とラぶラックキャット   作:那覇ダイア

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#05.ハレンチ宇宙猫

 

 とらぶる初級編・その2。

 長いけどキリが悪いので、今回はそのまま。

 


 

 

 

 

 

 原作でトレインに撃ち込まれたナノマシン群……、弾丸に込められたソイツ「ルシフェル」は、撃ち込まれた対象に対して、一定時間置いてから強制的にトランス、原子配列を組み替えて別な形の生命体へと再形成させる……要は永続的に変身させる効果を持つ。

 これを喰らったある人間は狼男になったし、何がどうなるかなんざランダム。

 危険性しかねぇし、こんなモン遊びで作るにしたって正気じゃねぇ。

 その点、子供の姿になった……例えて言えば()()になったっていうのが正解なんだろうが、そうなったトレインはツイてる方ではあるんだろう。

 自我を失ってなかった。

 そして、だからこそトレインは()()()()()()()()()()()()()

 

 ナノテクノロジー研究の権威、ティアーユ・ルナティーク博士はトレインに言った。

 身体を現在の状態にしているナノマシンをすべて破壊するか……、もしくは、自らの意志でナノマシンを制御するのが解決の糸口だと。

 ナノマシンの性質として、基本的にはイヴの体内にあるようなナノマシンとものは同質のものなのか。

 イヴ自身でいえば、原作を振り返らずともちょうどスヴェンを襲った時、右腕の肘から下を巨大な剣のように変化させていたあたりがわかりやすいだろう。

 ああいう風に、脳からの生態電流をもって体内のナノマシンに働きかけ、自らの姿を、自らの強固にイメージした姿に再構成し直す。

 

 雑に言えば、気合と根性で治す、といっても間違いじゃないだろう。

 で、基本的に今までの傾向からして、物語の規模の大きさ(宇宙的な意味で)が違ったりと色々はあるが、根本的な部分だけはそう原作から外れていないと判断した。

 だから自室。

 一人で集中しながら、自らの本来の姿を思い出す。

 本来って言ったって俺の自己認識だと漫画版ブラックキャットのトレインのイメージがかなり強いが、それはそうとこっちで十数年生きて来てる自分のイメージもオーバーラップしてるから、そこまで大きな問題にはならないだろうと踏んでいた。

 ……サヤの部屋にいたときはもうそんなどころの騒ぎじゃなかったからどうしようも無ェ状態だったんだがな、ま、うん、とりあえずは今は大丈夫。

 集中してるときに、不意にアイツの身体のラインとかが脳裏を過ったりはしねぇ。

 そこまで脳みそが桃色になる病気に侵されちゃいねーし、はっきり言ってそれやったらコントみたいな人生だろ。

 

 で、その結果が現在。

 ハーディスを両手で握り込み、目を閉じて集中して、全身に対して「本来の姿になれ」と思念を込める。

 ハーディスの弾丸を形成するのと似たようなノリで、俺自身の意志を、俺の全身の細胞に呼びかけるような、そういうノリ。

 

 その結果……、ピカチュ〇でもねーのに常に身体から電撃を放出しっぱなしのびっくり人間の誕生ときやがった。

 

 ナノマシンの制御の効果として、生態電流の超強化というものがあったが、あくまでも「びりっ」と静電気が走る程度。電圧はともかく電流はそんなに高くないのは間違いないはずだった。

 だが、実際こうして部屋の至る所を黒焦げにしてる電撃を見てると、生半可な状況じゃないのは間違いない。

 もしかすると地球人由来の肉体じゃない、宇宙人由来の肉体のせいとかかもしれねえと、今更ながらに思う。

 原作トレインも大概人間離れしてたが、こっちにおいては地球人基準で見ても恐ろしい程の身体能力を誇るこのクロことトレインの身体。

 それを制御するための電流もまた、地球人基準のそれとは比べ物にならなかったということなのかもしれねぇ。

 とにかくちょっと意識するだけでありとあらゆる方向に被弾する電撃の雨霰。

 思わず取り落としちまったハーディスも、破損はしねーけど衝撃でどっか部屋の隅とかの方まで行っちまってるし、こっちから見えない。

 自室の物と言う物にダメージが入りまくってる時点で、一体どれくらいの威力が出てるのかって話だ。

 若干のタイムラグがあるからおそらく放電するまでにチャージしてる時間があるんだろうが(コンデンサじゃねーんだから……)、どっちにしろ意味がわからねー。

 

 ただ一つだけ言えるのは。

 

「トレイン君!? もしかして何か襲撃とか? だ、大丈夫!?」

「ッ、来るんじゃねぇ!」

 

 いきなり雷が落ちたような音が連発してる隣の部屋に、驚きながら入って来たサヤが。

 

「わ、わかんないけど解った!」

 

 その場で反射的に、その辺にあったミルク缶の空き缶を投げて避雷針代わりにするくらいには、()()()してるってことだ。

 一瞬でそういう判断が出来る辺り、やっぱり賞金稼ぎとしての腕前は上から数えた方が早いだろコイツ。

 単純な戦闘力と言う意味ではまだまだ上はいるが、センスみたいなもんが明らかにずば抜けていた。

 すぐさま部屋の扉を背にして隠れるサヤは、少しだけ戸を開けて声をかけて来る。

 

「何かすごいことになってるんだけどー!? どうしたっスかトレイン君! っていうか身体元に戻ってるっスね! おめでと!」

「おう! って、そうじゃねーよ!? 戻ったは良いけど、何か危ねーことになってるから!」

「そもそもどーゆー経緯でそんなオモシロおかしーことになってるのサ!」

 

 あははと笑いながら、茶化しながら、サヤは楽しそうにこっちに話を振って来る。

 別にそんな面白い所もないだろうと叫べば「だってトレイン君、今絶対凄い慌ててるし!」と笑い返される。

 人の慌てる姿を見て楽しんでるとか良い性格してるじゃねーか、と怒りたいところだが……、まあ生憎こっちにそんな余裕はねぇ。

 ベッドにはまだ引火しちゃいねーが、そこまでいったらスプリンクラーが起動して水噴射しまくって部屋中水浸し。

 被害がもっと甚大なことになりかねねぇ……というか、浸水でもしたら間違いなく災害規模になる。

 俺何か悪い事したかな? とか自嘲したくなるが、まー前世に目覚めても殺し屋家業止めてねェあたり、育ての親(ザギーネ)やら雇い主(ギド)やら相手のせいで身に沁みついた生き方ってのが抜けないってのが問題なんだろうが。

 こういうところをみると、なんだかんだ自分が原作トレインとはやっぱり別人なんだと思ったりもする。

 いや、原作トレインの場合はサヤに対するあこがれとか、サヤの振る舞いをマネしてとか、そういうところも大きかった気がするけど。

 割と最終決戦とかの感じからして「強い女の子に護られる男の子」みたいな構図が好きそうだし、あの漫画。

 それでも最終決着を男の子にゆだねてるから、ブラックキャットは一応少年漫画ってことかね。

 

 まーともかく、気合で無理やり身体を直したと言われたら「意味わかんない!」と返される。

 ごもっとも、だが正直そうとしか俺の知識量だと説明できねーんだよな……。

 とりあえず、多分これが科学系の由来であること、所謂ナノマシンとかその類であるのなら自身の生態電流で制御できるんじゃないかと試してみたこと、などなど。

 まーテキトー極まりないことをあーでもないこーでもないと言い募って、納得はできないけど理解はしてもらった。

 

「つまり、トレイン君が大人に戻りたいー! て思って、身体のナノマシンもそれに無理やり従わせたって訳!?」

「たぶん!」

「潔いね!」

 

 そしてこの期に及んでまだけらけら笑ってるサヤの、何と恐ろしいことか。

 狂ってる訳じゃねぇ。この状況を愉しんでるって訳でもねぇ。

 純粋に、こっちの身体が戻ったことを喜んでいやがる。

 そういう()()は敏感だから、嫌でもわかってしまう。

 お人よしとかそういうのでも無ぇし、一体どんな精神性していやがる。

 おまけにだ……。

 

「どうやったら止められるとか、対策とかあるの!?」

「無い訳じゃねーけど、多分無理だぞ!」

「でも、放置しといたらトレイン君、()()()()大量殺人犯になっちゃうじゃん! 日中だけどここ、お年寄りとかも多いし対応できないでしょ!

 大丈夫、これでも私────強いんだからっ」

 

 えへん、と胸を張ってるのが扉の隙間から聞こえてくる声でわかる。

 嗚呼だから、基本的に俺は誰かに頼るように生きてきちゃいねーんだってのに……。

 だってのに…………、そんなこと言われたら。

 困るじゃねーか。本気で。

 

「…………俺の、銃」

「あの格好良いやつ!?」

「…………さっき、勢い余って落としちまってどっか行っちまってるけど、それがあれば、多分、なんとかなる」

「わかった! じゃあ、行くよ!」

「えっ? いや、ちょっと待────」

 

 ちょっと待て、と言おうとした瞬間、サヤは当たり前のように扉から手を差し入れた。

 手元には拳銃……、前見た時はショットガンサイズになっていたが、どうやら兼用というか、変形して大型の銃になるタイプの拳銃らしい。意匠が共通してる。質量保存の法則どこいった。

 その銃のままサヤは狙撃……、弾丸はゴム弾みたいなものなのか音の硬質さがちょっと違う響きだ。

 その弾丸は、雷の直撃を受けてなお地面やら天井やらに激突して、跳ねまわる。

 

 反射弾(リフレクショット)……、跳弾攻撃は、原作でもこっちでもサヤのお得意だ。

 

 何なら弾丸が非殺傷弾な分、狙撃先に刺さって止まるリスクも無いのかまー縦横無尽に跳ねまわる。

 とはいえ導電性がいかに低いとはいえ、ここまで周囲にぶんぶん飛んで来ると流石に雷も何度か直撃して撃ち落とす。

 こうも無駄に弾丸を撃って、サヤは何をやろうとしてるのか…………。

 

「……よし、わかった! トレイン君、少しで良いから抑えられる? 電撃!」

「お、抑えるって言ったって…………」

「気合と根性で何とかしたんなら、気合と根性で何とかできない!?」

「…………」

 

 そう言われると、確かにどうにかできそうな気がしてくる。

 いや、惚れた弱みで応援されたから何でも言うこと聞いちゃうみたいな話じゃなくて。

 そもそもの現在の身体変化自体が、俺の意志に従ったナノマシンによって成立しているのならば、だ。

 

 逆説的に、俺の意志でそれを制御することが出来るのではないか、ということ。

 

 そしてそんなことを考えてるうちに、ふと原因の一つに思い当たってしまった。

 

「…………まさかな」

 

 いや、まあそうだとギャグなんだが。

 流石にそれは違うと思いたいところだ。

 俺が「トレインが子供状態から復活したら電気を放てるようになる」みたいな原作のイメージが中途半端に残っていたせいで、現在の放電状態になってしまったのではとか、そんな馬鹿みたいな話……。

 

「やってやるか……っ!」

「いくよ、いちにの────さんっ!」

 

 サヤの声かけに合わせて、俺は意識を集中する。

 イメージするのは「原作後半のトレイン」ではなく、より明確に電撃なんかと縁遠かったころのトレイン……「殺し屋時代の気配が抜けていない」初期のトレイン。

 同時に若干だが体格が大きくなり(※イメージされた画風やらの違い)、俺自身の全身が一瞬鋭敏になったような錯覚をする。

 ……この状態も長時間の維持はできねーな。

 大戦のとき、周囲を多くの敵に囲まれて一掃し続けた、今よりもっとガキだったころの記憶がよみがえる。 

 あの時と同じ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()覚悟をしていた時のような、わずかでも動くものが有ったら襲い掛かりかねないような体感が俺の全身を包んでいた。

 それと同時に、「放電されなくなりはしたが」いまだに身体に帯電され、先ほどより大きくチャージされている電気が。

 

「よっ、と……、あった!」

 

 一方のサヤは、俺が電撃とは別なダメージを精神に抱え始めているタイミングで、扉を開け、隣を素早く素通りする。

 一切こっちを顧みずに走り抜ける姿は、こんな短い時間の関係な割にこちらを信じすぎていやしねーか……?

 で、そのままサヤは迷うことなく、電撃で粉々になったソファとテーブルを蹴り飛ばす様に滑りこみ。

 初代ロ〇クマンみたいな見事なスライディングで(ついでに袴が猛烈な勢いでめくれ上がって脚が見える)、蹴散らしながら何かを掴んだ。

 何かというか……、ハーディスを。

 いやお前、どうやったそれ!?

 何でそこにハーディスが埋もれてるってわかったんだお前……!!?

 

 そしてそのまま「トレイン君!」と叫ばれて投げ渡されたハーディスを掴みとり、俺はイメージの変化を緩める。

 深呼吸すると同時に、帯電していた電気が一気にハーディスに流れ込み、徐々に徐々にこっちの電撃は収まった。

 

 嗚呼疲れた、とその場に座り込む俺とサヤ。

 肩で息をしてる俺と、こっちの手元に電気が吸われてるのに興味深そうにそわそわして「へ~」とか言ってるあっち。

 

「やっぱりただ綺麗なだけじゃなくって、不思議な銃っスね~」

「……サヤお前、どうやってハーディスの場所を────」

「へっへー! 反射攻撃で、室内の物の配置というか、音の感じを確認したんだよ~!」

「どんな聴力してやがる!?」

「ソナーとかみたいな無茶はしてないっスよー? ただ、何が硬いかとか、下に物が埋もれてるかとか、そんなのをいっぱい重ねただけだって。大体、私の体臭に敏感なトレイン君に言われたくないんだけどー!」

「…………いや、まあ、鼻に関しては確かにあんまり人のことを言え、って、ちょっと待て、誰が誰の匂いに敏感だって!?」

 

 思わずのけぞった俺に、サヤが不思議そうな顔をして自分を指さす。

 

「私のにおい」

「いや、別に違ぇからな!? というか何だ、何でそれを判断したっ」

「お~は~なっ。猫みたいでちょっと可愛いっスかね~?」

 

 いっつも私に会うとぴくぴくしてるし、とこっちの鼻先をつんと押してくるサヤ。

 

「な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、────」

「動揺しすぎじゃないっスか? で、まーそんな感じだから、この間捕まってた時に私の居場所とかわかったのかなーって」

 

 それは、実際あんまり否定できねー。

 そんなに意識して嗅いでいた訳はないが、サヤの追跡中、見失わない程度にその匂いを辿って行ったのは事実。

 だがスヴェンのことも、あの煙薬草(宇宙タバコ)の臭いで場所を判別していたから、自分のスキルを有効活用してるだけだと言ってやりたいが。

 特に引く様子もなく普通に話しかけ続けるサヤのテンションが、一番意味不明だ……。

 

「へ? 気持ち悪くないのかって?

 流石に種族特性みたいなのまでは突っ込んだら野暮っスよ~。多分、何か気になる匂いでもあるんスよね?」

 

 お前自身が気になってるからこその作用だろうと言ってしまえばどれほど楽か……。

 言った瞬間全てが終わるが。

 繰り返すが、別にそんな意識的にやってたわけなどあるはずはない。

 鼻息荒くふんすふんすなんてテンプレなことやってたら、流石にどうかしてるだろ。

 セフィリア相手にも、あっちの種族特性(テンプテーション)相手に何もしなかったことでも驚かれたくらいだし。

 …………お陰で「そう言う所も旦那様(ギド)の若いころそっくり♡」とか言って猫かわいがりされたりしたが。

 何だろうねあの、全く見ず知らずの誰かから親戚の子供でも愛でるような雑な可愛がられ方というか。

 もちろん“黙示の番人(ライダーズ)”十三人目への抜擢はしっかりと精査されたし、試験がてらあの女と戦った結果ではあるんだが。

 あのキャラクターで剣術は妙に強いのは流石にギャグというか、今なら「そこだけ原作(ブラックキャット)らしさ発揮されてもなあ……」ということになる。

 まあそんな話は置いておいて。

 

「…………? トレイン君、それ、銃、何かこう……」

「どうした?」

 

 サヤに言われるがまま、自分の装飾銃(ハーディス)を確認する。

 素材に使われている金属がオリハルコン、ブラックキャットでのそれと同様だったからこそ性質も同じだろうと踏んでいた通り、俺の身体から放電される電気をハーディスはしっかりと吸収していた。

 あれだけ周囲に「物理的な破壊力をともなって」まき散らされていた電撃は、今や大人しく……。

 

 ────ばちばち、と。

 

 大人しく、していたはずだったんだがな……。

 

 ────ばちばち、と、手元から何かが弾ける音。

 

「トレイン君、光ってるその銃」

「あ、ああ…………」

「もしかしてだけど……、限界近いんじゃない? 充電量というか、えっと、そんな感じ?」

「い、いや、まさか────」

 

 ────ばちばちばちばちばちばちばちばちばちばち、と。

 

「……離れろォ!」

「えぇ!? って、何やってんのォ!」

 

 さて。俺は勢いよく窓を開けて、ハーディスを上空へと向けて構える。

 さすがに衛星とか飛行船とかに当たらないって保証はできやしないが、少なくとも市中で暴発するよりははるかにマシのはずだ。

 なにせ電気をチャージしたハーディスから放たれる弾丸は、それこそブラックキャットにおけるクリード最終形態(ラスボス)すら倒しうる一撃そのものの動力源になるのだから…………。

 原作での詳細については今回はボカすが、とにかくこのまま放置したらまずいのは間違いない。

 方法は一つ。暴発するよりも先に、エネルギーを抜くために────。

 

「“電磁銃(レールガン)”────!」

 

 ハーディスの弾丸形成のスクラッチを一回転させ、俺はトリガーを引いた。

 瞬間、ハーディスに蓄積されてた電力……後何かよくわからないエネルギーが迸り、銃口から光線めいたナニカが放たれる。

 弾丸の射出のみにとどまらない、(フォトン)の河。

 下手なレーザービームよりもレーザービームらしい、いっそ雑過ぎるそれは、砲撃と同時に俺の周囲にも大きな反動を与える。

 

 きゃっ、と転がっていくサヤに手を差し伸べてやれるタイミングすらもうない。

 

「く、ぉぉ…………!」

 

 ハーディスに蓄積された電気が、余波のように周囲に被弾する。

 家具とかの破片を燃やしはしないが、焦がし、蹴散らし、どう考えても危険とかそんなレベルじゃねぇ。漢字の当て字変えなきゃいけねーレベルだ。

 逃げろ、と、当然のように俺はサヤに叫んだ。

 だが…………。

 

「ボロボロじゃないっスか……、トレイン、君……!」

 

 当然だが、砲撃の余波やら電撃は俺の身体も襲う。

 さっきの帯電状態はまだ被害こそなかったが、身体から電気がだいぶ抜けたせいなのか、ハーディスから迸る電撃によって俺の黒い衣装はボロボロになっていった。

 パンツ一丁(パンイチ)までは行ってないが、段々と布地が削れ、身体にも火傷が出来ている。

 ただ、そんなことに気を回す余裕がない位には、今のハーディスは取扱注意だ。

 

 何せ砲撃後、未だに銃口から電光の余波が途切れていない。

 少しでも角度をそらしたら、それだけでビル群とかにも被害が出そうなくらいには、砲撃の威力と規模が俺の予想外どころの騒ぎじゃ無かった。

 

 だから俺に構うなと、そう叫んでるって言うのに。

 サヤの奴はハーディスを構える俺の手が震えてるのを見て、窓の外を一瞥して、意を決したように頷いた。

 

「ボロボロの上に、そんなの、一人で頑張れる話なんかじゃないよ!」

「だったら何だって言うんだ! いいからとっとと逃げろって言ってんだ、俺だって、こんなもの制御できねェ……!」

「一人だからだよ!」

「あァ!? 何が!」

「だから────こういう時は、()()()()()()!」

 

 そう言うと、当然のようにサヤは走り出して、俺の背に抱き着くようにしてこっちの右手を、両手で覆った。

 位置を調整し、ハーディスの銃口がブレないように、押さえつけてくれている。

 だがそれは当然、俺自身から放たれる電撃と、ハーディスから飛散る電撃にさらされると言う意味で……。

 

「何やってんだお前!?」

「い、いや、だって、このままだと私もトレイン君の共犯にされちゃいそうだし……事故とか起こったら、絶対に人災扱いにされちゃうし……」

「逃げてシラきり押せば良いだろ!」

「い、いやごめん嘘! ……って、そんな嘘ではないけど、それだけじゃないから! 比率、すっごい小さいから!」

「意味わかんねーこと言ってんじゃねぇって、死ぬぞ!?」

「そん時は、そん時!」

「はァ!?」

 

 

 

「────私たち、もう友達でしょ! 生きてる場所は違うけど、友達だから!」

「────────」

 

 

 

 良く判らないけど友達が自分のために命をかけてくれてるなら、自分だって命くらいはかけると。

 ごくごく当たり前のように断言するサヤのその言葉に、少しだけ恐怖を感じる。

 なるほど、原作トレインが憬れたのもよくわかる────優しいとか思い切りが良いとか、それ以上に覚悟が決まりすぎていやがる。

 後、そんな姿見せられたこっちの情緒がどうなるかなんてことにも考えが及んでなさそうだ。

 

「……っ、死ぬなよ、()()!」

「お、おぉ! ……こりゃ、本当に死ねないっスね、正念場っスよトレイン君!」

 

 なんでかいきなり弾んだ声になったサヤは、より密着し強く力を込めた。

 震えていたハーディスの銃口が、止まる。

 そのまま俺もサヤも、大きな声で踏ん張り。

 そして────。

 

「…………よしッ! ミッションコンプリート……!」

「…………嗚呼、そうだな」

  

 電撃と砲撃が完全に収束し。

 俺の身体の放電もようやく落ち着きを見せて。

 俺達は二人そろって、尻を床についてため息をついた。

 とにかく、疲れた。それだけは間違いないし、服も体もボロボロだ。

 背を合わすように座り込んだ俺達は、そして、どちらからともなく笑い始めた。

 

「ハハ、ハハ、ハ…………、ありがとよ、まあ、うん」

「アッハハハ! どういたしまして、トレイン君。……でも、引っ越し代くらいは工面してネ」

「ん? ……あー、そうか、絶対騒ぎになるか」

「ねー」

 

 その辺の何の変哲もないマンションから、上空へ向けて超光学兵器めいた光線が放たれた。

 そんな意味不明な事件が「ポン」とお出しになったとくれば、部屋の主だった俺やら隣だったサヤやらに、注目が集まる。

 俺に関しては組織(クロロス)が調整するにしても、サヤに関してはどうしようもない。

 女一人賞金稼ぎとして、あまりそう言う形でメディアに映りたいと思わない程度には、ちゃんと身の危険を感じているということなんだろう。

 

 ただ、こっちとしてはそれどころじゃねぇ。

 

「フツーにこっちの都合で巻き込んじまったが、命の、恩人だぞ、お前……」

「…………まあでも、気にするようなことじゃないっスよ」

 

 たまたま助けられたってだけだよ、と笑うサヤに、俺も雑に笑い返すくらいしか出来ない。

 何と言うか……、この大物っぷりと言うか、ヘンなおせっかいっぷりは真似できそうにない。

 それと同時に、こういう精神性を持つに至るだろうサヤの過去に想いを馳せ、少しだけ嫌な気分になった。

 なったが…………、特に口に出して言う話でもない。

 胸に秘めて、ちょっと肩貸してくれと言った。

 

 サヤは俺の背中から離れる。

 その彼女の匂いを頼りに、おおよその位置を鑑みて。

 彼女の肩を掴まり立ちするための手すりのように見立てて、立ち上がろうと俺は手を伸ばし。

 

 ────むに、と。

 ────ふに、と。

 

「ぅぁ……っ」

「……ん?」

 

 ────ムニ、ムニ、と。

 ────むにゅ、むにゅ、と。

 

「はあっ……、あっ」

 

 俺の左手から伝わってくる感触は、どう考えても肩骨や鎖骨の硬さとか、そういうのではなく。

 どうして背中を向いているはずのサヤに触れてるのに、こんな柔らかいのかと……。

 …………柔らかい?

 

「────────あー、……」

「ふあ……、ぁあ……っ♡」

 

 そして、振り返った俺の目に飛び込んで来た光景としては……。

 

 肩を掴んだつもりの左手。

 左手からは、その指の隙間からたわんだ肉の形。

 やわらかで、弾力があって、指が沈んで押し返してきていて。

 なんなら人差し指と中指の間に、ちょっと硬い────。

 

「と、友達って言ったけど…………」

「あ、あぁ……?」

 

 思考も、身体も。

 どちらも凍結された俺を前に、サヤは震えて、顔を真っ赤にして。

 電撃でボロボロになった、火傷とかも少なくはないが……それはそうともう何と言うか色々大事な所が丸見えどころの騒ぎじゃねぇ状態の自分の身体を隠す余裕も無く。

 似たような状態で色々「元気に」なりはじめてる俺の、顔と()とに視線をさまよわせて。

 

 

 

「友達って、そういうえっちな意味じゃないからッ!」

「そりゃなブベラッ!?」

 

 

 

 で、まあ、案の定ぶっ飛ばされた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「どうしたんだい? トレイン。その真っ赤な頬は」

「ノーコメント。たいしたことじゃねぇ……」

「この間 七番目の蜘蛛(ランジュラ・セブン)も今の君と似たような風に頬を腫らしていた。確か女性関係でもめたと笑っていたけれど、もしかして……」

「ノーコメントッ!」

 

 そして数時間後。小型宇宙艇(スペースサイクル)で、何が悲しくてザスティン(クリード)にこんな追及? されてるのかねぇと、遠い目をせざるを得ない俺だった。

 

 

 

 

 


サヤ「トレイン君……、もしかして種族的に発情期?」

クロ「ころして……、ころして……、ころせ……」

サヤ「ま、まあ、最悪私相手だったら、君()って私も死ぬだけで済むけど……」

クロ「いやお前は死ぬなよ……」

サヤ「友達殺したら、責任くらいとるっスよ?」(※真顔)

クロ「えぇ……?」

 

Q.本当にサヤの前で毎回鼻はぴくぴくしてた?

A.毎回ではなく、たまーに。今回のこれは揶揄い目的なので、誇張してる。

 

Q.ハーディスの充電限界? というかそもそも何で撃ったの?

A.本作トレインは黒猫トレインより発電量が多いイメージなのと、とらぶる世界でのハーディス自体が半分くらい(タオ)みたいなニュアンスがありそうなので、そこを兼ね合わせてる。何かよくわからない理屈で蓄積されたエネルギーが、何かよくわからないレベルで爆発して町一つくらいは地図から消えかねなかったのを、なんとなく察知した。

 

Q.(ほぼ全裸で)とらぶった?

A.(ほぼ全裸で)とらぶった。疲れてたのでトレインの言葉が足りなかったのが原因。「肩を貸してくれ(つかまり立ち)」と「肩を貸してくれ(肩でかつぐように支えてくれ)」という行違いから正面を向いたサヤに、唐突に伸ばされるトレインの後ろ手。

 ただ、無印リトさんだと第一話でお胸タッチくらいは通過してるレベルなので、まだ初級。

 

 

 

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