チャイム。学校にあるアレな?
音の違いはあれど、どこにでもあるだろ?
俺の学校にも当然あったんだが──それが、ある日、鳴らなくなった。
最初は「機材トラブル」って話だった。
まあそうだろうな、俺たちもそう思ってた。
でもな、機材を入れ替えても鳴らなかったんだよ。
他は一切問題ないのに、チャイムだけが鳴らない。
不良品扱いで再交換されたけど、それもダメ。
結局、「鳴らないものは仕方ない」ってことで、チャイムは廃止になった。
まあ絶対必要ってもんでもないしな?
最初は不便だったけど、時計見ればなんとかなる。
そのうち、誰も気にしなくなっていった。
──で、ここからが面白い話なんだが。
夏休み目前。あとちょっとで学校から解放される!
そんな最後のホームルームが、なかなか終わらなかった。
……いや、終わらないどころか、時計がまったく進まなかった。
あるだろ? 楽しい時間はあっという間だけど、待ってる時間は地獄みたいに長いって。
最初はそれだと思ってた。
でも違った。マジで時間が止まってた。
「早く終われ!」「時計進め!」
クラス全員で、じーっと時計を睨みつける。
でも、まったく動かない。
教師も話すことなくなって、黙って椅子に座ってる。
「もう終わりでいいでしょ!」
そう訴えても、教師は
「一応、時間までは待ってなさい」って返す。
まあ、言ってることは正論だ。だから俺たちが折れた。
でも、どんだけ待っても進まない。
ざわざわし始めた頃、教師が言った。
「終わってるなら廊下が騒がしいはずだろ?誰も歩いてないのはおかしい。静かに待ってろ」
……納得しかけた。
けど、それでも何も起きない。
とうとう教師もキレたのか、時計を外して確認し始めた。
……バキッって音と共に、中の機械が飛び出して壊れた。
その瞬間──外がいきなり夜になった。
マジで突然。夕暮れとか、そういうのナシで、
昼から一気に、満月と星の出た夜になったんだ。
当然、大騒ぎさ。
窓に張り付いて、みんな取り乱して、わけの分からないことを口々に叫んでた。
「ドアを開けろ!窓を開けろ!」
でも、全部びくともしない。
……そんなとき、誰かが言った。
「時計……じゃないか?」
タイミング的にはドンピシャだった。
他に原因も思いつかない。
「もしかして、時計を直せば元に戻るのか?」
──みんな、そう思い始めてた。
で、試しに針を動かしてみたんだ。
短針を指で、ぐるぐるってな?
そしたら、夜から朝になった。早送りみたいに。
意味はわからなかったけど、明らかにこの時計が原因だった。
でな、どのクラスにも1人はいるだろ?機械いじりが得意なやつ。
俺のクラスにもいたんだよ。普段は目立たないやつだけど、このときばかりは本気のヒーローに見えた。
なんとかその時計を修理してくれて、みんな大歓声で讃えてた。
──で、問題は**「今の時刻がわからない」**ってことだった。
スマホは文字化け、アナログ時計は針がぐるぐる。
時間の基準が全部狂ってる。
「大体で動かせばいいだろ?」
って意見も出たけど、こんな異常な状況で適当にやれるかよ。
それができるなら、そいつは英雄じゃなくて狂人だ。
で、仕方なく「ホームルームが始まった時間」に合わせて針を動かすことにした。
──そしたら、外には出られた。
けど、俺たち以外、誰もいない世界だった。
学校も、街も、景色は全部変わらない。
でも、人も、車も、自転車も、何も通らない。
そもそも、音が一切しなかった。
話し声も、風の音も、蝉の声も──何ひとつ。
「俺たちは何を間違えたんだ?」
皆で必死に考えてた、そのときだった。
ヒタッ、ヒタッ……
足音が聞こえたんだ。ひとつじゃない。
複数の足音が、確実に近づいてきてた。
もう阿鼻叫喚のパニックだ。
「何が来る!?」「教室に入られたら……!?」
誰もそれが人間じゃないって、なんとなく分かってた。
で、誰かが言った。
「時計……戻せばいいんじゃないか!?」
みんな覚えてる時間をすり合わせて、答えを出した。
じっと見つめてたからな、皆はっきり覚えてたよ。
──もっと早くやれよって? ……ほんとにな。
でも、マジで焦ってたんだ。全員。
そして、針を“その時間”に戻した。
……何も起きなかった。
足音は、なおも近づいてくる。
外の景色も変わらない。
唯一の望みが潰えて、パニックは最高潮。
そのときだった。誰かが椅子を持ってきて──
時計をぶっ壊した。
粉々に、一撃で。
外の景色が変わった。
朝、昼、夜──それが早送りで何度も繰り返された。
まるで世界が時間を取り戻すように。
そして、足音はいつの間にか聞こえなくなっていた。
そのときだった。
あのチャイムが鳴ったんだよ。
ずっと鳴らなくなってた、あのチャイムが。
気がつくと、俺たちは元に戻っていた。
廊下には、生徒の賑やかな声があふれていた。
みんな、夏休みの話で盛り上がってた。
俺たちは、もう何も言わず、鞄を掴んで──
全力で、教室から飛び出した。
──そして最近、同窓会でこの話になったとき、
一人が言ったんだ。
「俺……足音の正体、見た。」
なんだと思う?
――“クラスメイトの仮面”をつけた、真っ黒な影だった”――
そうだ。
もし、あの時計を壊さなかったら……
チャイムが鳴らなかったら……
俺たちは、どうなってたんだろうな……?