失くしもの、まあ誰でも一回くらいするよな?学校で、家で、職場で。
そんな失くしたものが返ってくるとしたら?
そんな話が俺の学校にはあったんだよ。
失くしたものが、使われてない旧校舎で見つかるっていうやつがさ。
まあもうじき旧校舎が取り壊されるから、そのうち話ごとなくなるんだろうな〜って、みんなで話してたし、誰も気にしちゃいなかったんだが。
ある時、クラスの一人が失踪した。
誘拐なのか、単なる家出なのか、詳細は分からなかったが、それでも話題に飢えていた俺たちはこぞって話し合った。
「変態に監禁されてる」「いやいや、借金取りにタコ部屋かマグロ漁船に行かされたんじゃね?」「いや、普通に家出じゃね?」──
そんな対岸の火事として、面白がってたんだ。
不謹慎なのは、まあそうだけどさ。
人間なんて所詮そんなもんだろ?
自分に関係ない不幸なんて、単なる話題でしかないからな。
まあ、そんなふうに会話してるだけなら良かったんだけどな?
ある奴が、こう言ったんだよ。
「失くしたなら、旧校舎で見つかるんじゃね?」ってな。
よせばいいのに、面白がって何人かが見に行くことになったんだ。俺も含めてな。
旧校舎で“見つかる”のは夜だけって話だった。
だから、鍵のかかった夜の学校に忍び込んだ。
警備もなくてザルだったから、簡単に忍び込めた。
旧校舎に着くと、まあ古い建物だったよ。取り壊し寸前だし、あちこち傷んでる。
でも、それがまた雰囲気出しててな?気分はいよいよ肝試しって感じだった。
ライトを頼りに、目的の教室に向かったんだ。
失くしたものが見つかるのは「3年2組の教室だけ」ってのが決まり事だったからな。
だから俺たちは真っすぐにその教室を目指した。
まあ肝試しあるあるで、風の音やらギシギシ言う床やらで騒ぎながら、ってやつだ。
……そう。
すべてが始まったのは、教室の扉を開けた瞬間だった。
何の警戒も、不安もなかった。
そもそも誰も信じちゃいなかったし、何もなかったな〜って笑い話にするつもりだった。
その教室に、あいつはいたんだ。
いなくなったクラスメイト……だと思う。
わかんないのかって?
いやいや、腕が六本、顔が二つ。
絶えず何かを吠えてる奴を、詳しく見てる余裕があると思うか?
人型だったってことしか分かんねーよ!
俺たちは呆然としてたけど、
そいつがこっちを向いた瞬間、金縛りが解けたように無我夢中で走った。
全速力で逃げたさ。
今まで生きてきた中で、あんなに必死になったことなんてなかった。
文字通り、命懸けだったからな!
不思議なことに、そいつは追いかけてこなかった。
声すら聞こえなかった。
まあ、それはそれで良かった。
追いかけられて追いつかれるよりは、よっぽどマシだろ?
……でだ。そこで問題が起きた。
動画を撮ってたやつが「バズるから」って言って、撮りに戻ろうとしたんだよ。
追いかけてこないなら安全だって言ってな。
止めろって、俺たちがいくら言っても聞かなくて、説得は諦めた。
俺たちは旧校舎から逃げ出した。巻き添えはごめんだからな。
そして──そいつは、帰ってこなかった。
持っていたスマホだけを残して、な。
その後、事情聴取やら何やらされたけど、全部本当のことを言ったんだよ。
……まあ、信じてもらえなかったけどな。
で、スマホのロックについて何か知らないかって聞かれたから、ありそうな数字をいくつか教えたんだ。
その中のひとつが当たりだったらしい。
ロックは外れて、最後に撮った動画が見れた。
俺たちにも確認のためって見せられた。
動画は、教室の外からあの六本腕を撮ってた。しばらくは。
安全だと思ったのか、インパクトが欲しかったのか、馬鹿なあいつは教室に入っていったんだよ。
そして──六本腕の顔が、よく見えた。
いなくなった彼女じゃなかった。
でも、面影はあった。
目は、同じだった。別の目が下についてたけどな。
口裂け女みたいに裂けた口、真っ赤に染まった歯。
そんな奴が、にっこり笑ってたんだ。
本当に……嬉しそうにな。
それが、最後に映ってた光景だった。
急に何かが動いたのか、映像はぶれて、
そして──撮ってた奴の悲鳴だけが残ってた。
単なる笑い話のはずだった。
人が──本当に死んだ。
これが、俺の人生で一番悔やんでることだ。
七不思議には気をつけろよ。
その中に“本物”が混ざってることもあるんだからな……?