悪夢収集箱   作:灰音ヒビキ

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七不思議6番目 鳴らないチャイム

チャイム。学校にあるアレな?

音の違いはあれど、どこにでもあるだろ?

俺の学校にも当然あったんだが──それが、ある日、鳴らなくなった。

 

最初は「機材トラブル」って話だった。

まあそうだろうな、俺たちもそう思ってた。

 

でもな、機材を入れ替えても鳴らなかったんだよ。

他は一切問題ないのに、チャイムだけが鳴らない。

不良品扱いで再交換されたけど、それもダメ。

 

結局、「鳴らないものは仕方ない」ってことで、チャイムは廃止になった。

まあ絶対必要ってもんでもないしな?

最初は不便だったけど、時計見ればなんとかなる。

そのうち、誰も気にしなくなっていった。

 

──で、ここからが面白い話なんだが。

 

夏休み目前。あとちょっとで学校から解放される!

そんな最後のホームルームが、なかなか終わらなかった。

 

……いや、終わらないどころか、時計がまったく進まなかった。

 

あるだろ? 楽しい時間はあっという間だけど、待ってる時間は地獄みたいに長いって。

最初はそれだと思ってた。

でも違った。マジで時間が止まってた。

 

「早く終われ!」「時計進め!」

クラス全員で、じーっと時計を睨みつける。

でも、まったく動かない。

 

教師も話すことなくなって、黙って椅子に座ってる。

「もう終わりでいいでしょ!」

そう訴えても、教師は

「一応、時間までは待ってなさい」って返す。

 

まあ、言ってることは正論だ。だから俺たちが折れた。

でも、どんだけ待っても進まない。

 

ざわざわし始めた頃、教師が言った。

「終わってるなら廊下が騒がしいはずだろ?誰も歩いてないのはおかしい。静かに待ってろ」

 

……納得しかけた。

けど、それでも何も起きない。

 

とうとう教師もキレたのか、時計を外して確認し始めた。

 

……バキッって音と共に、中の機械が飛び出して壊れた。

 

その瞬間──外がいきなり夜になった。

 

マジで突然。夕暮れとか、そういうのナシで、

昼から一気に、満月と星の出た夜になったんだ。

 

当然、大騒ぎさ。

窓に張り付いて、みんな取り乱して、わけの分からないことを口々に叫んでた。

 

「ドアを開けろ!窓を開けろ!」

でも、全部びくともしない。

 

……そんなとき、誰かが言った。

「時計……じゃないか?」

 

タイミング的にはドンピシャだった。

他に原因も思いつかない。

「もしかして、時計を直せば元に戻るのか?」

──みんな、そう思い始めてた。

 

で、試しに針を動かしてみたんだ。

短針を指で、ぐるぐるってな?

 

そしたら、夜から朝になった。早送りみたいに。

 

意味はわからなかったけど、明らかにこの時計が原因だった。

でな、どのクラスにも1人はいるだろ?機械いじりが得意なやつ。

俺のクラスにもいたんだよ。普段は目立たないやつだけど、このときばかりは本気のヒーローに見えた。

 

なんとかその時計を修理してくれて、みんな大歓声で讃えてた。

 

──で、問題は**「今の時刻がわからない」**ってことだった。

 

スマホは文字化け、アナログ時計は針がぐるぐる。

時間の基準が全部狂ってる。

 

「大体で動かせばいいだろ?」

って意見も出たけど、こんな異常な状況で適当にやれるかよ。

それができるなら、そいつは英雄じゃなくて狂人だ。

 

で、仕方なく「ホームルームが始まった時間」に合わせて針を動かすことにした。

 

──そしたら、外には出られた。

けど、俺たち以外、誰もいない世界だった。

 

学校も、街も、景色は全部変わらない。

でも、人も、車も、自転車も、何も通らない。

そもそも、音が一切しなかった。

 

話し声も、風の音も、蝉の声も──何ひとつ。

 

「俺たちは何を間違えたんだ?」

皆で必死に考えてた、そのときだった。

 

ヒタッ、ヒタッ……

足音が聞こえたんだ。ひとつじゃない。

複数の足音が、確実に近づいてきてた。

 

もう阿鼻叫喚のパニックだ。

「何が来る!?」「教室に入られたら……!?」

 

誰もそれが人間じゃないって、なんとなく分かってた。

 

で、誰かが言った。

「時計……戻せばいいんじゃないか!?」

 

みんな覚えてる時間をすり合わせて、答えを出した。

じっと見つめてたからな、皆はっきり覚えてたよ。

──もっと早くやれよって? ……ほんとにな。

でも、マジで焦ってたんだ。全員。

 

そして、針を“その時間”に戻した。

 

……何も起きなかった。

 

足音は、なおも近づいてくる。

外の景色も変わらない。

唯一の望みが潰えて、パニックは最高潮。

 

そのときだった。誰かが椅子を持ってきて──

時計をぶっ壊した。

 

粉々に、一撃で。

 

外の景色が変わった。

朝、昼、夜──それが早送りで何度も繰り返された。

まるで世界が時間を取り戻すように。

 

そして、足音はいつの間にか聞こえなくなっていた。

 

そのときだった。

あのチャイムが鳴ったんだよ。

ずっと鳴らなくなってた、あのチャイムが。

 

気がつくと、俺たちは元に戻っていた。

廊下には、生徒の賑やかな声があふれていた。

みんな、夏休みの話で盛り上がってた。

 

俺たちは、もう何も言わず、鞄を掴んで──

全力で、教室から飛び出した。

 

──そして最近、同窓会でこの話になったとき、

一人が言ったんだ。

 

「俺……足音の正体、見た。」

 

なんだと思う?

 

――“クラスメイトの仮面”をつけた、真っ黒な影だった”――

そうだ。

 

もし、あの時計を壊さなかったら……

チャイムが鳴らなかったら……

俺たちは、どうなってたんだろうな……?

 

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