなさといったらこの上なかった。
※ ※ ※
部屋にいると世話をやかれるのは、
ま、隣同士だからサヤも全然心配しちゃいねーっていうか「何かあったらすぐ駆け付けるっスからね!」と胸を張って(だから下着姿止めろ)いやがったから、まー、本人が納得してるなら良いんじゃねーのと投げやりな感想にならざるを得ねぇ。
身体が子供化したことに関しては、俺自身よくわからないと誤魔化す他なかった。
いや、メタな前世知識なんてなければ本当に誤魔化してる訳じゃないんだがな?
サヤも「まー世の中広いし、そういう魔術くらいあっても不思議じゃないかな?」とか言ってたし、わからないってことにわからないなりに納得はしたんだろう。
『私の知り合いの情報屋経由で、解呪とかの専門家とか探そうか?』
『とりあえずはいらねー。こっちの組織でまずは当たるよ』
『わかった。助けが欲しかったら、いつでも呼んでね?』
にっこり微笑んで手を差し出すサヤの顔を直視できなかったのも、その手を取ることが出来なかったのも、まあ、いつも通りというか情けないと言うか。
子供の身体のせいか普段よりそういった面が伝わりやすいのか、俺の反応を見て何だか妙にニヤニヤしていたサヤ。流石にそんな話をしてる時は外行の例の民族衣装を着てはいたが、だからこそ猶更、俺も自分の心の動揺ぶりに困惑していた。
「本当に初恋みたいになってるじゃねーか。ロクな付き合いがあるわけでも無ぇくせして……」
何度か繰り返しているような自嘲をしつつ、俺はとりあえず身体を慣らすために散歩していた。
目測に対して歩幅やら、歩行速度やらが違いすぎて全然比較にならないってのは、妙に気持ち悪いやら懐かしいやら、何とも言えない気分になる。
ハーディスの試し打ちをした
とりあえずザスティンに、ナノテク兵器について何か情報を知らないかと連絡だけしておいて、その辺の公園周りをうろつく。
公園って言っても宇宙世紀時代のヘイロー型宇宙ステーションだし、地面の大半は土じゃなくて人工芝生だ。
あくまで、どっかの惑星の見せかけ。
実物じゃない。
でも、まあ……、無いよりはマシって思っちまうあたり、イキモノってのは何だかんだ自然の中に生きるっつー本能でもあるのかねこれ。
「……で、そんなことを思ってたらってハナシだ」
世間は狭ェというか、何と言うか……。
いや、宇宙規模で考えれば広いんだが、近隣で事件が起こっている以上は狭い範疇の話なんだろう。
丁度、スヴェンが原作よろしくイヴに一突きされて、致命傷を負ってそうな場面に遭遇するとか────。
あの研究所で見かけたドクターっぽいのはいないが、一体どうやってここまで来たんだ、イヴも。
んで、イヴを回収しに来てる連中もサイボーグ兵士なんだろうが、姿形が黒い宇宙服にガスマスクみたいなタイプと、ンマー宇宙空間での活動を前提とした装備だったりもするし。
唯一生身なのが、研究所にいたお偉方の護衛っぽい痩せた男だったりもして、どう考えても逃げ出したイヴを連れ戻しに来てる感じではあるんだが……。
とりあえず、「追跡用発信機」の内蔵された弾丸をハーディスに装填。
逃げる連中の
内部にあった弾丸が、ハーディスによって生成された「弾丸の殻」を纏い、ホーミングの性質を帯びて連中のスペースサイクルめがけて飛んで行った。
この世界のハーディスは本来、こういう使い方が正しい。
普段俺がやってるのは、とにかく
ま、こういうもの含めて奥の手の一つではあるんだが……。
とりあえずぶっ倒れてるスヴェンの介抱と状態確認に向かう。
流石に紳士服の背中から、大きな刃が生えたって時点で捨て置いて良さそうな状況じゃねぇ。
どう考えても腹、貫通してるだろ。
そう思って助け起こしてみてみれば……。
「おい、大丈夫かオッサン!」
「痛……、って、俺はオッサンじゃなくってまだ、二十代だッ」
「いやそれ大事なことかよ……?」
「坊主にはまだわからないか? 大人になるって、悲しいことなんだよ…………」
妙に哀愁を漂わせながら、そんなことを言うオッサン、というかスヴェン。
見れば眼帯が外れていて、オッドアイの片目が露出している。
────
原作において、スヴェンがかつて所属していた国際警察機構的な警察組織の相棒が使っていた能力。
本人の目に依存するタイプの特殊能力で、現在はスヴェンの目にその眼球は移植されている。
スヴェンが本来の持ち主じゃないからこそ、発動に関して異様に体力を奪われるらしいが、こっちのスヴェンだと果たしてどうなってるやら。
ただ、軽く見た感じその目の能力を使ってイヴの攻撃を回避したってところか……?
「背中から色々飛び出してたけど、大丈夫かオッサン!?」
「…………大丈夫だ。ああ、
言いながらスヴェンは、シャツの抉れた腹部の下……、少し引っ掻くように切ったくらいしか傷の無い腹を見てため息をついた。
……イヴの奴が、上手い事回避したって?
少しくらい
「あの子は……、誰かを探していた」
「誰かって何だよ」
「母親か、姉か……、いや、家族だ。アイス食べながら、寂しそうに話してたよ」
スヴェンも動揺してるのか、初対面だろうガキ(※流石に
自分の中での情報整理もかねてるんだろうが……、女子供がああいう扱いを受けてるってのはやっぱり、紳士を自称してる分にはちょっと思う所があるんだろう。
真面目な意味で、紳士道なんてアホなことを美学としてる以上はって話だ。
まあそれはそうとして、念のため医者に診てもらった方が良いだろう。
そう思ってスヴェンに言えば、アテはあるとか何とか。
いったんスヴェンが自分の端末で誰かに連絡を入れて、ベンチまで運ぶ。
「貫通はしちゃいないが、意外と打撲がな……」
「刺される前、ボコボコにでもされたか?」
「可愛い顔して、女の子は結構強いからなあ。坊主にはまだわからねーか?」
ま、とりとめもない話だ。
そしてスヴェンが揶揄うように俺の頭をわしわしガシャガシャにしてくるが、俺は俺で反発する。
そうやって子ども扱いすんじゃねえっていうのと、後は…………、割と女の子が結構強いってところは、俺も思う所があった。
その後、一旦スヴェンから離れた……フリをし20
ぶつぶつ文句を言ってる様子を見るとだいぶ気安そうだが……。
ひょっとしてリンス相当の誰かか? 何か、服装の露出度はどっこいどっこいだが雰囲気けっこう違うんだが。
「いや、年はあっちの方が上みたいに見えっけど…………」
しかし、こういう流れを見てると、どうやらトレインがスヴェンと相棒やってるやっていないにかかわらず、このまま行けばスヴェンはあの衛星に乗り込んでいくだろう。
となると、俺としてもあまり放置はできない。
こっちの任務より先にイヴ救出、施設の雑破壊なんてことになったら…………、
実際どこまで俺が信じているかはともかく、ブラックキャット的な意味でナノテクやってる連中にドクター(カンザキとか言ったっけ?)みたいなのがいるとすると、どう考えても後々まで残しといて世の中のためになるとは思えない。
少しでも逃げられたら、また連中は研究を始めるだろう。
つまり、早々に元に戻って任務を続行しないとまずいってことになる訳だ。
だからこそ、俺はいわゆる
生かすことにして────────予想外の事態に見舞われた。
「く……、ぅ、ぉ、お、おおおおおおおおおおお…………ッ!」
それこそ原作通り……、細かいことは省略するとして、ある意味転生者だからこそ原作より有利な方法で、ナノマシン由来だろう子供化の解除を試みたのだが。
大人の姿に戻った俺の全身からは、強烈な光と電撃がほとばしり、部屋中のありとあらゆるもの目掛けて放たれて。
「トレイン君!? もしかして何か襲撃とか? だ、大丈夫!?」
「ッ、来るんじゃねぇ!」
隣の部屋から慌てて入って来たサヤに、その放電が、迫る────。