モンハンのハンターがオラリオに来るのは間違っているだろうか   作:ハーメルン初心者

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日々の妄想が止まらないので形にしてみようと思った。
ただそれだけの自己満足。


全ての始まり

世界が――揺れていた。

 

がたん、ごとん。

木の車輪が土を踏む音と共に、荷台がゆるやかに上下する。

その揺れに身を任せながら、アイルーののんびりとした鼻歌が耳をくすぐっていた。

 

「ニャー♪ 今日も元気にネコタク搬送〜、ハンターさん達は寝ててもOKニャ〜♪」

 

荷台には、ハンターと、その両脇に従うオトモたちの姿があった。

アイルーは毛布に包まれて、すやすやと寝息を立てている。

ガルクは毛布の端に顎を乗せ、わずかにまぶたを動かしていたが、緊張の気配はない。

どちらも完全に、旅の最中のいつもの姿だ。

 

彼は小さく息を吐き、目を閉じる。

(……装備は完璧。狩技は、どれを使うか……)

これから向かう狩猟地は“雪山”。

寒さには注意がいるが、ホットドリンクも5本あるし、問題はない。

数多あるコレクションから選んだ装備も、手に吸い付くように馴染む。

他のハンターの装備を見ると、自分も同じのが欲しくて堪らなくなるのが性分だが、今回のクエストは実用優先で作った装備で向かう。

 

アイルーの唄。荷台の揺れ。オトモの気配。

全てが、彼にとっては“狩り前の平常”だった。

 

――眠るには、十分すぎる環境。

 

意識が、ふわりと沈んでいく。

 

そして――

 

目を覚ましたとき、そこは自分の知る雪山フィールドではなかった。

 

 

「……ここは……?」

静寂。

風の音が、耳を撫でた。

 

視界の先に広がるのは、果てしない草原。

草がそよぎ、太陽が降り注いでいる。

遠くに、大木が一本。草の匂い。陽光の温度。

見慣れたようで、決定的に――“知らない”。

――そして、あまりにも静かだった。

焚き火の音も、獣のうなりも、聞こえない。

“狩場”にあるべき、殺気が、ない。

 

彼は起き上がり、あたりを見渡す。

ネコタクは……ない。荷台も、轍も、消えていた。

 

ただ、すぐ傍らに、アイルーとガルクがいた。

アイルーは仰向けで、変な寝相のままぐうぐう眠っている。

ガルクは既に起きていて、耳を立て、鼻をひくつかせていた。

(……お前ら、順応早すぎだろ)

 

 思わず内心で苦笑する。

だが、笑いは一瞬だった。

 

(……違う)

 

この空気。この大地の匂い。

彼の長年の“狩人”としての本能が警鐘を鳴らしていた。

 

 

 

(ここは、俺の知っている“世界”じゃない)

 

(気配が……違う。モンスターの圧力がない。これは――)

 

双剣の柄に手をかける。

すぐには抜かない。ただ、確認するだけ。

 

知らない場所。

知らない空。

知らない命の気配。

だが、やることは変わらない。

 

知らぬ地でも、獣はいる。

何かしらの脅威はある。

人がいるかもしれない。

食料も、水も、手に入れねばならない。

 

そのすべてを観察し、解析し、適応する。

それが、ハンターとしての“生き方”だった。

 

「……さて。とりあえず――探索してみるか」

 

風が吹いた。

一人と二匹。

名も知らぬ世界で、静かに歩き始めた。

 

それが、後に“運命”と呼ばれる物語の幕開けだった。

 

 

三日目、夜。

満天の星空の下。

焚き火もなく、ただ岩壁に背を預けて座る。

その横で、ガルクは静かに身を横たえ、アイルーは毛布にくるまったまま小さく寝息を立てていた。

 

彼は空を見上げながら、ぽつりと呟いた。

 

「……やっぱり、違う」

 

この世界の星は、見慣れた配置じゃない。

月も、どこか違って見える。

 

風の匂いも、草の質感も、微妙に違う。

そして何より――

 

“狩り”ができない。

 

モンスターの痕跡がないのだ。

動物はいる。小型の草食種に近い生き物も見た。

だが、大型の獣の足跡は皆無。

たまに襲い掛かってくるのは、小鬼のような異形の存在ばかり。

 

奇妙な骨格に、鈍い動き。

一匹倒したとき、そいつは爪ほどの黒い石を落とし、それは空気に溶けるように塵と化した。

 

(……モンスターですらない。素材にもならない、ただの幻影のような何かだ)

 

携帯食料は、アイルーとガルクの分も含めて急速に減っていく。

現地調達を当てにしていたのが仇となった。

 

水も同じだ。川も泉も見当たらない。

地図もない。方角もわからない。

果実は見かけたが、未知の世界の植物だ。

一口で命を落とす可能性がある。

 

(俺の知識も、通じない。……俺は“ハンター”じゃない。この世界ではただの――“漂流者”だ)

 

焚き火の代わりに、ガルクの体温が背を温めている。

隣で眠るアイルーは、夢の中でも何かしゃべっていた。

「ニャ……、ポポの肉……こんがり焼けてないニャ……」

そんな寝言に、少しだけ笑みがこぼれた。

 

それでも、現実は変わらない。

 

(……生き延びるなら、人だ。人がいる場所を見つけなければ)

 

彼はそう判断した。

獣と戦うだけでは、生きられない。

“文明”に接触する。それが、今できる最善。

 

ガルクの頭を軽く撫で、アイルーの毛布を整える。

 

「行くぞ。……限界が来る前に、街を見つける」

 

そう呟いて、彼は立ち上がった。

 

星が、静かに瞬いていた。

 

***

 

十日目の朝――

霞む丘の先。そこに、それはあった。

「……壁?」

遠くに見えたのは、巨大な石造の壁。

まるで、要塞のように広がる灰白の壁面。

無骨で、古くて、それでも……人の手によって築かれたとわかる。

 

街だ。

人の、文明の匂いがする。

ガルクが微かにうなり、アイルーが目を細める。

「……ニャ? あれは……」

ハンターは腰のポーチに手をやり、残っていた最後の携帯食料の欠片を取り出した。

アイルーに半分。ガルクに半分。自分には、もう残っていない。

だが、それでいい。

命を繋ぐべきは、仲間だ。

彼は足を進めた。

空の水筒が腰で揺れる。

風が砂埃を巻き上げ、一本道の先に、街の壁が近づいてくる。

(……あれが、この世界の“拠点”なら――)

彼は静かに、しかし確かな意志を持って歩みを進めた。

そして、それが――“オラリオ”という名の物語の中心へと、彼を導いていくのだった。

 

 

陽が傾く。

空の端が、ほんのりと朱に染まり始める。

オラリオ西門の前――一本の道を、影が歩いていた。

一人と、二匹。

彼は全身に砂埃をまとい、足取りは重く、肩で息をしていた。

背には双剣。

腰のポーチは擦り切れ、装備もあちこちが風化している。

その姿は、戦士というより――流浪の遺民のようだった。

隣には、痩せたガルクが一歩ごとに体を揺らし、

アイルーも疲弊した足取りでしがみつくように彼の後ろを歩いていた。

門を守る警備の一人、ガネーシャ・ファミリアのアーディ・ヴァルマは、その姿に目を留める。

 

「……誰?」

 

警戒しつつ、彼女は制止の手を掲げた。

 

「すみません。ここはオラリオ西門、進入には許可が――」

 

言い終える前に、男が、膝をついた。

 

「……ッ、ちょっと!」

 

慌てて駆け寄るアーディ。

近づいて初めてわかる、男の状態。

肌は乾き、唇は割れている。

目の焦点が揺れ、体は極限まで消耗していた。

その傍らで、ガルクもへたりこみ、アイルーもぐったりと倒れ込んでいた。

 

(……人だけじゃない、連れている獣たちも――もう限界だったのか)

 

「あなた、どこから来たの? 聞こえる? 名前は?」

 

問いかけに、男はかすかに顔を上げる。

だが、出てきた声は――

 

「……△◆……、◇……っ……」

 

掠れ、意味をなさない。

言葉が、通じない。

 

それでも彼は、空になった水筒をゆっくりと掲げてみせた。

それだけで、十分だった。

 

アーディは即座に振り返り、仲間に声をかける。

「水と食事を! 急いで! ……尋問は後! 今は、命を繋がなきゃ!」

こうして彼は、城壁の内へと――“人の世界”へと足を踏み入れる。

それが、後に続く無数の運命を引き寄せる、最初の一歩だった。

 

 

守衛詰所。

簡易ベッドに横たわる男に、水袋が差し出される。

持っていた武器は全て預けられ、身体には粗末ながらも布がかけられていた。

 

「……飲める?」

 

アーディの問いに、彼はわずかに頷く。

 

一口。ごくり。

水が喉を通る音が、異様に大きく聞こえた。

 

「……△×……」

 

異国の響きを帯びた呟き。

だが、それは“礼”の気配を纏っていた。

アーディはそれを感じ取り、小さく微笑む。

 

「名前……聞いても通じないかな」

 

男は首を振る。

音としての反応はあるが、会話にはならない。

 

(言葉も通じない、装備も見たことがない……けど)

 

アーディはふと、その目を見つめる。

その瞳には――鋭さがあった。

戦場を渡ってきた者の、それも尋常ならざるものの目。

扉の外から、甲冑の擦れる音が聞こえた。

 

「アーディ? 門で誰か保護したって聞いたけど、何があったの?」

 

現れたのは、赤髪の少女――アリーゼ・ローヴェル。

その背に控えるのは、数人の戦士たち。アストレア・ファミリア。

 

アーディが頷く。

 

「言葉が通じない流れ者。……でも、ただの旅人じゃないと思う」

 

アリーゼが男に目を向ける。

視線が合う。

彼は動じない。ただ、観察するように見返してくる。

 

「……この人、どうするの?」

「応急処置はしたけど、ギルドに回すには弱りすぎてる」

 

少しの沈黙の後――アリーゼは静かに言った。

 

「……じゃあ、うちで預かる。うちなら、少しは安全に休めるはず」

 

正義。それは、強さだけではなく――

目の前の命を見捨てないという意志のことでもあった。

アーディが、ほっと息を吐いた。

 

「名前、聞いても通じないし……今は“旅人さん”でいいかな」

 

アリーゼがそう言うと、男はほんのわずかに――頷いた。

まるで、それが“受け入れられた”ことを意味するかのように。

 

これが、始まりだった。

“正義の眷属”と、“異邦の狩人”。

二つの道が、静かに交わる、最初の夜だった。

 

 




というわけでプロットも何もない見切り発車小説です。
全ての展開を考えたわけじゃないから、続くかどうかもわからないですが、それでも良いという方は読んでやってください。更新は気分次第ですが、いいアイデアが降ってわいてきたら早くなるかもしれません。
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