悪夢収集箱   作:灰音ヒビキ

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七不思議2番目 失くしたもの

失くしもの、まあ誰でも一回くらいするよな?学校で、家で、職場で。

そんな失くしたものが返ってくるとしたら?

 

そんな話が俺の学校にはあったんだよ。

失くしたものが、使われてない旧校舎で見つかるっていうやつがさ。

まあもうじき旧校舎が取り壊されるから、そのうち話ごとなくなるんだろうな〜って、みんなで話してたし、誰も気にしちゃいなかったんだが。

 

ある時、クラスの一人が失踪した。

誘拐なのか、単なる家出なのか、詳細は分からなかったが、それでも話題に飢えていた俺たちはこぞって話し合った。

 

「変態に監禁されてる」「いやいや、借金取りにタコ部屋かマグロ漁船に行かされたんじゃね?」「いや、普通に家出じゃね?」──

そんな対岸の火事として、面白がってたんだ。

 

不謹慎なのは、まあそうだけどさ。

人間なんて所詮そんなもんだろ?

自分に関係ない不幸なんて、単なる話題でしかないからな。

 

まあ、そんなふうに会話してるだけなら良かったんだけどな?

ある奴が、こう言ったんだよ。

「失くしたなら、旧校舎で見つかるんじゃね?」ってな。

 

よせばいいのに、面白がって何人かが見に行くことになったんだ。俺も含めてな。

旧校舎で“見つかる”のは夜だけって話だった。

だから、鍵のかかった夜の学校に忍び込んだ。

 

警備もなくてザルだったから、簡単に忍び込めた。

 

旧校舎に着くと、まあ古い建物だったよ。取り壊し寸前だし、あちこち傷んでる。

でも、それがまた雰囲気出しててな?気分はいよいよ肝試しって感じだった。

ライトを頼りに、目的の教室に向かったんだ。

 

失くしたものが見つかるのは「3年2組の教室だけ」ってのが決まり事だったからな。

だから俺たちは真っすぐにその教室を目指した。

まあ肝試しあるあるで、風の音やらギシギシ言う床やらで騒ぎながら、ってやつだ。

 

……そう。

すべてが始まったのは、教室の扉を開けた瞬間だった。

 

何の警戒も、不安もなかった。

そもそも誰も信じちゃいなかったし、何もなかったな〜って笑い話にするつもりだった。

 

その教室に、あいつはいたんだ。

いなくなったクラスメイト……だと思う。

 

わかんないのかって?

いやいや、腕が六本、顔が二つ。

絶えず何かを吠えてる奴を、詳しく見てる余裕があると思うか?

人型だったってことしか分かんねーよ!

 

俺たちは呆然としてたけど、

そいつがこっちを向いた瞬間、金縛りが解けたように無我夢中で走った。

全速力で逃げたさ。

今まで生きてきた中で、あんなに必死になったことなんてなかった。

文字通り、命懸けだったからな!

 

不思議なことに、そいつは追いかけてこなかった。

声すら聞こえなかった。

まあ、それはそれで良かった。

追いかけられて追いつかれるよりは、よっぽどマシだろ?

 

……でだ。そこで問題が起きた。

 

動画を撮ってたやつが「バズるから」って言って、撮りに戻ろうとしたんだよ。

追いかけてこないなら安全だって言ってな。

 

止めろって、俺たちがいくら言っても聞かなくて、説得は諦めた。

俺たちは旧校舎から逃げ出した。巻き添えはごめんだからな。

 

そして──そいつは、帰ってこなかった。

持っていたスマホだけを残して、な。

 

その後、事情聴取やら何やらされたけど、全部本当のことを言ったんだよ。

……まあ、信じてもらえなかったけどな。

 

で、スマホのロックについて何か知らないかって聞かれたから、ありそうな数字をいくつか教えたんだ。

その中のひとつが当たりだったらしい。

ロックは外れて、最後に撮った動画が見れた。

俺たちにも確認のためって見せられた。

 

動画は、教室の外からあの六本腕を撮ってた。しばらくは。

 

安全だと思ったのか、インパクトが欲しかったのか、馬鹿なあいつは教室に入っていったんだよ。

 

そして──六本腕の顔が、よく見えた。

 

いなくなった彼女じゃなかった。

でも、面影はあった。

目は、同じだった。別の目が下についてたけどな。

口裂け女みたいに裂けた口、真っ赤に染まった歯。

 

そんな奴が、にっこり笑ってたんだ。

本当に……嬉しそうにな。

 

それが、最後に映ってた光景だった。

急に何かが動いたのか、映像はぶれて、

そして──撮ってた奴の悲鳴だけが残ってた。

 

単なる笑い話のはずだった。

人が──本当に死んだ。

 

これが、俺の人生で一番悔やんでることだ。

 

七不思議には気をつけろよ。

その中に“本物”が混ざってることもあるんだからな……?

 

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