ありふれた癌   作:Matto

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1章 誰が君を墜としたのか
01:異世界召喚


 旧約聖書に曰く、神は七日で世界を創られたという。

 第一日に昼と夜を。第二日に空を。第三日に陸と海と草木を。第四日に太陽と月を。第五日に魚と獣と鳥を。第六日に人を、そして地上を支配する資格を。――

 と、創生の作業そのものはここで終わる。では第七日に何をされたかと言うと、「お休みになられた」らしい。『天地創造』という偉業にあって、この『休息』という工程を含める必要があるのかどうかは、いささか疑問を呈するところではあるが……とにかくそれに基づいて、七日を周期とするグレゴリオ暦――現在の西暦が形作られた。

 つまり七日が終わると、再び第一日がやってくる。日曜日が終わった次の周期――誰にとっても憂鬱な月曜日が。

 無論、のんびりと通学路を歩いているこの少年、穂崎(ホザキ)慧斗(ケイト)にとっても例外ではない。未だ学生の時分、教育の義務に基づいて『学び育つ権利』に身を任せられる時期とはいえ、憂鬱なものは憂鬱だ。およそほとんどの学生が抱えているだろうそれを背に、彼は通学路を踏破し、靴を履き替え、教室に昇る。

 ざわざわとした喧騒に包まれる、2-Bという看板が掲げられた教室。その扉をくぐった瞬間――ぴり、と教室じゅうに冷たい緊張感が走った。慧斗はそれを無視して、己の席に鞄を置いて座った。

 緊張感は一瞬だけだった。同級生たちは、それぞれのグループで歓談を再開した。無言で、しかし意図的に慧斗を避ける視線の群れに、慧斗はまったく頓着しなかった。

 そんな中、にこやかに声を掛けてくる少女がひとり。

 

 

「おはよう、穂崎くん」

「へい」

 

 

 名を、白崎(シラサキ)香織(カオリ)。学校の『二大女神』なる大仰な肩書をもつ大人気の美少女だが、彼女は慧斗に臆することなく挨拶を投げた。

 それに対し、慧斗は半ば投げやりに返した。眠たい。別に前日徹夜したわけでも、まして不眠症を抱えているわけでもないが、朝のこの時間帯はとにかく眠たい。ましてや慧斗は家業の修練に従って朝の走り込みをしてきているため、すでに軽い運動を済ませている。それなりの学生が共感するだろう眠気を我慢しながら、慧斗は一限目の教科書と参考書とノート――あとついでに、分厚いハードカバーの本を取り出した。何の変哲もない、意味深なタイトルを掲げた現代小説である。

 あらゆる雑音を追い出し、そのまま読書に集中し始める。十分ほど経ったろうか。もうじき朝礼が始まるという時間に、息せき切って教室に滑り込む少年がいた。

 その瞬間、教室の男子生徒の大半から舌打ちやら睨みやらが生じる。女子生徒も友好的な表情をする者はいない。無関心ならまだいい方で、あからさまに侮蔑の表情を向ける者もいる。それらを極力無視するように――が、慧斗からしたら「僕は気にしてません」と言いたげな態度でしかない顔つきで、自席――慧斗の隣に向かって進んでいくが、それに野次を飛ばす連中がいた。

 

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

 

 口々に小汚い野次を食らう、この南雲(ナグモ)ハジメという同級生。何でも両親の稼業だか何だかの影響で、いわゆるオタクらしい。『キモオタ』という蔑称に相当する生態なのかどうかは、知らない。そもそも『キモオタ』という呼称に明確な定義があるわけではなく、発言者の主観に大きく依存する。つまり、慧斗から離れたところで口汚く罵る、檜山だか木山だかの主観で『南雲=キモい』という悪感情が成立すれば、それが全てだ。少なくとも、横で読書に耽っているだけの慧斗の知るところではない。

 そこに歩みを進めるのが、またしても白崎香織。教室中の不快げな視線とは裏腹に、あからさまに親しげな視線を寄越してくるものだから、ますます浮く。

 

 

「南雲くん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

「あ、ああ、おはよう白崎さん」

 

 

 白崎の微笑みに、しかし南雲は引きつったような愛想笑いで返した。ほんのわずかにどもった様子が、迷惑そうな困惑を浮かべている。

 

 

「南雲君。おはよう。毎日大変ね」

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

 

 その後ろから飛んでくる茶々が三つ。角度的に慧斗にも飛来するため、彼はぴきりと不快感を覚えた。

 

 

「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君に構ってばかりはいられないんだから」

「いや~、あはは……」

 

 

 煮え切らない南雲の回答に、押しつけがましい天之河(アマノガワ)光輝(コウキ)のやり取り。慧斗は二人の頭を床か机に叩きつけたい衝動に駆られた。

 

 

「光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲くんと話したいから話してるだけだよ?」

「え? ……ああ、ホント、香織は優しいよな」

 

 

 そして空気を読まない白崎の発言に、ざわりと教室が騒がしくなる。男子たちはぎりりと歯を鳴らし、仁山だか四人組に至っては何やら悪巧みを始めているようだ。

 

 

「……ごめんなさいね? 二人共悪気はないのだけど……」

 

 

 最後に八重樫(ヤエガシ)(シズク)の取ってつけたようなフォローが入るが、焼け石に水だろう。むしろ『二大女神』の双方に声を掛けられているという事実が、男子たちの嫉妬をさらに加速させているようだ。

 これを毎日毎朝繰り返すのだから、なんとも暇な連中である。それが、慧斗にとって唯一の感想だった。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 穂崎家の次男こと慧斗は、とかく乱暴者で知られた。

 古武術を伝える同家は、当然その子供たちを子弟とともに修行させてきたが、この平和な二十一世紀日本にそぐわない『武』というものの技術習得が、彼の精神性を歪めたのか、どうか。あるいは生来のものなのか、両親や兄をして困惑させるところだった。

 発達障害や精神病を抱えているというわけでは、ない。しかしとにかく喧嘩っ早く、ひとたび癪に障ると拳が飛び出す短気な性格をしている。これが下級生や、同級生でも体力に劣る者に向いているのであれば、『いじめっ子』という(字面の微笑ましさに紛れて性根の悪辣さが隠された)呼称で表現できるのだが、彼の場合、上級生だろうが大人だろうが遠慮なく牙を剥く。一時期、些細なすれ違いから不良の集団と大乱闘を繰り広げたこともあり、周囲はまるで腫れものを触るような扱いづらさを感じていた。

 当然、そんな奇矯な乱暴者に寛容になれるほど、この学校の生徒たちは血気盛んでも慈愛に満ちた青少年でもない。良くも悪くも普通の子供たちに囲まれ、2-Bには慧斗の友人がいない。が、それに頓着しないほど、平素の彼は穏やか――というより、口数少なく物静かな人間だった。高校生になり、気性の粗さが多少落ち着いたというのもあるかも知れない。周囲がうっかり触れないように恐る恐る遠巻きにする中、彼は図書室へふらりと出かけ、適当に見繕った小説を漁ると、教室に戻ってきて一人読書に耽っていた。まさに我が道を往く、ある種超然とした様子に興味を惹かれた者が現れ、一年次には僅かながら友人ができたこともある。彼らによると、慧斗は現代文学が好みらしい。

 とにかく、慧斗はある種不発弾のような危うさを抱えていた。全男子生徒の目の敵にされている南雲ハジメとはまた別方向の、2-Bの劇物のひとつと数えられていた。それがこれまで起爆してこなかったのは、成長とともに固まった本人の気質に由縁するのか、周囲による必死の努力の成果なのかは、よく分からない。とにかく現状維持が成立してきたのは、間違いなく幸福といえるだろう。

 それがまさに今日、音もなく崩壊するとも知らずに。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

(……ごちそうさま)

 

 

 無言の挨拶とともに、慧斗は弁当箱を仕舞った。穂崎家の家訓として、毎日の弁当は自分で用意することになっている。とはいえ、炊いてもらった飯と解凍した冷凍食品を詰めるだけの作業だ、大したことはない。いつも通りの味付けを大して堪能することもなく、慧斗は再び鞄から小説を取り出した。

 ところが、その程度の手間すら惜しむ輩もいるらしい。ゼリー状の栄養食品ひとつで済ませ、一分一秒も惜しいとばかりに寝入る隣の南雲がそれだ。慧斗の僅かな記憶が主張する限り、この少年は授業中も堂々と居眠りをしていた気がするが、まあそんなことはどうでもいい。慧斗だって眠い時は眠いし、いちいち起こしてやる義理などない。

 ところが、またしてもそこに水を差す者がいた。

 

 

「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」

 

 

 もはやお約束、白崎である。南雲をやや強引に揺すり起こすと、彼女は自分の弁当を差し出した。

 途端にざわりと沸き立つ教室――主に男子生徒諸君の嫉妬の視線である――に、天之河の声が割り込んだ。

 

 

「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」

 

 

 うるさい。

 このラブコメと痴話喧嘩の中間みたいな茶番が、慧斗の真隣で毎日のように繰り広げられるのだから、慧斗はだんだんと不快感を募らせていた。白崎は白崎で過干渉が鬱陶しいし、南雲は南雲で曖昧に誤魔化す姿勢が癪に障る。沸々と湧き出す殺意が、その二人ともに向いているのだから、理不尽と言っていいか、どうか。

 

 

(図書室に逃げるんだったかなあ……でもコレ、まだ全然続きがあるし……)

 

 

 席替えで南雲の隣になって以来、この不愉快な殺意を抑えつけるのに、慧斗はおそるべき忍耐力を発揮していた。今借りている本さえ読み終わってしまえば、図書室に行く口実ができる。思えば昼飯を食い終わり次第逃げ込み、そのまま昼休みが終わるまで図書室に入り浸るという選択肢もあった。それもこれも、南雲が隣の席にさえならなければ――というかこの二人が鬱陶しい真似をしなければ――そんな不快感とともに、慧斗はこめかみに青筋を浮かべつつあった。

 それが消し飛んだのは、一筋の光によるものだった。小説に目を落とす慧斗の視界に、眩い光が割り込んでくる。慧斗は咄嗟に本を閉じ、光の源を探した。――あった。周囲の生徒たちと同じように唖然としている、天之河の足元からだ。幾何学模様に走る光の線は、まるで魔法陣のように教室中を覆い尽くした。

 

 

「み、皆! 教室から出て!」

 

 

 教室に残っていた社会科教諭、畑山(ハタヤマ)愛子(アイコ)が叫んだ。その言葉に弾かれるように、生徒の全員が我先にと扉に走る。ところが、

 

 

「う、うそ! 扉が開かない!」

「な、なんで!?」

 

 

 ひとりでにがたんと閉じたきり、生徒たちが押しても引いてもドアが開かない。後ろには早く出たいと殺到する生徒たちの群れで溢れ返っている。

 

 

「おいそこ退け!」

 

 

 慧斗は内窓側に立っていた生徒の一人を押し退けると、助走をつけてその窓に飛び掛かり、渾身の蹴りを入れた。

 ――ぴぃん、と、およそガラス窓が鳴らすことのない音が響き、慧斗の飛び蹴りは遮られた。

 

 

「――っち!」

 

 

 慧斗の舌打ちと、光芒の炸裂はほぼ同時だった。

 中天の太陽を遮らんばかりに輝いたきり、後には誰一人残されていなかった。蹴倒された椅子に、食べかけのまま開かれた弁当、散乱する箸やペットボトル、教室の備品――『人がいない』という唯一にして最大の異常を残したきり、教室は静寂に包まれた。

 

 

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 眩い光に目を覆っていた慧斗は、視界のスパークが止んだのを確認してから、ゆっくりと周囲を見回した。

 周囲には、同じように目を開き、ざわざわと周囲を見回す生徒たちがいた。その向こう側から、まず目を引いたのは巨大な壁画。縦横十メートルほどのそれには、後光を背負い長い金髪を靡かせ、薄く微笑む中性的な人物が描かれている。背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。まるで宗教画のような壮麗なそれに、あいにく宗教画に疎い慧斗は、さして違和感を見出せなかった。

 自分たちは、巨大な大理石の広間にいるらしい。美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りに、細やかな彫刻が刻まれた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。その最奥にある、台座のような場所の上にいるようだった。足元には、どこか見覚えのある幾何学模様が刻まれている。教室で光を放っていたそれと同じものだと、慧斗は直感した。

 そして彼らの前には、白地に金の刺繍がなされた法衣を纏う、僧侶らしき人物たちが三十人ほど立っていた。皆一様に、傍らに錫杖を携えている。扇状に広がる先端と、円環の代わりに吊り下げられた円盤に、慧斗は小さな違和感を覚えた。

 

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ」

 

 

 その中心、先頭に立つ老人が口を開いた。ひときわ豪奢な祭帯(ストラ)を垂らし、黄金の冠を被ったその老人は、にこやかな笑みを浮かべながら諸手を開き、生徒たちを歓迎している。

 

 

「――てめえか」

 

 

 その姿に、慧斗は直感した。――()()()。この爺が仕手だ。生徒たち(と畑山)を巻き込んで、この異郷の地に連れ込んだ張本人だ。

 

 

「私は、聖教教会にて教皇の地位に就いております、イシュタル・ランゴバ――ぐああっ!?」

 

 

 老人らしからぬ朗々とした声で自己紹介を始める老人ことイシュタルに、慧斗は素早くにじり寄り、錫杖を握る右腕を捩じ上げた。突然の暴挙とイシュタルの悲鳴に、僧侶たちと生徒たちが揃ってざわつく。

 

 

「お、おい、穂崎!」

「穂崎君、何やってるの!?」

 

 

 いち早く再起動した天之河と畑山が口々に叫ぶが、慧斗は無視した。イシュタルの腕を明後日の方向に捩じ上げたまま、流れるように姿勢を変え、僧侶たちを牽制するように見せつける。ついでに錫杖の角度を変え、首に据えるように曲げさせたが、それにどこまで意味があることか。

 

 

「痛い痛い痛い痛い痛い! な、何を……痛い!」

「――集団拉致なんて派手な真似をやらかしたんだ、さぞかし重い事情があるんだろうな?」

 

 

 イシュタルの頭から大きな冠が転げ落ちた。感じたことのない痛苦に悲鳴を上げ続けるイシュタルへ、慧斗は冷たい声を投げかけた。

 

 

「そ、それはもちろん――痛ぁっ!?」

「雑音が多い端的にまとめろ」

「あ、あなたたちは、人間族を救うための勇者として、招かれたのです!」

 

 

 ぐいと捩じ上げ、冷たい声で理不尽な命令を下す慧斗に、イシュタルは悲鳴混じりに説明した。

 意味が分からない。いまどき『人類を救う勇者』なんて、子供の空想そのものである。

 

 

「何だ世迷言か、死ね」

「あがぁぁぁぁっ!?」

 

 

 気持ちの悪い妄言だ。慧斗はいっそう腕を捩じ上げると、そこに万力を叩き込んだ。

 イシュタルの悲鳴に上被せられるように、めぎり、と重くしかし乾いた音が鳴った。その音源は――捩じ上げる慧斗の腕から解き放たれ、しかし上腕が不自然な位置で曲げられた、イシュタルの右腕。

 

 

「う……うそ……」

「い、いまの……」

「じょ……冗談だろ? なぁ……」

 

 

 それにどよめいたのは、僧侶たちだけではない。およそ見たことのない容赦なき暴力に、生徒たちも震え上がっていた。

 がらんと甲高い音とともに、イシュタルは錫杖を取り落として蹲った。ひぃひぃと息を零しながら、信じられないかのような目つきで、圧し折られた自らの腕を見ている。

 ――彼の不幸は、それがまだ終わっていなかったことだろう。

 

 

「ひぃ、ひぃ――うぐぁぁぁっ!?」

「もう一本分チャンスをやる、よく考えて答えろ」

 

 

 慧斗はイシュタルの背を踏みつけると、僧衣の上から左足首を掴み上げ、ぐいと捻じ曲げた。

 

 

「お前らの都合など欠片も知らん。その世迷言に付き合いたくないといったら、帰れるのか」

「痛い痛い痛い! あ、あなたたちの召喚は、え、“エヒト様”によって行われました! 私の一存では――」

「話が長い一言でまとめろ」

「痛ぁぁっ!? か――帰すことは、できません! 不可能です!」

 

 

 必死に喘ぐイシュタルをよそに、慧斗はぐいぐいと脚を捻じ曲げながら言った。痛苦で意識がいっぱいのイシュタルが紡いだ言葉に、動揺したのは生徒たちだった。

 

 

「え……!?」

「そんな……!?」

「どうして……!?」

 

 

 彼らは、ようやく事態の重大さを悟った。このどことも知れぬ異郷に連れ去られ、帰る手段もないときた。その衝撃的な事実を、真正面から受け止められる者はいなかった。

 今まさにイシュタルの脚を捩じ上げ、拳を構えている慧斗でさえ。

 

 

「あっそ。死ね」

「がぁぁぁぁっ!?」

 

 

 慧斗はイシュタルの脛に向かって、力いっぱい拳を叩き込んだ。

 ――ぼきり、と重い音が再び響いた。重い僧衣と冠を支えてきた足腰は、しかしその脛を逆向きに殴りつけられ、へにゃりと曲がりながらへたれ落ちた。

 床に伏せられながら、激痛の二連続に涙を浮かべるイシュタルは、しかしその頭を掴み上げられたことで、またも顔面蒼白にさせられた。

 

 

「――ぐっ!?」

 

 

 何者だ、これは。こんなものが、エヒト神に見初められた勇者だというのか。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「で、どうだ。三本目のチャンスが欲しいか? それとも、首の骨圧し折られたいか?」

 

 

 背を踏まれたまま海老反りに曲げられ、がっちりと頭蓋を掴まれたイシュタルに、選択肢がなかったのは言うまでもない。

 

 

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